【連載】橋梁(チャオリャン)Vol.6では、前編に続き、海外MCN組織として、TOP10企業賞を受賞したクロスボーダーネクスト株式会社(以下、CBN社)の代表取締役社長Jessica Ho氏(以下、Jessica氏)の登場です。
女性社長であり、インフルエンサー。CBN社代表が語る中国SNS・Weibo「MCN」を味方につけるべき理由(前編)
近年、日本国内でもYouTuberという職業で生計を立てるクリエイターが活躍するなか、YouTuberのタレントマネジメントおよびメディア制作・配信をサポートする組織の存在が知られつつあります。「MCN」(マルチチャンネルネットワーク)と呼ばれる組織のうち、日本では、HIKAKINなどトップYouTuberたちが所属するUUUM株式会社が有名です。2017年頃から、中国最大級のSNSであるWeibo(微博・ウェイボー)でもそのプラットフォームの社会的影響力の高まりを背景に、「MCN」の活躍...
ここ数年、日本と中国のエンターテインメントが密接な関係になりつつあります。たとえば、映画「君の名は。」も中国では話題を集め、その後日本に訪れてロケ地をめぐる「聖地巡礼」も流行しました。
2001年に日本で上映された宮崎駿監督のジブリ映画「千と千尋の神隠し」は、今年6月から中国で上映され、豪華な声優陣と彼らを起用した凝ったデザインのポスターで宣伝しています。もともと引きの強い「ジブリ作品」であることに加え、かなりの話題となっていました。
日本のアニメを起源としたエンターテインメントが若者を中心に人気となり、今やアニメだけにとどまらず、芸能人やタレント活動、アイドル歌手なども注目を集めています。 最近では、そうした日本の芸能人らをはじめ、全国各地の自治体や企業が中国市場への進出を図るべく、Weibo(微博・ウェイボー)公式アカウントを相次いで開設しています。
中国市場への進出は難しい点もある一方で、「やり方」次第によって十分可能性はあると語るJessica氏。中国SNS市場において、最も有力なプラットフォームとされるWeibo(微博・ウェイボー)のコンテンツ動向などについて、語ってもらいました。▼連載「橋梁(チャオリャン)」:インバウンドにおいて、圧倒的なシェア率を誇る訪日中国外国人。連載「橋梁(チャオリャン)」は、中国マーケットのインバウンド・アウトバウンド分野で話題の「人物・企業」に焦点をあてたインタビュー記事です。現場取材を通して、トレンド情報をお届けします。
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
企業アカウント開設も、中国人に認知されない理由
Jessica氏は、7年間の日中マーケティングの経験において、約200社以上のWeibo(微博・ウェイボー)アカウントの開設に携わってきました。そのなかで、継続してアクティブに稼働するアカウントは数限られているといいます。Jessica氏が語る認知度を上げる大事な要素は、主に3つあります。1. スピード感
中国で、物や人物、サービスを売り出したいとき、商品やブランドの認知度や競合他社など市場調査を行います。その過程において、日本は版権などコンプライアンスを厳しく精査するため、スピード感が落ちる現状があります。Jessica氏は、いかに中国のスピード感に合わせられるかが重要だと語ります。「芸能人やタレント、トップKOLを起用する際、既に契約している企業との縛りによって、他社では公式に露出できない場合があります。規約の制限がないKOLやインフルエンサーを起用するなど、色々な方法があります。まずは露出させることが大事」(Jessica氏)
日本と同じタイミングで露出を図ることが大事であり、日本企業の「スピード感」が課題といいます。
2. 企業の知らせたい情報とユーザーの知りたい情報にギャップ
CBN社は、Weibo(微博・ウェイボー)アカウント開設の他、アカウントの運営代理も行っており、コンテンツ内容を考え、配信を行います。なかには、既にコンテンツ内容が決まった配信のみを依頼されるケースもあり、魅せたいポイントがズレている場合もあるといいます。 「プロモーションする対象物が『焼き物』の場合、その商品にスポットをあてた内容ではなく、きめ細かな作業工程や職人の顔など、見せかたを工夫する必要があります」(Jessica氏)たとえ商品が優れていても、中国人にとって「イマイチピンとこない」という結果になりかねません。自分たちが売り出したい商品のアピールポイントに「ズレ」がないか視点を変えて考えることが大事といえます。
