京都市が国内初「インバウンド寄付金」の取り組みを開始!その目的と今後の可能性を京都市総合企画局に取材した

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京都市は2024年9月、訪日客から寄付金を募り、返礼品として電子ギフト券を発行する「Preserve Kyoto Gift(プリザーブ キョウト ギフト)」の取り組みを開始しました。このような仕組みで訪日客から寄付金を募るのは国内初* だということで、その内容をメディア各社が報道するなど注目が集まっています。

そこで訪日ラボは、「Preserve Kyoto Gift」の施策を主導する京都市総合企画局 人口戦略室 京都創生課長 河田 優也氏、同じく京都創生係長 川口 高司氏のお二人に取材しました。今回の取り組みの内容・目的、さらには今後の可能性まで深掘りします。

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* 2024年8月末時点、電子ギフト券の仕組みを提供した株式会社ギフティ調べ

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「Preserve Kyoto Gift」の概要

「Preserve Kyoto Gift(プリザーブ キョウト ギフト)」は、訪日客から京都市への寄付を受け付け、返礼品として電子ギフト券を発行する取り組みです。

eギフトプラットフォーム事業を展開する株式会社ギフティによる「Donate & Go(ドネイト アンド ゴー)」の仕組みを活用した第一弾の取り組みとなっており、同社プレスリリースによると、今後は同じく訪日客から人気を集めるニセコエリアにおいても導入を予定しているといいます。

「Preserve Kyoto Gift」の仕組みを利用して寄付すると、寄付金額の50%分にあたる電子ギフト券が即時に贈呈され、京都市内の加盟店で利用できるようになります。加盟店は、京都市内の飲食店観光施設約430店舗となっています(10月1日時点)。

「Preserve Kyoto Gift」の概要 京都市総合企画局
▲「Preserve Kyoto Gift」の概要:京都市総合企画局提供

京都市の文化・歴史・景観を守るため、訪日客にも支援を呼びかけ

—— 今回、訪日外国人から寄付金を募る取り組みが始まりましたが、どういった目的で開始されたのでしょうか。

我々は京都市総合企画局内の「京都創生課」という部署で、京都の魅力を発信する事業を担当しています。今後を考えるうえで、日本そして世界の財産でもある京都市の文化や歴史、景観を、市民だけで守っていくには限界があると考え、京都市以外の方にも支援をいただいて守っていけないかと模索してまいりました。

これまでも、たとえば国に対して「こんな制度を作ってほしい」と要望したり、国内の方々にはふるさと納税を通して支援いただいたりしてきました。その中で、訪日外国人の方々にもなんらかの形でご支援いただくことができないかと考え、寄付の呼びかけをしてみようという取り組みが始まりました。

実は3年ほど前からWebサイトにメッセージを載せたりしてきましたが、なかなかそれだけだと集まりませんでしたので、もっと寄付をしていただきやすくなるような仕組みにできないかということで、今回の取り組みに発展したんです。

京都市の文化や歴史、景観、伝統産業などを守るため、外国人に向けた支援の呼びかけを行う 京都市総合企画局
▲京都市の文化や歴史、景観、伝統産業などを守るため、外国人に向けた支援の呼びかけを行う:京都市総合企画局提供

寄付をいただくと、その半分を返礼という形で電子ギフト券で贈る仕組みになっておりまして、寄付したいという方にとってもすぐに全額寄付というのはハードルが高いでしょうから、飲食店観光施設などの京都市の魅力を楽しみながら寄付していただければと考えています。

市内の加盟店側にも認知度向上などの恩恵が。Webサイトは欧米圏を想定し英語で対応

—— 今回の寄付金の取り組みで実際に地域の事業者が受け持つことになる作業や、受けられるメリットなどがあれば教えてください。

加盟店の方々にとっては、京都市がギフト券の利用可能店舗を特設Webサイトなどで発信していきますので、そこで外国人の方々にも関心を持っていただいて、足を運んでいただくきっかけを提供できるのではと考えています。

加盟店の方々に実際の作業としてお願いするのは店頭にQRコードをおいていただく、対応している旨をアピールするステッカーを貼っていただくといったところです。実際の決済QRコード決済と同じように対応できますし、管理もインターネットで簡単にできるため大きな負担増にはならないと考えています。

我々としても、京都市内にまだまだある魅力的な飲食店観光施設などを今回の取り組みをきっかけにご紹介し、訪問いただくきっかけになればと考えています。

—— 外国人から寄付金を募る上で、多言語の案内などはどのように工夫されていく予定でしょうか。

京都市のWebサイト自体は英語中国簡体字中国繁体字で対応していますが、ギフトの特設サイトについてはまだ英語のみです。

京都市にはアジア圏の観光客の方ももちろん多くいらっしゃいますが、寄付文化の浸透の度合いから優先順位を考え、まずは英語を使われる欧米圏の方々をターゲットにできればと考えました。

