上野・御徒町エリアと言えば、訪日観光客が増加している地域として知られています。
平成30年のデータによると、台東区の年間外国人観光客数は前年比で14.8%増加しており、今後もますます外国人の注目度は高まっていくと考えられます。
このエリアで、ひときわ外国人観光客でにぎわっているお店があります。紫色の店舗が目立つ「多慶屋」です。
インバウンド関係者なら一度は耳にしたことがあるお店でしょう。今回は改めて、多慶屋がなぜ外国人観光客から選ばれているのか、現場を見て感じたことを整理したいと思います。
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多慶屋(たけや)とは?
多慶屋の1号店は1947年(昭和22年)とかなり昔のことになります。創業当初は、現在の御徒町本店の本館B棟がある場所(地下鉄日比谷線仲御徒町駅すぐ)からスタートしています。
本館B棟は現在、8フロアで様々な商品を販売しています。最上階は2019年11月15日(金)にダイソーをオープンする予定です。
また連絡通路でつながる本館A館もあり、こちらは9フロアを有しています。
現在は御徒町本店にはこのほか6つの施設を展開しています。
![▲[各店舗の位置]:多慶屋公式サイトより ▲[各店舗の位置]:多慶屋公式サイトより](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/4909/main_4b30412ff049c9ec831269633dcf5ab7.png?auto=format)
事業内容は「家電製品、パソコン、衣料品、時計宝飾、食品、酒、日用雑貨、スポーツ用品、薬、家具、化粧品、文房具等の総合販売」です。
様々な個人向け商品を扱う総合ディスカウントストアとして、昔から上野・御徒町エリアの方々に親しまれてきました。店舗全体を彩る紫色もトレードマークとして有名です。
多慶屋に訪れる外国人観光客、地の利も?
冒頭でも述べた通り、多慶屋が位置する上野・御徒町エリアは、そもそも外国人観光客から人気です。
これは、東京駅から近いため、ゴールデンルートの一つである銀座へ買い物に訪れた際や、秋葉原や池袋といった人気スポットから足を伸ばしやすい場所にあること、そもそも成田空港と京成線でつながれていることなどが影響していると考えられます。
特に銀座を訪れる人々は買い物を目的とする方が多くなっており、そもそも買い物意欲が旺盛だと考えられます。様々な商品を並べて呼び込みも積極的な上野アメ横では、彼らの消費意欲を満たす体験を提供することに成功していることも考えられます。
同時に、上野動物園や上野の森美術館など、買い物だけでない観光スポットが豊富なことも上野人気に一役かっているでしょう。
台東区自体が「世界に輝く ひと まち たいとう」を将来像として掲げ、観光客の誘致に力を入れています。このようなエリアに位置していることは多慶屋にとって大きなアドバンテージとなっているはずです。
「守り」と「攻め」の取り組み
多慶屋では、来てくれたお客様に快適に買い物をしてもらうために、不便を感じさせないための「守り」といえる対策を講じています。
同時に、ターゲットをセグメントし効果的に訴求していく「攻め」の取り組みも進めています。
この中で、多慶屋が外国人観光客から支持される大きなポイントは以下の3つです。
1. 複数言語に対応している売り場
多慶屋の各階エレベーター前には、日本語、英語、タイ語、中国/台湾語、韓国語のパンフレットが置いてあります。
また、この日は医薬品と化粧品フロアにタイ人と中国人のスタッフさんがいました。
特に薬や化粧品などは、どんな成分が入っているか気になる方が多い商品のため、自分の国の言語で説明してくれるスタッフがいるというのは安心感があるでしょう。
また、外国語対応専門のスタッフがその場にいないことも想定しているからか、多言語POPも店内にたくさん設置されていました。多慶屋の公式サイトも5言語で表示を切り替え可能です。
Pake も設置されており、様々な言語で商品情報を検索できます。


2. キャッシュレス決済/免税に対応しているレジ
日本以外の国や地域では、キャッシュレスでの取引が広く浸透しています。訪日外国人でも、日本の現金文化に戸惑う方も少なくありません。
キャッシュレス比率 日本20%・中国60%・韓国96%/もはやキャッシュレス後進国の日本
2018年に入って、ここ日本でも、コンビニなどでのお支払いをスマートフォンで済ませる人の姿をよく見かけるようになりました。モバイルQRコード決済サービスも続々と誕生しています。そんな日本のキャッシュレス比率は、なんとまだ2割程度。ところが、訪日大国であるお隣の中国では、その比率は60%を超え、韓国は限りなく100%に近いと言われています。まだまだ現金のみでの支払いが必要なシーンが多い日本での旅行。海外からのお客様をお迎えし、いざお支払いの際に「現金がない!」…などというエピソードもよく聞き...
多慶屋では、様々なタイプのキャッシュレス決済に対応しています。現金を持ち合わせていない外国人観光客でも快適に買い物できます。
最近では浸透してきた免税ですが、多慶屋も対応しています。
9月の時点では、8%の免税と9%のディスカウントが適応されるようになっていました。
免税に関するパンフレットが各フロア中に貼られており、情報が目に付く場所に貼りだされていました。
3. ターゲットへ効果的に訴求する売り場
上記2点の取り組みは、多慶屋に来てくれたお客様を取りこぼさないための「守り」のアプローチと言えるでしょう。
一方で、売り場の陳列では、ターゲットを意識し、積極的に商品を提案する「攻め」の姿勢が見られます。多慶屋の店内は多言語対応が進んでおり、掲示されている言語の数が多いにも関わらず、すっきりと見やすいです。
その理由として「一つの商品に複数言語が羅列されているPOPが少ない」ということが上げられると思います。タイ語のみ、中国語のみのPOPも多く、やみくもに複数言語を併記していません。
しっかり商品ごとに分析をしてターゲットを絞り込んでいることがうかがえます。

