リクルートの観光に関する調査・研究を行う「じゃらんリサーチセンター」は2月26日、生成AIを活用した観光マーケティングの実証実験を行ったと発表しました。
同実験は、自治体やDMOのインバウンド推進を支援することを目的に、静岡県熱海市をモデルケースとして実施されたものです。
なお、生成AIツールはリクルートとブログウォッチャーで共同開発されました。
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訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)生成AIを活用し、マーケティングや多言語対応を推進
日本のインバウンド市場が急速に拡大するなか、多くの自治体・DMOでは、限られたリソースで膨大なデータ分析や多言語対応を求められており、データ不足や、多言語対応の品質・コスト維持に課題を抱えています。
今回モデルケースとなった熱海市においても、インバウンド対応の本格化を進める段階にあり、効率的なマーケティングや多言語対応が求められていました。
実証実験では、以下の3つの場面で生成AIを活用し、効果を検証しました。
1. AIインバウンドマーケティングツールの活用
生成AIを活用し、インバウンド観光客の行動特性やニーズを分析。そのうえで、口コミや掲載記事、検索トレンドなどのデータを組み合わせて、熱海市の競争優位性や訴求ポイントを明確化しました。
2. AI分析支援による観光データの活用
観光案内所に集まったインバウンド観光客の問い合わせデータを生成AIで要約し、高い頻度で関係者に共有できる仕組みを構築しました。
3. AI多言語ツールによる情報発信の最適化
既存の観光情報を英語・繁体字に翻訳し、その品質をネイティブチェックで評価。加えて、観光案内所の問い合わせデータに基づいた、最新の観光情報を多言語発信できるよう仕組みを構築しました。
マーケティング分析工数を15分の1に削減 翻訳作業は12分の1
同実験から、生成AIの活用がインバウンド対応の生産性向上と情報発信の高度化に大きく貢献することが明らかになりました。
1. マーケティング分析の効率化
AIインバウンドマーケティングツールを活用することで、市場別の特徴や行動特性を分析し、競争優位性を明確化することが可能になりました。例えば、台湾・香港・アメリカ市場について、競合エリアとの差別化ポイントやキーメッセージ、適切なビジュアル案を抽出することができました。さらに、これらの分析結果は、台湾人・香港人を対象とした定量調査の結果とほぼ一致し、専門家からも高い納得感を得ました。
また、生成AIを活用することで、通常のマーケティング分析に比べて作業時間を約15分の1に削減できることがわかりました。
2. 旅ナカデータ分析の最適化
観光案内所の問い合わせデータを生成AIを活用して要約・分析することで、高い頻度で自治体やDMOの関係者と共有することを可能にしました。これにより、観光案内所のデータを迅速に活用できるようになり、意思決定をスピーディーに行えるようになりました。
また、旅ナカデータの分析に係る工数が約4分の1に削減。AIが自動でデータを整理・要約することで、関係者が瞬時に情報を把握しやすくなりました。
3. 多言語対応の質とスピードの向上
英語・繁体字の翻訳精度を検証した結果、ネイティブチェックでも高い評価を獲得し、生成AIを活用した方がより自然で違和感のない文章レベルであることが証明されました。
さらに、AI多言語ツールの活用によって、従来の翻訳作業に比べて工数を約12分の1に削減できました。
さらに、InstagramやWebサイトなど、タッチポイントごとに最適な表現を即時に生成できるため、観光情報の発信スピードも大幅に向上しました。
4. 持続可能なデータ活用モデルの構築
今回の実験を通じて、生成AIを活用した持続可能なデータ活用の仕組みを検証し、自治体・DMOが低コストで始められる「スモールスタート型」AI活用モデルを構築しました。
じゃらんリサーチセンター研究員 松本氏は、今回の実験に対し、「生成AIを活用することで、知識やリソースが限られた自治体でも、持続可能な体制を構築しやすいことは大きな利点。今後は、サービス化や他エリアへの展開の可能性を検討していく」とコメントしました。
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<参照>
株式会社リクルート:生成AI活用でインバウンド対応を効率化 マーケティング分析工数を最大15分の1に削減、熱海市で実証
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