訪日外国人のコト消費が注目されてからもうしばらく経ちますが、その勢いは衰えていません。
今回この記事では、そんなコト消費の中でもスポーツツーリズム、特にスキーに的を絞り、プライベートスキーレッスンのマーケットについて紹介します。
主に北海道、長野県、新潟県などで特にニーズが高いそのプライベートレッスンですが、実際にプライベートレッスンの指導をされている方に実際に取材した情報も紹介します。
新型コロナウイルスの影響で今季のウインターシーズンのインバウンド需要を見込むことは厳しい状況は続いていますが、日本のハイクオリティな雪質が消えない限りスノーツーリズムのマーケットは長期的に成長する市場といえるでしょう。その根拠についても、中国政府のスキー人口増加政策などと併せて紹介します。
じわり「ニセコ離れ」外資急増でホテル高騰、雪求む訪日客は本州へ...スノーツーリズムに見えてきた課題とこれから
新型コロナウイルスの影響で来年に東京オリンピックの開催が控えている日本では、スポーツツーリズムへの注目度が益々増しています。日本の行政機関であるスポーツ庁も、目標としてスポーツ市場の規模を2025年までに15兆円まで拡大させることを掲げました。そのスポーツ産業の中でも特に、旅行と結びつけたスポーツツーリズムは、観光業をはじめとしたその他の産業との相乗効果も強く、インバウンド需要創出への期待も高まっています。この記事では、そんなスポーツツーリズムの中でも降雪地帯におけるスノーツーリズムに焦点...
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訪日外国人向けプライベートスキーレッスン、4時間10万円〜も
日本の中で、特に外国人に人気のスノーリゾートと言えば、北海道のニセコエリアや長野県の白馬エリアなどがあります。
「JAPAN(ジャパン)」と、良質の「POWDER SNOW(パウダースノー」を併せて「JAPOW(ジャパウ)」という造語まで作られましたが、まさにこの良質の「JAPOW」を体験できるのがニセコや白馬です。
特にニセコは、インバウンドにおけるスノーツーリズム最先端地域と言っていいほど訪日外国人が集まるエリアとなっています。住み着いてしまったり、気に入って毎年長期間ニセコに通う外国人富裕層も非常に多いのが特徴です。
そんなニセコエリアでは、プライベートスキーレッスンと呼ばれる、マンツーマンもしくは一家族にひとりのスキーインストラクターがついてエリアを案内したりスキーを教えるというレッスン(ガイド)プログラムがあります。
個人間でのやり取りや友人の紹介、レッスンスクール事業として営む業者がいたり、その形態は様々です。
レッスン料金に関して、ニセコエリアは特に単価が高く、午前2時間、昼休憩を挟み午後2時間の合計4時間で、スキー後の周辺飲食店案内などを含めると最低10万円〜という価格設定です。
通常一般的な日本人向けのスキーレッスンの相場は半日で3,000円〜4,000円、終日で5,000円〜7,000円の価格設定がほとんどであることから、日本人の感覚からするとびっくりしてしまうかもしれません。
しかし、実は海外のスノーリゾートの事例と比較すると、そこまで驚くほどの価格設定ではないことがわかります。
例えば、カナダのスノーリゾートとして有名なウィスラーエリアのスキー場のwebサイトで、大人向けのプライベートスキーレッスンの料金は、999カナダドル=日本円で約8万円です。
このように、ニセコエリアの4時間10万円〜というのは、グローバルな目線で見ると、決して高すぎるものではないことが分かります。
また、レッスンと言っても実際には家族で訪れているグループの子どものベビーシッターのような役割として引き受けることもあるそうで、本格的にスキーを教える必要もない場合も多いようです。
しかしここまでの高単価はニセコエリアでしか見られず、長野県の白馬エリアにおける外国人向けスキーレッスンは、4時間で3万円〜というのが相場のようです。
これは、ニセコと白馬との物価の違いと、レッスンやガイドを受ける訪日外国人の国籍の違いに起因すると考えられます。ニセコでは土地・物価の高騰が顕著であり、スキー場エリアはラーメンが一杯2,000円以上で提供されています。
また、ニセコエリアは欧米豪などの訪日旅行における消費金額の高い市場からのスキーヤーが多いために、このような価格になっているとも考えられます。
日豪「隔離なし渡航」協議中 押さえるべきオーストラリア市場の特徴と最新トレンド
2020年10月15日、オーストラリアのスコット・モリソン首相は日本、韓国、シンガポールの3か国の首脳と「隔離を伴わない渡航」についての議論を進めていることを明らかにしました。もし協議が合意すれば、インバウンド回復が遅いと予想される欧米豪市場のうち、訪日オーストラリア人観光客の回復が一足先に回復するでしょう。そこで、今回の記事はこれまでの訪日オーストラリア人観光客の特徴をおさらいし、それに合わせてコロナ禍におけるオーストラリア人の最新国内旅行動向や訪日意欲についても紹介します。インバウンド...
