昨今、全国各地の商店街が、衰退の危機に直面しているといわれています。
その一方で、近年のインバウンド市場は盛り上がりを見せており、2012年以降訪日外国人の数は増加を続け、2019年には過去最高となる約3,188万人を記録しました。
このようなインバウンド市場の成長から、衰退する日本の商店街の再興のためには、訪日外国人を取り込む必要があるという考えが広がっていました。
現在は新型コロナウイルスの影響で、訪日外国人が激減している状況が続いていますが、コロナ収束後に向けたインバウンド対策を行うことが、商店街に活気を取り戻すための大きなポイントとなる可能性があります。
今回の記事では、商店街が訪日外国人を取り込むためには、いまどのような対策が必要なのか、インバウンド市場と商店街の現状を解説するとともに、対策事例を紹介します。
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商店街インバウンド対策が必要な理由
多くの商店街が衰退の一途をたどる一方で、訪日外国人数は増加を続けており、2019年に過去最高を記録しました。
また訪日外国人は、日本での滞在中の消費のうち、買い物に最も金額を費やしていることが判明しています。
このような背景から、商店街が活気を取り戻すには、買い物に多くの金額を費やす訪日外国人を呼び込む方法が効果的だと考えられます。
ここでは、商店街にインバウンド対策が必要な理由として、インバウンド市場と商店街の現状について解説します。
インバウンド市場の成長と消費額の大きさ
日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2019年の訪日外国人数は約3,188万人と過去最高を記録しました。
地域にみると、中国・韓国・台湾・香港の東アジアからの訪日外国人がもっとも多く、全体の70.1%を占めています。
また、訪日観光客の増加にともない、訪日外国人の旅行消費額も増加しています。
観光庁が発表した「訪日外国人消費動向調査2019年年間値(確報)」では、2019年の訪日外国人旅行消費の総額は4兆8,135億円にのぼると推計されています。
費目別にみると、買物代がもっとも高く、16,690億円で全体の34.7%を占めていることがわかりました。飲食費も増加し、10,397億円の消費額に達しています。
費目別の消費総額を一人あたりで計算すると、買い物代が53,331円、飲食費が34,740円となります。
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全国的な商店街の衰退
近年インバウンド市場が盛り上がりを見せていた一方、日本の商店街は全国的に衰退している傾向にあります。
中小企業庁が3年に一度、全国各地の商店街に対し実施する「商店街実態調査」の調査結果では、2018年度に1商店街あたりの平均店舗数が、前回の2015年度の調査に比べ3.6店舗減少したことが明らかになりました。
また、最近の商店街の景況に関する設問に対して、「衰退している」と「衰退の恐れがある」の回答者を合わせると、67.7%にのぼっています。
一方、訪日外国人の受け入れについては、「受け入れに取り組んでいる」と回答した商店街が8.7%に対し、「受け入れに取り組んでいない」と回答した商店街が77.6%と、インバウンド対策を行っていない商店街が圧倒的に多いことがわかりました。
インバウンドの消費額の大きさと消費額に占める買物代と飲食費の割合を踏まえると、商店街でインバウンド対策を行い、訪日外国人を取り込むことは、商店街の衰退に歯止めをかけ、地域の活性化にも繋がる方法であると考えられます。
商店街のインバウンド対策の事例
訪日外国人の集客を成功させている商店街は、どのような対策を行ったのでしょうか。その成功事例を紹介します。
千日前道具屋筋商店街:体験型コンテンツでインバウンド対策
大坂ミナミの中心地には、南海電鉄難波駅と市営地下鉄なんば駅から徒歩3分のエリアに千日前道具屋筋商店街があります。
千日前道具屋筋商店街はインバウンド事業に取り組むため、商店街や商店、企業・団体、自治会、住民の協力のもと実行委員会を立ち上げ、ミナミ全体で連携しながらインバウンド対策を行っています。
この商店街では、多言語対応とWi-fiの環境整備はもちろんのこと、スマホ決済の対応なども進めています。
さらに、千日前道具屋筋商店街では、「道具屋筋ものづくり体験」として、和菓子づくりやたこ焼きづくり、サンドブラスト、グラスアートなどの様々な体験イベントを有料で実施しています。