3. 中国人目線のコンテンツ
Weibo(微博・ウェイボー)のコンテンツにおいて、自分たちで発信してもファンが集まらないと嘆く日本の企業に対し、Jessica氏は次のように語ります。「その理由は単純で、『中国目線になっていないから』です」(Jessica氏)
実際に、CBN社が手掛けたプロモーションのコンテンツ投稿の事例をみてみましょう。
日本の女性ファッション誌「and GIRL」とのタイアップ広告で、中国旧暦にあたる「8月7日の七夕」にあわせた企画キャンペーンです。 キャンペーン内容はいたってシンプルで、読者モデルによる夏向けワンピースの投稿をリツイートすると抽選一名に77元(約1,100円)が当たります。
このキャンペーンのポイントとなる「中国人目線」とはどの点にあるのでしょうか。一つは日程、一つは節句の「7/7」に合わせた価格です。こうした工夫が、12万以上のPVの記録につながっています。
「散在する日本の情報」取りまとめ役が必要
Weibo(微博・ウェイボー)やwechat(微信・ウィーチャット)などのプラットフォームには、日本の情報が散在しています。消費者が日本の商品や情報をリサーチするさい、コンテンツも埋もれがちになってしまいます。Jessica氏は、ひとつのサイトに集約させる必要があると語ります。「消費者にとって、情報が散在しているので、まとめないとわかりづらい状況にあります。たとえば、『今日本の薬局で何を買えばいい?』といった情報も、情報を集約してセレクトする必要があると考えました」(Jessica氏)
2017年初頭、Jessica氏は、CBN社をWeibo(微博・ウェイボー)MCNの組織として運営すると同時に、日本のコンテンツを集約した自社メディア「良品志」(りょうひんし)を創設しました。自社メディア「良品志」で日本ファンと日本企業をつなげる
自社メディアのプラットフォーム「良品志」(りょうひんし)の月間アクセス数は10万を記録し、会員数は3万人、Weibo(微博・ウェイボー)とWeChat(微信・ウィーチャット)の公式アカウントは、約35万人のフォロワーを抱えています。
KOLたちによる投稿で、キュレーションメディアの役割も
良品志は、日本のトレンド・ライフスタイル情報を求める中国人ユーザー対し、タイムリーに情報を届ける「日中間をつなぐメディア」として、まとめサイトの役割を補っています。良品志が力を入れている取組みとして、日本商品のプレゼントキャンペーン企画、動画による店舗取材のPR、MCNメンバー20名らによるコンテンツPRがあります。
良品志のコンテンツのうちでも特に、MCNメンバーによるコンテンツの拡散力に強みがあるとJessica氏は語ります。
「ファッション、メイク、観光スポット、美食のカテゴリーに分かれており、各MCNメンバーのWeibo(微博・ウェイボー)アカウントと連携されています。これにより、Weibo(微博・ウェイボー)アカウントのフォロワーにも情報を届けることができ、情報拡散に優れています。キュレーションメディアとして、効率的に情報拡散できる強みがあります」(Jessica氏)
企業ランディングページでタイムリーに情報を拡散
日本の企業がWeibo(微博・ウェイボー)アカウントで認知されない理由のひとつとして、「スピード感」が劣る点を前に述べました。良品志には、サンプリングキャンペーンを通して、新商品を告知するなど、企業のランディングページ運営の役割もあります。 「企業はランディングページを活用することで、中国向けのコンテンツを集約できるほか、タイムリーに中国語で情報発信することができます。まずは、認知度の向上を図ることが大事です。初期のテストマーケティングとして使えます」(Jessica氏)
良品志に込められた思い
企業が売り出したい商品とトレンドをどうやって組み合わせできるか、常にマネタイズを考えていると語るJessica氏。その思いから、自社メディア「良品志」が誕生したといいます。 「『良品志』という名称は、中国人にとってメッセージ性が高く、日本人にもわかりやすい『良品』です。この単語と、同じ志をもつ人たちのコミュニティであり、ログ(日誌)として残る意味で『志』をつけました。英語名のLPZINE(エルピージン)は、『LP』と『MAGAZINE』の造語。雑誌のような読み応えのあるコンテンツ内容であり、企業の商品を知ってもらうきっかけ作りとして、ランディングページとしてまとめることから由来しています」(Jessica氏)インタビューを終えて
