外国人、東京の「夜の街」に不満アリ:最も魅力に感じる要素は「衛生面」【外国人旅行者行動特性調査】

公開日:2020年07月13日

東京都は6月25日、観光産業振興に向けた施策を推進するための基礎資料として、「国・地域別外国人旅行者行動特性調査」を発表しました。

このデータは、訪都外国人旅行者の行動特性を国籍または地域別に四半期ごとに調査したもので、今回の調査は令和元年1月から12月までの訪都外国人旅行者を対象に、12,797票の有効回答数をもとに集計されました。

調査の結果、東京での観光についての満足度が9割を超え、衛生的な街並みが魅力として高い評価を得る一方で、多言語対応の不十分さやナイトライフ観光・繁華街などの魅力の不足が長期的な課題として認識されました。

本記事では、この調査の結果を紹介するとともに、今後のインバウンド対策に活かせるデータや今後のインバウンド対策のポイントについても解説します。

《注目ポイント》

  1. 東京観光の満足度は9割超
  2. 訪都外国人旅行者が考える東京の魅力、1位は「衛生的」
  3. 多言語対応・新たな魅力の創出が課題

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「初めて訪問」が4割超、全国よりも多い結果に

訪都外国人旅行者のこれまでの訪都回数
▲[これまでの訪都回数]:平成31年・令和元年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査

これまでの訪都回数についての調査では、「1回目(初めて)」が43.3%、「2回目」以上(リピーター)が56.4%という結果となりました。

国・地域別に見ると、「1回目」の割合が高い国・地域はスペイン(78.8%)、カナダ(67.0%)、イタリア(64.4%)でした。一方で「2回目」以上の割合が高いのは、香港(79.8%)、台湾(70.8%)、シンガポール(69.0%)となっています。

観光庁が発表した訪日外国人消費動向調査2019年版では、訪日が「1回目(初めて)」と答えた回答者が35.8%、「2回目」以上と答えた回答者が64.2%だったことから、東京は全国と比較して初訪問の割合が高いといえます。

東京は日本の首都として外国人にも知名度が高く、羽田や成田など主要空港からのアクセスが良いため、初めて日本を訪れる訪日客にとって定番の観光地なのでしょう。

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個人手配(FIT)が8割超

訪都外国人旅行者観光客の旅行形態
▲[旅行形態]:平成31年・令和元年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査

旅行形態については、「ツアーは利用していない(個別手配)」と回答した人の割合が全体の8割を占める結果となりました。

国・地域別にみると、以前からFITでの訪日が多い欧米豪は、この調査でもほとんどの国でFITの割合が9割を超えました。

団体ツアーを利用する割合が大きい中国や台湾、タイ、ベトナムでもFITが約7割を占めており、旅行形態としてFITが定着し主流になっていることがうかがえます。

この傾向とともに、外国人旅行者の集客を図る地域や施設では、万人受けするものや定番の観光スポットだけではなく、個人手配の旅行においても集客が見込める、個々のニーズに合ったコンテンツの創出・提供が求められています。

万人受けするコンテンツとすることは難しくとも、クオリティの高いサービスを提供することで特定の層を集客し、東京とリンクする存在としてポジションを確立すれば、訪日旅行の認知拡大が期待できるでしょう。

FITとは?個人旅行が増加

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訪問先:過半数が新宿・大久保を訪れている

訪日訪都外国人旅行者が都内で訪問した場所
▲[訪問した場所(複数回答)]:平成31年・令和元年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査

訪都外国人旅行者の訪問先としては、「新宿・大久保」が53.8%、「銀座」が52.0%、「浅草」が43.7%で上位に入りました。

この結果を国・地域別で分析すると、インド、ベトナム、ロシアを除くすべての国・地域で「新宿・大久保」が3位以内にランクインしています。

また、20の国・地域のうち、スペイン(84.1%)、フランス(80.9%)など、半数を超える11か国で「渋谷」が1位になっています。

歴史や風情といった「伝統的な日本」を感じられる場所よりは、ショッピング施設が充実していて高層ビルなどが立ち並ぶ、都市としての東京に魅力を感じているようです。

都内で行ったこと「日本食を楽しむ」が9割超

訪日訪都外国人旅行者が訪都中に行った活動
▲[訪都中に行った活動(複数回答)]:平成31年・令和元年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査

訪都中に行った活動についての項目では、「日本食を楽しむ」を選択した人が91.1%と最も多く、次いで「日用雑貨、化粧品、食品、菓子類のショッピング」64.0%、「高層ビル、近代的な街並み・景観・建築物の探索」56.8%などが挙げられました。

国・地域別にみると、すべての国・地域で「日本食を楽しむ」が1位となっています。「訪都中に最も満足感を得られた場所で行った活動」でも、多くのエリアで「日本食を楽しむ」が選択されています。

ナイトライフを楽しむ」との回答はオーストラリアで47.0%、英国で44.3%など、全体と比べて欧米豪地域で多い結果となりました。

そのほか、「訪都中に最も満足感を得られた場所で行った活動」における特徴的な結果として、秋葉原での「最新の日本文化に触れる」(25.8%)、吉祥寺・三鷹での「美術館・博物館の探索」(36.3%)、原宿・表参道・青山での「服・服飾雑貨のショッピング」(42.2%)などが挙げられます。また、八王子・高尾山や伊豆諸島・小笠原諸島などでは「自然を感じる」が1位になりました。

