訪日客80万人に迫る四国 次の一手は「エアビー」/ JR四国×Airbnb提携で簡易宿所事業を拡大へ・古民家再生など潜在的な観光資源を活用するのが地方インバウンドの鍵

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JR四国は、2018年11月に同社として初となる四国島内での簡易宿所をオープンします。それと同時にアメリカ民泊仲介会社大手Airbnbの日本法人とも提携を開始し、宿泊と観光を共同開発することを発表しました。

四国インバウンド観光客数は2017年には前年比23%増で80万人に迫る勢いです。しかし、全国に占める四国内の訪日観光客宿泊者数の割合は2016年に1%を超えたばかりです。四国各県はインバウンド観光客誘致のために多くの施策を実行しています。この流れの中でJR四国四国の観光情報を世界に発信し、より多くの訪日観光客を取り込むためAirbnbと提携をすることになりました。

この提携の背景にはJR四国四国内での展開を始める簡易宿所の存在があります。2018年の改正民泊法以降、この簡易宿所の需要が高まっているのです。今回の記事では、四国を訪れる観光客の傾向なども踏まえ、JR四国がなぜ簡易宿所の展開とAirbnbとの提携に踏み切ったのかを解説していきます。

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JR四国が簡易宿所を拡大させる理由

JR四国Airbnbとの提携を進める狙いは観光事業を共同開発することにあります。2018年11月17日にオープンする簡易宿所が「4S STAY 阿波池田駅前」です。JR四国は今後もこの「4S STAY 阿波池田駅前」を皮切りに、簡易宿所を拡大させる方針です。

JR四国の半井真司社長はインバウンドは底堅く、期待できる」と述べ、簡易宿所を通じて「四国の観光促進につなげていきたい」と強調しました。JR四国簡易宿所を拡大させる背景には、二つの理由があると考えられています。一つ目が、簡易宿所の存在感が、日本のインバウンド業界で増していること。二つ目が四国へのインバウンド観光客に低中所得者が取り込めていないことです。以下、それぞれの理由を説明していきます。

簡易宿所の日本国内での存在感の増加

民泊新法以前のデータではありますが、厚生労働省「全国民泊実態調査」(2016年10月〜12月)における、民泊物件の許可取得状況を見てみましょう。許可が降りた16.5%の物件のうち、約3分の2にあたる67%が簡易宿所であるとのデータが出ています。

▲みずほ銀行 2018年2月不動産マーケットレポートより
▲みずほ銀行 2018年2月不動産マーケットレポートより

この背景には民泊物件の中でも簡易宿所には、旅館営業やホテル営業では定められている客室の加減やフロントの設置義務がなく、拡大する民泊需要に対応しやすいことが一因と考えられています。

改正民泊法後も簡易宿所は存在感が増加

簡易宿所は改正民泊法でも存在感を高めています。2018年6月に施行された新民泊法では違法民泊の取り締まりが強化されました。その結果、旅館業法における正式な業態である簡易宿所への注目が広がりつつあります。それまでは年500〜800件の増加だった簡易宿所は2016年には前年比2390件増加しました。

▲不動産新聞編集部が作成 2018.2.20付『「違法民泊」淘汰で簡易宿所はブームとなるか?」』より
▲不動産新聞編集部が作成 2018.2.20付『「違法民泊」淘汰で簡易宿所はブームとなるか?」』より

日本のインバウンド観光客は増加の一途を辿っています。と同時に今後宿泊施設は不足することが予想されています。

宿泊施設の不足に対応するための方法として、民泊のプレゼンスは上昇してきています。民泊には宿泊施設だけではなく、空き家の活用や不動産投資としての側面も備わっているからです。

その民泊の中でも、簡易宿所」という形態は、他の民泊の業態(旅館業やホテル業)に比べ、開業要件が厳しくありません。経営者としても運用しやすく、開業に踏み切りやすい業態と言えるでしょう。

JR四国簡易宿所への投資を今後進めていくとしたのにも、増加する民泊需要に対応するための方法としての簡易宿所が今後より求められていくのだろうとの判断があります。

四国インバウンド発展のカギは中低所得層と簡易宿所にあり

四国地方への外国人訪問者には富裕層が多いとの傾向が確認されています。日本政策投資銀行の2017年度の調査によると四国訪問者の約半数の49.2%が高所得者です。

2018年 四国には富裕層訪日客が殺到?今年の四国地方のインバウンド市場を読み解く5つの傾向とは?

日本政策投資銀行では、「訪日外国人旅行者の四国に関する意向調査(2017年調査)」を発行しています。これは、アジア・欧米豪の12地域(中国、台湾、香港、韓国、タイ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス)の海外旅行経験者を対象に、四国地方の訪問意向などをインターネットによるアンケート調査にて調査しまとめたものです。今回は、このレポートをもとに四国地方のインバウンド市場を知るうえで押さえておきたい5つのポイントを解説していきます。インバウンド対策...


一方の訪日経験者全体に占める富裕層の割合は40.3%であり、四国地方への訪日観光客に占める富裕層の割合が全国平均と比べても高いことがわかります。四国地方でのインバウンド対策として富裕層向けの施策は欠かせないものとなっています。

▲四国地方の訪問経験者の所得階層:日本政策投資銀行「訪日外国人旅行者の四国に関する意向調査(2017年調査)~DBJ・JTBFアジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」より
▲四国地方の訪問経験者の所得階層:日本政策投資銀行「訪日外国人旅行者の四国に関する意向調査(2017年調査)~DBJ・JTBFアジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」より

しかし、これからの四国地方のインバウンドを考えていく上で、中所得から低所得者向けにサービス提供していくことも四国全体のインバウンドのパイを増やしていく点でとても重要だと言えるでしょう。これらのことから、安価に宿泊できる簡易宿所四国インバウンドの将来を担う重要なファクターとなると考えられます。

簡易宿所のオープンを皮切りに、JR四国は自社が抱えている鉄道サービスを絡めながら、宿泊業にも展開し、インバウンド業界全体を睨んだ施策を実行していくものとみられます。

まとめ:四国とインバウンドのこれから

先ほどあげた日本政策投資銀行のレポートには訪日外国人旅行者が四国訪問に際して何を期待しているのかの調査結果も述べられています。そこで上位にあげられているのが「農作物や果実の採取(29.8%)」「自然や風景の見物(48.6%)」「登山やハイキング(22.4%)」「サイクリング(22.5%)」「古民家等への宿泊(34.2%)」です。四国への訪日観光客はただ観光地を訪問することのみならず、様々なアクティビティを期待していることがわかります。「古民家等への宿泊」のような四国の地域生活に根ざした体験を望む声も大きくなっているのです。

JR四国Airbnbと提携をする狙いもこの調査結果からわかります。両社は簡易宿泊所と体験型の観光商品を合わせた事業を展開していくことを発表しており、上記ニーズにマッチしているのです。四国島内の潜在的な観光資源を発掘し、富裕層に限らない幅広い層に四国の魅力を発信するにはハード面とソフト面での事業展開が不可欠です。

JR四国は簡易宿泊所を展開すると同時にAirbnbと連携することで四国島内の観光情報を世界向けに発信していきます。これは各種レポートの調査結果と照らし合わせても合理的な施策と言えるでしょう。

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【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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