観光庁が令和4年度予算の概算要求発表、約425億で対前年度1.2倍・インバウンド部門も15%増加へ

観光庁は、8月26日に令和4年度予算の概算要求を公表しました。

令和4年度の概算要求では、予算概算要求総括(一般会計)については177億3,500万円、復興枠に8億円、国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開に240億円となっており、総額425億3,500万円となっています。

なお事項要求として新型コロナウイルス感染症への対応については、今後の感染状況や観光需要の動向等も踏まえつつ、予算編成過程で検討される方針です。

ポストコロナに向けて、インバウンドの対策も含めた積極的な予算要求となっています。

令和4年度予算の概算要求、前年比1.2倍に

新型コロナウイルス感染症の拡大以降、国内外の観光需要は大幅に減少し、観光産業は深刻な影響を受けています。

この状況の中で、観光庁は、2020年12月に観光戦略実行推進会議において決定された「感染拡大防止と観光需要回復のための政策プラン」に基づき、地域の観光資源の磨き上げ等を行うとともに、地域観光事業支援による旅行需要の喚起等に取り組んでいく方針です。

また令和4年度においては、危機に瀕する観光地・観光産業の存続に万全を期しつつ、ポストコロナを見据え、地域経済を支える観光の本格的な復興の実現を図ることが必要だとしています。

実際に一般会計を見ても、新規も含め、すべての項目で前年度の予算よりも上回っています。一般会計は、総額177億3,500万円で対前年度倍率1.20倍となりました。

特に、新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援については対前年度倍率6.97倍となっているほか、受入環境整備やインバウンドの段階的復活についても対前年度倍率1.15倍となっています。

ポストコロナに向け積極的に観光産業を盛り立てる姿勢がうかがえます。

令和4年度予算概算要求総括表
▲令和4年度予算概算要求総括表:観光庁

1. 観光産業の再生と「新たな旅のスタイル」の普及・定着 22億2,600万円

予算概算要求では、主に3項目について言及されました。

まずは、観光産業の再生と「新たな旅のスタイル」の普及・定着についてです。全体で22億2,600万円が要求され、対前年度倍率1.30倍です。

特に新たなビジネス手法の導入による宿泊業を核とした観光産業の付加価値向上支援には7億円が要求され、対前年度倍率6.97倍となっています。

具体的には、1. 複数業種等の連携による新規サービスの導入、2. 地域に波及する生産性向上、高付加価値化という2つの観点から新たなビジネス手法を導入する取組を専門家の派遣などを通じて支援するということです。

また、新型コロナ感染症の拡大が続く中でも、収益を生み出している事業者等の優良事例の発掘等が実施される予定です。

次に、「新たな旅のスタイル」促進事業も2021年度に引き続き実施され、5億2,500万円が要求されています。対前年度倍率1.04倍です。

テレワークが浸透しつつある状態の中、ワーケーションブレジャーなどを「新たな旅のスタイル」として定義づけ、国民全体の機運醸成から企業への環境整備などについて推進していく方針です。

また企業側の制度導入と地域側の受入体制整備を進めるため、モデル事業が実施される方針です。
「新たな旅のスタイル」モデル事業のイメージ
▲「新たな旅のスタイル」モデル事業のイメージ:観光庁

最後に観光産業における人材確保・育成事業については、1億2,700万円が要求されています。対前年度倍率1.07倍です。

ポストコロナ時代をリードする人材の育成・強化については、質の向上と量の確保の2面性から取り組む方針です。

予算概算要求では、ポストコロナを見据え、新たなビジネス・稼ぐモデルを創出して高付加価値化を実現し、地域の観光産業をリードする人材を育成することで質の向上を図るとしています。

また、量については宿泊業の有効求人倍率はコロナ以前で約6倍コロナ拡大以降においても約2倍を超えており、恒常的な人手不足が課題であるとも指摘しています。

ここから、地域の観光産業をリードする人材の育成・強化を行うとともに、新たな雇用体系を取り入れた人材の確保・活用を促進するとしています。

そして、通訳ガイド制度の充実・強化については、対前年度倍率1.17倍多言語対応に力を入れる方針が見受けられます。

その他にも健全な民泊サービスの普及ユニバーサルツーリズム促進事業、観光統計の整備に関して要求がなされています。

2. 国内外の旅行者を惹きつける滞在コンテンツの造成 22億1,500万円

予算概算要求の第2項目めについては、国内外の旅行者を惹きつける滞在コンテンツの造成です。全体で22億1,500万円が要求され、対前年度倍率1.42倍です。

令和4年度から新たに、ポストコロナを見据えた新たなコンテンツ形成支援事業が追加されました。4億5,000万円が要求されています。

その内容としては、ポストコロナを見据え国内外を問わず、中長期滞在者や反復継続した来訪者などの新たな市場の開拓や、新たに関心の高まっているニーズ(自然や健康、安全・安心な食、アートなど)を取り込むとしています。

