外国人が「華道」に注目する理由とは?歴史や生け花との違い、海外の反応

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以前、インバウンド需要の中心となっていたのは、「爆買い」という言葉に代表される「モノ消費」でした。しかし訪日観光の波が一巡し、近年ではインバウンド需要のトレンドが買い物から茶道や華道と言った、日本古来の文化を学ぶ「体験型消費(コト消費)」への移行が指摘されています。

そこで今回、訪日外国人からも人気の高い「華道」に着目し、グローバル化の現状と合わせて、外国人向けの華道教室の様子などをご紹介します。

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華道とは

四季それぞれに異なる自然を楽しむことができる日本において、草花を切り取り、それを飾ることで命を学び、空間芸術を形成するもの、それが華道です。

まずは華道の歴史や他の芸術作品との違いについて解説します。

華道の歴史

華道の原点は、6世紀に日本に伝来した、仏教における仏に花を供える風習(仏前供花)だといわれています。そこに日本古来の四季の花を愛でる習慣や、八百万に神が宿るとする宗教観などが混じり合い、華道の原点が形成されました。

現在の形の華道が確立されたのは、室町時代前期です。この時期に床の間がある書院造りの建築様式が完成し、床の間に、決められた方法に基づいて生けた花を飾る習慣が生まれました

さらに江戸時代中期以降、庶民が手軽に楽しめる「生花(生け花)」が広まり、様々な流派が生まれ、華道は隆盛を迎えました。現在は全国に、2,000~3,000の流派があるとされています。

華道と生け花

生け花と華道は同じものとして扱われる場合もありますが、実は似て非なる存在です。

華道は「道」という言葉がついていることからも分かるように、花を生けるだけではなく、客人をもてなす心や花の命を尊ぶ心、さらにはそうした精神を学ぶことで自分自身を成長させることが一つの目標となっています。

そのために華道には様々な流派があり、流派ごとに「型」も異なります。

さらに華道では、習熟度に応じて「お免状」と呼ばれる資格制度が設けられているのも特徴の一つです。

一方生け花は、庶民の中で広がっていったことからもわかるように、型に縛られずに、自由に花を生けて楽しむのがその基本姿勢です。

生け花とフラワーアレンジメントの違い

花を自由に生けるものとしては、生け花の他にもフラワーアレンジメントがあります。そこで生け花とフラワーアレンジメントの違いについても触れておきます。

フラワーアレンジメントは、欧米が発祥の技術です。フラワーアレンジメントにおいて重要視されるのが見た目の美しさと華やかさで、多くの色や花の種類を用いることが特徴であることから「足し算の美学」とも称されます。

一方、生け花の場合はその逆で、最低限の数の草木を用いて豊かな空間を作るのが特徴です。そのため「引き算の美学」と称され、両者は真逆の価値観の上に成り立っています。

グローバル化が進む華道

日本の伝統文化の中でも、華道は早くから流派の別を問わずグローバル化に積極的に取り組み、成功を収めた事例だといわれています。

華道を学ぶことは、日本の文化的背景や精神を学ぶことにも通じるため、華道のグローバル化は、日本文化に対する理解者を増やすことにも貢献しています。

ここからは華道がグローバル化に成功したポイントについて、詳しく解説します。

西洋の花材も使用

華道は、室町時代に「唐物」と称された、中国からもたらされた器に草花を挿した「立て花」から発展したといわれており、その派生期から海外の影響を色濃く受けてきた歴史があります。

この気風は、その後も引き継がれます。

明治維新により鎖国状態から一転、広く世界に門戸を開いた日本には、西洋の草花が輸入されるようになりましたが、華道の世界ではそうした西洋の花材を積極的に取り入れ、さらには西洋風の建築様式やインテリアに合うスタイルも考案していきました。

海外支部

華道界全体に流れる新進気鋭の気風は、現在も健在です。

華道にはいくつかの流派が存在しますが、どの流派も海外進出に熱心で、世界各地に積極的に進出を図っています。

華道の代表的な流派である池坊は約100支部、小原流は64支部、草月流は約120支部もの拠点やスタディーグループが海外にあるほか、英語や中国語の華道教本も多く発行されており、華道を趣味として楽しむだけではなく、免許取得を目指す外国人が数多くこうした場合で学んでいます。

外国語教材

華道の代表的な外国語教材には、次のようなものがあります。

  • 「The Joy of Ikenobo Ikebana」 池坊流の華道を紹介する英文のテキストです。「生花正風体」と呼ばれる伝統的な技法から、約束事にこだわらない自由さが特徴の「自由花」まで、図版や写真を多用し、基本から紹介している初心者向けのテキストです。
  • 「Translation Booklet of Shimputai Soron」 現代の暮らしに適応する新たな生け花として、1977年に家元・池坊専永により発表された「生花新風体」について解説した一冊です。英語以外に中国語に翻訳されたものがあります。

外国人向け華道(生け花)教室のようす

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外国人留学生向けの華道イベント(奈良市)

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奈良県の華道会の会員がサポートし、生け花の作法や歴史について基本的な講義を行い、さらに花ばさみの使い方や花の挿し方といった実践を指導して生け花の魅力を伝えるもので、日本にいながら日本文化に触れる機会が少ない外国人留学生にとっては、華道と触れ合う貴重な機会であり、気軽に参加できるイベントだといえます。

アメリカの池坊いけばな教室

池坊の現地支部がある場所に1年に1度、特派講師を派遣して指導する形式の教室です。

花材や器の仕入れ一つとっても日本と比較すると、海外の教室は難しい環境に置かれています。

しかしアメリカなどは庭が広い住宅が多いため、自分で花材となる草花を育てているケースも多いようで、そうした現地特有の花材を使いながら、日本から来た有資格者の講師が本格的な指導をすることで、現地の方の技術レベルやモチベーションアップにつなげています。

京都市の生け花教室

中国への留学経験がある、華道の流派・未生流笹岡で国際部長を務める川口志秀さんが講師を務める京都市内で開催されている生け花教室です。

インバウンド向けというよりは、免許を取得して母国で指導者となることを目指す人が中心です。

中国では各華道の流派の支部があることから現地での取得資格も可能ですが、やはり日本で学びたいという意欲がある人が多く、限られた滞在時間の中、1日3~5時間ほど集中して講義を受ける本格派の教室です。

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外国人人気を獲得する「華道」

明治維新を迎え、日本でも女子教育にようやく光が差し始めて「女学校」が設立された当時、実は女学校の正課として華道を取り入れることを勧めたのは、日本に来た外国人たちだったといいます。

花や自然を愛でる気持ちは万国共通のものであること、花材や器については海外でも身近にあるもので十分代用できること、それでいて日本独自の文化や精神を学ぶことができる点など、華道にはグローバルに展開しやすい要素があります。

そのため一流ホテルにおいても、生け花教体験プランの提供などを始めています。

インバウンドの起爆剤としても、華道の魅力に改めて注目してみるのもよいでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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