ブルーツーリズムで漁村地域の活性化を | 成功事例から学ぶ新しい旅の魅力

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「ブルーツーリズム」とは、島や沿岸部の漁村などに滞在し、現地の体験を通じて心身をリフレッシュする余暇のすごし方です。

ブルーツーリズムは、農村部で滞在する「グリーンツーリズム」や、旅を通して身体の健康意識を高める「ヘルスツーリズム」などと同じエコツーリズムの一種で、国土交通省と水産庁により提唱されました。

ブルーツーリズムは現地での滞在を通して、海での新しい過ごし方や、漁村地域の活性化、海の利用マナー・環境保全意識の向上をねらいとしています。

本記事では、エコツーリズムのひとつであるブルーツーリズムの概念やねらい、そして北海道・大分県・沖縄県で実施されている成功例を紹介します。

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ブルーツーリズムとは

ブルーツーリズムとは、国土交通省と水産庁が推奨する地域ツーリズムの一種で、島や沿岸部にある村での滞在を体験することを指します。この項目では、ブルーツーリズムの概要や、ブルーツーリズムに取り入れられるプログラムの例を紹介します。

海辺に特化したエコツーリズム

ブルーツーリズムとは、島や沿岸部の地域に滞在し、海辺での生活体験を介して心身の休養を取るツーリズムのあり方です。ブルーツーリズムは、地域の人との交流を介して、現地の自然や歴史を体験しながら環境・文化の保全について学ぶ「エコツーリズム」の一種とされており、国土交通省と水産庁によって実施が推進されています。

ブルーツーリズムでは、旅行者自らがさまざまなプログラムを組み合わせて独自の旅行内容を作成できることが特徴です。

ブルーツーリズムの一環として提供されるプログラムの例としては、漁業の体験、マリンレジャー、エコトレッキング、漁村での生活体験、自然観察などがあります。

エコツーリズムの課題と事例

近年、自然環境の悪化から世界中で注目されているのが「エコツーリズム」です。環境保全の観点から、自然に優しく、その土地の文化や歴史を学ぶ新しいスタイルの観光形態を取り入れる国や自治体も多くなっています。しかし、環境保全と観光を両立させるには難しい部分もあり、エコツーリズムには課題が多く残ります。エコツーリズムの抱える課題と、解決に向けた取り組み例をご紹介します。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応...


プログラムに活用できる体験

ブルーツーリズムのプログラムとして取り入れられるコンテンツの主な種類には、「漁業」「加工食品・食文化」「伝統文化」「自然観察」の4つが挙げられます。

たとえば「漁業」をテーマにしたプログラムでは、実際に漁に出たり、養殖作業を体験するなど水産業の仕事について学びます。また、「加工食品・食文化」をテーマにしたプログラムでは、加工食品の製造方法や食文化を学ぶため、干物や練り物などの加工食品を作ったり、滞在先の地域で受け継がれる漁師料理を味わうプログラムなどが含まれます。

また、祭りや行事、芸能などを観賞するプログラムや、海岸などで生物を観察・学習する自然観察関連の体験もブルーツーリズムの一環として取り入れられています。

ほかのエコツーリズム:グリーンツーリズム・ヘルスツーリズムなど

ブルーツーリズムのほかにエコツーリズムを代表する例としては、「グリーンツーリズム」「ヘルスツーリズム」の2つが挙げられます。

グリーンツーリズム」とは、農村部での滞在を前提にしたツーリズムのあり方です。

地域の人々との交流や、農業の体験をしながら心身のリフレッシュを図ります。グリーンツーリズムにおける主なプログラムには田植え、野菜収穫、乳搾りをはじめとする農業体験のほか、郷土料理や現地文化の体験などが含まれます。グリーンツーリズムはブルーツーリズムと同じく、現地での滞在や住民との交流を重視した内容であることが特徴です。

「ヘルスツーリズム」は、既往歴の有無や年齢を問わずすべての人を対象にしたツーリズムで、旅を介した健康の維持と増進や、疾病予防や回復を目的にしています。ヘルスツーリズムに含まれるプログラムの内容には、自然やスポーツ、スローフード体験などがあります。

