今月10日、悲しいニュースが流れてきました。ラグビーワールドカップ(RWC)で盛り上がりを見せている中、新宿・歌舞伎町ゴールデン街で「明らかにラグビー観戦客」と思われる客が飲食店のドアを蹴破るなどして警察沙汰になったといいます。
他にも訪日外国人による「観光被害」は後を絶えず、地域住民や昔からの馴染み客との間で軋轢が生じています。今回は訪日外国人が急増するとみられる一大イベント前に確認しておきたい「トラブル対策」について、事例を交えて紹介します。
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酔ったラグビーファン、ドアを蹴破る…警察沙汰に
10日、歌舞伎町ゴールデン街で酒に酔ったラグビーファンにドアを蹴破られる事件が報じられました。常連客の証言からは、これ以外にも近隣の飲食店で同様の事件が起きていたようです。
また、多くの国では禁止されている「路上での飲酒」を楽しむ客が多く、グラスの返し場所がわからずその多くが放置されていたといいます。
度重なるトラブルから、ゴールデン街にある飲食店の中には「日本語以外お断り」の札を下げているお店もあるといいます。
日本で起こる観光公害
観光客増加には経済活性化や国際交流の増加といった明るい面がある反面、行き過ぎると生活者の日常に支障をきたす場合があります。
「インスタ映え」に夢中 農地へ無断で侵入
北海道の人気観光地・美瑛には、美しい農業景観を求めて訪れるインバウンド客の急増により、観光公害が深刻となっています。
2018年は台湾・韓国・中国からの観光客数が前年比20%増と好調だった一方で、写真撮影時のマナー喚起をどのように行うかに苦心しています。
インスタ映え写真の撮影に夢中になるあまり、農地へ無断で侵入し畑が踏み荒らされる被害や、狭い農道における観光バスの路上駐車でトラクターが農地に入れないケースなどが深刻な問題となりました。
インバウンドで壊される観光地の景観・生活…どう解消する?オーバーツーリズム対策例3選
2018年には訪日外国人観光客数が3,000万人を超え、2020年までに4,000万人を目指しさらなるインバウンド客の増加が見込まれる中、日本各地でオーバーツーリズムによる観光公害が問題となっています。今回は、京都・北海道の美瑛・大阪における3つの例を取り上げ、日本のオーバーツーリズムの実態について見ていきましょう。目次京都の多言語表示の「看板公害」が景観破壊!?北海道美瑛:インバウンド向けの環境破壊対策へ大阪の「下町」でインバウンド客急増!生活空間に観光客まとめ:適切なマナー喚起から住民...
27年続いた「祇園白川さくらライトアップ」が中止される事態に
伝統的なお祭りも常に「環境適応する必要がある」と思い知らされた京都の事例もあります。
京都と言えば歴史的な建造物と豊かな景観、そしてその中で映える桜が名物として知られていますが、春の風物詩として人気の京都市東山区の「祇園白川さくらライトアップ」が今年は中止 となっています。
中止の背景にあるのは、「安全の確保が困難になってきたこと」「マナー違反の観光客が多過ぎること」 だと説明されています。
「観光公害」とは何か?京都の夜桜ライトアップ中止に見る実際の観光公害事例
近年日本を訪れる訪日外国人の数は急増していますが、その中でも、京都を訪れる訪日外国人の伸びは他県に比べても圧倒的です。平成27年度の京都観光総合調査によると、平成27年1月〜12月に京都を訪れた外国人の年間外国人宿泊客数は初めて300万人の大台を突破し、過去最高となる316万人を記録 しました。これは 対前年比+約73%(+133万人)の増加 となり、訪日外国人観光客1974万人のうち、約6.2人に1人が京都に宿泊していた ことになります。こうした状況は観光収入という面ではありがたいのは...
「観光先進国」ではどの様な対策が取られている?
世界の有名観光地では、観光客の入場規制をとる場所も多く存在します。一例を紹介します。
入場規制をとる有名観光地
例えばフィリピンのボラカイ島。世界から訪れる観光客による環境汚染が深刻化し、一時は観光客の立ち入りを禁止する事態にまで陥っています。(2018年10月、6ヶ月の清掃期間ののち再開)そしてその後も入島できる人数を制限するなど措置が取られています。
世界遺産登録のされているインドのタージ・マハルも2018年1月、国内旅行者の一日あたりの入場を1日4万人に制限しています。(入場料1000ルピー・約1700円を支払う外国人観光客は関係なく入場できる)
タージ・マハルには1日平均1万人~1万5,000人が訪れ、週末には通常時の7倍ほどの観光客が押し寄せていました。
訪日外国人との「トラブル」なぜ起きる?どう対処する?