これらの項目に取り組む地域に対し、誘客のテーマやターゲットの明確化、高付加価値なコンテンツ形成のための仕掛けづくりを支援する考えです。

あわせて、持続可能な観光地経営についても支援する方針が示されています。

そして2021年から引き続き、DXの推進による観光サービスの変革と観光需要の創出が行われます。10億円要求されており、対前年度倍率1.25倍と力を入れていく方針です。

旅行者の体験価値向上を図る取組として、XRや5G等のデジタル技術と、観光資源や移動手段を組み合わせた新たなコンテンツを造成する狙いです。

DXの推進による観光サービスの連携のイメージ
▲DXの推進による観光サービスの連携のイメージ:観光庁

また人流・購買等のデータの活用オンラインによる来訪意欲増進についても取り組むとしています。

そして昨年に引き続き、広域周遊観光促進のための観光地域支援事業が同額要求されています。地域一丸となってDMOを中心に総合的な支援を行なう方針です。

3. 受入環境整備やインバウンドの段階的復活 126億3,000万円

予算概算要求の第3項目めは、受入環境整備やインバウンドの段階的復活です。

全体で126億3,000万円が要求されました。これは一般会計の中の大半を占めており、コロナ禍が長引きインバウンド業界が低迷する中でも、観光庁として注力する方針が示されています。

令和4年度からの新たな取り組みとしては、持続可能な観光推進モデル事業が追加されました。4億5,000万円が要求されています。

持続可能な観光地経営のモデル形成として、「日本版持続可能なガイドライン(JSTS-D)」の実践を目指すほか、人材育成などについても支援される方針です。

そして戦略的な訪日プロモーションの実施については、一般会計の中で最も多くの予算が要求されており、84億3,000万円が投入される見込みです。

引き続き2030年訪日外国人旅行者数6,000万人、訪日外国人旅行消費額15兆円等の目標達成が目指されており、5つの項目に分けて支援が実施されます。

  1. リピーター層に向けた再訪日意欲を喚起するプロモーションの実施
  2. コロナによる需要の変化等を踏まえたプロモーションの強化
  3. 国別戦略に基づく市場別プロモーションの徹底
  4. 地域の観光コンテンツの発信強化
  5. デジタルマーケティングの強化

観光庁はワクチン接種により国際旅行の段階的な再開を見込んでおり、感染拡大以降も、自然・気候・文化・食に代表される訪日観光の魅力は変わらず、訪日需要は引き続き高いとしています。事業者側にも、デジタルを用いて今からでも実施できる積極的なプロモーションが求められると考えられます。

また訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業として、多言語対応、バリアフリー化、そして災害対策や感染症対策についての宿泊・観光施設、交通機関の取組を支援する方針が示されました。

訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業の概要:観光庁
▲訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業の概要:観光庁

その他には、教育旅行を通じた青少年の国際交流の促進MICE誘致の促進が行われる方針です。

MICE誘致については、オンラインと対面を組み合わせたハイブリッド方式を推進するほか、コロナから比較的早期に回復が見込まれるとしてインセンティブ旅行の誘致支援を実施する考えです。

国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開 240億円

最後に、一般会計とは別の特別予算として国際観光旅客税を活用したより高次元な観光施策の展開について取り上げます。

国際観光旅客税(以下観光財源)の税収を充当する予算に関しては、法律で国際観光振興施策に必要な経費に充てるものとして定められており、この方針に従って取り決めが行われます。

また、この予算配分については、事業内容を細かく指定せず、観光戦略実行推進会議によって柔軟に予算が編成される見通しです。

令和4年度の基本方針として、負担者の納得が得られること先進性が高く費用対効果が高い取り組みであること地方創生をはじめとする重要な政策課題に合致することが示されています。

昨年度より20億円程度減少しましたが、依然として予算の中で大部分を占めています。

令和4年度において実際にどのように配分されるかは未定の部分がありますが、今年度の方針からおおよその方向性が見えてくるものだと思われます。

今年度においては特に出入国において審査や搭乗手続きを顔認証システムで一元化するなどストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備が実施されました。

ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備:観光庁
▲ストレスフリーで快適に旅行できる環境の整備:観光庁

加えてデジタルマーケティングの活用DMOを通じた体験型滞在の満足度向上や、それに伴う観光資源の整備が実施されています。

令和4年度の予算は増額傾向、インバウンド分野の復活狙う

令和4年度の予算概算要求は、ポストコロナに向けた取り組みが目立つようになりました。

特にインバウンド対応やDXについての取組、既存資源の付加価値向上について多くの予算が要求される方針です。

また現在停止状態にあるGo To トラベル事業については、まずは同一都道府県内から地域観光事業支援が行われる方針です。

コロナ禍後に向けて、観光白書や予算の方針を見つつ事業の方向性を決定することが必要になると考えられます。

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<参考資料>
観光庁令和4年度予算概算要求の概要

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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