コロナ禍に対応できる企業・できない企業【株式市場からインバウンド復活の動向を読み解く】

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在日外国人向け街歩きツアーや海外向けオンライン体験の企画運営をしております、Japan Localizedインバウンドアナリストの宮本です。本年もよろしくお願い致します。

オミクロン変異株が国内で蔓延しはじめ、新規コロナ感染者数が再び大幅に増加し、沖縄県などにまん延防止等重点措置が適用されました。また、水際対策も2月末まで延長され、インバウンドの復活が遠のき、2022年もインバウンド業界は厳しい状況が続くと考えられます

さて今回の記事ではインバウンド関連株の2021年のパフォーマンスを振り返り、2022年を考える上で状況を整理していきたいと思います。

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市場平均を上回る事が大切

株式運用の世界では、1年間の株価リターン(収益率)がベンチマーク(主にTOPIXのリターン)をどれだけ上回ったか(超過収益率と言います)がとても大切であり、その個別銘柄の株価リターンの良し悪しの判断基準にもなります。

つまりTOPIXのリターンは1年間の市場全体の平均リターンであって、個別株が市場全体の平均リターンを上回っていれば、その株のパフォーマンスが良かったと判断でき、逆に平均以下だとパフォーマンスが悪かったと判断できます。

では、私がモニタリングをしているインバウンド関連株の2021年のパフォーマンスはどうだったのかを見ていきましょう。

市場平均を上回ったインバウンド銘柄は?

まず、以下の図をご覧ください。

2021年のインバウンド銘柄のパフォーマンス Japan Localized作成
▲2021年のインバウンド銘柄のパフォーマンス:Japan Localized作成

上記のグラフがモニタリングをしているインバウンド銘柄の2021年の株価リターンになります。

まず、赤い棒線のTOPIXのリターンをご覧ください。TOPIXの2021年の株価リターンは+10.4%となりました。2020年12月30日にTOPIXを1,000円買って1年間放置したら、2021年12月30日には1,000円が1,104円になっていたということです。

では、それを上回っているインバウンド銘柄はいくつあったのでしょうか?

TOPIXのリターンを上回った銘柄は10銘柄

数えてみると、TOPIXのリターンを上回った銘柄は31銘柄中、10銘柄しかなかったことがわかりました。

逆にTOPIXのリターンを下回った銘柄が21銘柄ありました。インバウンドが戻っていないので当たり前のことですが、この数字だけを見てみると2021年はインバウンド銘柄の株価パフォーマンスは総じて悪かったといわざるをえません。

その中でも10銘柄はTOPIXを上回るリターンだったので、何かしらの個別の要因によってその企業が株式市場から評価されたと考えられます。

その1つ、東京ディズニーランド・東京ディズニーシーを運営するオリエンタルランド(銘柄コード:4661)の事例はこちらの記事「売上半減・営業赤字のオリエンタルランドの株価が上がり続ける理由」で考察しています。

カテゴリー別で見てみるとインバウンド業界の動向がわかる

では、以前分類したインバウンド銘柄を「移動」、「宿泊」、「小売」、「メーカー」、「食事」、「レジャー」、「サービスのカテゴリー別で見てみると、以下の表の通りになります。

※各カテゴリーについては過去の記事、「インバウンド需要を「カテゴライズ」し、株価を比較する」で定義しています。

カテゴリー別インバウンド関連株の推移:Japan Localized作成
▲カテゴリー別インバウンド関連株の推移:Japan Localized作成

赤太文字はTOPIXのリターンを下回った銘柄です。カテゴリー別で見ていくと、「移動」、「メーカー」、「食事」にカテゴライズされるインバウンド銘柄のパフォーマンスが総じて悪いと言う事がわかります。これはコロナ禍による緊急事態宣言等の影響を、個別の企業努力ではどうにもならなかったのではないかと考えられます。

その中で特に「メーカー」にカテゴライズされる、爆買いを代表する化粧品のメーカーである、資生堂(銘柄コード:4911)やコーセー(銘柄コード:4922)、美顔器を製造するヤーマン(銘柄コード:6630)の年間リターンはマイナスでした。

つまり化粧品需要の減少の影響は今後も続くと、株式市場が評価したといえるでしょう。

コロナ渦で評価された小売は?