また、中国人の方をターゲットにしていると考えられる商品については、中国人KOLの方の写真とともに、Weibo(ウェイボー)へ遷移させるQRコードがついています。
中国ではFacebookやTwitterといった他国のインターネットサービスへのアクセスが制限されています。こうした中で、Weibo(ウェイボー)は中国人にとって重要な情報収集ツールとなっています。
また、中国の方が買い物をする場合には「一つの情報だけでは信じられず、複数のサイトで情報収集をして購入を決定する」傾向にあると言われています。
日本のPOPという一つの情報だけでなく、このような中国人向けのSNSなど、複数のプラットフォームに口コミを載せることは、特に中国人消費者の購入意欲を高めることにつながります。

Weibo(ウェイボー)とは?中国SNSの機能・活用術・事例
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訪日中国人観光客の特徴
'爆買い'という流行語が現れるほどに存在感を放っている訪日中国人観光客。日本国内でも大きな注目が集まっており、彼らに関するニュースやコラムを目にする機会は少なくありません。
![▲[タイ語のPOPを付けた医薬品]:訪日ラボ編集部撮影 ▲[タイ語のPOPを付けた医薬品]:訪日ラボ編集部撮影](https://static.honichi.com/uploads/editor_upload_image/image/4894/main_img_0050.jpg?auto=format)
多慶屋がターゲットとするのは中国人観光客だけではありません。タイ語でPOPが書かれた商品が平積みにされた台も目立つところに置かれています。
実際に、タイの方と見られる人が興味深そうに陳列を見ていました。また、化粧品フロアでは、タイ語を話す店員と観光客がタイ語でやり取りしている姿も見られます。
上記のような店頭での取り組みだけでなく、多慶屋はタイの旅行博に出展をしており、積極的なプロモーション策を打っていると言えるでしょう。
まとめ:インバウンド目線で考える多慶屋の魅力とは
外国人観光客にとって買い物がしやすい環境整備、ターゲットへ効果的にPRする売り場づくりという「守り」と「攻め」の対策がバランスよくなされていることが多慶屋の大きな魅力です。
小売業界全体に言えることですが、消費者に店頭まで足を運んでもらうのは非常に大変です。コストをかけて集客したのであれば、その場で満足してもらえるように精いっぱい取り組むべきでしょう。
多慶屋は「来てくれた方にいかに不便な思いをさせないか、そして魅力を感じてもらうか」の重要性を理解し、来てくれた方の満足度を上げ続け、口コミやリピートを獲得するという地道な努力を重ねて成功してきたお店と言えます。
また、多慶屋の店舗では訪日外国人観光客に対してのみならず、既存の日本人顧客に対する配慮も多く見られました。
訪日観光客の取り込みに傾倒しすぎて、時に日本在住の消費者をうまく取りこめなくなってしまうケースも見られます。こうした点から言っても、多慶屋はバランスの取れた店舗デザインや運営に成功しています。
これから様々な地域で訪日観光客が増えていくと予想される中で、見習うべきエッセンスがたくさん見られる事例と言えるでしょう。
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インバウンド対策事例集
2016年、政府の当初目標2000万人を軽々と突破したインバウンド。これをうけ、政府は「明日の日本を支える観光ビジョン」で目標を上方修正し、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人とすると定めました。今後確実に成長していくインバウンド市場を捉えるためにも、他社や自治体、団体のインバウンド対策事例を研究することは必要不可欠です。他社の事例を参考にしながら「これなら自社でもできそう」「こういう成功事例、失敗事例があるのか」というのを参考にしながら自社のインバウンド対策の施策に活か...
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【7/3開催】宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」
インバウンド需要の高まりに加えて2025年は大阪・関西万博の開催など、国内旅行者に限らず訪日観光客の増加も加速する日本。今、国内観光の需要は増加する傾向であり、ホテル・宿泊業界は大きなビジネスチャンスの時代を迎えています。このような状況において、宿泊施設としての取り組みやサービスの品質改善は、お客様に選ばれ続けるための最重要課題となっています。
本イベントでは「顧客への情報アピール」「顧客体験(ゲストエクスペリエンス)」「運営のデジタル化」など、施設運営に必要なをテーマを、市場の最前線を走るエキスパートたちが集結。お客様が施設を見つける「旅マエ」から、実際に滞在する「旅ナカ」まで、あらゆるフェーズにおける最新戦略と成功事例を徹底解説します。
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→宿泊のイマを考える「ホスピタリティサミット」【7/3開催】
【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
<こんな方におすすめ>
- インバウンド戦略の策定・実行に課題を感じている経営者・担当者
- 最新の市場動向や成功事例を把握し、事業成長に繋げたい方
- 業界のキーパーソンと繋がり、新たなビジネスチャンスを模索したい方
- 小売・飲食・宿泊・メーカー・地方自治体・DMO・観光/アクティビティ事業者
- インバウンド関連サービス事業者、およびインバウンド業界に興味がある学生
【インバウンド情報まとめ 2025年6月後編】「2030年6,000万人・15兆円」の目標達成に向けた議論 ほか
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この記事では、主に6月後半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
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