ニューツーリズムとは、テーマ性のある新しい体験型旅行のことです。
訪日外国人にも、体験を重視する傾向が年々強まっています。
ニューツーリズムを好む旅行者は特に消費単価が高いこともあり、インバウンド市場全体でも意識すべきターゲットとなっています。
今回は「ニューツーリズム」をテーマにしたインバウンド対策について紹介します。
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ニューツーリズムとは?
ニューツーリズムとは、観光客のニーズに合わせて誕生した新しい旅行スタイルのことです。以下ではニューツーリズムの概要とその特徴について紹介します。
テーマ性を重視した旅行
ニューツーリズムとは1980年代ごろから生まれた、テーマ性のある新しい旅行スタイルのことです。
これまでの観光旅行は、パッケージ型の団体旅行であるマスツーリズムが主流でした。しかし、1987年に「持続可能な観光」が国連で定義されると、徐々に団体旅行が社会的、生態的に与える負の影響について問題視され始めるようになりました。
一方、ニューツーリズムはその地域特有の産業にふれたり、自然や歴史、文化を体験したり、長く同じ場所に滞在することで現地の人との交流を楽しんだりなど、特定のテーマ性を持った旅行を指しています。
ニューツーリズムは多くの旅行者が一度に楽しむ旅行ではなく、個人のニーズに合わせた旅行スタイルであるので、旅行者を受け入れる地域にとっても負担が少なくなることが考えられます。
訪日外国人旅行者の中でも、旅行に対するニーズは多様化しており「今までとは違う、深い体験をしたい」という人が増えてきています。より多くの「日本らしさ」を求める外国からの旅行者にとって、ニューツーリズムの取り組みは親和性の高い旅行の提供につながります。
テーマ別観光による地方誘客事業
観光庁が「ニューツーリズムの振興」に代わって平成28年度(2016年度)から取り組んでいるのが「テーマ別観光による地方誘客事業」です。この事業は2020年度で終了しましたが、今後もこれらのテーマを意識した観光が求められていると考えられます。
以下では、2020年に観光庁が選定した4つのテーマについて紹介します。
1. ONSEN・ガストロノミーツーリズム
ガストロノミーツーリズムとは、気候や風土によって異なるその土地特有の食文化である「郷土料理」と温泉入浴などの「伝統文化」を合わせて楽しむ旅行のことです。
新潟市ではガストロノミーツーリズムの一環として、1階がキッチン、2階が食事スペースになったレストランバスを運行しています。観光地を巡る車中で、新潟市周辺で採れた旬の食材を使った食事を楽しむことができます。
また全国の温泉と各地域の郷土料理を活用し、外国からの観光客を呼び込むことを目的に設立された「ONSEN・ガストロノミーツーリズム推進機構」は、自治体が「伝統文化」や「食文化」を観光客が楽しめるプログラムを作成、認定しています。
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2. IndustrialStudyTourism(産業訪問)
Industrial Study Tourismは、観光庁において「歴史的・文化的価値のある産業文化財、生産現場及び産業製品を観光資源とし、それらを通じてものづくりの心にふれるとともに、人的交流を促進する観光のうち、訪日外国人のビジネス客を対象にしたもの」と定義されています。
三重県桑名市で自動車関連部品を製造するメーカーであるエイベックスは、地元自治体や企業と協力して、産業観光ツアーを実施し、訪日外国人旅行者の視察時間と滞在時間を共に増加させることに成功しました。
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3. 郷土食探訪(フードツーリズム)
郷土食探訪(フードツーリズム)とは、その土地ならではの食や食文化をその土地で楽しむ旅行のことを指します。
愛知県南知多町日間賀島では、タコとフグによるフードツーリズムを実施していています。他にも、静岡県富士宮市では富士宮焼きそばによるフードツーリズムが行われています。
さらに、徳島県にし阿波地域では、農泊しながら食文化を体験する旅行プランを海外向けに発信しており、体験型観光とフードツーリズムを結びつけています。
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4. 宙ツーリズム
宙ツーリズムとは、観光庁によると「天文現象だけでなく、オーロラ観賞やご来光、ロケット打ち上げ体験等を楽しむツーリズム」であると定義されています。
鳥取砂丘では、2020年11月に「星取(ほしとり)スターナイト」が実施されました。砂丘の中に透明のドームを立て自由に星空を鑑賞でき、鳥取県の食材を用いて宇宙をイメージしたディナーコースもふるまわれました。
ニューツーリズムをインバウンド向けに推進する際のポイント
