宗教別の食べてはいけないものを一覧で紹介!押さえておきたいタブーと飲食店での対策とは

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コロナ禍が明けて2022年に水際対策が緩和されて以降、インバウンド需要が急速に拡大し、世界中のさまざまな国と地域の人々が日本を訪れています。訪日客の多くは、日本食を楽しむことを訪日旅行の主目的としています。しかし、中には、日本の食文化とは異なる食習慣を持つ人や、宗教上の理由で食べられないものがある人もいます。

飲食業界でも、訪日観光客の多様化に伴い、さまざまなニーズに対応する必要性が高まっています。本記事では、宗教や慣習により食べてはいけないものを一覧で紹介します。また、飲食店での注意点、具体的な対策方法などを解説します。

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食のインバウンド対応の重要性

訪日外国人観光客は、さまざまなレストランや屋台、市場などを訪れて、日本での食体験を楽しんでいます。国籍や文化が異なり、信仰する宗教も多種多様な外国人は、食のルールやタブーを考慮しながらお店や料理選びを行っています。

飲食事業者には、多様な食習慣に配慮された、外国人観光客が安心して食事を楽しめるような環境づくりが求められます。

インバウンド客は「日本食」を楽しみに訪日している

観光庁が発表した「訪日外国人消費動向調査(現:インバウンド消費動向調査)」2023年のデータによると、訪日外国人観光客が「訪日前に期待していたこと」の第1位は日本食を食べること(83.2%)でした。

日本の食文化は世界的に高い評価を得ており、寿司ラーメン、天ぷらなど、和食を中心にさまざまな日本料理を楽しんでいるようです。

同じくインバウンド消費動向調査 2024年7-9月期のデータからは、訪日観光客が飲食代にかける費用が高い傾向にあることがわかります。外国人旅行消費額を費目別に見ると、21.9%を飲食費が占め、訪日外国人一人あたり平均約5万円を食事に費やしています。

多様な食文化に配慮したインバウンド対応を行うことで、より多くの訪日外国人に日本での食事を楽しんでもらうことができ、売上の増加も期待できます。

宗教や慣習に配慮された「食の選択肢」が少なく困っている人がいる

世界には多様な宗教があり、それぞれの宗教には食事に関するルールやタブーが存在します。宗教上の理由で特定の食品を摂取できない、あるいは、健康や思想上の理由で特定の食品を避けている観光客もいます。

一方日本では、宗教や慣習による食文化の違いはまだ十分に認知されておらず、対応が追いついていない状況です。農林水産省の調査によれば、飲食店を利用した訪日外国人から「豚肉や牛肉など、宗教に関係する箇所の説明が不十分」「あらゆる食品に動物性食品が含まれている」という指摘を受けていることが示されています。

宗教や慣習ごとの食の特性を理解してそれぞれに配慮した食事を提供することで、トラブルを防止でき、満足度の向上にもつなげられるでしょう。

宗教別の食べてはいけないもの一覧

宗教別に食べてはいけないものを一覧にまとめました。宗派別の差や個人差もあり、「宗教上の適切な処理が施されている」など、条件付きで食べられる場合もあります。それぞれの宗教の特徴について解説します。

※〇は許容されるもの、△は条件付きで許容されるもの、×は許容されないもの

豚肉

牛肉

鶏肉

乳製品

エビ、

カニ

イカ、

タコ

酒類

イスラム教

×

×

ヒンドゥー教

×

ユダヤ教

×

×

×

仏教

×

キリスト教

イスラム教:豚肉とアルコールがNG。ハラールフードはOK

国土交通省の資料によると、イスラム教を信仰している人は、世界中でおよそ16億人いると言われています。近年はイスラム圏からの訪日観光客も増加しています。たとえば訪日旅行者が増えている東南アジア地域にも、マレーシアやインドネシアといったムスリムの比率が高い国があります。

イスラム教の戒律では、豚肉とアルコールの摂取を禁じています。屠殺(とさつ)方法にもルールがあるため、豚以外の動物であっても食べられない場合があります。戒律で食べてはいけないものを「ハラーム」、食べて良いものを「ハラール」と言います。ハラール法に則って屠殺がなされた牛肉や鶏肉であれば食べられます。