長野県もオーストラリアからの訪日客を筆頭に、欧米豪市場からの訪日客が徐々に増加していますが、現状は台湾、中国、香港といった東アジアからのスキーヤーの割合の方が高く、ニセコほど物価の高騰は進んでいません。それでも、4時間で3万円〜というのは、日本人からするとかなり高い報酬だといえます。
外国人だらけのニセコで起こる問題、インバウンド誘致はバランスと対策がカギ
北海道の「蘭越町」「ニセコ町」「倶知安町」の3町で構成されるニセコ観光圏は、2000年代に入ってから世界的に認知されるスキーリゾート「Niseko」へと飛躍的な進化を遂げました。 訪日外国人の多さに対応するため、今では外国人観光客をもてなすのは日本人ではなくニセコ観光圏で働く外国人が中心となり、日本人の姿を見かける方が珍しいほどです。 インバウンド誘致に成功したニセコ観光圏ですが、一方では外国人が増えすぎたことによる様々な問題が出てきています。 今回の記事では、北海道ニセコエリアの...
中国政府のスキー人口増加政策
2022年の冬季五輪は、中国・北京での開催が予定されています。それに伴い、中国習近平国家主席は政府主導で中国国内のスキー・スノーボード人口を3億人まで増やすことを目標に掲げました。そのため中国では急ピッチでスキー場の建設が進んでいます。
その他にも施設の充足、大会の増加、組織組成、産業の発展、国民への普及なども、中国のウインタースポーツの普及計画として政府の政策に盛り込まれています。
そういった動きもあり、中国国内ではスキー人口が急増しています。
訪日中国人がスキー場にあつまる理由とは|国内で高まるウィンタースポーツ熱/コト消費に応えるスキー場づくり
中国ではここ数年でウインタースポーツの人気が急激に高まっています。かつて中国人観光客といえば、「爆買い」という言葉に代表されるような日本の家電や宝飾品、化粧品を大量に購入する姿がよく見受けられましたが、近年ではウインタースポーツが楽しめる日本のスキー場に多くの中国人観光客が見られるようになりました。本記事ではなぜ中国人はスキーをはじめとしたウインタースポーツに魅力を感じているのか、また、中国人観光客から人気があるスキー場ではどのような対策を行っているかについて紹介します。インバウンド対策に...
雪質の良さを求めて日本へ
しかし、実際の中国国内のスキー場は場所によってはリフト券代が日本や欧米諸国よりも高額であることもあり、中国国内のスキーはまだまだ富裕層を中心にしか普及していないのが現状です。
例えば、FULONG SNOW PARKという北京から車で4時間ほど北上したスキー場ですと、リフト1日券が平日で500元(約9,000円)、休日で600元(約10,000円)ほどします。
また、中国の気象条件では過去に積雪50cm以上を記録した地域は非常に少なく、黒龍江省と吉林省の一部のみとなっています。そのような環境から、中国は主に人工雪で建設されているスキー場が大半であり、雪質は日本と比べると劣るようです。
また、現場でスキーの指導を行っているインストラクターから直接聞いた情報によると、中国ではスキーインストラクターが圧倒的に不足しているとのことです。実際に中国から日本のインストラクターに、「ワンシーズン丸々中国のスキー場でスキー指導をして欲しい」というリクエストがきているとのことです。それもかなりの高報酬だといいます。
こうした背景もあり、良質の雪である「JAPOW」とスキーレッスンを求めて、中国人富裕層は日本にスキーをしに訪日するということです。
「富裕層向け」プライベートレッスンの様子は
実際に、来日した中国人富裕層の子供にスキーレッスンを行ったインストラクターの話を聞いたところ、やはり午前午後2時間ずつ、トータル4時間で3万円の報酬を受け取ったそうです。
休憩時間であるランチも子供と一緒にとったそうですが、「ランチ代は僕が奢るよ」と言い、ポケットからくしゃくしゃの1万円札を出して本来レッスン費用に含まれていないインストラクター分のランチ代も出してくれたそうです。
その中国人の子供は英語もかなり話せたそうで、中国でエリート教育を受けていることが見て取れます。
また、現場で実際にレッスンを行っているインストラクターによれば、中国人富裕層が日本でスキーレッスンを受ける理由はレジャー目的はもちろん、雪に恵まれた日本で子供にスキーの英才教育をさせたいというニーズもあるようです。冬季北京オリンピックを契機に、このような需要も今後活発化するかもしれません。
プライベートスキーレッスンの注意点
プライベートスキーレッスンには注意点もあります。それは、「資格」と「保険」です。
事業としてスキーレッスンを行う場合は、この二点は特に重要な確認事項となってきます。
スキー学校でスキーを指導するためには、指導員資格が必須
スキーレッスンのインストラクターになるには、何をどこまでやるかによって資格(ライセンス)が必要です。
