【ポストコロナのインバウンド戦略】With/Afterコロナ時代に注目のアドベンチャーツーリズム:日本アドベンチャーツーリズム協議会理事 山下 真輝

公開日:2020年10月02日

『ポストコロナのインバウンド戦略』では、コロナ禍において、業界の「中の人」に聞くサバイバル術として最前線に立つ方々に特別寄稿いただきます。

今回の寄稿者は、日本アドベンチャーツーリズム協議会理事を勤める山下 真輝氏です。


世界で注目されるアドベンチャーツーリズム(AT)とは

早期回復、さらなる拡大の期待がかかるAT市場

Adventure Travel Trade Association(以下、ATTA)が定めるATの定義は、「自然とのふれあい/Interaction with Nature」「文化交流/Cultural Exchange」「フィジカルなアクティビティ/Physical Activities」の3つの要素のうち2つ以上が主目的である旅行形態としています。

今回のパンデミックは、世界中の旅行者が、「旅行の価値観」を大きく変えることになったといえます。

その中で象徴的なのが、「少人数」、「都市から離れた場所への旅行」、「自然の中を楽しむ旅行」という志向の高まりであり、ATが世界的にツーリズム市場を牽引するとことが期待されています。

ATTAの試算によると、ATの市場規模は2012年で2,630億米ドル(約27兆8千円)から2017年には6,830億米ドル(約72兆2千億円)、平均成長率21%で拡大しています。

今後afterコロナにおいても、早期回復、さらなる拡大が期待されている市場といえます。

▲[アドベンチャートラベルの3要素の関係性と目的]:ATTAの考え方をもとにJTB総合研究所作成
▲[アドベンチャートラベルの3要素の関係性と目的]:ATTAの考え方をもとにJTB総合研究所作成

単なるアウトドア体験ではない本物のATとは

以下はAT旅行商品に盛り込まれている体験事例ですが、慌ただしい名所旧跡旅行ではなく、1~2週間かけてじっくりその土地を歩き、自然体験や食文化体験を通じて、五感で地域ストーリーを感じる旅行スタイルです。

単なるアウトドア体験だけではなく、旅行先の豊かな自然資源や歴史文化を体感し、その土地の生活者との交流を通じて、様々なことを学ぶ旅であるともいえます。

▲ATTA資料をもとにJTB総合研究所にて一部加筆
▲ATTA資料をもとにJTB総合研究所にて一部加筆

ATは単に車で効率よく移動するものではありません。

人間が自らの力を使って移動・体験するハイキング、トレッキング、サイクリング、ラフティング、カヤッキングなどは、重要な要素となります。

その土地の自然の豊かさを感じながら移動したり、自然の生態系や歴史文化を自らが体験したりするための手段でもあるのです。

アクティビティは、特にスキルがなくても参加できる「ソフト・アドベンチャー」、かなりのスキルがなければ参加できない「ハード・アドベンチャー」、そして特定の目的のための「専門的アドベンチャー」に分けることができます。

またサイクリングやカヤッキングなどは場所等によっては、ソフトにもハードにもなり得るアクティビティといえます。

▲アドベンチャーツーリズムの分類
▲アドベンチャーツーリズムの分類

ATの考え方の中で大事な点は、地域の中小事業者と地域住民に、経済・社会的な観点でのサスティナブルな効果を残せることや、同時にその効果が地域の自然や文化を保護・活性化することに貢献していることを重要な要素として位置づけていることです。

我が国が観光立国の推進にむけてATに取り組む意義はいろいろとありますが、以下の3点において重要だと考えています。

1つ目は、「地方にこそ要素が揃う」という点、2つ目は「資源活用と持続可能性の両立を目指す」という点、そして3つ目は、「ローカル経済を重視していく」という点です。

新型コロナウィルス発生前の日本におけるツーリズムの実態は、一部の地域に外国人旅行者が集中し、オーバーツーリズムが社会課題となっていました。

これからの観光振興は、自然・文化資源、そして地域を大事にしながらも、観光を通じて地域資源を経済価値に結び付けることが重要で、観光客数の「量」の観光から自然・文化の保全や地域の発展などの「質」の観光への転換を目指す必要があり、ATが目指す持続可能なデスティネーションのあり方は、まさにわが国のこれから目指す観光立国の姿と言えます。

次世代の旅行者が求めるアドベンチャーツーリズム、日本での可能性と期待

欧米中心に発展してきた“ADVENTURE TRAVEL”とは、単なる“冒険旅行”という意味ではないと考えています。

日本国内においては、アウトドア・アクティビティを楽しむ旅行というイメージを持たれていますが、ここでの“ADVENTURE”は、「冒険する」ということではなく、「自然や地域の文化に向き合い、自分の人生を豊かにする上質な時間を過ごす」という意味合いに近いと言えるのではないかと考えています。

ATTAは、ATを嗜好する旅行者、いわゆる「アドベンチャー・トラベラー」が旅行を通じて求める体験価値として、以下の5つのキーワードを示しています。

1. The Novel and Unique

 他の場所で味わえない、その場所ならではの体験であると感じることができるか?