あらためて外国人旅行者にとって日本食を味わうことが重要な観光目的の一つであるとともに、都市部では「最新の日本文化に触れる」、郊外では「自然を感じる」ことが訪問先を選ぶポイントであることもうかがえます。

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満足度は95.4%と高水準、一方多言語対応は課題

訪都外国人旅行者観光客の満足度
▲[訪都の満足度]:平成31年・令和元年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査

訪都における満足度についての質問では、「大変満足」「満足」「やや満足」を合わせて95.4%に上りました。

項目別の満足度では、「おもてなし」が89.7%、「食事施設」が88.0%、「観光施設」が86.1%と、それぞれ80%以上の高水準となっています。前回の調査と比較すると、今回はすべての項目で満足度が上昇しました。

一方で、「外国語対応能力」の満足度は50.8%(前年比3.6ポイント増)と、ほかの項目に比べると低い数値となりました。今後より快適で満足度が高い旅行を提供するためには、交通機関の案内や店舗でのコミュニケーション、街中の看板などにおける多言語対応への取り組みが必須となるでしょう。

訪都外国人旅行者観光客の東京への再訪問意向

▲[東京への再訪問意向]:平成31年・令和元年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査

再訪問意向については、「必ず来たい」「来たい」「やや来たい」を合わせると94.6%となり、満足度・再訪問意向ともに高水準で前年と比較しても全体的に満足度が伸びているのは好ましい傾向といえます。

多言語対応など現時点で満足度が低い分野の改善を図れば、さらなる伸びも期待できるでしょう。

一人あたり支出額は137,403円、中国がトップ

訪都外国人旅行者が旅行中に宿泊や飲食などで支払う一人あたりの支出額(推計値)は、全国籍の平均で13万7,403円でした。前年の14万443円に比べて2.2%減少する結果となっています。

全体で最も支出額が多い費目は「土産買物費」で、全国籍の平均は6万6,717円となり、こちらは前年に比べて2.9%増加しました。

訪都中の支出額が最も高いのは中国で、一人あたり支出額は20万6,496円でした。前年の21万7,918円に比べ5.2%減少したものの高水準を維持しています。

中国以外の国・地域を比較すると、アジア圏の支出額が低く、欧米豪は高い傾向がみられます。

一人あたりの支出額が高い欧米豪からの外国人旅行者の誘致は、東京ひいては日本が進めるインバウンド推進においてやはり重要といえるでしょう。

訪都外国人旅行者が考える東京の魅力:1位は「衛生的」

訪都外国人旅行者が考える東京の魅力
▲[訪都外国人旅行者が考える東京の魅力] : 平成31年・令和元年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査

訪都外国人旅行者が考える東京の魅力として、「衛生的」(60.6%)が最も多く、次いで「人が親切」(55.9%)、「治安がよい」(51.0%)などが選ばれました。

飲食や文化・芸術、施設や設備の充実などさまざまな項目がある中、衛生面が1位に選ばれたのはそれだけほかの国・地域と比較しても街が清潔であるからだといえるでしょう。

一方で、観光地としての東京において重要と考えられる項目、「ナイトライフ観光が魅力的である」「都市として多様な魅力がある」「魅力的な繁華街が多い」などは他項目と比較しても低い数値となりました。

今回の調査は複数回答が可能であったことからも、これらの項目はほかの国・地域に劣っていると考えられます。

今後新たな訪都客の集客や再訪都を促すためには、これらの魅力をより強化していくことが必要となるでしょう。

アフターコロナに向けた長期的な課題が浮き彫りに

今回の調査結果からは、訪都外国人旅行者全体に占める初訪問の割合は全国と比較しても大きいことがわかりました。さらに、東京での観光に比較的満足感を得て再訪都を望む割合も高いという結果が見受けられ、今後の新規顧客・リピーター顧客の獲得に期待が持てます。

しかし、長期的な課題も何点か浮き彫りになりました。

FITでの訪都外国人旅行者が多いことから、ほかではできないレアな動物とのふれあいやレジャーなどの体験、日本食の見学・体験ツアーなど、コト消費拡大に合わせた個々のニーズに応えるコンテンツの提供が求められています。

さらに満足度を向上させるためには、多言語対応への取り組みが重要です。そのほかにも、ほかの都市に劣らない、日本の古き良き伝統と先進的な技術を融合したナイトツアーや深夜まで営業する店舗の増大など、「東京ならではの魅力」の創出も必要といえます。

新型コロナウイルスの世界的なパンデミックによって、ウィズコロナ・アフターコロナでは衛生管理や感染対策の徹底などによる「安心・安全」な旅行が求められています。今後のインバウンド集客では、東京そして日本の「衛生的」というイメージが、ターゲットへの訴求効果を発揮していくことが期待できます。

新型コロナウイルスの感染が拡大する現在実行に移すことが難しい取り組みについては、感染症収束後に向けて企画や準備だけでも進めておくとよいでしょう。

国内での旅行需要の回復によって「安心・安全」な日本のイメージを発信できれば、アジア圏そして世界での訪日需要の回復が期待できます。今回の調査結果で示された通り、一人あたりの支出額が多い欧米豪の訪都客の誘致も視野に、安心や安全を確保するための取り組みについて、積極的に情報公開していく姿勢も必要です。

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<参照>

観光庁訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書

東京都:平成31年・令和元年 国・地域別外国人旅行者行動特性調査結果

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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