FIT(海外個人旅行)がインバウンド対策の重要ターゲットに|傾向や対策を解説

公開日:2020年08月26日

海外個人旅行を意味する「FIT(Foreign Independent Tour)」は、インバウンド市場において大きなシェアを占める旅行形態です。

観光庁が毎年発表している「訪日外国人消費動向調査」の2019年年次報告書によると、旅行手配方法に関する項目では「団体ツアー」が 16.9%であるのに対し「個別手配」は76.6% であり、FITが主流となっていることが伺えます。

また、コト消費への比重や、SNSや口コミなどを活用した情報収集、リピーター増加による地方訪問率の向上など、昨今の訪日外国人の旅行傾向の変化とも、FITは深い関連性を持っています。

本記事では、国や地域別の旅行傾向、FITが占める割合に加え、今後も拡大が見込まれるFITに主眼を置いたインバウンド施策について解説します。


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風向きが変わるインバウンド市場で注目されるFIT

FITは日本では比較的新しい概念ですが、訪日外国人観光客の旅行手配方法において主流を占めており、近年のインバウンド市場を語る上で言及必須となっています。

本項ではFITの定義、増加の背景やインバウンド市場との関連性について解説します。

近年増加するFITとは

FITとは、「Foreign Independent Tour」の頭文字を取った言葉であり、「Free Individual Traveler」または「Free Individual Independent Traveler」とも呼ばれ、団体旅行やパッケージツアーを利用せず個人で海外旅行に行くことを指します。

日本では、1964年の海外旅行自由化に伴い海外旅行が普及していったものの、団体旅行やパッケージツアーが長年主流を占めていました。

しかしながら、不特定多数を対象にした大人数でのツアー形式ではなく、個人の目的に合わせた旅行へのニーズが次第に高まっていき、1990年代初頭の格安航空券出回りも後押しとなって、FITという新たな旅の形態が浸透していきました。

FITはインバウンド市場でも増加の一途を辿っており、観光庁が「訪日外国人消費動向調査」に基づき発表した「旅行動態の変化の状況」によると、2012年のFITの割合は60.8%に留まっていますが、2017年7-9期では75.7%と、僅か5年で15%近くも増加しています。

個人のニーズが多様化している現在、FITは今後も主流を占めると予測されており、インバウンド施策を講じる上でFITに主眼を置くことは必要不可欠といえるでしょう。

FITとコト消費増加の関連性

昨今のFIT増加に色濃く反映されている訪日外国人観光客の旅行傾向の変化は、代表的なものにコト消費への変化」「SNSや口コミを中心とした情報収集」「リピーター増加による地方への関心」が挙げられます。

訪日外国人観光客は元来、中国人観光客をはじめとした「爆買い」に代表される「モノ消費」が注目を集めていましたが、今日では自然景観鑑賞や、歴史建造物への訪問、 アクティビティ体験等といったコト消費にシフトしてきています。

観光庁の発表によると、現地ツアーやテーマパーク、スポーツ観戦や美術館などへの娯楽サービス費購入率は、2012年には 21.5%に留まっていたものの、2016年には31.6%に上昇しており、コト消費拡大の傾向が表れています。

2019年の訪日外国人一般客1人当たり旅行支出15.9 万円のうち、買い物代は5.3万円、娯楽サービス費は0.6万円と未だ買い物代が多くの割合を占めているものの、パッケージツアーよりも自由時間が多くコト消費と親和性の高いFITという旅行形態は、今後のコト消費増加を後押しするといえるでしょう。

FITの旅行傾向

また、観光庁が2018年8月下旬から9月下旬にかけて20カ国を対象に、20代から50代の訪日外国人男女5,045名を対象に実施したWebアンケートによると、情報収集源としては「テレビ」と「Facebook」が同率33%を占めています。

次いで「TripAdvisor」と「現地に旅行したことがある友人知人の話」が同率24%、そして「家族の話」(23%)、「Lonely Planet Japan」(21%)・「YouTube」(21%)、「現地に住んでいる (住んでいた)友人知人の話」(20%)、「Instagram」(19%)と続いており、SNSや個人間の口コミに重点を置いていることがうかがえる結果となりました。

さらに、初回訪日にて現地の交通事情へのある程度の慣れから、FITとして旅行する傾向のある訪日リピーターの増加も見逃せません。観光庁の別の統計では、訪日外国人観光客のリピーター数は2012年には528万人ですが、2016年には1,426万人と実に3倍近くの伸びを記録しています。

