インド旅行者の解像度を上げる!前編:旅行者タイプ別、ターゲティング戦略の第一歩

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前回の記事では、インド市場の持つポテンシャルを「人数」ではなく「消費額」に注目して捉え、訪日インド人旅行者、特に富裕層がホテル、アクティビティを選ぶ際の嗜好についてお伝えしました。

今回は富裕層のみならず、今後も増加が期待できる中上流層のインド人を含め「実際にどのようなインド人が、どんな目的で日本を訪れているのか?」をより具体的にお話しさせて頂きます。

インド現地での情報収集チャネル、OTASNSの活用状況など、ターゲット理解に欠かせない基本情報をお届けします。

文/大瀧直文(BRANDit Japan)


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第1章:インド人旅行者の様々な旅目的、ターゲットの違い

急成長を続けるインド旅行市場

インドは現在、年間約8%のGDP成長を維持し、人口の約66%が35歳未満という若年層中心の国です。この背景から、旅行市場も急速に拡大しており、海外旅行者数は2019年時点で2,700万人、2028年には3,900万人に達する見込みです。

富裕層人口の増加やライフスタイルの変化が後押しとなり、旅行はインドの消費支出において“ファッションに次ぐ第2位”の分野となっています。

※参照:Travel Trends 2024: Breaking Boundaries | Mastercard

旅行目的の主な分類と傾向

また、旅行需要の高まりと共に、インド人の海外旅行目的は多様化しており、主に以下のようなカテゴリーに分類できます:

タイ

海外旅行者の主な特徴

インド人訪日旅行の現状

FIT個人旅行

ミレニアル世代Z世代が増えている傾向あり、InstagramなどSNSで見つけた“映える体験”を求める傾向

ファッション、ポップカルチャーなどを目的とした旅行者が増えている傾向がある

MICE
ビジネス

大企業の役員やスタートアップ経営者などが中心。東京・大阪・名古屋がメイン

2023年の訪日インド人の約5割がビジネス目的とされている

ウェディング

富裕層を中心に海外での“特別な結婚式”を志向。予算は1回あたり1億円以上も

日本はほぼ未開拓市場。沖縄県インド市場向けウェディングFAMを実施

VFR(親族・友人訪問)

海外在住の親戚・友人を訪問。
アメリカシンガポール、UAEなどの旅行者に多い

日本在住インドコミュニティへのリーチで拡大可能性あり

レジャー・
観光

家族やカップルでのリゾート滞在や文化体験、買い物などが中心

訪日全体に占める割合はまだ約27%と、今後の成長余地が大きい

他国と比べた時の日本のポジショニングは?

他のインド人気旅行先(例:タイ、UAE、シンガポールなど)は、ベジタリアン対応や英語案内、文化的な配慮などインド人向けの受け入れ環境整備がかなり進んでおり、コロナ後に急速に旅行者が増え続けています。

一方で、日本は「食・宗教・言語」への対応に課題を抱えているものの、“憧れの国”としてのブランド力は高く、訪日インド人からは好意的に受け止められています。

もともとインド人の中には日本への尊敬の念が根強くありましたが、近年ではアニメコンテンツの流行も、日本に対する憧れや強い印象をさらに高める要因となっています。

日本のアニメは、インドZ世代ミレニアル世代の間で非常に人気があり、特に『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』『NARUTO』『鬼滅の刃』『ONE PIECE』『呪術廻戦』などが広く支持されています。

また、近年ではCrunchyrollをはじめとするVODプラットフォームの普及が、インド市場におけるアニメ人気の拡大に大きく貢献しています。

飛行機代やホテル代が他国への旅行と比べて高い事、また、ビザ申請のプロセスも依然として煩雑(大使館やビザセンターでの対面申請が必要となっているのが現状。)であるなど、訪日のハードルとなっているのも事実です。それでも、こうしたハードルを越えた先に見えるのが「1億人」に迫るパスポート保有者数という、インド国内の巨大な海外旅行潜在層です。

