インバウンド増加が即観光地のメリットとならない理由…やみくもな集客は悲惨な結果を招く可能性も

近年では世界各地をつなぐ航空便が増え、またLCC(格安航空便)も増えており、世界中で海外旅行が身近になっています。

観光地としては、観光客の増加は地元経済にとって良いことのように思えますが、他方では過剰な観光地化の弊害として環境公害や自然環境の破壊、観光地におけるゴミ処理など、さまざまな問題も引き起こしているという現状もあります。

今回はそんなオーバーツーリズムの影響と対策についてご紹介していきます。


オーバーツーリズムとは?観光地の過剰な混雑が問題に

 オーバーツーリズム(Overtourism)とは、その観光地のキャパシティ(受け入れ容量)を超えて観光客が訪れることを指します。

海外の観光業界では、いくつかの観光都市におけるオーバーツーリズムが深刻な問題となっていることは有名です。

観光客増え過ぎ問題「オーバーツーリズム・観光公害」が世界中で警鐘/を国連世界観光機関(UNWTO)が提唱する新常識「持続可能な観光(サステイ

近年では「オーバーツーリズム」「観光公害」という言葉がよく聞かれるようになっています。今年9月に行われた「ツーリズムEXPOジャパン2018」でも、国連世界観光機関(UNWTO)事務局長、世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)理事長の講演や、世界12か国の観光大臣による会合など、世界の観光リーダーがこの問題に言及しています。今回は「開発のための持続可能な観光の国際年」の成果を中心に、オーバーツーリズムに陥らない理想の状態について紹介しながら、オーバーツーリズムに取り組むメリットを考察します。...

オーバーツーリズムは以上で述べた通り、観光地で受け入れられる人数よりはるかに多くの観光客が訪れることにより起こってしまいます。

押し寄せる観光客によって混雑状態が続いているにも関わらず、インフラの整備が追いつかず地元の生活が脅かされたり、経済的な損失を生み出してしまうこともあります。

オーバーツーリズムによる問題とは?

オーバーツーリズムの主な問題には、生活環境の悪化が挙げられます。

例えば、観光客が押し寄せることでゴミの量が増え、処理が追いつかないことや、バケーション気分で夜間も大騒ぎする人が増えることで、近隣準民の生活環境を乱す可能性があります。

また、観光客の増加によって地元の公共交通機関が混雑してしまったり、渋滞が増えるなどの問題もあります。交通機関だけでなく、街全体が混雑してしまうことでトイレの数が不足するなど、様々な弊害によりそこに住んでいる人の平穏な生活が脅かされることもあります。

これらの問題は最悪の場合、当地の環境破壊に繋がってしまいます。 

世界で起きている観光客増加による弊害とその対策

クルーズ船の停泊地としても人気のあるイタリアのヴェネチアでは、船から多くの観光客が一度に上陸することで、街中のトイレの不足や、下水道の処理が追いつかないという問題が起こりました。「観光と暮らしの共生」を目指すため、行政は旅行客から「入場税」を徴収し、入場人数の混雑緩和と、税収によるインフラ整備に充てています。

ほかには、タイのピーピーレイ島マヤ湾ではオーバーツーリズムが原因で生態系が破壊される問題が起こりました。有名な映画のロケ地になったことから観光客が急増し、小さな湾に1日数千人もの人が訪れるようになりました。

その影響でゴミや日焼け止めなどによる環境汚染が進み、サンゴ礁は80%以上が破壊されてしまうなど、かつての海の生態系も著しく失われてしまったそうです。破壊された自然環境を回復するため、マヤ湾は無期限立ち入り禁止区域となりました。 

日本も他人事ではないオーバーツーリズム

そんな海外で実際に起きたオーバーツーリズムの問題ですが、日本も他人事ではありません。

観光庁は2018年6月に増加する観光客のニーズと地域住民の生活環境の調和を図り、両者の共存に関する対応策を検討することを目的に「持続可能な観光推進本部」を設置しました。

1. 京都のバス問題

日本で起きているオーバーツーリズムの具体的な例として、国内外から年間5,000万人以上の観光客が訪れる京都で、地元の人々がバスに乗れないという問題が発生しています。

