日本の名所を巡る広域観光周遊ルートとして、最も有名なルートが「ゴールデンルート」です。
ゴールデンルートとは、東京、富士山、名古屋、京都、大阪をそれぞれ観光する一連の周遊ルートのことを指します。
この中には日本の中でも日本を代表する観光地が数多く含まれており、はじめて日本を観光する訪日外国人にとっても分かりやすい観光ルートだと言えます。
実際、ゴールデンルートに沿って観光を楽しむ訪日外国人は数多く存在するため、ゴールデンルート沿線の区域には訪日外国人の流入が起こりやすく、沿線の各県では観光客の訪問者数が増加する傾向にあります。
しかし、ゴールデンルートに含まれている京都府や大阪府に隣接する兵庫県や滋賀県では、訪問者数が伸びている一方で消費金額は減少傾向となっています。
今回はこれらの2県に焦点を絞り、訪日ラボ著書『インバウンド調査報告書』のデータをもとに消費金額が伸び悩む理由と対策について解説します。
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兵庫県のインバウンド動向
まずは京都府と大阪府に隣接している兵庫県のインバウンド動向を解説します。
兵庫県は中華街や外国人居留地など、古くから外国人の往来が見られた神戸市、国宝・重要文化財として知られる姫路城、平安時代以前からの歴史を持つ城崎温泉など、非常に多くの観光地を抱えています。
訪問者数と宿泊者数は共に増加
2019年上半期のデータを見てみると、兵庫県における訪日外国人の訪問者数は102万8,517人を記録し、前年同期と比べて3.8%増加しました。また、訪日外国人の宿泊者数は70万1,740人を記録し、前年同期と比べて19.2%増加しました。
兵庫県は上記のように豊富な観光資源を有するため、中国や欧米豪圏を中心に数多くの外国人観光客が来訪しているようです。
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しかし、消費額は大幅にダウン
一方、2019年上半期の一人当たり消費金額を見てみると20,813円となっており、前年同期と比べて29.9%も下落しています。また、消費総額は214億645万8,534円と、前年同期と比べて同じく27.3%も下落しています。
消費金額を費目別に見てみると、娯楽等サービス費と交通費の下落に注目できます。娯楽や交通に使われる金額が減るということは、兵庫県の中で移動、観光をしないで次の目的地へ行ってしまう人も少なくないということが考えられます。
また京都や大阪などのゴールデンルート地域からアクセスが良いにも関わらず、訪日観光客は兵庫へと周遊に来ていない可能性もあります。兵庫県にある多数の観光コンテンツは、こうした地域を訪れる訪日観光客にうまくアプローチできていないのかもしれません。
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滋賀県のインバウンド動向
次に、ゴールデンルートに含まれる京都府に隣接する、滋賀県のインバウンド動向も解説します。滋賀県は琵琶湖、彦根城、比叡山延暦寺などの歴史のある観光地を多く有しており、歴史好きの訪日外国人にとっては魅力的な目的地となっているようです。
訪問者数は増加も、宿泊者数は減少
2019年上半期のデータを見てみると、滋賀県における訪日外国人の訪問者数は10万8,854人を記録し、前年同期と比べて4.2%増加しました。しかし宿泊者数は減少しており、京都から日帰りで観光をしたり通り過ぎるだけにとどまる外国人観光客が増えつつあるという仮説が成り立ちます。
宿泊施設の中では旅館とリゾートホテルにおける宿泊者数の減少率が特に高くなっています。
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兵庫県と同じく、消費金額は大幅にダウン
滋賀県における2019年上半期の一人当たり消費金額を見てみると2万7,644円となっており、前年同期と比べて21.2%も下落しています。また、消費総額は30億911万5,429円と、前年同期と比べて同じく17.9%も下落しています。
中でも特に宿泊費の下落が著しく、前年同期と比べて44.6%減少していることからも、滋賀に泊まらない観光客が増えていることがうかがい知れます。
一方、買物代は前年同期と比べて44.8%増加しているため、一定の買い物需要が存在することも同時に分かります。
滋賀県は今後宿泊者の獲得に力を入れていくことで、消費金額の減少にストップをかけることができるかもしれません。大阪や京都を観光する際の宿泊先としてのポジションを確立していく戦略や、すでにファンがいると考えられる商業施設の魅力を訴求することも有効でしょう。
