菅首相とデービッド・アトキンソン氏の関係:成長戦略会議に起用、インバウンド市場への影響は?過去の発言から予想

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菅首相は、成長戦略の推進に向けて新たに設置した「成長戦略会議」にて、民間有識者として元金融アナリストで「新・観光立国論」の著者である、デービッド・アトキンソン氏を起用しました。

インバウンド政策に意欲的な菅首相は、2013年からアトキンソン氏との交流があったとされており、今後のインバウンド戦略に注目が集まります。そこで今回は、成長戦略会議の概要をふまえ、菅首相とアトキンソン氏の過去の発言から、今後のインバウンド戦略の方向性について予想します。

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菅首相、成長戦略会議にデービッド・アトキンソン氏を議員として起用

菅首相は成長戦略会議に参加する民間有識者として、元金融アナリストのデービッド・アトキンソン氏を起用したことから、今後のインバウンド戦略に注目が集まっています。

ここでは成長戦略会議の概要をふまえ、今回の起用にいたったと考えられる背景を解説します。

デービッド・アトキンソンとは

2017年6月より、日本政府観光局の特別顧問に就任したデービッド・アトキンソン氏は、イギリス出身、日本在住の経営者です。著書『新・観光立国論』が複数の賞を受賞し、その発言にインバウンド業界の注目が集まるようになりました。もともとは金融アナリストですが、大学では日本学を専攻しています。2009年には、文化財などの修理、施工を行う小西美術工藝社に入社し、2年後社長に就任しています。デービッド・アトキンソン氏の提言を受け改善に励んだ観光関連産業も少なくありません。こうした取り組みにより、昨年の訪...


成長戦略会議とは?

成長戦略会議とは、これまで政府が成長戦略を議論してきた「未来投資会議」に代わり、新たに設けられた会合です。

政府の経済財政政策の司令塔の役割を担う、経済財政諮問会議が示した基本方針をもとに、成長戦略の具体策を議論します。

議長は加藤内閣官房長官が務め、有識者はデービッド・アトキンソン氏をはじめ、8名が参加します。

10月16日の初会合で菅首相は、アフターコロナを見据えた企業の生産性向上などの課題解決に向けて、施策を具体化するよう指示しました。

なぜ起用したのか?2013年からアトキンソン氏と交流があった菅首相

デービッド・アトキンソン氏はイギリス出身で、大手証券会社のゴールドマンサックスのアナリストとして活動したのち、現在は日本の文化財の修繕などを手がける小西美術工藝社の社長を務めている人物です。

日本政府観光局の非常勤顧問や、京都国際観光大使にも就任し、日本のインバウンド戦略に対する発言もたびたび注目されてきました。

2015年に出版した著書「新・観光立国論」では、日本が世界的な観光立国になるための指針を客観的な分析からまとめた内容が、多くの支持を得ています。

菅首相は、以前からインバウンド施策に意欲的であり、アトキンソン氏とも交流がありました。

前安倍内閣が2013年から観光立国の仕組み作りを開始した際には、当時官房長官であった菅氏は、アトキンソン氏の著書を読み感銘を受けたとしています。すぐにアトキンソン氏に面会を申し込み、その後も何度も交流を重ねてきたとされています。

このように、菅首相のインバウンド政策は、アトキンソン氏の提言を参考にしている部分が大きいとみられることから、今回の起用につながったと考えられるでしょう。

菅首相・アトキンソン氏の過去の発言から今後のインバウンドを予想

菅首相がアトキンソン氏を成長戦略会議の有識者に起用したことから、今後のインバウンド関連政策に関して、どのような動きがみられるかを過去の発言から予想します。

【独自】GoTo「良い影響ある」96.7% 、菅首相に「インバウンド期待」72.5%

コロナ禍によって大きなダメージを受けた観光関連産業に対する政府による支援策「GoToトラベル」事業は10月1日から東京発着の旅行も対象となり、国内観光は少しずつ活気を取り戻しはじめています。インバウンド業界は依然として苦しい状況に立たされる今、インバウンド業界に携わる方々はなにを考え、どのような行動を取っているのでしょうか。今回訪日ラボでは、訪日ラボのメルマガ会員向けに独自アンケート調査を行い、「GoToキャンペーン」事業に対する反応や、菅首相就任によるインバウンド業界への期待、インバウン...


