中国最大のECセール日「独身の日」の光と影 「総流通取引額7兆円」のカラクリ、薄利にあえぐ企業

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中国で「独身の日」として知られる11月11日は「W11(ダブルイレブン)」とも呼ばれ、毎年、中国最大のEC商戦として注目されています。

今年のW11にはこれまでで最大となる25万以上のブランドが参加し、昨年から5万も増加しました。

2020年のW11のGMV(流通取引総額)は、11月11日午前0時30分までの注文分で3,723億人民元(日本円で約5兆8,078億円)、20時過ぎには4,600億人民元を超えました。

最終的なGMVは4,982億元を記録し、過去最高だった昨年と比べて26%増と大きく伸びました。

また、アリババ越境ECプラットフォーム「Tmallグローバル(天猫国際)」と「コアラ(Kaola)」における国・地域別の流通総額ランキングで、日本は1位を獲得しているということです。

なお、「独身の日」の越境ECにおける国地域別GMVランキングで、日本は2016年から4年連続1位を獲得しています。桁違いの巨大市場規模で、日本からも多くの企業が参入を検討しているW11ですが、実は光と影があります。本記事では独身の日の「闇」について、詳しくご紹介します。

取引総額7兆円超え、過去最高に 中国「独身の日」日本ブランド人気最多、「ライブコマース」も加熱

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独身の日の闇

過去最高額のGMVを記録した今年のW11ですが、その数値データを紐解くと意外な構図が見えてきます。それぞれ詳しく説明していきます。

1. 「GMV(流通取引総額)7兆円」のカラクリ

GMV(流通取引総額)4,982億元は一見大きい数字に見えますが、その数字には実はカラクリがあります。 

まず、計上期間は11月11日の一日だけではなく、11月1日から11月11日までの独身の日プロモーション期間中すべてを対象としています。

商品価格の一部を先に支払い、商品を確保することもあるため、実際には10月21日からの支払いの受付が開始されています。

つまり、実際には11月1日〜11月11日午前0時30分までに3,723 億元を売り上げており、その後の23.5時間で1,259億元を売り上げたことになります。

GMVは、そのマーケットやプラットフォームで消費者が購入した商品の売上合計額、流通取引総額のことを指し、返品や返金、注文を拒否する金額も含まれています。

W11のセールにおける返品・返金率は高く、全体の30%にも達しているため、実際の売り上げはもっと少ないと考えられます。

2. トップライバーの直播間(スタジオ)にしか人が集まらない 

2020年から現時点まで天猫の主力店舗のうち、9割の店舗がライブコマースを行っており、今年のW11のセール期間中も多くの店舗が実施しました。 

今年のW11のセール期間中、33の「直播間(スタジオ)」の売上高が1億元を超え、500スタジオ近くが1,000万元を超えました。 

こうしてみると、一見ライブコマースは「儲かる」施策のように見えますが、実際にはそう単純な図式ではありません。

ライブコマースで商品を販売する企業や店舗は多いものの、トップライバーの直播間(スタジオ)にしか人が集まらないという傾向があります。

ライブコマースの動向やデータを分析する凤凰网电商研究院が発表した「10月直播电商主播GMV月榜TOP50(10月ライブコマースライバーGMVランキングTOP50)」によれば、TOP1とTOP50のGMVには100倍もの差があり、トップドライバーに集中する現象が顕著であることが分かります。

なおこのランキングには、アリババが運営するタオバオライブ以外に、「快手」「抖音」などのライブコマースプラットフォームも含まれています。

トップライバーに人気が集中する背景には、トップライバーの認知度や集客力が他のライバーより高いこと、トップライバーが販売する商品は基本的に最安値が保証されていることから、トップライバーを起用しないと競争できないという事情があります。 

3. 低価格での販売を求められる環境

企業はW11に最も安い値段で売る傾向があり、サンプリングもたくさん付けなくてはなりません。

一方でトップライバーへの契約金と歩合制の報酬は高額で、多く売ってもそれほど利益が残らず、結果的に儲からないこともあります。

このような薄利多売の状況では、有名企業や大手企業は参加しても、物流や人件費などのコストを考慮して、W11には参加しないとする中小企業もあるようです。

4. クーポン入手までの複雑な手続き

さらに年々ユーザー向けのクーポンの条件が複雑になっており、ユーザーから敬遠されるケースも見受けられています。

Tmallでは、毎年W11で使えるユーザー向けの割引クーポンを配布するイベントを行っていますが、そのルールは年々複雑になっています。

セール期間の拡大に合わせて、アリババでは今年、クーポンを配るイベントを2段階に設定しました。

ユーザーが商品割引などのクーポンを入手するためには、まずクーポンの「引換券」を入手したうえで、その引換券をクーポンに引き換える必要があります。

さらに「クーポンの引換券がもらえる期間」と「引換券をクーポンに引き換えられる期間」はそれぞれ異なります。

クーポンの引換券をもらえる期間は「10月21日 00:00:00~11月9日 23:59:59」、引換券をクーポンに引き換えられる期間は「11月1日 7:00:00~11月1日23:59:59」の約17時間と 「11月10日 7:00:00~11月11日 21:59:59」の約39時間のみに限られていました。

さらに、このクーポンの引換券を入手するためには、「超级星秀猫,升级领红包」というゲームで、猫コインを集めたり、餌をあげたりすることで、キャラクターの猫をアップグレードしてクーポンをもらうという仕組みになっています。 

このような一連の煩雑な手続きを面倒に感じ、利用を断念してしまうユーザもいたようです。

また、予約販売が開始された10月21日から、欲しい商品をカートに入れ、一部の金額を前払いして商品を確保できるものの、11月11日0時にカートにある「全部の金額を払う」を押さないと買えない仕組みになっていました。

商品数も限定されているため、前払いをしても結局売り切れで買えなかったり、W11で買いすぎて、昨年購入した商品をまだ使いきれていないというユーザーもいるようです。

このような理由からW11への参加を見合わせるユーザーも続出しており、利用者減は企業にとっても間接的なダメージとなり得ます。

中国「独身の日」の事例から学べるEC戦略

今年のW11では、GMVが過去最高額を記録するなど、その結果が華々しく報じられましたが、実際にその数字を紐解いてみると、様々な仕掛けが見えてきます。

GMVには返品や返金も含まれるため、実際の売り上げはより少ないことが推察されるほか、人気の高まるライブコマースでは、一部のトップライバーへの報酬が高額で、企業の利益が残らないといった現象も起きています。

企業側は、薄利多売の構図から脱却し、確実に利益を積み重ねられるビジネス戦略が必要となるでしょう。

さらに、複雑なクーポンや、確保した商品が売り切れで買えないなど、使い勝手の悪さから離脱するユーザーも増えています。

より多くのユーザーに訴求するためには、利用時の利便性や使い勝手の良さなど、ユーザー目線でのマーケティングは欠かせません。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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