中国からの「監視逃れ」か−香港からFacebook、Google、Twitterが相次いで利用者情報提供を辞めた理由

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6月30日に香港国家安全維持法案が成立して以来、FacebookやGoogle、Twitterなどの大手IT企業が相次いで香港当局への利用者情報の提供を一時中止すると発表しました。短編動画共有アプリ「TikTok」も、香港市場からの撤退を表明しています。

今回は、こうした動きの経緯をふまえ、香港のインターネット事情やインバウンド対策への影響について解説します。

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「香港国家安全維持法案」成立、言論統制の強化に一歩近づく

「香港国家安全維持法案」が2020年6月30日に成立したことにより、香港ではこれまでの高度な自治が失われ、一国両制度の形骸化が懸念されています。具体的には、香港における反政府活動や暴力行動、外国勢力との結託などは国家の安全を揺るがす犯罪とされ、刑事責任が問われるようになりました。

7月6日には、香港政府が「国家安全維持委員会」の初会合を実施し、捜査令状なしの家宅捜索を認めるといった捜査手続きの詳細を決めました。

さらにネット上の情報が国家の安全に危害を加えると判断した場合は、サービス運営企業に対し、該当ユーザーのアクセス制限やアカウント削除を要請できるようになります。

【中国】香港国家安全法 可決「一国二制度」が崩壊した日…周庭氏は「デモシスト」脱退、7/1にまたデモか

本日6月30日、中国の全国人民代表大会(全人代の常務委員会)は、「香港国家安全維持法案」を全会一致で可決したと複数のメディアによって報じられました。明日7月1日は香港の主権をイギリスから中国へ返還された23年目の記念日ですが、それに合わせて香港国家安全維持法案の実施は、香港に高度な自治を認める「一国二制度」を完全に形骸化させる恐れがあります。目次中国全人代「香港国家安全法」全会一致で可決法案可決に反発、また大規模デモか香港の「一国二制度」とは「学民の女神」周庭氏も団体脱退へ中国全人代「香港...

各種ネットサービスが香港で監視を逃れる動き

香港国家安全維持法案の成立により、インターネットサービスに対する政府からの監視強化が進むことになりました。FacebookやGoogle、Twitter、Telegram、マイクロソフト、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズは、相次いで香港当局への利用者情報の提供を停止しました。

各大手IT企業は香港当局に利用者情報を求められてもデータを提供しない方針を示しているため、ユーザーの情報は国家権力から守られているといえるでしょう。

さらに、中国の企業「バイトダンス(字節跳動)」が運営する短編動画共有アプリ「TikTok」が、7月11日以降香港市場から撤退しています。

TikTok」は、ユーザーインターフェースは中国で利用されている「Douyin」と同じですが、異なるサービスです。中国本土ではTikTokは利用できず、海外向けのアプリとして提供されています。TikTokでは基本的に、中国国内の基準に即した「NGワード」が存在しませんが、Douyinでは存在します。

香港国家安全維持法案の成立により、当局からユーザーがTikTokに投稿した内容を検閲したり、利用者情報の開示などを求められたりする可能性が高まったことから、香港市場での展開を中止した可能性もあるでしょう。

自由「だった」になってしまうのか?香港インターネット

香港は1997年にイギリスから中国に返還された際、「香港特別行政区基本法」と「一国二制度」という独自のシステムが取り入れられました。それにより、香港では少なくとも50年にわたり、中国本土では認められていない集会や表現の自由、独立した司法、一部の民主的権利などが保護されていました。

インターネットの利用についても、香港は中国本土のネット検閲システム「グレートファイアウォール」のエリア外であるため、中国本土で禁止されているGoogleやFacebookといった国外の各種コミュニケーションツールやSNSコンテンツを自由に利用できるほか、ツール上でのNG表現もありませんでした。

しかし香港国家安全維持法案の成立により、今後は表現の自由が制限されるなど、状況が大きく変わる可能性も否定できません。TikTokの撤退は、こうした未来を予測しての動きとみることもできてしまいます。