また、豚肉に触れた調理器具を使って作られた料理や、豚肉に触れた食材も口にできないなど、極めて厳格に規定されています。

関連記事:イスラム教徒は牛肉を食べられない?食べてはいけないもの・食べてよいハラールフードの違い

ヒンドゥー教:肉類、魚介類全般を避ける。乳製品はOK

ヒンドゥー教徒はインドに多く、ヒンドゥー教徒の80%以上がインド人だと言われています。2024年の訪日インド人客数は上半期すべての月で過去最高を記録するなど、コロナ禍以前と比較して大きく伸びています。

ヒンドゥー教では、牛を神聖なものと考えており、牛肉を食べるのはタブーとされています。さらに、豚は不浄のものとされているため、タブーではありませんがヒンドゥー教徒は豚肉を好みません。肉食をする場合には鶏肉、羊肉、ヤギ肉に限定され、魚介類全般も避ける傾向です。

なお、牛乳は禁止されておらず、乳製品を積極的に摂取する傾向にあります。

関連記事:

ユダヤ教:豚と血がNG。豚以外の肉は屠殺方法などに条件あり

国土交通省中部運輸局が公開した「訪日ユダヤ人旅行者ウェルカムハンドブック」によると、ユダヤ人は約1,400万人で、約9割のユダヤ人がイスラエルと米国の2か国に居住しています。日本政府観光局JNTO)が行った調査によれば、イスラエルを含む中東地域では「行きたい旅行先」として日本が1位に選ばれるなど、日本への関心が高まっています。

ユダヤ教はイスラム教と同様に豚を食べる事を禁忌としているほか、カシュルートという食事規定のもとに食べてよいものを厳格に定めています。食べてもよい肉類は、適切な屠殺方法、調理方法で準備された牛、羊、ヤギとされており、鳥類では鶏(ニワトリ)や七面鳥を食べられます。

他にも、血を摂取しない、肉類と乳製品を一緒に摂らないなどのルールがありますが、国や個人、信仰の度合いによって実践状況は異なります。

関連記事:ユダヤ教徒の食事対応で注意すべき点とは?食べてはいけないもの・気をつけたい組み合わせ

仏教:一部で肉全般、ネギ類がNG。菜食中心の料理が好まれる

仏教はアジア諸国を中心に信仰されており、代表的な国はタイやカンボジア、インド、ネパール、スリランカ、中国、韓国などです。中でも、国民の9割以上が仏教徒であるタイは親日国として知られており、2023年のタイ人の旅行消費額が過去最高を記録するなど、今後さらなる伸びが期待できる市場です。

一部の僧侶と厳格な信者は、食に関する禁止事項を守っています。仏教の戒律で殺生が禁じられていることから、仏教徒には動物性の食品を避ける、いわゆる「菜食主義者」が多い傾向があります。

より厳格な仏教徒は、修行の妨げとなるとして、五葷(ごくん:ニンニク、ニラ、ラッキョウ、玉ねぎ、アサツキ)と呼ばれるネギ科の植物を避けています。

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キリスト教:許容範囲が広いが、飲酒による酩酊はNG

キリスト教はイスラム教、仏教と並ぶ世界三大宗教のひとつで、世界最大の信者数を誇ります。キリスト教徒はアメリカやヨーロッパを中心に、たくさんの国と地域で信仰されています。

キリスト教は他の宗教と比較して、基本的に食に関する禁止事項はありません。しいて言えば、過度の飲酒による酩酊が禁止されています。また、一部の宗派ではアルコール類の摂取やタバコが禁じられており、アルコールを使った調理に注意が必要な場合があります。

習慣・アレルギーで食べてはいけないものがある人も

宗教的理由以外にも、ベジタリアンやヴィーガンなど、個人の信条や習慣で食べないものを選択している人や、食物アレルギーがある人もいます。これらの理由で特定の食品を避ける訪日観光客も少なくありません。ここからは、ベジタリアンの特徴や注意すべきアレルギー食材などを紹介します。

ベジタリアン・ヴィーガン:植物性食品が主食。卵や乳を食べるかには個人差

ベジタリアンとは、基本的に肉や魚介類などの「動物性の食品」を口にせず、野菜や豆類を中心とした「植物性の食品」を中心に食べる人のことです。

さらに、ベジタリアンの中でも、動物性の食品を一切口にしない「完全菜食主義者」はヴィーガンと呼ばれます。ヴィーガンは、蜂から蜜を奪うことで得られる蜂蜜や、動物性成分が含まれるゼラチンや調味料なども摂取しません。