「グリーンツーリズム」とは

地方に滞在し、現地の方々と交流しながら農業体験などを行う「グリーンツーリズム」が、ここ数年盛り上がりを見せています。また、新型コロナウイルスの流行は、これまでのように人の集まる繁華街が見どころとなる都市型の観光だけでなく、自然の豊かな地方や、オープンエアーな観光コンテンツへの関心を高めることにつながっています。先進国を中心に見られているコト消費ブームや、持続可能な社会を目指す意識も、グリーンツーリズムの商業的、社会的価値を高めているといえるでしょう。グリーンツーリズムは、地方の資源を活かし...

世界のツーリズム市場「ウェルネスツーリズム」が観光産業収益の15.6%を生み出す:日本では「日本食・温泉」などの観光資源の活用法がカギ

2020年までに4,000万人の訪日外国人観光客誘致を目指す日本のインバウンド業界。国内ではアニメや漫画など日本のソフトパワーコンテンツを活かした「アニメツーリズム」、スポーツと観光を組み合わせた「スポーツツーリズム」など 日本が持つインバウンド向け観光資源を活用したツーリズムが話題になっています。このような中、日本においては未だ注目を集めていませんが、海外のインバウンド観光市場において重要視されているツーリズムが存在しています。 その1つが 「ウェルネス・ツーリズム」 と呼ばれるものです...

ブルーツーリズムのねらい

ブルーツーリズムのねらいは、新しい余暇活動の提案や、漁村地域の活性化、漁業とマリンアクティビティの調和の3点を軸にしています。

この項目では、ブルーツーリズムのねらいの内容をそれぞれ紹介します。

新しい余暇活動の提案

ブルーツーリズムのねらいの一つに、「国民ニーズに応える新しい余暇活動の提案」があります。

ブルーツーリズムは島や漁村などでの長期滞在や、現地住民との交流を重視するタイプのツーリズムです。

沿岸部での滞在や、漁業体験、自然観察などを介することで、都市住民も沿岸地域での生活を実感でき、レジャー活動だけに留まらない海での過ごし方を認知できます。

ブルーツーリズムではこのような海に対する新たな視点・楽しみ方を提案することで、海を「ふるさと」の場所として認識してもらおうという意図が込められています。

漁村地域の活性化

ブルーツーリズムのもう一つのねらいに、「漁村地域の活性化」があります。

「漁村地域の活性化」では、都市部からの訪問者との交流を通じて、島や村の住民自身が地元地域に対するアイデンティティを確立することを目標としています。

また、プログラムの提供を介して現地のサービス産業の育成や、経済効果の発生、新たな雇用の創出も漁村地域の活性化により期待される効果の一つです。

ブルーツーリズムの取り組みにより、現地の住民自身が自分の地域の魅力を再発見すること、そして現地の経済的な活性化が期待されています。

漁業とマリンアクティビティの調和

ブルーツーリズムのプログラムには、現地の漁村で営まれている漁業や養殖作業の体験や、海辺でのスポーツや自然観察といったマリンアクティビティが含まれます。

このような海に関する自然体験の機会を提供することで、海を利用する際のルールやマナーを向上させることもブルーツーリズムのねらいとされています。

また、漁業とマリンアクティビティの体験を介して、海に対するルール意識とマナー向上のほか、海の自然や生態系といった環境に対する保全意識の向上に対する効果も期待されています。

ブルーツーリズムの成功例

ブルーツーリズムは全国的に実施されており、水産庁が発表する「漁村活性化優良事例」などでも各都道府県での事例が紹介されています。

この項目では、ブルーツーリズムの主な成功例として「北海道標津町」「大分県佐伯市」「沖縄県国頭村」これら3つの地域での取り組みを紹介します。

北海道標津町:サケを活用した都市漁村交流

北海道標津町(しべつちょう)は、北海道東部にある村でサケの産地として知られています。

標津町では都市住民や修学旅行生などを対象にしたブルーツーリズムを提供しており、「忠類川サーモンフィッシング体験」と呼ばれるサケ釣りの体験や、秋サケの加工体験など、地域を代表する産地であるサケを中心にしたプログラムを用意しています。