インバウンド「富裕層」のニーズへのアジャスト

インバウンドの富裕層のニーズを満たすような観光コンテンツの造成や、受け入れ環境の整備に注力することが予想できます。

具体的には、世界的な富裕層を顧客に持つホテルの誘致や豪華列車の旅、職人や人間国宝の方から教わる芸術体験などがあるでしょう。

富裕層の誘客強化による、高い経済波及効果が期待されます。JNTOの調査によると、富裕層旅行者1人あたりの消費額の単価は、一般旅行者の約9倍の経済効果が見込めることが明らかになりました。

これまで菅首相とアトキンソン氏は、富裕層のニーズに応えるようなサービス提供や、受け入れ体制の強化の重要性について言及しています。

菅首相は2020年7月27日の定例会見にて、インバウンド再誘客ができるようになるまでの準備期間として世界の富裕層を顧客に持つホテルの誘致を進めながら、交通機関や食体験に関する質の高いサービスの提供などを、集中的に対応したいと述べました。

また、アトキンソン氏は、2015年に出版した「新・観光立国論」のなかで、1泊400~900万円ほどの高級ホテルを定宿としている超富裕層が日本を訪れた際の、受け入れ体制の課題について言及しています。

このことから、今後の政府のインバウンド戦略のなかで、富裕層の受け入れに向けた施策に取り組むことが予想できそうです。

一般旅行者の9倍消費する「富裕層旅行者」の実態:観光コンテンツ作りのポイントや事例も紹介

JNTOの調査によれば、富裕層旅行者は340万人しかないものの、高い消費力を持つため、もたらした市場規模は4.7兆円にものぼり、近年


文化財・国立公園の整備・有効活用を加速

文化財と国立公園を、観光資源として有効活用する取り組みが加速することが予想できるでしょう。文化財の活用に関しては、2019年より開始した「城泊」では、長崎県の平戸城に泊まれる宿泊モニターに、欧州から申し込みが殺到した事例があります。

国立公園については、環境省が推進する「国立公園満喫プロジェクト」があり、国立公園訪日外国人観光客が長期滞在を目的に訪れる、憧れの旅行先にすることを目指しています。

菅首相とアトキンソン氏は、文化財と国立公園の整備と有効活用について、これまで以下のように述べました。

菅首相は2018年、歴史的な文化施設の開放の重要性を言及しています。例えば、これまで東京では迎賓館や皇居の乾通りなどを一般公開し、新たな観光スポットとして国内外から注目されるようになりました。今後は、文化施設だけでなく、国立公園の開放もさらに進めていく考えを示しています。

アトキンソン氏も、文化財や国立公園を「保護すべきもの」から「稼げる観光資源」に変えていく必要性について言及しました。人口減少が著しい日本では、文化財や国立公園を訪れる外国人を増やし、その収入で補修費用や維持費用を賄うことが、世界に誇る日本の文化財と自然環境を次世代に受け継ぐことに繋がるのではないかと、問題提起しています。

IR(統合リゾート)の建設では両者一致も、逆風やまず

カジノを含むIR(統合リゾート)の建設についても、菅首相とアトキンソン氏の過去の発言から、両者ともに推進したい考えがうかがえます。

菅首相は、2020年9月にテレビ番組に出演した際、政IRに関する方針について「IRは観光政策を進める上で必要不可欠。政府としてIRを進めていこうと考えている。」と延べ、政府として推し進めていく考えを示しました。

アトキンソン氏も 「新・観光立国論」のなかで、統合リゾートもインバウンドの富裕層誘客の手法の1つとして言及しています。

統合リゾートがあれば、さまざまな施設が利用でき長期滞在が見込めるほか、カジノがあれば富裕層の誘客が期待できるとしました。ただし、多言語対応や周辺の文化財の整備といった地道な施策も必要と述べています。