グレートファイアウォールとは?中国のネット規制・回避方法・インバウンドでの対策についても解説

グレートファイアウォールのアクセス制限により中国ではGoogleやYouTube、LINE、Facebookをはじめとする世界各国で使用可能な検索プラットフォームやSNSの多くにアクセスができないため、旅行や出張で中国に行く際には注意が必要です。

中国で「あつ森」「プーさん」が"消される"ワケ:香港民主化運動との関係・ネット規制激化の影響、日本にも

香港では、2019年3月末より現在に至るまで民主化運動が続いています。この運動の原因となった「逃亡犯条例」は昨年10月に撤回されましたが、その過程で香港警察の激しい弾圧により多くの負傷者が生まれました。2020年5月には国家安全法の導入も決定され、中国政府による香港への介入は厳しさを増しています。一方、中国本土では民主化運動すら発起できないほどに言論が統制されており、インターネットの普及に伴い統制の程度も年々厳しくなっています。最近ではゲーム『あつまれ どうぶつの森』が自由度の高さを危険視...

香港で人気のSNS

もともと香港では、WeiboWeChatといった中国のSNSではなく、FacebookやWhatsApp、Instagramなど、中国ではアクセスを制限されているSNSやメッセージングアプリの利用が目立ちます。

今回は企業の判断で利用者情報の提出を停止しましたが、今後提出が義務となるような場合には、こうした中国国外のIT企業は香港でのサービス提供中止に出る場合も考えられます。

香港で人気のSNSアプリ(2019年)

Facebook 85%
YouTube 83%
WhatsApp 82%
Instagram 57%
WeChat 53%

参照:Digital 2019 Hong Kong

香港のSNS利用状況

近年SNSを利用して訪日観光客を集客するプロモーション方法が注目されています。海外に向けてSNSで発信する際に気をつけるべきことはターゲットとする国のSNS事情です。もし発信に利用しているSNSがターゲットとする国で人気がなかった場合、集客効果は期待できません。そこでこの記事では「香港」におけるSNS事情や利用状況、実際にSNSを利用してプロモーションを行っている事例について紹介します。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客...

香港は中国本土との一体化?インバウンド対策に影響か

香港国家安全法により、自由なインターネットの利用といった、これまでの香港の特別な位置付けがなくなり、中国本土との一体化がさらに進む可能性があります。

現時点では、香港でユーザーはFacebookやTwitterなどを利用できます。しかし、大手IT企業の香港政府への個人情報要請の停止や、一部の報道によると政府の監視を恐れて自発的にアカウントを閉鎖するFacebookユーザーも多く見られたことから、今後はFacebookなどの一部SNSが香港で使えなくなる可能性も否定できません。

今後の香港市場向けのSNSインバウンドマーケティングでは、InstagramTikTokなど香港で人気のあった海外SNSが活用できなくなる可能性も考慮する必要があります。

香港で利用可能なインターネットサービスについて動向を把握し、ターゲットとする層にどのツールでどのようなメッセージを発信するのかに活かしていくべきでしょう。

「香港人観光客」は消えるのか–国安法でビザ免除剥奪のリスク・国内観光地への影響は

香港では、2019年3月から「逃亡犯条例」の撤回をはじめとする民主化を求める市民により、集会や行進などのデモ活動が相次いでいます。これに対し、警察は催涙弾、放水、更には銃撃などの暴力的行為で弾圧に当たっており、13名が死亡、2,600名以上が負傷、8,000名以上が逮捕されるなど、中国政府と香港警察による過激な行為は世界各国からの非難を浴びました。新型コロナウイルスの流行に伴い、市民と警察の衝突も僅かに落ち着きを見せた2020年6月30日、中国は遂に最終手段ともいえる「香港国家安全維持法」...

<参照>

NHK:「TikTok」香港から撤退へ 「香港国家安全維持法」施行影響か

Bloomberg:ネット大手が強める中国との対決姿勢、香港の将来に暗い影

YAHOO! JAPAN:ティックトック、香港からの撤退を表明 国家安全法施行で

Gigazine:中国政府が香港のソーシャルメディア投稿やアカウントを削除できるようになる法律が施行される

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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