次に、「小売」は二極化がうかがえます。

「小売」にカテゴライズされる銘柄でTOPIXのリターンを上回ったのはJ.フロント リテイリング(銘柄コード:3086)、エイチ・ツー・オー リテイリング(銘柄コード:8242)、高島屋(銘柄コード:8233)の百貨店3社となりました。

実は大手百貨店は、2021年12月の売上高が軒並み増加していました。昨年末は全国的な新型コロナウイルスの感染者数が減少傾向が続いており、日本人顧客の店頭売り上げが都心を中心にコロナ前の水準に近づいていたことがわかります。外出需要の増加からファッション、ラグジュアリーブランドへの購買意欲が高まり、そして年末商戦の時期と感染者数減少の時期とが重なったことで国内需要の取り込みに成功し、それが株式市場にも評価されたと考えられます。

一方ドラッグストアのマツキヨココカラ&カンパニー(銘柄コード:3088)、家電量販店のラオックス(銘柄コード:8202)・ビックカメラ(銘柄コード:3048)は年間のリターンはマイナスであり、TOPIXのリターンを下回りました。

マツキヨココカラ&カンパニーは主に都市部に店舗を展開しており、長引いた緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響で客足が遠のいたのが主な要因です。

家電量販店も、2020年の巣ごもり消費や10万円の給付金で消費が盛り上がっただけに、その反動が2021年に響いたのが要因と考えられます。

ここから読み取れることは、コロナ禍で小売業が厳しい経営環境に置かれる中、百貨店は「脱インバウンド依存」と「企業努力」が株式市場から評価されたと考えられます。

特にJ.フロント リテイリング(銘柄コード:3086)などは販管費を大きく圧縮させ、営業利益を黒字化させたことが評価されていると考えられます。

宿泊業は2極化が進む

また「宿泊」も二極化しました。いち早くマイクロツーリズムを掲げ、コロナの流行当初、代表自ら積極的にテレビに出て宣伝活動をした星野リゾート・リート投資法人(銘柄コード:3287)と資産売却を積極的に行った、椿山荘を運営する藤田観光(銘柄コード:9722)の株価はTOPIXのリターンを大幅に上回りました。

反対にいち早くサービスアパートメントを打ち出した帝国ホテルやロイヤルホテルの年間リターンはマイナスでした。帝国ホテルに関しては今後の建替えや京都への進出などの「攻め」はプラス材料ですが、2021年は株式市場からは評価されませんでした。

脱インバウンド依存の過程の企業はどうなったか?

そして「サービス」の中で、日本空港ビルデング(銘柄コード:9706)はコロナ禍で企業努力ではどうにも出来ない状況ではありましたので、厳しい株価リターンとなりました。

和雑貨販売や着物レンタルを展開する和心(銘柄コード:9271)は年間パフォーマンスがプラスだったものの、TOPIXのリターンを上回る事が出来ませんでした。

しかし、これは不採算店舗の閉店によるコスト圧縮や食肉事業への参入などの「コスト削減」、「脱インバウンド依存」が評価されていると考えてもよいでしょう。

2022年は勝ち組と負け組がハッキリする

以上が簡単な2021年のまとめになりますが、カテゴリー別で見ていくとコロナ禍で企業努力ではどうにもならない空運や鉄道などの「移動」にカテゴライズされる銘柄は、政府による移動自粛要請の有無によって大きく影響されることが予想されます。

長引くコロナ禍に対して経済活動回復とどう向き合っていくか、政府には前向きな判断を期待したいところです。

化粧品や美容器具などの「メーカー」も同様でしょう。こちらの2業界はコロナの収束の入り口が見え始めれば、足元の企業努力も加わり、株式市場から大きく評価されると考えております。

そして、「宿泊」、「小売」、「サービス」の企業は「脱インバウンド依存」と「コスト削減」、「新たな付加価値提供」を実行する企業と、それができない企業とで2022年は大きく差が開いてくると考えられます。

筆者紹介:Japan Localized代表 宮本 大

立命館大学卒。SMBCフレンド証券(現SMBC日興証券)を経てかんぽ生命保険入社。外国債券・為替ポートフォリオマネイジメント、日本株アナリスト兼株式ポートフォリオマネイジメントを担当。

米国College of William & Mary School of Business卒(MBA)。

Japan Localized設立後、訪日観光客向けへ体験ツアーの企画運営、インバウンド市場のリサーチ業務に従事。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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