コト消費への移行を背景に注目を集める宿坊:積水ハウス、大阪市天王寺区に宿坊をテーマにしたインバウンド向け宿泊施設を建設へ

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2020年の東京オリンピックに向け、政府は観光ビジョンの中で、訪日外国人観光客数の目標を、以前の2,000万人から4,000万人まで引き上げました。

このような状況の中、国内外の企業、または自治体からも注目を集め始めている日本のインバウンド誘致。

近年、日本国内では官民一体となって、訪日外国人観光客の受け入れ環境の整備が実施されていますが、未だにインバウンド受け入れには課題も多いのが事実。

その課題の中で頻繁に取り上げられるのが、インバウンド向けの「宿泊施設不足」です。

 


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大阪府で81.6% 人気都市で高い客室稼働率:インバウンド向け宿泊施設が不足

都道府県別宿泊施設タイプ別客室稼働率:観光庁より引用

都道府県別宿泊施設タイプ別客室稼働率:観光庁より引用

観光庁のデータによると、大都市圏の客室稼働率(*)は東京で77.4%、大阪で81.6%になっており、とても高い数値を記録しています。

観光地として人気の京都府では、71.3%。全国平均である57.2%と比較すると訪日外国人観光客に人気の地域では客室稼働率が高いことがわかります。

客室稼働率が高いということは、ホテル旅館など宿泊施設に空きがなく、インバウンド向け宿泊施設が不足していることを意味します。

現在より多くの訪日外国人観光客を呼び込むためには、宿泊施設を増設することは急務であるといえます。

そのような現状を打破すべく、最近では「宿坊」とよばれる宿泊制度が、一つの打開策として注目を集めています。

*客室稼働率ホテル旅館などの宿泊施設において、全客室の内、実際に顧客に利用されている客室の割合のこと

 

「宿坊」とは、神社やお寺の宿泊施設のこと:本来は僧侶のための宿泊施設だが、現在は一般人にも開放

宿坊の様子:和歌山県庁より引用

宿坊の様子:和歌山県庁より引用

「宿坊」とは、神社やお寺の中にある宿泊施設を指します。

本来は、僧侶のみが宿泊する場所、または、参拝者が心身を清めるための施設でした。しかし、現在では訪日外国人観光客を含めた、一般観光客などの宿泊も受け入れています。

「宿坊」と言っても様々な形態があり、お寺、神社の建物そのものに宿泊できるもの、敷地内にある別の建物に宿泊するものがあります。

また、期間に関しても、常時受け入れているものから、季節限定で受け入れているものまで存在しています。

一般財団法人日本経済研究所から発表された「ご当地インバウンドにチャンスあり ~再発見! Gaikokujin に学ぶ魅惑の日本~」では、「外国人旅行者が日本で体験してみたい19のこと」として「宿坊」がランクインしており、その注目度の高さが伺えます。

このような背景を利用し、国内の大手住宅メーカー「積水ハウス株式会社」(以下、積水ハウス)は、宿坊をテーマにした宿泊施設の建設を開始します。

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積水ハウス、大阪市天王寺区に「宿坊」をテーマとした宿泊施設の建設を開始:訪日外国人観光客もターゲットに

積水ハウスグループ会社の積和不動産関西は、大阪市天王寺区に「宿坊」をテーマにした宿泊施設の建設を開始。来年2017年3月の開業を目指します。

また、近隣地域である大阪市御堂筋に、寺院の正門とホテルを兼ねたビルも開発します。

積水ハウスによると、首都圏や中京圏、関西圏や訪日外国人観光客に人気の寺院や仏閣の集まる地域で、10棟の「宿坊」をテーマにした宿泊施設の建設をこれから進めていくとのこと。

一泊2万円から宿泊が可能:インバウンド向けに座禅や写経、精進料理の体験も可能に

大阪市天王寺区の施設においては、総客室26室が観光客に提供され、1泊2万円から宿泊することができます。

訪日外国人観光客は、積水ハウスが整備を進めるこれらの施設に滞在している間、「座禅」や「写経」「精進料理」などの日本の伝統文化体験することができます。

インバウンド誘致を目的に大手住宅メーカーも目をつける「宿坊」。こうした動きの背景には「宿泊施設不足の解消」に加え、一体何があるのでしょうか?

 

背景には訪日客の「コト消費」への移行が:「宿坊」の普及は訪日客の消費動向に沿った合理的なものに

平成27年7月-9月期と平成28年7月-9月期の訪日外国人観光客旅行支出の費目別割合推移

平成27年7月-9月期と平成28年7月-9月期の訪日外国人観光客旅行支出の費目別割合推移

インバウンド誘致に「宿坊」の普及が進んでいる理由として、訪日外国人観光客の消費動向が「モノ消費」から「コト消費」へと移行しつつあることが挙げられます。

インバウンド業界において、「コト消費」、「モノ消費」は、それぞれ

  • コト消費 経験・体験に対して価値を見出す消費行動
  • モノ消費 物を買うことに価値を見出す消費行動

を意味します。

従来であれば、訪日外国人観光客の消費動向は、「モノ消費」に偏る傾向にありました。インバウンド業界のみならず一般のニュースにも頻繁に取り上げられていた「爆買い」と呼ばれる訪日中国人観光客の大量消費行動がその大きな代表例です。

しかし、近年では「爆買い」を中心とした「モノ消費」は、収まりを見せつつあり、その代わりに日本らしい経験・体験に価値を見出す「コト消費」に訪日外国人観光客の消費動向は偏りだしています。

このような「モノ消費」から「コト消費」への訪日外国人観光客の消費動向の移行を背景に、「宿坊」のように「和」を連想しやすく、日本文化体験、経験できるサービスは、訪日外国人観光客や日本の各企業や自治体から注目を集めています。

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「コト消費」「モノ消費」とは?最近話題になっている訪日外国人の消費活動の変遷について解説

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コト消費とは? 訪日外国人の消費行動がサービスや体験に移行

目次コト消費とは「コト消費」はいつから使われ始めた?インバウンドでの「コト消費」の使われ方は?なぜ「コト消費」という言葉が注目され始めたのかコト消費とはインバウンドにおける「コト消費」とは、訪日外国人観光客が旅館やホテルなどでの宿泊、観光地やアクティビティーでの体験など、経験・体験に対して価値を見出す消費行動のことをいいます。インバウンド業界のみならず、一般のニュースにおいても、訪日中国人観光客の「爆買い」というキーワードが騒がせていましたが、為替相場が元安円高傾向にふれるにつれ、訪日中国...

 

まとめ:インバウンド誘致へ注目を集める「宿坊」:背景には「コト消費」への移行が

訪日外国人観光客誘致の新たな施策として、大手住宅メーカー「積水ハウス」の取り組みからも把握できるように、宿坊制度の導入が国内で注目を集めてます。

インバウンド誘致を検討する際、訪日外国人観光客の消費動向やニーズに合ったサービスを展開することにより、より多くのインバウンド消費を喚起することができるでしょう。

【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」

インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。

本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。

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宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】

【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」

2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。

「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。

初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。

参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。

<こんな方におすすめ>

  • インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
  • 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
  • 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
  • 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
  • インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生

「THE INBOUND DAY 2025」特設ページを見てみる

【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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