コロナ禍によって国家間の往来が厳しく制限されはじめてから、1年以上が経過しました。そして現在も観光客を含む多くの往来が制限されています。
こうした状況の中、実際に日本と中国を往来するためにはどんな手続きを踏まなければならないのでしょうか。
本記事では、株式会社mov(訪日ラボ運営企業)の中国人スタッフであり、自身もまたインフルエンサーである熊(くま)が実際に経験した日中間の「越境」の様子を紹介します。
※記事内の描写は全て2021年1月〜3月当時のものです。後編はこちら。
皆さんこんにちは!株式会社mov コンサルティング事業部の熊です。コロナの厳しい状況が続く中、1月中旬頃から3月上旬までの間に一時的に中国に帰国してきました。
日本から中国に戻り、また中国から日本に帰ってくる時はどのような過程があるのか、中国での隔離生活はどんな状況なのか、そして一般の中国人にとって現代生活に欠かせないSNSプラットホームは今回の帰国でどのような役割を果たしてきたか…などについて、この記事を通して具体的なシーンを一つ一つご紹介します!
プロフィール
名前:熊
出身:中国浙江省
年齢:20代
今回の帰国空港利用:成田空港⇆杭州蕭山国際空港(浙江省)
中国での隔離ホテル場所:杭州市内
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日本から中国へ
当然ですが、中国に帰るためにはまず航空便の予約が必要です。しかし、日中間の運行中の直行便は限られており、中には直前に運行中止になる便もあります。そのため、中国大使館のWeChat公式アカウントから出ているフライト情報に従って航空便を予約することが最も確実な方法です。
また航空券を予約する際には、OTAサイトで検索しても直行便が出てこない恐れがあるため、直接航空会社のHPで予約するのがおすすめです。
そして、中国へ帰る航空便に乗るにはまず中国大使館指定の病院でPCR検査及び血清特異性IgM抗体検査というダブル検査を受け、両方の陰性証明を取得する必要もあります。
その後、WeChatミニプログラムの健康コードを申請し(外国籍の方は専用サイトにて申請するようです)、コードの有効期間内で飛行機に乗ることができます。
当時の大使館からの正式なお知らせは下記の内容です:
2020年12月1日(当日を含む)から、日本から中国に行く中国籍・外国籍の乗客は、搭乗2日前以内(検体採取日から起算)に新型コロナウィルスPCR検査陰性証明及び血清特異性IgM抗体検査(以下、抗体検査)を行い、ダブル陰性証明を取得することが必要になります。そして、ダブル陰性証明で中国駐日本大使館・総領事館に“HS”または“HDC”マークのグリーン健康コードを申請し、コードの有効期間内に飛行機に搭乗してください。
※3月から健康コードの取得は更に厳しくなったようです
私は1月18日午後に搭乗する航空便でしたので、1月16日の午前に表参道の指定病院でダブル検査(咽頭拭いPCR検査、採血)を受けました。


採血済み


健康コードが取得できれば、あとはいつもの帰国と同じような準備をすれば良いかと思います。
ただし、中国に入ったらすぐに2週間の隔離生活が始まるので、隔離期間用の荷物もいろいろと準備しなければいけません。
空港に向かうまではガラガラ。チェックインカウンターは大行列
いざ渡航日です。成田国際空港から杭州への直行便ですが、コロナ以来初めて空港に行ったのですが、想像以上に電車も空港もガラガラでした。
しかしチェックインカウンターに近づくと、出発時間より3時間も早めに到着したのに既に大行列でした。

空港のスタッフは防護服を着て、搭乗手続きなどの案内をしてくれました。
前述した健康コード以外に、もう一つ空港で取得する必要があるコードがあります。それは中国入国用の健康申告コードです。
こちらはスタッフが説明してくれますので、空港に着いてからの取得で問題ありません。
また、入国する時に効率よく入国できるよう、必ずコードをキャプチャー保存する必要があります(実際に入国する時にコードをスキャンされます)。

チェックイン手続きを終えたら、数回検温を受けたのち、やっと無事に飛行機に搭乗できました。


中国入国。14日間の隔離生活を送るホテルへ
3時間半ほどの「空中時間」を経て、ようやく杭州に到着しました。空港に着いてから隔離ホテルまではまた多くの手続きに時間がかかると覚悟していましたが、飛行機から降りてホテルに向かうバスに乗るまで、わずか1時間ほどしかかかりませんでした。
入国する際、コロナ前と比べて2ステップが加えられ、まずは一人ずつ鼻咽腔拭い液PCR検査を受け(長い綿棒で鼻の二つの穴とも入れます…)、そして「流動調査」というエリアに移動し、一人ずつ椅子に座り、スタッフから職業や帰る目的などの基本情報が聞かれます。
質問の終わる頃、先ほどのPCR検査の結果も出て、陰性であれば、通常の入国手続きに入る流れとなります。