※参考:

インドにおける都市別・旅行者層の特徴

インドからの訪日旅行者には、出発都市によって大きな特徴の違いがあります。

ムンバイ、デリー、バンガロールといった主要都市からの旅行者は、情報感度が高く、インターネットやSNSを活用して自ら情報収集や予約を行う「海外旅行に慣れた層」が中心です。こうした層は、個人旅行にも積極的で、トレンドや体験重視の旅行スタイルが目立ちます。

一方で、二級・三級都市(プネ、アーメダバード、ハイデラバードなど)からの旅行者は、比較的年齢層が高く、海外旅行に不慣れな人が多い傾向にあります。この層にとっては、信頼できる旅行代理店や知人からの口コミといった“仲介者”の存在が、旅行先の選定や予約において非常に重要な要素となります。

さらに、地域ごとに見られる「人柄の違い」も無視できません。都市ごとに旅行者の気質や行動パターンに違いがあり、それを理解することは、効果的なマーケティングや接客のヒントにもなります。(この「人的キャラクター」の詳細については、また別の機会にご紹介したいと思います!)

このように、インドからの訪日旅行者は一括りではなく、多様なニーズと背景が、ターゲット層別に分かれています。次章では、これら旅行者がいつ・どのように旅の計画を立て、どこを訪れ、どのタッチポイントを経て予約行動をするのか、その傾向を見ていきます。

第2章:旅行者の行動パターンと計画タイミング

旅行のスケジュール感:計画は早く、予約は出発の1〜2ヶ月前

インド人旅行者は通常、3〜6ヶ月前から旅行先の検討を開始し、出発の30〜60日前にフライト・ホテル・アクティビティの予約を完了するのが一般的です。ただし、FIT個人旅行)層などの中には、比較的直前の予約行動も見られるため、訴求タイミングは柔軟に設計する必要があります。

誰と行く?旅行スタイルの多様化

従来は家族旅行(複数世代)が中心でしたが、最近では以下のような多様なスタイルが増加しています:

  • 友人同士の旅行(都市部の若年層中心)
  • 若い女性のグループ旅行
  • 一人旅

他国の例で言うと、タイは手頃な価格と豊富な社交オプション、都市部での移動の容易さから、女性旅、一人旅の目的地として近年人気が出てきています。

シンガポールも安全性と利便性から、一人旅向けに魅力的な目的地となっています。特に若年層の間で一人旅の人気が高まっており、シンガポールのGen Zやミレニアル世代の94%が既に一人旅を経験、または計画しています。

地域別の傾向としては、主要都市(ムンバイ、デリー、チェンナイなど)の旅行者は情報感度が高く、ラグジュアリーな旅行体験にも積極的。出発者の約60%を占める状況です。二級・三級都市(プネ、アーメダバード、ハイデラバードなど)に関しては、旅行経験が浅い層が多く、価格や時間にセンシティブ。ただし、高額な旅行支出をする富裕層も存在し、今後の成長ポテンシャルが高い市場でもあります。

※参考:

第3章:情報収集チャネルと主要OTAの傾向

情報収集の主なチャネル(複数同時活用が基本)

旅行者の目的やスタイルが多様化する中で、旅先の選定や予約に至るまでに「どのような情報に触れているのか」「どのチャネルが意思決定に影響を与えているのか」のタッチポイントを少しご紹介させて頂きます。

影響力のあるメディアOTAの傾向について詳しく見ていきます。

デジタルデバイス、特にスマートフォンからのアクセスが主流となっており、視覚的に魅力的な写真・動画広告コンテンツやLP(ランディングページ)がオンライン予約、エンゲージメント向上のための重要要素となります。

情報源

傾向

SNS (Instagram, YouTube, Facebookなど)

旅行先の検索、体験共有、インフルエンサーの投稿が影響力大

検索エンジン (Google)

