業種別にインバウンドの課題を考える アフターコロナで求められる対策は?

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2019年まで、日本のインバウンド市場は順調に成長を続けてきました。

2020年は新型コロナウイルスの拡大によって落ち込みを見せたものの、コロナ後に再度成長する可能性があります。しかし、日本のインバウンド市場は様々な課題を抱えていることも事実です。

今回の記事ではインバウンドの現状と共に、課題を業種別に紹介します。また、アフターコロナでのインバウンドの回復に向けて、各課題への対策法も提案します。

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「インバウンド」の用語説明


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インバウンドの現状

日本のインバウンド市場はこれまで大きく成長してきました。今は一時的に落ち込んでいるものの、コロナ収束後には再興していく事が考えられます。

しかし、訪日旅行で不便さを感じていたり、不満を抱えている外国人旅行客がいるのも事実です。この章では、インバウンドのこれまでと現状を紹介します。

インバウンドのこれまでと現状をおさらい

訪日観光客数は、政府がビジットジャパンキャンペーンを始めてから増加傾向にあったものの、新型コロナウイルス感染症拡大により2020年は激減しました。

特に、2015年に訪日客数が出国者数を上回るとほぼ同じ時期に円高が解消されたり、LCC(格安航空)の就航が増えたりなどしたため訪日客数が一気に増加し、2018年の訪日旅行者数は3,000万人を突破しました。

現在はコロナ禍により入国が困難となっていますが、政府は2020年6月時点で2030年までに6,000万人の訪日客数に到達する目標の維持を表明しています。

このように訪日観光客の少ない今の時期に、インバウンド回復を見据た課題と対応施策を考えることは、日本のインバウンド市場の今後の発展のために有効なことではないでしょうか。

訪日外客数の推移 編集部作成
▲訪日外客数の推移:編集部作成

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訪日旅行に満足しきれない外国人観光客も

インバウンドが成長し、日本を何度も訪れたことのあるリピーターも増えてくると、訪日旅行に満足しきれていない外国人観光客もいることが明らかになってきました。

コロナ流行前の訪日旅行が盛んだった時期である2019年に観光庁が発行した「訪日外国人の消費動向 2019年年次報告書」では、「訪日旅行全体の満足度」について、回答者全体の5.3%の人が訪日旅行に満足していないことがわかりました(やや満足が3.4%、不満、普通が1.9%)。

また、同調査では「大変満足」が56.4%で最多ではあるものの、「大変満足」に及ばない「満足」が38.8%もいることことから、日本のインバウンド市場には改善点や伸びしろがあると結論づけています。

具体的な課題は?業界別に紹介

ここでは実際の各業種別に、インバウンド訪日外国人客に対応する際に、どのような課題があるのかを具体的に紹介します。

1. 飲食店

日本を訪れる多くの外国人旅行者が楽しみとしていることが「食事」です。

しかし、外国語で書いたメニューを整備しているお店が少ないため、外国人がメニューを十分に理解できない場合があります。その結果、外国人旅行客は食事の注文の段階で問題を抱えることになります。

そのため、店側は、英語はもちろんいくつかの言語でメニューを表記する必要があるでしょう。また、宗教的理由などにより、口にできない食物や飲みものがある人も少なくはないことを、店側が意識しておく必要があります。

また、飲食店での決済方法も外国人観光客が困ることの一つです。

観光庁が2017年に発表した「「訪日外国人旅行者受入環境に関連するSNSへの投稿等の分析」結果」によると、「カードに支払いに関する不満では飲食店に関するものが多い。」としており、「なんで日本のファストフードは現金しか使えないのか」と不満を持つ外国人観光客の意見も紹介されています。

2. 宿泊業

日本文化そのものへの理解が乏しいために、宿泊施設ではどのように振る舞うべきかわからない外国人旅行客は少なくありません。

世界各国と日本でのマナーや習慣が異なることから、誤解やトラブルを招いてしまうリスクがあります。例えば、温泉入浴のマナーを知らずに、タオルをつけたまま入浴してしまうというケースなどがあるでしょう。