訪日リピーター増加に比例して地方宿泊者数も増加傾向にあり、都市部の宿泊者数は1,776万人泊(2012年)から4,186万人泊(2016年)と2.4倍の伸びに留まっている一方で、地方への宿泊者数は855万人(2012年)から2,753万人(2016年)と3.2倍に拡大しています。

初回の訪日で現地事情を把握した訪日外国人観光客が、2回目以降は都市部以外の地方へも足を伸ばしている傾向にあることがうかがえます。

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国・地域別の旅行者傾向

訪日旅行に占めるFITの割合は各国で増加傾向にありますが、欧米圏では普及率が9割ほどに上っているのに対し、アジア圏では8割に届かない国も見受けられます。

一方、団体旅行が注目を集めてきた中国においても、昨今FITの波が押し寄せており急速に普及してきています。

本項では、国や地域別の旅行手配に傾向・旅行支出について解説します。

欧米はFITの比率が高く、1人あたりの旅行支出も多い

欧米圏ではFITが広く認知されており、訪日旅行手配の手法として個別手配が選ばれる傾向にあります。

観光庁が発表した2019年訪日外国人消費動向調査によると、全訪日目的における個別手配の割合はイギリス(87.4%)、ドイツ(93.4%)、フランス(89.4%)、アメリカ(91.8%)、カナダ(88.3%)、オーストラリア(84.8%)となっており、各国で9割近い割合を占めていることがうかがえます。

一方、アジアでは団体旅行の文化が根強く残っている国や地域もあり、韓国(85.3%)、台湾(65.3%)、香港(78.9%)、タイ(71.1%)、マレーシア(82.0%)と8割程度の水準に留まっています。

また、FITのシェアに比例するように個人消費も高くなっており、同調査の一般客1人あたり旅行支出額に目を向けると、イギリス(24万1,264円)、ドイツ(20万1,483円)、フランス(23万7,420円)、アメリカ(18万9,411円)、カナダ(18万1,795円)、オーストラリア(24万7,868円)となっています。

アジア圏は、韓国(7万6,138円)、台湾(11万8,288円)、香港(15万5,951円)、タイ(13万1,457円)、マレーシア(13万3,259円)と10万円前後となっており、欧米圏の旅行支出の高さがわかります。

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急激に伸びる訪日中国人FIT

団体旅行のイメージが定着している中国ですが、昨今FITが急速に広まっています。

観光庁の発表によると、個人旅行手配の割合は28.5%(2012年)から60.0%(2017年7-9月)と、僅か5年ほどで31.5%も増加しています。

さらに2019年の訪日外国人消費動向調査によると、全目的での個人手配の割合は66.0%を占めており、FITが右肩上がりで堅調に拡大していることがうかがえます。

加えて、一人当たりの旅行支出は21万2,810円と、爆買いの落ち着きから前年比5.4%減となっているものの、欧米圏に負けず劣らず高い数字を誇っています。

今後、訪日中国人を対象としたインバウンド施策の実施により消費拡大を狙うためには、団体旅行だけでなく個人旅行にも同様に注力する必要があるといえるでしょう。

FITを獲得するために必要な対策

団体旅行やパッケージツアーと比較し、FITは個人のニーズに柔軟に対応し自由度の高い旅行が可能となる一方で、受け入れ側はWi-Fi環境等の整備や、的確な情報発信が必要となります。FIT獲得への施策について解説します。

訪日前からアプローチ可能なオンラインを活用

FITは、旅行プランを旅行者自らが自由に策定できるという利点がある一方で、航空券や宿泊施設の予約、目的地までの交通手段の手配などを全て旅行者自身で取り計らう必要があります。

そのため、旅マエフェーズでの各種手配や旅ナカフェーズでの情報収集など、FITに際してオンラインの活用は必須となっています。

利用媒体としてはスマートフォンの利用率が拡大しており、観光庁が実施した調査によると日本滞在中に役に立った旅行情報源として「スマートフォン」と回答した割合は、2012年では23.5%に留まっていますが、2017年(7-9月)には72.1% と、実に48.6%増を記録しています。

インバウンド集客を効率的な実施においては、オンラインを最大限に活用した施策が急務であり、予約の仕方や交通手段、目的地までの行き方を多言語対応で丁寧に記載しておくなどの施策が有効でしょう。