夜20:40頃着陸の便でしたが、21:40頃には既に荷物も取っており、隔離ホテルへ向かうバスに乗りました。そこから40分ほど走り、杭州市内にある14日間の隔離生活を送るホテルへと向かいます。
「完全隔離」生活がはじまる
中国に入国してから、14日間の隔離は必須です。この隔離は「完全隔離」に近く、一人で部屋で生活し、基本的にホテルの部屋からは全く外に出られないまま、14日間を過ごすことになります。

食事は基本的にホテルが提供するところが多いですが、ホテルや地域によっては食事のデリバリーが可能なところもあります。
また、隔離生活中はほとんどの品が宅配で取り寄せられるので、日用品など必要になったものは部屋にいながらTaobaoなどのECサイトで買うことができます。
なお、食事のデリバリーと宅配物は隔離ホテルの担当スタッフが受け取り、部屋まで届けてくれます。
活動範囲は部屋しかなく、食事もどんなものになるのか全く分からないので不安でしたが、実際に隔離生活に入ると思ったよりとても快適でした。

ホテルの部屋に入る前に、注意事項や隔離関連の誓約書、費用に関する説明が書かれている紙が部屋前のテーブルに置かれていました。
また、スタッフとコミュニケーションするためのWeChatグループが作られており、グループのQRコードがテーブルに貼られています。
(チャットグループには9人いましたが、私以外の全員がホテルのスタッフでした。朝から晩まで対応してくれます。)
QRコードをスキャンし、紙とペンを持ち、部屋に入り、ドアを閉めた瞬間から、14日間の隔離生活が始まりました。

毎日朝1回と午後1回自分で体温を測り、写真を取ってチャットグループに送ります。また、毎日午前と午後スタッフが「今日の体調はいかがですか?」と聞いてきます。
食事は一日三回、スタッフが部屋の前のテーブルに置いてピンポンを鳴らしてくれるので、あとは自分で取ります。(この部屋の前のテーブルまで移動する距離が、隔離生活の最大活動範囲ともいえます)。
感動するほど美味しい食事
ホテルが提供する食事は地域それぞれの特徴があるようで、杭州で隔離する場合は一日三食のほとんどが浙江省や杭州料理であり、旬の食材料理も出てきます。
私はそもそも浙江省出身でそして一年以上帰っておらず、故郷料理も懐かしく、14日の隔離期間で食べた隔離食は感動するほど美味しかったと記憶しています。

検温や食事以外は24時間ずっと同じに部屋にいて何をするの?とみなさんは思うかもしれませんが、答えはもちろんーー仕事です!
中国に1か月半ほど帰国しましたが、日本の仕事はいつものようにしていました。
ご存知の通り、中国にはネット制限(グレートファイアウォール)があり、FacebookやYouTubeなどは普通に使えません。
ただし、帰国する前にVPNなどを事前にインストールすれば、中国に帰ってもGoogleも使えるし、オンラインミーティングへの参加も問題ありません。
隔離ホテルに着いた夜、まずホテルのネットをチェックしました。隔離生活を送っている人数が多いため、どうしてもネットのスピードが遅くなる時が出てきます。そこで、当日の夜に早速ポケットWi-Fiを注文し、次の日の午後に届きましたので、これでネット環境も快適になりました。

昼間はお仕事をして、夜は自分の隔離履歴や日常をSNSでシェアしたり、体験記vlogの編集をしたり、本を読んだりしていました。
週末は窓側でコーヒーを飲みながら日差しを浴びて、ゆっくりと休みました。

隔離生活が始まる前に空港でPCR検査を受けましたが、隔離が終わる前の13日目にもう一度PCR検査と採血抗体検査を受け、両方とも陰性でしたら、ようやく14日目に隔離生活が終了します。

コロナ禍以来、日本でも一年ほどテレワーク生活を続けていたため、中国に帰ってきてからの14日間の隔離生活も思ったよりあっという間でした。
そして一年ぶりにようやく家族と会えました。

<<後編へ続く>>
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