ニューツーリズムによる訪日外国人の誘客に際しては、旅行商品の企画・造成段階で注意すべきポイントと、旅行商品化に向けた現地の体制づくりでのポイントがあります。これらのポイントについて、以下では一つずつ説明していきます。
観光資源を見つけ出す:日常の一部でも魅力がある
地元の人々にとっては日常の一部として当たり前のことやものでも、訪日外国人から見ると「素晴らしい!」「珍しいからもっと見たい」「自分もやってみたい」など、価値を感じることが数多くあります。
インバウンド対策として地域資源を活用する際には、まず「訪日外国人が価値を感じるものが、今ここにある」という視点からスタートするとスムーズです。
テーマ選びに関しても、固定概念を取り払う必要があります。日本ではまだまだ浸透していないテーマが外国人には違和感なく受け入れられることがあるからです。
また、日本人には馴染みがあり新鮮さがないように見えるテーマでも訪日外国人には十分に楽しんでもらえることもあります。
体験プログラムの考案:外国人観光客の目線で
外国人観光客のニーズは今や多種多様です。特に、何度も日本を訪れているリピーターの旅行者にとって、一般的な観光地以外の場所を見てみたいという声は少なくありません。
滞在交流型という、そこに住んでいる人々の生活や文化を実際に体験し、地域の人たちと会話をして交流を楽しみたいという旅行者も増加傾向にあります。
言葉が通じなくても体験や体を動かすアクションを通じて理解が深まるというメリットがあります。
旅行商品の構成
テーマ設定のある旅行商品をつくる場合は、体験プログラムだけでなく、観光スポット見学などの工程を盛り込むことで、旅行者の満足度を高めることができます。
視覚、聴覚、触覚、味覚など五感をフルに使えるようなコースを意識して行程を作成します。
ツアーの場合は、集合場所を分かりやすい場所に指定することも大切です。
また天候によって見学や体験プログラムの実施ができない場合もあるため、代替プログラムや予備コースの準備をしっかり整えておく必要があります。
訪日外国人のサポート体制を万全に
インバウンド対策として旅行商品化を考える場合、予約の受付や事前対応などの準備も重要な要素です。
外国人は食事の習慣や入浴の仕方が日本とは異なる場合が多くなります。そうした文化に対し、適切な配慮をするために「何が必要で、どのような対策をしておけばいいのか」といった情報収集をおこないます。
また外国人にとって、日本の気候をどのように感じるかも人それぞれです。現地の気象条件や温度差に対応できる防寒・避暑対策などを考えておきます。
また外国人観光客はインターネットやメールを利用して予約する場合がほとんどです。スムーズに問題なく予約が完了できるよう、返信内容を事前にいくつかテンプレートで用意するといった対策も有効でしょう。
参加者の好みに合わせ、食事を選んで食べられるようにするのもおすすめです。食の習慣も国によってさまざまなので、あらかじめ複数の食事プランを用意し、ある程度柔軟に対応できるよう準備をしておきます。
現地ガイド(通訳ガイド)
外国人旅行者へのガイドは、現地のことだけでなく名所の歴史的背景を解説できるなど、歴史文化に対する一般的な知識も求められます。
また、その土地独特の文化理解や自然の解説などをおこなうため、地域に精通した人材育成の整備や構築が必要となります。
外国語を話せるだけでなく、日本についての背景知識がない相手に対し分かりやすく伝える工夫も求められます。
地域内の連携・協力体制の構築
外国人旅行者が旅行先で不便と感じることの一つに、クレジットカードの利用環境が整っていないことがあげられます。
母国では日常の買い物をすべてクレジットカードだけで済ませている人もいるため、カードが使えないと不満を抱く人もいます。
宿泊施設だけでなく、周囲の飲食施設や土産店でもクレジットカードが利用できるよう、地域全体の連携が必要になります。
地方ならではの魅力発掘でインバウンド誘客につなげる
インバウンド向けニューツーリズムの成功は、中長期的に持続することで見えてきます。
ターゲットとする市場を定め、プランを計画し、プランを実行し、結果が出てからさらに改善するというプロセスを踏むにはある程度の年月がかかるためです。
そのため、インバウンド向けニューツーリズムを企画して実際に収益を得るまでには一定の時間がかかるという認識は、関係するインバウンド事業者には共有しておく必要もあるでしょう。
また、ニューツーリズムを確立させるためには、観光資源があることだけでは十分ではなく、多言語対応や情報発信といった訪日外国人の受け入れ体制の強化も両輪で進めていかなくてはなりません。
日本人の視点では意識しなければ中々気づくことのできないような、訪日外国人が魅力に感じる部分や不便に感じる部分に敏感になることで、効果的なインバウンド対策が可能となるでしょう。
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<参照>
観光庁:テーマ別観光による地方誘客事業
宙ツーリズム:星取スターナイト
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