政府は2021年1月に、IRの整備を希望する自治体の認定申請を始めるとしていましたが、新型コロナウイルスの影響や汚職事件により、スムーズに進んでいないのが現状です。逆風のなかで、今後どのようにIRの建設を推し進めていくかに注目が集まります。

菅内閣に期待、GoToで観光回復「2030年インバウンド6000万人」強調

本日16日夜、菅義偉内閣がいよいよ発足します。安倍晋三前首相の辞任に伴う交代であり、7年8ヶ月ぶりとなります。新型コロナウイルスで観光業界は大きな打撃を受ける中、菅氏は当時官房長官として観光支援事業「Go Toキャンペーン」を推進してきました。そのため、菅氏の首相就任により観光支援がより活発化するとの期待が高まっています。インバウンド対策にお困りですか?「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!訪日ラボに相談してみる目次菅内...


欧米豪、特に「豪市場」へ主眼を置く可能性

今後注力したいインバウンド市場として、欧米豪市場が有力となっています。

菅首相は2018年時点で、世界中の観光客のなかでも、今後は欧米からの旅行者に大きな可能性があるとの考えを示していました。

アトキンソン氏も『新・観光立国論』の中で、「観光立国を目指すなら人数だけでなく一人当たりの消費額にも目を向ける必要がある。」と述べています。しかし現状としては、アジア諸国が中心となっており、長期滞在が主流で消費額も高い傾向にある欧米豪からの誘客は、いまだ道半ばといえるでしょう。

目的地が遠くなればなるほど長期滞在となり、消費額が増すことはさまざまな調査で明らかになっています。日本の場合は、欧米豪からの観光客がそのケースに当てはまるため、欧米豪市場にはより一層注力すべきでしょう。

なかでも、特にオーストラリアに主眼を置く可能性が高いと予想できます。オーストラリアは、宿泊費を中心に一人当たりの消費額が高く、新型コロナウイルスの感染状況が他の欧州諸国に比べると比較的落ち着いているため、インバウンド需要の早期回復が期待されています。

なお、欧米は新型コロナウイルスが再拡大しており、フランスは10月30日から2度目のロックダウンが開始されるなど、海外旅行需要の回復には時間がかかる見通しです。

アトキンソン氏起用で変わるとみられるインバウンド動向、今後に注目

今後は、以前からインバウンド戦略に対する発言で注目を集めていた、アトキンソン氏が政府の成長戦略の議論に加わることとなります。

富裕層や欧米豪市場へのアプローチなどは、いわゆる「客単価」の高い層への注力といえるでしょう。

IRの建設や文化財・国立公園を稼げる観光資源として活用することなどは、日本の観光コンテンツとしてお金を使うチャネルを、新たに増やすこととも言い換えられます。

アフターコロナでは、一度に来られる訪日客数の制限が加えられるなど、限定的な解禁状態がしばらく続くと予想されます。専ら東アジアを対象とした従来までの「量的な稼ぎ方」は今後難しくなるため、インバウンド戦略も「量より質」へとアップデートしていく必要があるでしょう。

日豪「隔離なし渡航」協議中 押さえるべきオーストラリア市場の特徴と最新トレンド

2020年10月15日、オーストラリアのスコット・モリソン首相は日本、韓国、シンガポールの3か国の首脳と「隔離を伴わない渡航」についての議論を進めていることを明らかにしました。もし協議が合意すれば、インバウンド回復が遅いと予想される欧米豪市場のうち、訪日オーストラリア人観光客の回復が一足先に回復するでしょう。そこで、今回の記事はこれまでの訪日オーストラリア人観光客の特徴をおさらいし、それに合わせてコロナ禍におけるオーストラリア人の最新国内旅行動向や訪日意欲についても紹介します。インバウンド...

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<参考>

・内閣官房:成長戦略会議(第1回) 配布資料

・観光経済新聞:菅官房長官、世界的に顧客持つホテル誘致に意欲

・カジノIRジャパン:政府:菅内閣総理大臣 就任会見「規制改革, インバウンド促進, MNC普及」~IR推進加速

・日本経済新聞:IR候補地、申請期間を9カ月延期 コロナや汚職事件で

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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