【白馬が描く、通年型リゾートの未来図】インバウンド誘客みすえた今後の戦略は

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日本有数のスキー場が点在する長野県・白馬エリア。かつて長野オリンピックの会場になったこの場所は、雄大な北アルプスを望む絶景で長年多くの観光客を魅了してきました。

冬のイメージが強い白馬エリアですが、春、夏、秋のグリーンシーズンの観光客が近年増加していることをご存知でしょうか。

訪日ラボ編集部は、Hakuba Valleyエリア (白馬村・大町市・小谷村)を巡るプレスツアーに参加。7月13日にオープンした「ao LAKESIDE CAFE」をはじめ、グリーンシーズンならではの最新コンテンツを体験してきました。

今回は、プレスツアーを通して見えてきた白馬ならではのコンテンツ戦略と、インバウンド誘客を見据えた今後の可能性についてご紹介します。

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「雪に頼らない」集客を目指して

白馬エリアは、かつてウィンターシーズンの集客が年間売上の多くを占めていました。ところが近年の気候変動による雪不足や、スキー人口の減少といった課題により、方針を転換。「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾート」の実現を目指し、年間を通して安定した集客が見込めるコンテンツ作りを行なっています。

湖の透明度を生かした絶景カフェ

編集部がツアーでまず訪れたのは、7月13日にオープンした「ao LAKESIDE CAFE」。長野県で一番の透明度を誇る青木湖のほとりに位置し、1日を通して湖のさまざまな表情が楽しめるオールデイ・カフェです。近隣事業者と連携したアクティビティ体験や、信州産の食材を使用したメニューを提供し、地域活性化の拠点となることを目指しています。

テラス席の前は一面の湖。店内のどの座席でも、湖と山を眺められる造りに:訪日ラボ撮影
▲テラス席の前は一面の湖。店内のどの座席でも、湖と山を眺められる造りに:訪日ラボ撮影
シグネチャーメニューのバターミルクパンケーキ:訪日ラボ撮影
▲シグネチャーメニューのバターミルクパンケーキ:訪日ラボ撮影

プレスツアーでは、アクティビティの一つであるクリアカヤックを体験しました。通常のカヤックと違い透明な素材で出来ているため、水の透明度を感じられるのが特徴。他にもクリアサップやサイクリングができ、気温が高いグリーンシーズンならではのコンテンツが充実していました。

クリアカヤックからの景色:訪日ラボ撮影
▲クリアカヤックからの景色:訪日ラボ撮影

取材当時はオープンから間もないタイミングだったにもかかわらず、外国人観光客の姿も見受けられ、早くも白馬の新たな観光スポットとして注目を集めていることがわかりました。

冬季においても白馬エリアの飲食店不足解消に貢献できるよう、ナイトシャトルバスと連携し、特別なシーンで夕食を提供できる場所として機能させようとしているそうです。

グリーンシーズン集客の筆頭「白馬岩岳マウンテンリゾート」

白馬エリアのグリーンシーズン集客において、一際注目を浴びているのが「白馬岩岳マウンテンリゾート」。2018年開業の絶景カフェ&テラス「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」を皮切りに、“アルプスの少女ハイジ”になれるブランコ「ヤッホー!スウィング presented by にゃんこ大戦争」などコンテンツを毎年拡充し、7年間でグリーンシーズンの来場者数は約9倍に増加しました。

岩岳リゾートの年間来場者数推移:株式会社岩岳リゾート プレスリリースより
▲岩岳リゾートの年間来場者数推移:株式会社岩岳リゾート プレスリリースより

ツアーでは、表参道や京都に店舗を構えるティーラテとスコーンの専門店「CHAVATY HAKUBA(チャバティ白馬)」や、超大型ブランコ「白馬ジャイアントスウィング」を体験しました。

ツアー当日はあいにくの雨でしたが、室内は訪日外国人も含めて賑わいを見せており、天候に恵まれればさらに活況になることがイメージできました。

ウィンターシーズンにはナイトイベントを山頂で開催するなど、滞在中のナイトコンテンツを増やす予定とのことです。

オリジナルプレーンのスコーンと白馬限定クロモジのスコーン、クロモジチャイのセット:訪日ラボ撮影
▲オリジナルプレーンのスコーンと白馬限定クロモジのスコーン、クロモジチャイのセット:訪日ラボ撮影
「白馬ジャイアントスウィング」からの絶景:株式会社岩岳リゾート提供
▲「白馬ジャイアントスウィング」からの絶景:株式会社岩岳リゾート提供

空飛ぶレストランで特別な朝食を体験

今回宿泊したのは、正面に白馬乗鞍温泉スキー場を臨む「白馬アルプスホテル」。宿からそのまま山にアクセスでき、大自然を身近に感じられるホテルです。近年は個人旅行客をターゲットとした体験価値向上に取り組んでいます。

特に注目すべきは、日本初の空飛ぶレストラン「Breakfast in the sky」。リフトに乗って絶景を眺めながら朝食を堪能できる、白馬アルプスホテルならではのコンテンツを提供しています。

ツアーでは、実際にリフトに乗って朝食をいただきました。リフトには専用のテーブルが設置されており、安全バーを降ろした後に朝食が提供されます。リフトは通常より遅く運行しており、ゆったりと絶景を楽しみながら朝食を堪能できます。