日常生活の中でバスに乗ろうとしても、どこも長蛇の列で長時間待たなければならず、特に秋の紅葉シーズンには最も観光客の数が増え、オーバーツーリズムによる公共交通機関の麻痺が問題となっています。

2. 白川郷の渋滞

日本らしい合掌造りの家屋が連なる白川郷では、ライトアップなどのイベントの効果で一度に約8,000人もの観光客が集まるようになりました。

海外における近年の日本文化への関心の高まりからその8割以上が外国人であり、駐車場に入りきれない車の影響で周辺集落が渋滞するなど、地元での生活者に悪影響を及ぼしてしまいました。

3. 沖縄の交通事故

沖縄では、近年外国人観光客が増えていることに伴い、レンタカーの貸出件数も増加し、外国人観光客による交通事故が問題になっています。

沖縄を訪れる個人旅行の訪日客のレンタカー利用率は約30%で、事故件数は2014年から2016年で約3倍にも増加していました。

医療現場でのトラブル事例として、旅行保険未加入により高額な医療費を支払えず帰国してしまうケースも日本各地で起こっています。

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今からできるオーバーツーリズム対策とは

このように、これらのオーバーツーリズムの問題は、遠い海外の国での問題ではありません。日本でも、海外からの観光客の増加に伴い、インフラ拡充の必要性などがわかってきました。

観光客がスムーズかつ安全に観光を楽しめる環境の構築に加え、現地住民の生活環境、当地の自然環境保全のためにも、早急な対策・解決が望まれています。

では、具体的にこれらの問題に対してどのような解決策が考えられるでしょうか。ここからは京都で行われている対策を紹介します。

「手ぶら観光」の推進

オーバーツーリズムの課題解決の一つとして、公共交通機関の混雑緩和などに向け、関西観光本部では「手ぶら観光」と呼ばれる運動の普及が行われています。

「手ぶら観光」とは、観光客の荷物を空港から宿泊施設に直接宅配するサービスのことで、2017年12月から、訪日外国人観光客に向けて周辺の観光施設での「手ぶら観光」に関する多言語併記ガイドブックの配布を開始しました。

荷物を直接宿泊施設に送ることで、観光客が手持ちの大きな荷物で道を塞いでしまったり、観光地の公共交通機関でスペースを取ってしまったりせずに済むことや、行動範囲が広がることで観光客が各地に分散することを狙いとしています。

京都の3つの分散対策

特にオーバーツーリズムによる問題がすでに深刻になりつつある京都では、観光客の量を「制限」するよりも「分散」させることを目標として、「三つの分散対策」に取り組んでいます。

「三つの分散」とは、時間の分散、場所の分散、季節の分散のことを指します。

具体的には、早朝など観光客による混雑が少ない時間帯での観光の推奨をすること、様々な見どころを発信し、特定の場所への観光客の集中を回避すること、混雑期・閑散期をなくし、集客数の平均化を行うことです。

これらはうまくいけば観光資源による収益を守りつつ、オーバーツーリズムの問題解決を目指す対策の好例と言えます。

注目を集める「アンダーツーリズム」とは?

オーバーツーリズムが問題視されるのに呼応して、「アンダーツーリズム」という概念が世界的に浸透しつつあります。

アンダーツーリズムとは、観光客の集中する混雑した都市よりも、これまで注目されてこなかった都市や、静かでのんびりした場所での観光を促進する流れのことです。

その中で、地域の観光マーケティング活動と相まって、観光客の旅の目的の分散化が目指されています。

観光客を闇雲に増やすのではなく、快適に過ごせる環境を提供することが重要

観光客の増加は、地元を経済的に支え、雇用の増加などで街を活気づけるポジティブな面もあります。近年の訪日外国人の増加は、日本の観光地の発展に大きな追い風となってきました。

しかし一方で、オーバーツーリズムによって引き起こされる様々な問題についても常に対策を講じ続けなければなりません。地元環境の維持と、観光客の過ごしやすさの両者を両立するためにも、それぞれの問題点の把握と早期解決が必須といえるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!