2. Transformation

 自己が成長・変化していくと感じることができるか?

3. Challenge

 身体的・心理的にさまざまな意味合いでの挑戦ができるか?

4. Wellness

 旅行前より心身ともに健康になったと感じられるか?

5. Impact

 文化や自然に対する悪影響を最低限に抑えられていると感じられるか?

▲ATTA資料より抜粋
▲ATTA資料より抜粋

ATTAの調査によりますと、アドベンチャー・トラベラーが旅行に求めるモチベーションは、「Transformation(自己変革)」が最も高く、その次に「Expanded Worldview(視野を広げる)」、「Learning(学ぶ)」が続く。AT旅行者は、旅行を通じて視野を広げ、様々なことを学びながら「自己変革」を求めていることが分かります。

▲ATTA資料より抜粋
▲ATTA資料より抜粋

一般的に欧米におけるAT旅行者は、進歩的かつオープンマインドで、健康や自然への意識が高い傾向にあります。

高学歴かつ所得水準の高い層である、いわゆる富裕層のカテゴリーであるといえます。

しかしながら高級品や贅沢品を好む「クラシック・ラグジュアリー」層ではなく、新しいことへの挑戦や自分にとっての意義を重視し、贅沢より本物の体験を求める、いわゆる「モダン・ラグジュアリー」層といえます。

この層は20~30代のミレニアルズ、まさにデジタルネイティブのZ世代に多くみられる傾向ではないかと思います。

ATTAは、米国内において、AT市場が米国旅行市場全体より早期に回復するとの見方を示すとともに、特にZ世代が、旅行市場の再構築にむけて重要であるとの見方を示しています。

今後の日本国内においても同様にZ世代が、ツーリズム産業復活の鍵であり、With/Afterコロナの旅行スタイルとして、ATは国内旅行においても定着するのではないでしょうか。

▲ATTA資料をもとにJTB総合研究所が作成
▲ATTA資料をもとにJTB総合研究所が作成

南北に長く多様な自然資源と独自の文化を持つ日本は、世界のAT市場から高い注目を浴びています。日本政府観光局(JNTO)は、“JAPAN ADVENTURE”のホームページを開設し、世界的に成長するAT市場を取り込むべく情報発信を開始しました。

また今年7月に政府が発表した「観光ビジョン実現プログラム2020」では、「地域の自然、気候、文化の魅力を生かした体験型アクティビティの充実」の施策として「アドベンチャーツーリズムの推進」が掲げられています。

さらには環境省でも国立公園満喫プロジェクトの施策の柱としてATを掲げており、国の政策としても推進され始めています。

日本におけるATの可能性を世界に発信することは、国内市場の活性化においても大きな意味を持っていると考えています。

改めて日本が持つ自然や文化資源の価値を再認識することにつながり、さらには国内旅行の付加価値向上による旅行市場の活性化や地域での観光消費額拡大にむけて、AT推進の意義は大きいのではないでしょうか。

▲JNTOホームページ
▲JNTOホームページ

(一社)日本アドベンチャーツーリズム協議会(JATO)について

昨年7月、ATTAをアドバイザーに、世界水準のアドベンチャーツーリズムを日本に広げるべく産官学連携で(一社)日本アドベンチャーツーリズム協議会(英文名:Japan Adventure Tourism Organization、略称JATO)を設立しました。

主な活動内容は、日本国内でのATの認知向上と普及、高付加価値・高品質・高額なAT商品の企画と流通支援、人材育成、主要市場である欧米を中心としたAT旅行者の日本誘致などです。

昨年は都内はじめ全国各地でシンポジウムや講演会を開催しました。

北海道、長野県、九州、沖縄県におけるAT推進にむけた戦略策定や人材育成等を支援してきました。

またATTAが主催するATの世界大会「Adventure Travel World Summit(ATWS) 」の誘致を支援し、2021年は北海道開催が内定しています。