目的地や施設の情報収集に不可欠。検索広告の効果も高い

口コミ (友人・家族・親戚)

特に二級・三級都市の旅行者に強い影響力

旅行代理店/OTA (オンライン旅行代理店)

MakeMyTrip、Yatraなどの活用が増加中。地方都市では、オフライン予約も依然として健在

レビュー・価格比較サイト

コスト意識の高い層において、旅行決定の重要な材料に

新聞・雑誌などの旅行特集

中高年齢層や富裕層に有効なオフラインメディア

人気のOTA(Online Travel Agency)

  • MakeMyTrip- ユーザー数: 7,500万
  • Yatra- ユーザー数(公表無し)
  • Cleartrip- ユーザー数: 2,500万
  • EaseMyTrip- ユーザー数: 2,600万

SNSの利用状況(参考)

プラットフォーム

ユーザー数 (インド)

主な特徴

YouTube

約4.6億人

幅広い年代にリーチ

Facebook

約3.7億人

幅広い年代にリーチ。親世代にも浸透

Instagram

約3.6億人

若年層に人気。旅行・グルメの投稿が活発

LinkedIn

約1.4億人

ビジネス層へのアプローチに有効

まとめ:多様な顔を持つインド人旅行者を理解するために

本記事では、訪日インド人旅行者の「目的」「行動パターン」「情報収集チャネル」について整理しました。FITやビジネス、VFR、ウェディングなど旅行の目的は多岐にわたり、旅行のスタイルや予約タイミングも多様です。

色々なタイプがある事を前提に、ターゲットの解像度(ニーズ、旅の目的)を上げ、彼らのタッチポイントを理解し、「彼らの求める情報を適切なターゲットに届ける」事がインド市場マーケティングの第一歩と感じています。ターゲットごとのニーズを的確に捉え、適切なタイミングとチャネルでアプローチすることが不可欠です。

インド14億人」にどうやってアプローチするか?ではなく、そのうちのどこの?誰がターゲットなのか?のターゲット選定から始める事をお勧めします。


次回は、こうしたデータの“その先”──インド人旅行者の「インサイト」にフォーカスし、

  • どんな体験に価値を感じているのか?
  • なぜその体験に価値を感じるのか?

インド市場を“特別な存在”としてではなく、“理解できる存在”として捉え直す視点として、インド東南アジアタイインドネシアなど)との共通点にも着目し、比較的なじみのある東南アジア市場での知見を活かして頂く。そんなお話しをさせて頂きます。

著者プロフィール:BRANDit Japan・カントリーマネージャー 大瀧直文

日本、海外の広告業界で18年の実績を持ち、オンオフ統合メディアキャンペーン、インフルエンサーマーケティング、クリエイティブ制作、イベント、TV番組制作などの現場実績を持つ。
5年間のインド駐在を経てインドにおける観光マーケティングに精通。JNTOデリー事務所をクライアントとし、「Japanブランド」のブランド戦略、メディアキャンペーンの実行、ブランドリフト調査、セールスレップ活動、イベントプロデュースなどを牽引。その他日系企業のメディアキャンペーン、クリエイティブ制作など多数プロデュース。

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この記事の筆者

大瀧直文

大瀧直文

BRANDit Japan・カントリーマネージャー

日本、海外の広告業界で18年の実績を持ち、オンオフ統合メディアキャンペーン、インフルエンサーマーケティング、クリエイティブ制作、イベント、TV番組制作などの現場実績を持つ。
5年間のインド駐在を経てインドにおける観光マーケティングに精通。JNTOデリー事務所をクライアントとし、「Japanブランド」のブランド戦略、メディアキャンペーンの実行、ブランドリフト調査、セールスレップ活動、イベントプロデュースなどを牽引。その他日系企業のメディアキャンペーン、クリエイティブ制作など多数プロデュース。

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