国籍別に一人当たりの消費金額を見てみると、韓国、台湾、香港、タイなどアジア諸国からの観光客による消費金額が特に減少しています。東南アジアからは、ビザ緩和やLCCの就航増加により訪日旅行者が増えていますが、同時に欧米豪や中国ほどの消費力がない属性であるケースも多くなっています。
アジア諸国から日本はアクセスに優れており、近年リピーターも多くなっています。こうした属性に響く観光コンテンツの開発や情報発信によるさらなる訪日客数の増加、一人当たりの消費単価を上昇させるような取り組みが課題解決に有効でしょう。
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ゴールデンルート近隣エリアの強みを最大限に、リピート層も意識
兵庫県や滋賀県は、京都府や大阪府などゴールデンルート上の人気観光地の近隣に位置するため、そこからのアクセスの良さを活かしたインバウンド対策により、巻き返しも期待できるでしょう。
今後インバウンド市場においては、リピーターが増加していくと考えられます。こうした層にアプローチできるようなコンテンツの開発により、新たな市場を開拓することも可能となるはずです。
一方、アクセスの良さは滞在時間の短さも引き起こしかねません。旅マエ観光客へのプロモーションによりこうした事態を防いだり、ゴールデンルート近隣の区域は訪日外国人に日本の日常風景を体感してもらえる機会にも恵まれています。
次に日本に来たときはここに泊まりたい、と思えるような宿泊ニーズを踏まえ、旅ナカでの消費を促せるようなインバウンド対策が実施できると良いでしょう。
インバウンド戦略の検討には、最新の動向が一目で分かるインバウンド調査報告書2020をご活用ください。
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本調査報告書について
本調査報告書は「訪日ラボ」が、2018年上期から2019年上期にかけてのインバウンド市場を徹底的に分析することで、2020年上期のインバウンド市場を展望する内容となっております。
本報告書の制作にあたり、観光庁やJNTOなどが提供する公的なデータ、株式会社ナビタイムジャパンからのデータ協力、そして自社メディアにて集積した膨大なデータを基に分析しており、変化の激しいインバウンド業界の方にとって価値のある情報を提供することを目的としています。
構成・各章の概要は以下の通り。
- 第1章「市場全体データから分析するインバウンドの現在」
- 訪日者数や消費金額総額等のマクロデータに加え、業界を支える事業者へのアンケートも交え、インバウンドの現在の趨勢についてまとめています。
- 第2章「都道府県別インバウンドデータに見る トレンドと課題」
- 全国47都道府県を9エリアに分け、県別に各種の公的データを集計。また、NAVITIME提供のインバウンドGPSデータによる宿泊者数や移動データも収録し、外国人訪問者の動向と消費の詳細が分かるデータとしてまとめています。
- 第3章「国・地域別インバウンドデータに見る トレンドと課題」
- 政府の指定する重点市場20か国について各種データを集計し、各国の訪問動向と消費内訳をまとめています。どの月にどの県へ訪問、宿泊がなされ、なにを期待して訪日したのか。またどの品目により多くの消費がなされたのか。次にインバウンド対策として打つべき手についてデータを分析しています。
- 第4章「業界別インバウンド市場ニュースと事例」
- 2019年1月-6月期において訪日ラボの人気記事を業界ごとにリストアップし、それらをPVの大きかった順に並べ、キーワードを抽出しています。メーカー、交通、宿泊、小売、そして地方自治体のニュースの記事が注目を集め、話題となったのか。業界ごとに分析・解説しています。
- 第5章「インバウンド対策ソリューション企業一覧」
- インバウンド向けに受け入れ対応したい・プロモーションしたい事業者をサポートする、インバウンド対策サービスをまとめ、リストアップしています。
書籍情報
書名:インバウンド調査報告書2020[2019年上期のデータから2020年上期を展望する]
著者:訪日ラボ
発行所:株式会社インプレス
発売日:2019年12月24日(火)
価格:CD(PDF)版、ダウンロード版90,000円(税別)CD(PDF)+冊子版100,000円(税別)
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短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。
今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。
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