今後はどこまで対応を広げられるかというところですね。京都市の文化・景観を守っていくために、より広く世界中の方に届ける工夫をしたいと考えていますが、コスト面も検討しながらになるかと思います。

いかにして「寄付するベネフィット」を感じてもらうか

—— 今回の寄付金では「半額が返ってくる」仕組みですが、もう半分の金額は寄付され、手元に戻ってこないという見方もできます。寄付を考えている訪日外国人の方々に、その点でどのようにベネフィットを感じてもらおうと考えていますか。

難しい問題です。ふるさと納税であれば税額が控除になるという大きなメリットがありますが、今回は訪日外国人の方向けの制度ですので、寄付自体はあくまで善意で、「1万円寄付したら、5,000円戻ってくる」というものになります。単純にお金のことだけを考えたら、お得じゃないのでは…と考える方もいらっしゃるかもしれません。

—— たとえば返礼品でないと受けられないサービスなど、「限定」を押し出したものだとベネフィットになりうるでしょうか。

それも次の段階で考えていきたいと思っています。商品で限定のものを作るとなると、加盟店様の協力が必要ですが、今後この取り組みがしっかりと軌道に乗ってくれば、一緒に検討できるのではないかと思います。

あるいは金銭的なベネフィット以外で、たとえばWebサイトに寄付者の方のお名前を載せるなど、記念になるような返礼品があるといいかもしれません。

—— 確かに自ら寄付を申し出る方くらいの京都市のファンであれば、自分が寄付をしたことで「京都市の役に立っている」と明示してもらえるのは、嬉しいかもしれませんね。

そうですね。今までも、訪日外国人の方で京都市に何らかの寄付をしたいと言ってくださる方がいらっしゃいました。京都市が行った令和5年「京都観光総合調査」でも、寄付というのとは少し違いますが、「旅行中に使ったお金を(旅行先の)地域に還元したい」と回答した割合が、世界平均より高いという結果が得られました。特に北米では、25%を超える方々がそのように回答しています。

サステナブルツーリズム(持続可能な観光)、レスポンシブルツーリズム(責任ある観光)といった、旅行者側も観光地の持続可能性について理解し協力するという考え方が、欧米圏を中心に浸透しつつあります。今回の取り組みも、そのための選択肢の一つとしてご提案できればと思います。

「今までにない旅の形」を提案するとともに、観光客との新たな関係性を築きたい

—— 今回の寄付金を用い、観光地の整備や保全などを行うことで、最終的に訪日外国人にとっても満足度が高まるなどの良い循環が生まれるのでしょうか。

それをどれだけ形にできるかが、今後この事業がうまくいったと言えるかどうかの判断軸になると考えています。

この事業を通じて、訪日外国人の方と京都市との関係性を新たなものにしていきたい。これまでは観光に来て帰るというだけの一過性の関係性で終わっていましたが、京都市の旅行を楽しみながら、その価値を守るという、今までにない旅の形をご提案できればと思っています。

先ほどの「サステナブル」「レスポンシブル」という話にもつながりますが、訪日外国人の方がこれから百年、千年と続いていく京都市の歴史を作っていく、少しでもその一員になれるという実感を持っていただくことで、また新たに満足度が上がるのではないか。これが目指しているところです。

寄付金の取り組みを、インバウンドとの新たな関係性の構築につなげることを目指す 京都市総合企画局
▲寄付金の取り組みを、インバウンドとの新たな関係性の構築につなげることを目指す:京都市総合企画局提供

—— 先ほどWebサイトに寄付者の方のお名前を載せるというお話もありましたが、実際に寄付した外国人の方が、後日寄付金がどのように使われたかを知り、自分の寄付が「京都市の発展や文化・景観保全につながった」という実感を得るために、その後の「情報発信」についてはどのように考えていますか。

今後、それについてもしっかりと検討しなければと思います。Webサイトに「寄付のおかげでこういう取り組みができました」と書くといったことはすぐにできそうですが、より実感していただくには、メールやハガキなどでニュースレターを個別に送れると理想ですよね。

海外の方々ですと日本人以上に個人情報の観点や、どう送るかなどが難しくなってきますので、もしやるならどういう形で情報をお届けするか考えないといけないですね。

方法はいろいろあると思いますが、寄付をもらって終わりというよりは、京都市との継続的な繋がりを感じていただくために「あなたのおかげで京都のまちが良くなったよ」とお伝えする、そういった点も今後検討していきたいと考えています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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