現在は、ATWS開催時に北海道を中心に全国数か所で実施されるATTA関係者が参加する視察ツアーの企画や受入体制づくり、ガイド育成等を支援し、受入地域と連携して、世界中のAT専門家を受入れる準備を進めています。

JATOのホームページでは、国内外のATのキーパーソンのインタビュー、AT人材育成のための教材動画の配信、ATTAが発信する世界のAT関連情報等の紹介等を行っています。

JATO の活動を通じて、日本におけるAT推進をさらに加速させ、国内の自治体、DMO、事業者等とATネットワークを形成し、ATを通じた地域観光の発展に貢献していきたいと考えています。

▲2019年10月23日に都内で開催したアドベンチャーツーリズム・セミナーの様子
▲2019年10月23日に都内で開催したアドベンチャーツーリズム・セミナーの様子

▲日本アドベンチャーツーリズム協議会ホームページ
▲(一社)日本アドベンチャーツーリズム協議会ホームページ

ウェビナー開催情報

(一社)日本アドベンチャーツーリズム協議会(JATO)主催 アドベンチャーツーリズム・オンライン・シンポジウム2020

<開催概要>

  1. 日  時 10月13日(火)15:00~17:30
  2. 場  所 Zoomウェビナー
  3. 募集人員 500名
  4. 参加料  無料
  5. 予約方法 Peatixにて事前予約    
  6. 内容

(1)開会あいさつ:大西雅之(JATO代表理事)
阿寒アドベンチャーツーリズム 代表取締役社長

(2)日本におけるATの可能性・JATOについて:山下真輝(JATO理事)
JTB総合研究所 主席研究員 交流戦略部長

(3)観光ビジョン実現プログラム2020について:観光庁様(※調整中)

(4)日本の旅行市場におけるATへの期待:森下晶美(JATO理事)
東洋大学国際観光学部国際観光学科現代社会総合研究所教授

(5)先進事例発表(阿寒湖におけるATツアー事例紹介):高田健右
日本アドベンチャーツーリズム協議会(JATO)事務局
Adventure Travel Trade Association(ATTA), Ambassador

(6)パネルディスカッション
(テーマ:with/afterコロナにおけるATの可能性について)
 〇モデレーター:山下真輝(JATO理事)
 〇パネラー:
 ・芹澤 健一(JATO理事)
  アルパインツアーサービス㈱代表取締役社長
 ・野池 明登(JATO理事)
 (一社)長野県観光機構 代表理事専務理事
 ・高橋 秀次(JATO理事)
  日本航空㈱総合政策センター 地域活性化推進部部長
 ・菊地 敏孝 氏
  株式会社北海道宝島旅行社 観光地域づくり事業部マネージャー

著者プロフィール

山下 真輝

株式会社JTB総合研究所
交流戦略部部長 主席研究員

一般社団法人日本アドベンチャーツーリズム協議会 理事

1993年(株)JTB入社、2008年2月にJTB九州本社地域活性化事業推進室室長、2010年より旅行マーケティング戦略部にて観光を基軸にした地域活性化事業に関わる。

2017年にJTB本社日本版DMOサポート室長として全国各地のDMO形成に関わり、2018年4月より現職。経済産業省、観光庁、スポーツ庁における観光立国に関わる各種委員会に参画し、且つ全国自治体と連携し、観光による地域活性化事業のサポート、6次産業化、着地型旅行推進、農山村漁村活性化、観光人材育成等に幅広く携わっている。

(一社)日本スポーツツーリズム推進機構セミナー委員、NPO法人越後妻有里山協働機構理事、(一社)日本食文化観光推進機構常務理事、東京都まちづくりアドバイザー、内閣官房地域活性化伝道師等も務める。

緊急企画『ポストコロナのインバウンド戦略』寄稿募集

訪日ラボでは、現在のコロナ禍をどうやって乗り越えていくべきなのか?ポストコロナをどのようにとらえ、今対策をしていくべきなのかなどを、インバウンド業界の「中の人」に寄稿いただく特別企画を実施しております。本企画において寄稿を募集しておりますので、ぜひご応募ください。

ご応募の際には、まずは問い合わせフォーム( https://honichi.com/contact/ )より、

1.お名前
2.所属・役職
3.寄稿したい記事内容の草案(タイトルやどんな内容になりそうかが見えれば問題ございません)

をご連絡くださいませ。ご連絡の際には完成した原稿は必要ございませんので、まずはお気軽にご相談ください。

なお、ご応募頂いたすべての方の掲載を保証するものではございませんのでご了承ください。ご応募受付の際には、お問い合わせの返信を持ってお知らせいたします。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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