コロナで観光業「290兆円」ダメージ、いまできること・すべきこと

公開日:2020年05月22日

新型コロナウイルスの流行により、国外との人の行き来が制限され、インバウンド市場は大きなダメージを受けています。

毎月発表されている訪日外客数の統計では90%を超える減少が続いています。

UNWTO(国連世界観光機関)の9月15日の発表によれば、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で海外旅行の人数が減り、その影響はことし6月までの半年間で48兆円余りに上ると発表しています。

他の業界に比べ、観光業では特にその影響が深刻といわれています。観光業従事者以外にはあまり知られていない影響の理由と実情を解説します。

ウィズコロナで市場に消費者を呼び戻すための観光業の取り組みについても紹介します。

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新型コロナウイルスがもたらす観光業への影響

新型コロナウイルスが世界の観光業界へ与える影響は計り知れません。

実際にどの程度の影響が出ているのかを、観光業界から上がっている声を含めて紹介します。

世界全体の観光産業の経済損失

世界規模で活動する唯一の観光関連企業団体である世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)は、新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で、全世界で1億1,080万人の職が失われると予想しています。

この数字には、7,500万人近くのG20諸国に住む人々が含まれており、4月の時点で世界では既に毎日100万の雇用が失われていると発表しました。

WTTCでは、新型コロナウイルスにより世界の旅行・観光産業が被る経済損失は最大2.7兆ドル(約290.9兆円)と試算しており、甚大な影響が懸念されます。

※2020年5月時点のレートで換算。

日本国内の観光業界の声

政府の新型コロナウイルス対策本部は、3月にさまざまな産業の企業や個人に影響や意見、要望のヒアリングを実施しました。

旅行業界では、全国旅行業協会(ANTA)の副会長で全観トラベルネットワークの代表取締役社長である近藤幸二氏が、会員向けに実施した緊急調査結果を公表しました。

そのなかで、現状が続いた場合に資金繰りがどのくらい持つかという質問に関し、4割が2~3か月3割は3~6か月と回答しました。

定期航空協会の会長を務めるANA ホールディングス代表の平子裕志氏は、旅客数が1ケタ台の便も散見されるほど航空業界は危機的な状況にあると述べました。

2020年5月までの減収見込みは、リーマンショック発生時の約3,000億円を超える約4,000億円以上となっており、今後さらに拡大すると予想しています。

バス業界からは日本バス協会の中村靖氏が、貸切バスの運送収入減の状況について2020年3月は前年比79%ダウン、4月は64%ダウン、5月は55%ダウンするとの見込みを提示しました。また3月のキャンセル数やキャンセルは3月中旬時点で1万9,259件となり、被害額は19億9,552万円にも上る見通しも明らかにしています。

SARSやMARSによる影響との違い

MERS(中東呼吸器症候群)の際は、日本の旅行業界は流行していた韓国の代わりに台湾をプロモーションするといった対応をしました。しかし新型コロナウイルスは世界中に感染拡大しており、そのような誘導ができない状態にあります。

観光業界は新型コロナウイルスが一刻も早く収束し、需要が回復することを首を長くして待ち望む一方で、需要が一気に回復した場合にホテルやバスが確保できないなど、回復後の供給不足を心配する声も上がっています。

観光業へのダメージが大きい理由

国内を含め、海外から渡航制限が敷かれている状況は、観光業に大きな打撃を与えています。しかし、観光業を苦しめているのは、移動制限だけではありません。

世界の観光業界を窮地に追い詰めているその他の要因を解説します。

1. キャッシュフロー・手元資金の少なさ

全国旅行業協会(ANTA)の有野一馬専務理事は、もともと業界自体の収益性が低く、手元資金が薄いことを指摘しています。

国際航空運送協会(IATA)では、企業活動や財務活動によって実際に得られた収入から、外部への支出を差し引いて手元に残る資金の流れを表すキャッシュフローについて言及しています。

