インバウンド誘客を加速させるにあたり、対策を講じるべき課題を見出すためのキーワードの1つとして、「カスタマージャーニー」が挙げられます。
元々マーケティング用語の「カスタマージャーニー」は、消費に関する一連の行動や思考・感情の流れを「顧客(カスタマー)の旅(ジャーニー)」に例え、時系列で分析するための考え方を指します。
この場合は顧客を旅行者に置き換え、文字通り「カスタマージャーニー」として考えることも可能です。
今回は『JTB訪日旅行重点15カ国調査』のデータをもとに、旅行者の「カスタマージャーニー」について市場別に考察し、インバウンド対策における課題を解説します。
インバウンドの最新情報をお届け!訪日ラボのメールマガジンに登録する(無料)
「ファネル」で訪日客の一連の行動や思考・感情の流れを捉えよう
本調査では、15カ国における訪日旅行の潜在顧客に対し、事前スクリーニングを実施した上で、結果を「認知」「検索」「訪問」「再訪意向」の4段階で回答を聴取し、その流れをファネル(ろうとの意味)というグラフで示すことで、インバウンド誘客の可能性と全体的な傾向が明らかになりました。
特にインバウンド誘客が活発化している東アジア市場では、さらなるリピーターを獲得する際に、重要なヒントが把握できる手法と言えるでしょう。
ファネルでは、ある段階から次の段階に至った割合を「変換率」で示すことで、調査対象全体のうち日本に訪問し再訪の意向がある人の割合が、ビジュアルでわかりやすく把握できます。
台湾の例を見てみると、調査対象全体のうち、日本の具体的な都道府県を知っている人が94%、そのうち検索をしたことがある人は92%、さらにそのうち実際に訪問した人は80%、再訪意向のある人は94%という結果が伺えます。
香港・台湾・シンガポールは「検索」後の訪問割合の高さが顕著に
上記のファネルを参照すると、インバウンド市場別の傾向の違いが、ビジュアルとして一目で把握できる効果があります。
アジア10カ国の結果を比較してみると、「検索」後に実際の訪問に至った割合が高くなったのは、前述した台湾に加えて香港が92%、シンガポールが85%という結果です。特に香港においては、「認知」から「訪問」に至るまで常に9割以上という非常に高い変換率となりました。
一方で、検索はするものの訪問にまでは至らない「離脱率」において、中国は27%(変換率73%)、韓国は23%(変換率77%)となっており、中国と香港の間では変換率に2割近い差が見受けられます。
離脱率が高い傾向にある中国や韓国市場においては、訪日旅行に期待することを的確に把握し、旅マエの段階で訪日旅行へのモチベーションが高まるようなプロモーションや情報発信が求められるでしょう。
民泊は「Wi
国が進める「観光立国」の政策により、日本を訪問する外国人観光客の数は年々着実に増えています。特に2020年の東京オリンピック、さらに2025年の大阪万博を控え、問題になっているのが宿泊施設の不足です。そこでこの記事では、近年注目されている「民泊」について、どんな人が利用し、どんな施設が人気を集めているのか解説します。目次市場拡大中の民泊、利用客層は?民泊利用者は東アジアが中心利用者年齢層は若く、家族連れなども利用民泊利用層が訪日旅行に求めるもの民泊に最低限取り入れたいアイテムWi-Fiは最...
欧米豪ではフランス人の「検索」転換割合が突出
米国・豪州・英国・フランス・ドイツといった欧米豪市場では、アジアとは異なる傾向が見受けられます。
5カ国のうち日本を「認知」した上で「検索」に移る割合が最も多いのはフランスで、71%となりました。米国の64%、豪州の65%、ドイツの40%などと比較すると、検索転換割合が突出していることがうかがえるでしょう。
一方で、フランスは「検索」から「訪問」に至る割合が最も少ない側面もあり、離脱率は56%にものぼっていることが明らかになりました。
フランスでは2018年7月から2019年2月まで、日仏友好160周年を記念する文化交流事業「ジャポニスム2018」が開催されていたこともあり、ヨーロッパの中でも日本文化や訪日旅行に関する関心の拡大が顕著です。
今後は、実際の誘客に繋げるためのプロモーションや旅マエの不安要素の解消が求められます。
データでわかる訪日フランス人観光客
欧州2位の巨大市場:2016年英国に次ぐ客数の伸び&消費額を記録ポイントは4月・7月・10月:春夏秋バランスよく訪日客数が増加
来場者の半分が外国人「チームラボボーダレス」驚異のインバウンド人気を実現した”3つのポイント”
MORI Building DIGITAL ART MUSEUM: EPSON teamLab Borderless(以下「チームラボボーダレス」と表記)は、2018年6月の開館から一年で世界最大級規模の年間観客動員数を達成しました。実はチームラボボーダレスの来場の約半数は外国人です。また、米TIME誌が選ぶ「世界で最も素晴らしい場所」2019年度版にも選ばれています。今回は、驚異のインバウンド人気を実現している「チームラボボーダレス」から、インバウンドビジネスのポイントを考えてみます。目...
フランスのインバウンド観光客対策/日本との関係は?なぜ日本文化好き?フランス人向けのおもてなしを研究
日本とフランスで国交が結ばれて、2018年で160周年となりました。地理的な距離にもかかわらず、フランスでは日本文化に親しむ人も少なくありません。 アニメやマンガといったサブカルチャー、あるいは伝統文化など、様々な日本文化がフランス人の興味の対象となっています。 2012年以降、毎年の訪日フランス人の数は増加し続けています。2018年はイベント「ジャポニスム2018」、また例年、日本文化に触れあえるジャパンエキスポが開催されています。 世界一の観光客数であるフランスはどのようなイ...
まとめ:インバウンドの潜在顧客に対するアプローチ方法を見極めよう
本調査において、検索段階で離脱せず実際の訪問につながったケースで旅行先として日本を選んだ理由を見てみると、米国では「日本の文化や歴史に興味があったから」が最も多く、残る14カ国では「日本の自然や風景が魅力だったから」を挙げていました。
ほかにもフランスでは「日本のアニメやゲームやコミックなどに関心があったから」が3割を占め、韓国では「温泉が魅力であったから」の割合が他国と比べて高いなど、市場別の異なる傾向も明らかになりました。
「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の市場ごとのプロセスに着目し、訪日旅行の意思決定に繋がるタイミングや要因を把握した上で、インバウンド対策に反映していくことが重要と言えます。
<参照>
・JTB INBOUND SOLUTION:旅行者の「カスタマージャーニー」とは?調査データから意思決定のタイミングを紐解く
・訪日ラボ:【カスタマージャーニーで見るインバウンド】小売店のための「旅マエ・旅ナカ・旅アト」の正しい意味・対策を解説
中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】
短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。
今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
詳しくはこちらをご覧ください。
→中国SNS「RED(小紅書)」最新情報セミナー:訪日ラボ社内勉強会の内容を特別に公開します【訪日ラボ トレンドLIVE! Vol.6】
【インバウンド情報まとめ 2024年11月前編】UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で ほか
訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
この記事では、主に11月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。
※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
※口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。
詳しくはこちらをご覧ください。
→UberEats ロボット配達開始、万博需要見すえ大阪で:インバウンド情報まとめ【2024年11月前編】
今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」
スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。
「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!