いよいよ中国の春節(旧正月)が1月28日から始まります。中国は訪日旅行消費額が1位であり、インバウンド事業を展開する企業にとって見逃せない市場の一つです。一方で、FIT(個人旅行)化、SNSの発達などにより中国人旅行者のニーズは多様化しており、旅行トレンドも目まぐるしく変わることから、最新情報を把握することが非常に難しくなってきています。
そこで本記事では、2024年の「国慶節」に関する中国当局や中国企業のレポートをもとに、中国人旅行者の動向を深掘りします。
関連記事:2025年の国慶節はいつ?中国インバウンドの最新動向を解説
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2024年国慶節の概要と旅行動向
中国の大型連休である「国慶節」。2024年10月1日から7日の間に、延べ20億人以上の中国人が地域外に移動し、日本も多くの中国人旅行者で賑わいました。まずは2024年の国慶節から垣間見える、最新の旅行動向を探ります。近隣国への旅行需要の高まり
中国のOTA・Ctripの「2024年国慶節観光消費レポート」によると、国慶節期間中は、日本、韓国、ベトナム、タイ、ロシアなど近隣国への旅行需要が高まったといいます。近隣国への旅行需要が大きく回復した背景には、国際便の供給が増えたことで、航空券の価格が2019年の水準にほぼ戻ったことも一つの要因とされています。特に地方都市の住民は近距離旅行を選ぶ傾向にあり、TOP20の渡航先のうち、13か国が日本を含む近距離の目的地であったようです。一方で、主要都市の住民は長距離旅行を好む傾向にあり、米国、英国、オーストラリアなど、より遠くへの旅行需要も高まっているといいます。地方都市の住民の平均予約件数が前年の3倍に増加し、近隣国への海外旅行市場が盛り上がる結果ととなりました。
家族旅行の割合は34%→37%に増加
コロナ前は団体客が多くを占めていましたが、近年は中国人のFIT(個人旅行)化が進んでいます。特に家族旅行の割合は37%に増加したほか、親子旅行の消費額は平均の2倍以上に達したといいます。2024年の夏は、日本の花火大会や祭りが中国のファミリー層に人気だったとの声も多く聞かれました。時差もほとんどない、フライト時間も短く治安の良い日本は、子ども連れの中国人旅行者にとって行きやすい海外旅行先ともいえそうです。
なお、中国の旅行プラットフォームであるQyer.comが発表したデータによると、中国の家族旅行においての意思決定権を握っているのは、ほとんどが女性だといいます。女性の消費意欲は男性よりも高く、家族や友人と旅行する場合、女性主導となって旅行先を決めたり、予約の手配をするとしています。
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一方で、国内旅行を選ぶ中国人も増加傾向に
またCtripによると国慶節期間中、海外旅行の需要が増加する一方で、国内旅行を選ぶ中国人も増えたとされています。国慶節の長期休暇を利用して地方に帰省し、多くの人が家族との団らんを選択しました。また、中国各地での民俗風情ツアーや無形文化財をテーマにした観光が人気を集め、地元でのレジャー活動が顕著に増加しています。都市部や農村部の観光地では、自然や文化遺産の再評価が進み、中国国内の観光市場は拡大しています。国内旅行の需要が伸びる中、日本が中国人旅行者に選ばれるためには「日本独自の魅力」をより一層発信していくことが必要といえるでしょう。
中国国内旅行の人気都市
中国国内旅行では、北京、上海、成都、広州などの主要都市が引き続き人気トップ10の目的地となりました。その一方で、若者の間では地方を巡る「奔県遊」が近年のブームに。黄山や張家界、アバ・チベット族チャン族自治州など、地方都市への旅行需要が急速に拡大しています。国内旅行においても、従来の団体旅行は急速に減少し、個人旅行やセルフドライブ旅行が急成長。国慶節期間中は、高速鉄道や自動車を利用した旅行スタイルが主流となりました。さらに、高速鉄道の発展により「1時間圏内の旅行」が活発化し、近隣都市間での観光客交流が増加。若者を中心に旅行スタイルの多様化が進んでいると考えられています。
人気の海外旅行先1位は日本、続いてタイ、韓国、マレーシア
2024年の国慶節期間中、人気の海外旅行先はタイや韓国をおさえて日本がトップになりました。また外務省によって、中国人の短期滞在ビザの発給要件を緩和すると発表されたため、今後はさらに訪日中国人客数が増加することも考えられます。一方で、近隣国であるタイやシンガポール、マレーシアなどが中国人に対して短期観光ビザを免除したことから、ビザなしで渡航しやすい東南アジアがさらに盛り上がる可能性もあります。
そこで2025年の春節や国慶節に向け、2024年の国慶節における日本国内の人気エリアやトレンドを振り返ります。
関連記事:中国の大型連休「国慶節」、人気海外旅行先1位は日本(2024年)
中国人旅行者に人気の日本の観光地トップは北海道、続いて東京と大阪
中国などの海外プロモーション・インバウンド支援を行うインタセクト・コミュニケーションズ株式会社は、国慶節期間中の日本国内での人気エリアに関する調査を実施しました。その結果、最も人気があったのは「北海道」で、207人中144人(69.6%)が国慶節中の訪問を希望。次いで「東京」(51.7%)、「大阪」(25.6%)が続きました。
北海道が選ばれた理由には「自然豊かな美しい景色」や「函館山の夜景」などの自然観光が多く挙げられました。
一方で東京は「買い物」や「アニメの舞台」が人気の理由として挙げられ、大阪では「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」のテーマパークが主な魅力として挙げられています。
『君の名は。』の影響で静岡県伊東市が人気
SBSテレビの報道によると、国慶節期間中、意外にも多くの中国人旅行者が訪れたのが「静岡県伊東市」でした。伊東市には標高580mの「大室山」があり、天気が良ければ山頂から富士山や伊豆諸島を一望できます。この大室山は中国人旅行者に人気があり、国慶節期間中の登山リフトの利用者の約8〜9割が中国人だったようです。(参照)大室山は、中国のSNSで「映えスポット」として話題になっており、さらに大ヒット映画『君の名は。』に登場する場所に似ているとされ、訪れる中国人が増えているといいます。
日本のアニメや漫画は中国でも人気があり、その影響で意外な観光地が「聖地巡礼」の目的地として盛り上がることも珍しくありません。最近では、東京や大阪などの大都市だけでなく、地方の穴場スポットや絶景を好む中国人旅行者のトレンドが見られます。
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<参照>
- Ctrip:携程“十一”旅游报告:出境短途航线价格重回2019年 携程出入境游订单创新高
- ITB China:重塑 - 中国出境游主流人群疫情前后的数据对比与前瞻
- 外務省:第2回日中ハイレベル人的・文化交流対話
- インタセクト・コミュニケーションズ株式会社:<中国インバウンドの最新動向 第四弾>インタセクト、10月1日から始まる「国慶節」の大型連休を前に「2024年の国慶節期間の旅行消費に関する調査」の結果を発表
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