このキャッシュフローへの言及に際し国際航空運送協会(IATA)は、新型コロナウイルスが流行する以前にデルタ航空やユナイテッド航空を含む国際航空会社が保有していたキャッシュフローが、平均2ヶ月未満分であったことを述べています。

これを異業種であるアップルよ比較してみると、同社は6年分をカバーできるキャッシュフローを有しており、観光業界の手元資金の少なさが明らかになりました。

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2. 中国人観光客頼みの日本のインバウンド

観光庁が発表した「訪日外国人消費動向調査2019」の年間値によると、訪日外国人旅行消費額4兆8,135億円のうち中国が1兆7,704億円を占めており、これは全体の36.8%にも上ります。

この消費額と構成比では、中国が台湾、韓国、香港、米国といった他の国・地域を抑えトップに立っています。この数値からも、日本のインバウンドがいかに訪日中国人頼みであるかがはっきりとわかる結果となっています。

中国における旅行のハイシーズンは春節(旧正月)と夏ですが、新型コロナウイルスの影響で日本の観光業界は書き入れ時に収益を上げられておらず、苦しい状態が続いています。

ウィズコロナでも市場を取り戻す

新型コロナウイルスで以前のような誘致活動や営業ができない中でも、再び顧客が戻ってくるためにできることがあります。

一体何ができるのか、プロサッカーチームと人気リゾートホテルブランドの施策を紹介します。

1. 動画配信で観光:セレッソ大阪

実際に観光地に足を運ぶことが困難ななか、動画を利用した観光体験を提供する取り組みが始まっています。

大阪府大阪市と堺市を本拠地として活動するJリーグ加盟のプロサッカークラブセレッソ大阪は、5月2日に「バーチャル大阪観光動画」を作成したことを発表しました。

この動画は大阪観光局の協力の下、外出を控える人々に自宅での時間を楽しんでもらうための試みとしてスタートしました。

大阪を代表する観光スポットが紹介されている動画は前編と後編の2本が公開されており、公式サイトや公式YouTubeチャンネルで視聴できます。

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2. 3密回避で地元から:星野リゾート

総合リゾート運営会社で、長野県軽井沢町に本社を構える星野リゾートの星野佳路代表は、治療薬やワクチンが登場するまでの1年~1年半の間は、緩やかな緩和期となるとみています。

この緩和期において、旅行は「3密回避」の滞在が重視されるとしており、「3密回避」のために地元の人に来てもらう「マイクロツーリズム」にも力を入れていく方針を明らかにしました。

星野代表は、緩和期は需要を拡大するより、マイクロツーリズムによる下支えの政策が必要との見方を示しています。

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新型コロナウイルス収束後に早い回復が予想されるFITに向けた旅マエ対策もまた、今できる取り組みの1つといえます。

観光関連業界は困難な状況下でも今できる取り組みを

海外では少しずつ経済活動が再開し、日本でも外出自粛生活の終わりが見えてきました。

完全に元の状態に戻るには時間がかかるかもしれませんが、インターネットを活用したプロモーションターゲットとなる顧客を変えるなど、新しい取り組みを思案するよい機会ではあります。

観光業界で行われている試みは、ほかの業種にも活用が期待できるものです。困難な状況が続いていますが、このような状況だからこそ、今できる取り組みを1つでも多く実践していくことが少しでも状況を改善する手掛かりになるでしょう。

早い回復が見込まれる個人手配客に旅マエ対策

FITと呼ばれる個人手配の訪日外国人観光客は、団体旅行で日本を訪れる観光客よりも早い回復が見込まれています。

FITには多くのリピーターがおり、日本に関する情報収集にも慣れているため、訪日する時期を個人で判断できます。また、なかには明確な目的を持って訪日を決めているFITもいます。

このような場合は情報の真偽を自分で確認し判断できるため、風評被害の影響を受けづらいという特徴があります。こうした層をターゲットとしてPRに取り組むことも検討すべきでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!