観光立国の先進国や国内事例をもとに、訪日外国人との間に起こり得るトラブルにどんな原因や対処法があるのかを整理します。
文化の問題
トラブルになる一つの原因として「文化」の違いが挙げられます。
例えばスポーツ大会で話題になる、日本人の「清掃」についても私たちからしてみれば比較的当たり前のことです。しかし諸外国では教育が異なり「常識」が違うため、海外メディアで話題になるほど反響を受けています。
オリンピックを目的としている訪日外国人の場合、「日本文化に興味がある・知っている」割合はこれまでよりも低くなると考えられます。
まずは日本と諸外国の文化の違いについて、受け入れる側の日本でも理解を深めることが必要でしょう。
日々訪日外国人と接する機会があれば良いですが、もしもその環境を作ることが出来ない場合は、インバウンドに関する記事を読んだり旅行関係のブログを読んだりいう行為を通じて、積極的に学ぶ姿勢が大切です。
その上で「日本ではこれが文化であって常識である」と訪日外国人に教えてあげることができたら、万が一トラブルが起こってしまった場合でも、互いにネガティブな評価付けをしないで済むかもしれません。
言葉の問題
トラブルになるもう一つの原因として「言葉」の問題が挙げられます。
こちらはコミュニケーションの根幹を司る大事なスキルでありますが、英語をはじめとする各外国語に対し苦手意識をもつインバウンド担当者は少なくないことでしょう。しかし「言葉」ができないと、忠告することすらできません。
そう簡単に乗り越えることのできない「言語の壁」を少しでも低くするため、たくさんのサービスが生まれています。次々と登場するテクノロジーを前向きに取り入れていく姿勢が、実は「言葉の問題」を乗り越える第一歩にもなるはずです。
インバウンドテックとは?通訳ソリューションのアウトソーシング・導入メリット・導入事例を紹介
訪日外国人客数が増加している近年、多言語対応によるインバウンド対策はますます注目を集めており、その重要性は多くの企業や店舗において認められています。株式会社インバウンドテックでは多言語コンタクトセンターサービスを中心に通訳ソリューションを提供しており、同社が提供する通訳サービスは外国人客への接客を要する企業や店舗において導入されています。目次インバウンドテックとは?何が出来る?インバウンドテックとは?BPOとは?どんなサービスがある?インバウンドテックのサービスを導入するメリット簡単に導入...
できていますか?トラブル対策チェックシート
今後、増加する訪日外国人を受け入れるにあたり、以下のような視点が重要になってくると考えられます。
⬜︎文化の違いで「トラブル」が起きてしまった場合、なぜ相手がその行動を取ったのか「文化的背景」を含め理解ができる
⬜︎日本人として「当たり前」のことでも訪日外国人にはきちんと伝えないと理解してもらえないと考えている
⬜︎相手に「忠告」を理解させられる手立てがある・既に策を打っている
⬜︎近隣の地域住民や同業者と協力して「トラブル」を解決する準備ができている
⬜︎過去にトラブルになった「事例・解決策」を知っている
⬜︎宗教的や人種的・国別差別に繋がらない方法で「対策」をする術を知っている・既に行なっている
⬜︎インバウンドで使える「テクノロジー」やサービスをよく勉強している・取り入れている
上記のリストで、チェックが多ければ多いほど「トラブル対応」に向けた準備ができていることになります。チェックできなかった項目は、これから前向きに対処していくとよいでしょう。
まとめ
来年2020年の「東京オリンピック」に向けて、観光問題の解決、緩和には今から手を打っておけることがあるはずです。特に「相手を理解する姿勢」「伝わるコミュニケーション」は一朝一夕に身につくものではないので、小さなところから徐々に浸透させていく姿勢も必要になってくるでしょう。
訪日外国人はこれまでになかった市場を生み出していますが、文化的背景の違いなどを理解したコミュニケーションは滞在の質を上げることにもつながります。こうした取り組みは、より市場の成長を加速させていくでしょう。
<参照>
ラグビーW杯で外国人が「新宿ゴールデン街」に殺到。組合側は対策も
【インバウンド情報まとめ 2024年11月後編】中国、タイの2025年祝日発表 ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に11月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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