観光庁の資料によれば、近年ベジタリアンヴィーガンの人口は増加しており、2023年時点で合わせて約5.3億人に達しています。訪日外国人が多い台湾中国韓国などの東アジア欧米豪諸国にもベジタリアンヴィーガンが多いと言われています。

また、ベジタリアンでも卵や乳製品を食べるかどうかは人によって異なり、食べるものによって以下のように分類されます。

ベジタリアンの種類

赤身肉

白身肉

魚介類

乳製品

ラクト・ベジタリアン

×

×

×

×

オボ・ベジタリアン

×

×

×

×

ラクト・オボ・ベジタリアン

×

×

×

ヴィーガン

×

×

×

×

×

関連記事:

アレルギー:そば、卵、牛乳、エビ、カニ、小麦、落花生などに注意

食物アレルギーがある場合、特定の食品を摂取した後に皮膚や消化器、呼吸器などに異常が起こります。アレルギー体質は外国人にも多く見られ、注意すべき食材として、そば、卵、牛乳、エビ、カニ、小麦、落花生などがあります。

重度なアレルギー症状であるアナフィラキシーを発症すると命にかかわることもあるため、とくに注意が必要です。

すぐに始められる宗教や食習慣に配慮した対応とは

宗教上の食事制限をはじめ、ベジタリアンヴィーガン、さらにはアレルギーまで、さまざまな食習慣に対応するためにはどうしたら良いのでしょうか?メニューを大胆に変更しなくても、多言語対応や、視覚的に情報をわかりやすく伝えるピクトグラムの活用など、できることから対策することが大切です。それぞれの対策内容について紹介します。

1. 多言語対応

飲食店のウェブサイトやメニューを外国語にも翻訳して併記することで、外国人観光客が安心してお店や料理を選べるようになります。ほかにも、外国語が話せるスタッフを配置したり翻訳機を活用したりすることで、よりスムーズにコミュニケーションを取れるでしょう。

対応言語としては、まず英語に対応し、余裕があれば中国語や韓国語など複数の言語に対応することをおすすめします。

関連記事:今すぐできる飲食店の多言語対応とは?おすすめの方法や対応すべき言語も紹介

2. ピクトグラム表示

ピクトグラムとは、情報や注意を示すための記号の一種で、伝えたい情報をシンプルなマークにして表現するのが特徴です。1964年の東京オリンピックで初めて導入され、現在は各地の公共施設などで使われています。

大人から子どもまで誰でもわかるようなデザインであるため、日本語がわからない外国人でもピクトグラムを見れば意味を理解できます。飲食店インバウンド対応としても効果的に利用できるでしょう。

ピクトグラムのメリットや無料ダウンロードができるサイトは、ピクトグラムとは/わかりやすい視覚記号・外国人観光客受け入れにメリット・無料サイト3選で紹介しています。

食のインバウンド対策は「できるところから」始めよう

さまざまな宗教や食習慣を持つ外国人観光客が増えているため、食に多様なニーズがあることを知り、異文化に配慮したインバウンド対策をしたいと考えている飲食事業者の方もいるでしょう。

一方で、こうした「食の禁忌」を持つ外国人は、そもそも日本では食べられないものが多いことを理解しています。「料理の中に何が入っているのか」がわかれば、食べられない食材は自ら避けることができるので、最初はメニュー開発までしなくても多言語対応ピクトグラム表示で十分対応可能だといえます。

できるところから対策を進め、必要な時にコミュニケーションを取りやすいような環境を整備していきましょう。

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<参照>

観光庁:訪日外国人の消費動向(現インバウンド消費動向調査) 訪日外国人消費動向調査結果及び分析
観光庁:インバウンド消費動向調査 2024年7-9月期の調査結果(1次速報)の概要
観光庁:ベジタリアン・ヴィーガン/ムスリム 旅行者おもてなしガイド
観光庁:多様な食文化・食習慣を有する外国人客への対応マニュアル
農林水産省:日本の飲食店に対する訪日外国人旅行者の評価
国土交通省 中部運輸局:訪日ユダヤ人旅行者ウェルカムハンドブック
国土交通省:ムスリム旅行者 受入の心得

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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