また、コロナ禍で感染対策への意識も高まっている現在、感染拡大防止策等について、旅前の情報収集で幅広く利用されているSNSなどを通じ情報発信しておくことも重要です。

加えて、一定の層への効率的なアプローチが可能となるインフルエンサーの活用も、視野に入れておいて損はないでしょう。

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旅行者の不安を解消する多言語対応

訪日外国人の旅行中の課題・受入環境整備項目の把握にあたり、観光庁は毎年空港でアンケート調査を実施しています。

2018年11月から2019年2月にかけて、成田国際空港・東京国際空港・関西国際空港・福岡空港にて4,037県を対象に実施した調査によると、困ったこととして「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない」が最多の20.6%を占める結果となりました。

同項目は2016年度の調査から3年連続でトップとなっており、言語の壁により訪日外国人観光客の多くが不安やストレスを感じていることがうかがえます。さらに、「多言語表示の少なさ・わかりにくさ(観光案内板・地図等)」も16.4%と高い割合を占めており、多言語対応を講じることは急務です。

小売店や宿泊施設、公共交通機関など、訪日外国人観光客と接点の多い場所へ多言語対応スタッフの配置や、人員配置が難しい場合は多言語音声翻訳、または言語以外にもイラストや絵文字など非言語の活用が有効です。

あるいは、スマートフォンを看板やPOPにかざすだけで多言語案内が可能になる、Google翻訳などが搭載している拡張機能の推奨も効果的です。旅行に際してスマートフォンの活用が広がっている現在、このような手法は非常に親和性が高く、効率的であると言えるでしょう。

三社祭は外国人になぜ人気?インバウンド対策事例「多言語対策」「SNS連携」「スマホアプリ」を紹介

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無料Wi-Fiの環境整備

先述の観光庁の同アンケート調査において、「施設等のスタッフとコミュニケーションがとれない」に次いで多くの割合を占めたのは「無料公衆無線LAN環境」(18.7%)です。

この割合は過去3年間で減少傾向にあるものの、現地での飲食店検索や交通手段手配、確認作業などが発生するFITでは、無料Wi-Fi環境が欠かせません。

また、2013年12月に総務省が主要6か国の訪日外国人観光客へ実施した調査によると、日本の無線LAN環境への総評価は63.6%であるのに対し、自国環境への満足度について利用可能場所は59.8%、利用手続きの簡便性は75.3%という評価となっています。

訪日外国人は利用可能場所については自国と遜色ないものの、 利用手続の簡便性の面では自国にやや劣ると評価していることが伺えます。

総務省は現在、全国に3万箇所のWi-Fi整備を目指し動いていますが、事業者自身もWi-Fi設置に努めるだけでなく、無料Wi-Fiの利用可能場所や利用手続き方法について多言語で明示するなどの工夫をすることで、訪日外国人観光客の満足度を向上できるでしょう。

FITのニーズに合わせ、戦略的なリピーター客の創出がカギ

訪日外国人観光客の主流を占めるFITは、国や地域によってそのシェアに差があるものの、総じて増加傾向にあり、自由度の高い旅行スタイルへの需要が高まっていることが顕著に表れています。

また、大人数の団体旅行やパッケージツアーに比べ、家族や友人など少人数の旅行単位となるFITは、新型コロナウイルス感染拡大防止という文脈においても、今後さらに普及が広まってくことは想像に難くありません。

7月22日には日本の在留資格を持つ外国人の再入国が可能となる方針も発表され、外国人の入国緩和策の第一歩として、今後の訪日外国人受け入れへにも期待が高まっています。

しかしながら、コロナ禍で対応が迫られているオンラインの活用や多言語対応、Wi-Fi環境の整備などの課題も残っており、需要回復を見据えて、早期に対策を講じる必要があります。

今後のインバウンド消費の拡大は、FITの需要を的確に捉えて満足度の向上に努め、リピーターを獲得できるかが鍵を握っているといえるでしょう。

<参照>

観光庁訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書

観光庁旅行動態の変化の状況

観光庁「体験型観光コンテンツ市場の概観」 世界のコト消費と海外旅行者の意識・実態の調査結果

日本政府観光局:訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて -調査結果のまとめと考察-

観光庁訪日外国人が旅行中に困ったこと、受入環境整備の課題が明らかになりました ~受入環境について訪日外国人旅行者にアンケート調査を実施~

総務省:Wi-Fi整備についての現状と課題

総務省:2020年に向け全国約3万箇所の Wi-Fi整備を目指して


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!