実際のリフトでの朝食:訪日ラボ撮影
▲実際のリフトでの朝食:訪日ラボ撮影

晴れていれば絶景が見られる:株式会社白馬アルプスホテル提供
▲晴れていれば絶景が見られる:株式会社白馬アルプスホテル提供

アルプスホテルは今後も、客室や屋外プールの改装、サウナやフリーフローラウンジの新設などを行い、個人旅行客の取り込みを進めていく予定です。さらにウィンターシーズンには、アプレスキーイベント(スキーを滑った後を楽しむイベント)として、プールサイドでのDJイベントなどの企画も検討しているとのことです。

地方訪問の課題・アクセスにも対応

今回のツアーは、「アルピコ交通株式会社」の高速バスで移動しました。白馬エリアには、バス新宿から直行便の高速バスが出ており、訪日外国人が地方部に訪問する際の課題である、アクセスにも対応できています。

新宿と白馬をつなぐ高速バス:アルピコ交通株式会社提供
▲新宿と白馬をつなぐ高速バス:アルピコ交通株式会社提供

白馬エリア全体のさらなる成長を目指して

「ao LAKESIDE CAFE」のプロジェクトを手がけた、株式会社IKEIKEツガイケ代表の和田氏は、白馬エリアがグリーンシーズンの集客に成功したことについて「エリア全体で見れば、まだまだという認識」と答えます。

「岩岳には、これまで十分に活用されていなかった隠れた資産が多く存在し、外部のパートナーとの連携でそれを顕在化させることができました。今後もエリア全体でこうした資産を活用したコンテンツ整備を進めていくことで、さらに成長する可能性が大きいと考えています」

また、株式会社岩岳リゾート代表の星野氏は、「二次交通を充実させ、地域の観光地と連携した“面”での誘客を図る必要があると考えています。岩岳リゾートでも、昨年より立山黒部アルペンルートと提携し、チケットの相互割引施策を展開しています」と回答しました。

成功事例を一時的な集客に留めず、他事例に活用したり広域連携を行うことによって、地域全体の成長に結びつくと考えられます。

インバウンドにもこの勢いを拡大

コロナの危機に直面しながらも、まずは国内で「勝てるスキー場」を作ってきた白馬エリア。

インバウンドにおいても、コロナ禍から今後につながる取り組みを行ってきたと、現地のDMOである「HAKUBAVALLEY TOURISM」事務局長の中川氏は語ります。

コロナ禍では、メイン市場であるオーストラリアに対して積極的な情報発信を継続。水際対策が緩和された後は、地域の事業者と共に現地の旅行博に赴き、白馬エリアの魅力を積極的に伝えてきました。

またインバウンドが戻ってきたタイミングには、来訪者向けのアンケート(英語)を実施し、満足度を集計。その他にも政府が出すオープンデータを分析して地域に共有するなど、定期的な調査や情報収集も行ってきました。

アンケートを依頼するテーブルテント:訪日ラボ撮影
▲アンケートを依頼するテーブルテント:訪日ラボ撮影

そうした取り組みが功を奏し、白馬エリア3市村におけるグリーンシーズンのインバウンド来訪者は、コロナ禍前から増加。今後もこの勢いを伸ばしていくことが期待されます。

今後は「Hakuba Valley八景」といったコンテンツを充実させ、地域に点在する飲食店観光施設を繋ぎ、エリア全体での広域周遊を進めていく狙いです。

グリーン期 3市村インバウンド入込客数のまとめ:HAKUBAVALLEY TOURISM 令和5年度活動状況報告書より
▲グリーン期 3市村インバウンド入込客数のまとめ:HAKUBAVALLEY TOURISM 令和5年度活動状況報告書より

地元の人が「来たい」と思えるコンテンツがインバウンドにつながる

その一方、国内の地方部では、都市部に比べるとコロナ禍からの回復が遅れており、インバウンド誘客に課題が多く残っている状態です。こうした白馬エリアの事例を、どのように取り入れていくべきなのでしょうか。

この問いに対し、星野氏、和田氏はそれぞれ次のように答えています。

星野氏:日本の地方部には、インバウンドに届いていない魅力がまだまだあると考えています。岩岳リゾートでは、今年から東南アジアマレーシアインドネシアタイシンガポール)をメインにセールスを強化しています。安易な模倣に頼らず、地域の魅力や特性を活かした独自のPR戦略を展開することが重要です。

和田氏:まずは地元・国内の人が来て楽しい、と思ってもらえるリゾート地を作っていくことが肝心です。インバウンドだけに目線を当てた施策を行うのではなく、近くに住む人が繰り返し行きたいと思ってくれるコンテンツをエリア全体で整備することで、情報発信の量も格段に増えます。ローカル割引などもうまく設定しながら、古いものをリニューアルして新しい目玉を作るという、観光地として当たり前の作業を行っていくことが重要だと思います。

また、コンテンツが魅力的になれば、交通、宿泊・飲食、物販、不動産…と順に、地域の関連産業の収益は増加します。それぞれの利益率には偏りは出てきますが、ビジネスを面でとらえ、地域で得た収益をコンテンツの魅力維持・開発に回すことが重要です。

ーーーーー

今回のプレスツアーを通して、白馬エリアの魅力を肌で感じられました。なかでも特に印象に残ったのは、体験コンテンツのレベルの高さです。たとえば「ao LAKESIDE CAFE」や「CHAVATY」で食べたメニューは、「わざわざ来たからとりあえず」ではなく、飲食店として「来て良かった」と思わせるクオリティの高さ。また白馬の魅力である絶景も、リフトやブランコといった体験を通して、新鮮な感動と共に味わえました。

こういった点に、和田氏の語る「近くに住む人が行きたいと思うコンテンツを作る」という考えが表れていると感じられました。白馬エリアの今後の取り組みにも目が離せません。

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    この記事の筆者

    訪日ラボ編集部

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