近年、訪日外国人の旅行トレンドは、物を買う「モノ消費」から、体験を買う「コト消費」へと変化しているといわれています。
この千日前道具屋筋商店街の施策は、商店街で商品を購入する「モノ消費」だけでなく、地域ならではの体験を求める「コト消費」にも対応しています。
岡山市表町商店街 :一括免税カウンターを設置運営
岡山市表町商店街は、JR岡山駅から1キロほど離れた岡山市の中心的な商業エリアに位置しています。
岡山市表町商店街では、2015年5月、商店街の中に位置する百貨店「天満屋」に、全国で初めて一括免税カウンターを設置しました。
この一括免税カウンターでは、訪日外国人がパスポートと表町商店街や天満屋を含む4団体内の参加店舗で購入した品物とレシートを持参すると、担当者が書類の作成や梱包を行い、その場で消費税分を現金で返金しています。
20店舗からスタートした免税店は3年後の2018年には35店舗に増え、初年度に対する実績は取り扱い件数が4.2倍、取り扱い金額が約7.4倍に増加するなど、インバウンド対応の成果が表れています。
コロナ収束後を見据えて、いまできる商店街のインバウンド対策は?
国や県では現在、インバウンド対策に利用できる補助金の申請を受け付けています。
ここでは、その一例を紹介します。
インバウンド需要拡大推進事業の活用
中小企業庁による令和元年度補正予算「地域消費拡大推進事業(インバウンド需要拡大推進事業)」は、商店街や飲食店街などの商業集積地域の中小企業者グループが、訪日外国人観光客に対応するためのサービスを提供する民間事業者「インバウンドベンチャー」と連携し、インバウンド需要獲得に向けた取り組みを行う場合に、補助金が下りるものです。
対象となる事業は、
①外国⼈観光客のニーズに対応した商品・サービスの多⾔語化等
②店舗データ分析を⽤いた経営の⾼度化による効果的な商品・サービスの提供等
地域における訪⽇外国⼈消費の拡⼤につながるものとなっています。
補助率は、補助対象経費の2/3以内、補助額の上限額は3,000万円としています。
※2020年11月27日時点に追加募集終了
香川県は「商店街インバウンド対応支援事業」を実施
香川県では、県独自の援事業として「商店街インバウンド対応支援事業」を実施しています。
この支援事業は、補助率が2/3、上限金額は200万円に設定されています。
ウェブサイトやSNS、パンフレットなど訪日外国人向けの情報発信や、多言語やキャッシュレス対応などの買い物環境の整備、ものづくりや日本食の試食などの体験イベント、語学やマナーなど訪日外国人への対応セミナーなどが補助の対象になります。
この事業の申請募集は、令和2年12月18日まで随時行われており、予算額に達した時点で募集は終了することが発表されています。
※2020年11月27日時点に追加募集終了
インバウンド対策で商店街の活気を取り戻す
商店街の衰退が続く一方で2019年に過去最高人数を記録した訪日外国人は、商店街の活気を取り戻すために欠かせない要因の一つです。
予算が限られている商店街が多いなか、商店街と地域がタッグを組むことでインバウンド対応で成果を上げている商店街があることが、今回の事例から分かっています。
現在、国や県が補助金交付に取り組んでおり、このような交付事業を上手く利用することで、インバウンド対応の準備に活かせます。
これから徐々に入国制限の緩和が進むことにより、訪日外国人が戻ってくることが期待されます。
アフターコロナに備え、商店街関係者は利用できる補助金の確認や訪日外国人の需要を取り込む対策を練ることが、商店街に活気を取り戻すカギとなるでしょう。
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<参照>
経済産業省:令和元年度補正予算 インバウンド需要拡⼤推進事業 (地域消費拡⼤推進事業) 概要資料
全国商店街振興組合連合会:商店街の インバウンド対策 ~ 商店街に訪日ゲストを誘致する ~
中小企業庁:平成30年度商店街実態調査報告書 概要版
JNTO:訪日外客数(2019 年 12 月および年間推計値)
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今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
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