MCN組織としてKOLをまとめ、良品志を以てコンテンツを取りまとめ、常に「まとめ役」として徹してきたJessica氏。今後は、ウェイボーの仕組みを理解した上で、MCNの強固なサポートを活用し、企業と消費者の「引き合わせ役」として、コンテンツを編み出していきたいと、強く語ってくれました。中国にあることわざがあります。
「高手在民间」(アイデアは個人のなかにある)
この言葉は、消費者の目線が大事だ、という意味にもなります。
大好きな日本のスイーツを投稿した日々から、MCN組織を立ち上げるに現在に至るまで、「一消費者として、一女性として、日本の商品が好きであること」はJessica氏の一貫した姿勢です。
こうした目線が事業に活かされているからこそ、日本好きのフォロワーに支持されるコンテンツの生産に成功しているのではないでしょうか。
「動画コンテンツは5分以内が鉄則」中国SNSの微博(ウェイボー)で年間3億PVを稼ぐ在日インフルエンサー「七日野鬼」が語る、中国人ファンを惹
2015年2月の中国春節(旧正月)、大型バスに乗った訪日中国人たちが次々と日本製の家電製品を大量買する光景が「爆買い」という表現に置き換えられ、世間をわかせました。それらはパッケージツアーの訪日中国人(団体旅行)によるもので、2016年下半期以降は個人旅行(FIT)との二極化が進みました。その結果、旅行スタイルは「モノ」を買い求める団体旅行客から、日本の文化体験など「コト」を楽しむ個人旅行客まで裾野が広がりました。旅先は、ゴールデンルートと呼ばれる東京や大阪、京都などの主要都市だけでなく、...
「御朱印」集めにハマる中国人、その行動心理から読み解く「爆買い」の次に流行るコンテンツ(後編)
【連載】橋梁(チャオリャン)Vol.4では、前編に続き、微博(ウェイボー)アカウント45万人のフォロワー数を誇る在日中国人KOL 「七日野鬼(ナノカノオニ)」さんの登場です。中国人の「爆買い」現象から4年......中国人の旅行スタイルが「モノからコト」へと拡大しています。その背景を理解するためには、まず中国人の行動心理について知る必要があります。本編では、実際に今中国人が興味を示している日本のコンテンツについて語ってもらいました。▲[七日野鬼(ナノカノオニ)氏] ▼連載「橋梁(チャオリャ...
「中国人マナー違反は、文化の違い」450万フォロワーの在日中国人インフルエンサー「林萍在日本」がコンテンツに込める思いとは(前編)
日本のインバウンド市場で、「KOL」と呼ばれる在日中国人インフルエンサーの存在が注目を集めています。KOLとはキーオピニオンリーダーの略で、多数のファンを持ち、その発言や行動、ライフスタイルがファンに影響を与えるような人物を指します。活躍の場は、主に「微博(ウェイボー)」と呼ばれる中国のSNSです。微博(ウェイボー)といえば、最近では、お笑い芸人の渡辺直美さんや、ジャニーズの木村拓哉さんなど芸能人、株式会社ZOZO社長の前澤友作氏など実業家たちが相次いで公式アカウント開設しています。「林萍...
ファン数450万のインフルエンサー自身が「インフルエンサーは、あくまで起爆剤」と語る理由
【連載】橋梁(チャオリャン)Vol.2では、前編に続き、微博(ウェイボー)アカウントのフォロワー数450万超の在日中国人KOL 「林萍在日本(リンピンザイリーベン)」さんの登場です。微博(ウェイボー)アカウント「林萍在日本」は2012年にスタートし、在日KOLとして2015年から活動を本格的にスタートさせ、早4年の月日が経ちます。驚くべきことは、彼女が仕事や旅行で訪れた地域は、全国47都道府県のうち45都道府県にのぼります。島根県と宮崎県はまだ訪れたことがないといいますが、全国制覇するのも...
中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】
短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。
今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】
【インバウンド情報まとめ 2024年11月前編】UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で:インバウンド情報まとめ【2024年11月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!