しかし、外国人にとって、ホテルでの宿泊体験はそれ自体が「日本文化体験」となります。

最近のコト消費の需要が急増していることを考えると、コンテンツの充実させることで宿泊客の満足度を一気にアップすることができるのが、宿泊業界でもあります。

また、初めての地で右も左もわからない訪日外国人にとって、アクセスが難しい宿泊施設は選択肢から外れてしまう恐れもあります。

3. 小売り業

小売業でも、多言語による表示がないことで商品の紹介文が理解できず、魅力が伝わらない事態が起こる可能性があります。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が2019年に発表した「平成30年度食によるインバウンド対応推進委託事業(お土産市場行動調査事業)」(農林水産省委託事業)の報告書によると、韓国からの訪日観光客からの声として「気になる商品があっても英語で書かれていなかったのでよくわからず、購入できなかった。」という意見がありました。

また、日本で買い物をしたときの免税の手続きにも、不満を持っている外国人観光客も少なくありません。

免税手続きは非常に煩わしく、説明が充分にできないときや免税対応判断をレジで迅速に行えない場合は、購買意欲の低下を招くことになります。

インバウンド対策で重要なのは訪日外国人の受け入れ環境

訪日観光客に対してより良い旅行を提供するには、受け入れ側の整備が必要です。これまで見てきた課題にどう対応していくべきなのか説明します。

最も重要な多言語対応

国土交通省が2018年に発表した平成「地域のモビリティ確保の知恵袋2017~訪日外国人旅行者の地方誘客を支える交通施策~」によると、外国人が「不満だったこと」に挙げたもので最も多かったのは「英語の通用度」、次に多かったのは「母国語の通用度」だったことがわかりました。

このため、日本の観光業界は多言語対応のために翻訳ツールなどの活用や語学の研修を導入する必要があります。

また、安心安全な旅行のためには、災害時の多言語対応も必要になるでしょう。

具体的には、多言語対応の災害時のマニュアル作成やナレーションでの情報発信などを準備する必要があります。

また、どの業界においても、外国語が堪能なスタッフまたは外国人スタッフの雇用を増やすことが、もっとも重要になるのではないでしょうか。


決済手段の多様化

決済方法について、各国のカード使用や電子マネーに対応できるようにするなど、キャッシュレス対応が求められるようになります。

観光庁は、2016年4月~8月に実施した調査をまとめた「訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて-調査結果のまとめと考察-」の中で、カード決済システムの導入をモノ消費拡大のために行うべき取り組みの一つとして挙げています。

例えば、一端末でさまざまな決済方法に対応できるものを企業が導入することで、現金以外の決済方法にも対応できるようになります。また、現金決済が必要な場合は、外貨両替機能を備えておくか、周辺に両替施設を設けることも考えるべきでしょう。


世界の各宗教や食習慣への配慮

また、食事面を始めとしてでの各宗教、文化に対応した配慮が必要になります。

例えば、ムスリム対応については、観光庁が作成している「ムスリムおもてなしガイドブック」を活用するのも良いでしょう。このガイドブック内では、ハラル対応、異性への接客に注意する、入浴に際して貸切風呂を用意するなどが紹介されています。

また、最近ではベジタリアンやベーガンの人も増えています。

観光庁が2017年に発表した「「訪日外国人旅行者受入環境に関連するSNSへの投稿等の分析」結果」では、中国アメリカで「ベジタリアン」に関する不満の声が多く見られました。

特に飲食店では、動物性食品の使用がないメニューを用意したり、使用・不使用の表示をするような対応をする必要がでてくるでしょう。

課題と対策を押さえてコロナ後に備える

新型コロナウルスが感染拡大する直前まで、日本のインバウンドは成長を続けてきましたが、現状では各業種でまだまだ課題があります。

訪日旅行がストップしている今こそできる整備を進め、訪日旅行が再開したときにはより多くの利益を上げる方法を考えるべきときなのではないでしょうか。

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<参照>

観光庁:「訪日外国人旅行者受入環境に関連するSNSへの投稿等の分析」結果
観光庁:免税販売手続の電子化に向けて
JNTO:訪日外国人旅行者の消費動向とニーズについて-調査結果のまとめと考察-
観光庁:ムスリム対応に関する取り組みについて
観光庁:ムスリムおもてなしガイドブック
観光庁:「訪日外国人旅行者受入環境に関連するSNSへの投稿等の分析」結果
観光庁:訪日外国人の消費動向2019年 年次報告書

【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。

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宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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