具体的には、SAJ公認スキー準指導員、SAJ公認スキー指導員があり、全日本スキー連盟公認のスキー学校で指導する場合は、この指導員資格が必ず必要になってきます。
資格取得は、各都道府県のスキー連盟にて可能となっています。個人間などで行う場合には問題ありませんが、事業として行う場合は指導員資格の取得は必須となります。
この指導員資格については、訪日観光における「白タク問題」が以前話題になったように、注意しておくべきポイントといえるでしょう。
「白タク」は、営業許可を持たない在日中国人が訪日中国人旅行客にサービスを提供して利益を得るという図式でした。
スキーレッスンの場合も白タク同様、無資格で外国人旅行客に対して営業する在日外国人を捕捉することは難しく、また、あくまで個人間でスキーを指導する場合にはなんら問題にはならないため、一層問題の全貌を明らかにすることは難しくなるでしょう。
しかし適切な資格を持って指導にあたることは、特に訪日客の安全を守る上で重要となります。訪日客には適切なスキーレッスンのサービスを受けるよう注意喚起をする必要があります。
インバウンド中国市場の白タク問題:専用アプリ「皇包車」摘発困難の理由とは?
訪日外国人観光客の増加に伴い、近年はインバウンドが利用する「白タク」問題が明らかになってきました。特に日本在住の中国人が訪日中国人観光客を乗せる白タクが増加しており、今後は配車アプリによる解決も1つの手段として期待されています。今回は、インバウンドの白タク問題について、訪日中国人観光客のケースに着目し、現在の課題と今後求められる対策について紹介します。目次白タクとは訪日中国人観光客はタクシーに乗りたがる?現地在住の中国人が白タク業務を提供「皇包車」アプリ白タク合法化の兆しも?正規タクシーも...
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万が一のため、お客様には保険に加入してもらう
欧米豪では比較的当たり前のことですが、彼らはスキー体験に対して万が一のことを考えてしっかり自身で保険をかけています。
しかしアジアではほとんどの人が保険をかけていません。これは日本人にも同じことがいえます。もしそんな状況で何か事故が起きた際のインストラクターの責任は当然重く、最も注意するべき点といえます。
訪日外国人向けのスキーレッスンで事業展開などを考える際には、事前にお客様にスキーレッスンを受けるには保険加入が必須であることを伝え、加入していただくのが安全です。
スキーレッスンの当日保険に加入していただくというのも手ですが、その場で「要らない」と言って断られる可能性や、無理に加入を勧めてしまってトラブルになる可能性もあります。
日本人の場合は保険の説明を当日に受けても、すんなり保険料をその場で払ってもらえることがほとんどであり、問題にはなりません。しかし、訪日外国人にも同じ接客で対応できるとはいえません。
そのため、事前に保険の案内を済ませておくことが双方にとってストレスがないといえるでしょう。
スキー保険はLINEやYahoo!、auなど多くの事業者がネット上やアプリ上で販売しており、手続きも簡単に済ませることができます。
スキーは怪我や事故も多いスポーツで、取り返しのつかない状況に陥ることがあります。特にビジネスとしての展開を考えているのなら、リスクはなるべく抑え、安全に事業を展開するべきです。
日本のスノーツーリズムの可能性
新型コロナウイルスの影響による訪日客の客足の減少は避けられませんが、日本のスノーツーリズムはまだまだ可能性に満ちたマーケットです。
しかしスキーレッスンを実施するにあたって、日本人の外国語への不安や、実際に行動に移す実行力の不足という別の課題もあるのも事実です。
他方、スキーインストラクターとして海外、特に欧米豪から冬のシーズンに出稼ぎに来る外国人も多く、外国人が外国人にビジネスを展開している現状もあります。
それ自体は決して悪いことではありませんが、日本人が日本のことを正しく伝えられ、日本にお金が落ちる仕組みをつくることを目指すべきでしょう。
日本のスノーツーリズムに関わる事業者は世界的に見ても雪質に非常に恵まれている環境を大きなチャンスと認識し、情報を発信し、グローバルな視点でビジネスを展開することが求められます。
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<参照>
・WHISTLER BLACKCOMB ウェブサイト:https://www.whistlerblackcomb.com/ski-and-snowboard-lessons/more-options/adult-pass-programs.aspx?tc_1=2
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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