サケを活用したツーリズムの展開により、2003年には修学旅行7校を含めた全8件、約1,600泊の宿泊と、2,300人以上の体験プログラム参加者の受け入れを達成しました。

プログラムに地元のサケを使用することで生産物の地域調達率が高まり、経済の活性化に貢献できたという効果が見られています。この成功事例をもとに、標津町では今後プログラムの品質向上や、雇用や定住人口の拡大を目指しています。

大分県佐伯市:水産業と観光の連携

大分県の南東に位置する佐伯市(さえきし)は、水産業と観光を連携させたブルーツーリズムに取り組んでいます。

プログラムは2006年に設立された「かまえブルーツーリズム研究会」が中心となって提供しており、2007年に始まった「あまべ渡世大学」では、地域の漁師や各団体が来訪者に魚の釣り方やさばき方といった体験を提供しています。

あまべ渡世大学には毎年6,000人の来訪者が訪れており、これにより新たな雇用も生まれています。あまべ渡世大学のほかには、地区の女性が伝統料理を提供する「おばちゃんバイキング」と呼ばれるプログラムもあり、高齢者のライフスタイルや、収入の場所の充実といった成果につながっています。

佐伯市のブルーツーリズムの特徴はプログラム内容の豊富さにあり、伊勢海老のさばき方、カヌー、シュノーケリング、ウニ割りなどさまざまな題材の体験が用意されています。

沖縄県国頭村:民間企業と力をあわせ漁村を活性化

沖縄本島の北部に位置する村・沖縄県国頭村(くにがみそん)では、釣りスポットとして広く知られている安田漁港を活用したブルーツーリズムを提供しています。

国頭村では回遊する魚を誘い込む「定置網」を安田漁港近辺の海中に設置しており、定置網を活用したプログラムが提供されています。

国頭村では定置網を使った漁体験のほか、定置網に入る魚と泳げるスノーケリングなどのマリンアクティビティも運営されています。

上記のプログラムはすべて「株式会社OSC」と呼ばれる民間企業が実施しており、民間企業と村や漁業協同組合が協力して取り組んでいる事例として知られています。

オルレとは

韓国最南端の島・済州島では、「オルレ」と呼ばれるトレッキングコースを歩くことが人気のアクティビティの一つとなっています。オルレはその土地ならではの自然を楽しみたいと考えている人たちの間で特に注目されています。オルレの選定条件には「手つかずの土地であること」が含まれており、地方の整備されていない土地を新たな観光資源として活用できる可能性があることから、インバウンドにも効果的です。今回の記事では、オルレの詳細、日本での事例について紹介します。関連記事エコツーリズムが抱える課題とは事例集:体験・...


地域の海洋資源を活かしたブルーツーリズムで集客を

都市住民を呼び込み、島や漁村での滞在方法を提案する「ブルーツーリズム」には、地域の活性化だけではなく、訪問者に海の魅力を再発見してもらうなどさまざまな効果に期待が集まっています。

グリーンツーリズム同様、ブルーツーリズムは地域での滞在や住民との交流を重視しており、国内では全国の都道府県でブルーツーリズムの取り組みが実施されています。

ブルーツーリズムをインバウンド対策に応用した事例はまだ見られませんが、ブルーツーリズムは国内ではすでに都市部の住民に漁村の魅力を伝える旅の形として浸透しています。

環境保全への意識やエコツーリズムが世界的に注目されているいま、日本の自然資源を活かせるブルーツーリズムはこれから活用の機会が増えていく可能性がありそうです。


<参考>

水産庁:漁村活性化優良事例集

国土交通省:ブルー・ツーリズムの紹介

国土交通省離島振興課:ブルー・ツーリズムのねらい

国土交通省北海道開発局:標津町エコ・ツーリズム交流推進協議会

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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