日本初の欧米型フリーウォーキングツアーを運営しております、Japan Localizedインバウンドアナリストの宮本です。
オミクロン変異型が南アフリカで発見された報道が11月26日にあり、その日の日経平均株価は747.66円安と大幅に下落致しました。
また、11月8日から水際対策が緩和され、短期ビジネス目的や留学生の入国が可能になりましたが、11月30日より全世界からの外国人新規入国が再び制限されることとなりました。これは当面続く見通しです。
前回の記事からインバウンド・旅行関連銘柄を取り巻く環境が激変致しましたが、今回の記事ではインバウンドに関連または連想できる銘柄を7つのカテゴリーに分類していきたいと思います。
前回までの連載
・大手旅行会社2社の株価推移の差から分かる、市場の期待感は(Vol.1)
・「インバウンド銘柄」の正体(Vol.2)
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インバウンド銘柄のカテゴライズ
まず銘柄を選ぶ前に、旅行をするときに必要なサービスや行動について整理し、関連・連想できる銘柄を選んでいきたいと思います。
すこし長くなりますが、順にまとめてみたいと思います。
「移動手段」に関わるインバウンド銘柄
まず、「移動」手段です。日本は島国なので、飛行機か船での入国になります。
そして日本国内での移動手段は主に鉄道やバスになると思います。そこから連想される主な上場企業は日本航空(銘柄コード:9201、JAL)や全日本空輸(銘柄コード:9202、ANA)、東海旅客鉄道(銘柄コード:9022、JR東海)などの銘柄です。もちろん他にもたくさん関連する銘柄があります。
「宿泊」に関わるインバウンド銘柄
次に「宿泊」です。滞在する宿泊施設は主にホテルや旅館、民泊になると思います。その中で上場している企業だと、椿山荘を運営する藤田観光(銘柄コード:9722)や帝国ホテル(銘柄コード:9708)、京都ホテルオークラを運営する京都ホテル(銘柄コード:9723)などが挙げられます。
また、株式ではありませんが、上場REIT(Real Estate Investment Trust)の星野リゾート・リート投資法人(銘柄コード:3287)も候補として挙げられます。
「買い物」に関わるインバウンド銘柄
そしてインバウンドを代表する「爆買い」ですが、ここは「買い物」とカテゴライズします。
そこから「小売」と「メーカー」を分けて見てみると、大丸松坂屋百貨店を運営するJ.フロント リテイリング(銘柄コード:3086)やドラッグストアのマツキヨココカラ&カンパニー(銘柄コード:3088)、家電量販店のビックカメラ(銘柄コード:3048)やラオックス(銘柄コード:8202)などがインバウンド銘柄の「小売」を代表する企業かと思います。
「メーカー」に関わるインバウンド銘柄
「メーカー」だと、爆買いを代表する化粧品のメーカーである、資生堂(銘柄コード:4911)やコーセー(銘柄コード:4922)、美顔器を製造するヤーマン(銘柄コード:6630)などがあります。
また、菓子製造・販売を手掛ける寿スピリッツ(銘柄コード:2222)は2020年3月期の売上高のうち、インバウンドが11.9%占めていた銘柄でもあります。
「食事」に関わるインバウンド銘柄
次に旅行の醍醐味である「食事」です。
インバウンド客に「食べたい日本食は?」と言う質問をした場合に、必ず帰ってくる答えが、寿司・ラーメン・神戸牛(和牛)です(筆者の独自リサーチ)。
その中で上場企業を探すと、ラーメンの一風堂を運営する力の源ホールディングス(銘柄コード:3561)や海外で積極的に出店をする回転寿司チェーンスシローを運営するフードアンドライフカンパニーズ(銘柄コード:3563、F&LC)が挙がってきます。
「レジャー」に関わるインバウンド銘柄
そして「レジャー」です。テーマパークなどのレジャーを訪日目的とするインバウンド客はとても多いです。
例えば、前回の記事でも紹介した、東京ディズニーランドとディズニシーを運営するオリエンタルランド(銘柄コード:4661)や、富士急ハイランドを有する富士急行(銘柄コード:9010)がインバウンド客の「レジャー」を担う代表銘柄だと思います。
「サービス」に関わるインバウンド銘柄
最後に「サービス」です。
サービスと言っても内容は多岐にわたりますが、インバウンドに絞って上場企業を探すと、和雑貨販売や着物レンタルを展開する和心(銘柄コード:9271)や韓国・中国・東南アジア・欧米からの旅行者へのインバウンド手配を行うハナツアージャパン(銘柄コード:6561)などが挙がってきます。
その他:インバウンドの回復は「団体旅行」から?
11月初旬の岸田総理の記者会見で、海外観光客の入国制限緩和については、「年内に団体観光の行動管理の実効性を行う。その実証の結果を踏まえたうえで、慎重に感染状況を見極めながら、緩和のタイミングを考えたい」と述べたことにより、インバウンドの回復は団体観光からだと予測されます。
そのため、海外団体旅行等を扱っている上場企業の旅行代理店である、エイチ・アイ・エス(銘柄コード:9603)やKNT-CT(銘柄コード:9726、近畿日本ツーリストクラブツーリズム)もインバウンド銘柄の中にカテゴライズしたいと思います。
カテゴリー別のインバウンド銘柄一覧
上記をまとめると、インバウンド銘柄を大きく7つのカテゴリー(「移動」、「宿泊」、「小売」、「メーカー」、「食事」、「レジャー」、「サービス」)に分類することが出来たと思います。下記の図はカテゴリー毎に分けたインバウンド銘柄一覧です。
インバウンド銘柄の株価比較
では、上記銘柄のコロナ前(2019年12月末時)を基準とした株価のパフォーマンス(2021年11月26日終値ベース)を見てみると以下のようになります。
赤い棒線は東証株価指数TOPIXのリターンになります。TOPIXは個別銘柄のパフォーマンスを測る上で参考にします。
グラフを上から見ていくと、コロナ前の株価水準かつTOPIXのリターンを上回っている銘柄は、回転寿司チェーンスシローを運営するフードアンドライフカンパニーズ、美顔器を製造するヤーマン、東京ディズニーランドと東京ディズニシーを運営するオリエンタルランドと星野リゾート・リート投資法人の4銘柄のみとなります。
そして、TOPIXのリターンを下回るがコロナ前の株価水準を上回る銘柄はマツキヨココカラ&カンパニーズ(コロナ前:マツモトキヨシ)、富士急行、KNT-CTの3銘柄のみとなります。
それ以下の銘柄は全てコロナ前の株価水準を下回っております。
グラフを見れば一目瞭然で、ほとんどのインバウンド銘柄はコロナ前の株価水準に戻っていません。
つまり、株価がコロナ禍での厳しい経営環境や業績動向を映し出していると判断してもいいと思います。ただし、インバウンド以外の要因にも業績等が左右されるので、注意が必要です。
また同業種でも1回目の投稿で説明したように、エイチ・アイ・エスとKNT-CTの業績内容の違いで株価のパフォーマンスが大きく変わってきますので、個別銘柄のファンダメンタルズを注意深く見ていく必要があります。
次回の記事では分類したカテゴリー毎に個別のインバウンド銘柄の業績や株価動向を詳しく見ていければと思います。お楽しみに。
筆者紹介:Japan Localized代表 宮本 大
立命館大学卒。SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社。外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当。
米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)。
Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事。
Japan Localized 公式サイト
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