新たな観光周遊ルート「レインボールート」とは?北陸新幹線延伸で期待されるインバウンド効果は

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現在、東京から金沢までを結ぶ北陸新幹線。金沢から大阪までの延伸計画を進めており、2024年春には金沢〜敦賀間が開業します。

北陸新幹線沿線の都府県、交通事業者(JR東日本・JR西日本)が集うグランドサークルプロジェクトでは、この延伸計画に伴って外国人観光客の新たな観光周遊ルート「レインボールート® ※」の確立を目指しています。

その一環として、2023年10月5日に「新ゴールデンルート(レインボールート)観光セミナー」が行われました。その中で発表された内容や、グランドサークルプロジェクト セミナー事務局/石川県国際観光課長の北口義一氏から伺ったお話をもとに、今後インバウンド市場において重要な周遊ルートの一つになる可能性を秘めている「レインボールート」について解説します。

※「レインボールート」は株式会社JTBグローバルマーケティング&トラベルの商標登録です。

▲グランドサークルプロジェクト セミナー事務局/石川県国際観光課長の北口氏より開催の挨拶
▲グランドサークルプロジェクト セミナー事務局/石川県国際観光課長の北口氏より開催の挨拶

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北陸新幹線延伸計画について

北陸新幹線は東京~大阪の整備計画が定められており、1997年10月1日に高崎〜長野間、2015年3月14日に長野〜金沢間が開業しました。そして、2024年3月16日には金沢〜敦賀間の延伸開業を予定しています。

開業後、北陸新幹線と関西・名古屋方面の特急の乗り換え駅となる敦賀駅には、19通路もの改札、エスカレーター26基、20人乗りのエレベーター6基、「動く歩道」として知られる水平型エスカレーターなど、スムーズな乗り換えを叶える仕組みが多数設けられます。

北陸エリアから各都市へのさらなるアクセス向上はもちろん、東京から北陸経由で関西・東海エリアへ向かうルートの利便性が向上することから、今回の北陸新幹線の延伸は国内外から高い注目を集めています。将来的には、東京〜北陸〜大阪を新幹線で行き来できるようになる計画です。

▲来年3月に北陸新幹線延伸、金沢〜敦賀間開業へ:セミナー資料より抜粋
▲来年3月に北陸新幹線延伸、金沢〜敦賀間開業へ:セミナー資料より抜粋

レインボールートとは

北陸新幹線沿線の10の都府県(東京都・群馬県・新潟県・長野県・富山県・岐阜県・石川県・福井県・滋賀県・京都府)及び交通事業者(JR東日本・JR西日本)から成るグランドサークルプロジェクトは、大手旅行代理店JTBによる提案のもと、北陸新幹線を利用して東京〜北陸〜関西・東海へと向かう観光周遊ルートを「レインボールート」と名付けました。この名前には、これらの地域を繋げた際に虹のような形を描いていることや、金沢、白川郷、高山など、様々な地域的特色が楽しめる、という意味も込められています。

外国人観光客にとっての日本観光といえば、これまでは東海道新幹線で東京、箱根、富士山、名古屋、京都、大阪などを巡る周遊ルート「ゴールデンルート」が王道でしたが、グランドサークルプロジェクトでは「レインボールート」を新たなゴールデンルートとして国内外で広めていこうと取り組んでいます。

レインボールートの魅力

北陸新幹線延伸によって誕生する新しい周遊ルート「レインボールート」に位置する地域には、ユニークな魅力がたくさんあります。中でもインバウンド需要獲得を目指す際のキーワードとなるのは「サステナブル」「アドベンチャー」だと北口氏は話します。北陸エリアの豊かな自然の中で生まれた文化や歴史の体験を、地方だからこそ叶う旅の醍醐味として海外へアピールする考えです。

グランドサークルプロジェクトを構成する10の都府県と、共にプロジェクトに取り組むJR東日本・西日本が海外に向けて発信する魅力や取り組みを一部ご紹介します。

■東京都:(公財)東京観光財団

「伝統と革新」「多様な楽しさ」がある都市として海外へPR。世界で2番目に日本に上陸した『ワーナーブラザース スタジオツアー東京‐メイキング・オブ・ハリー・ポッター』、東京が一望できる『SHIBUYA SKY』など、海外からの注目度の高い最新スポットも多数。

▲「伝統」と「革新」の両方の顔を持つ都市としてブランディングを行う東京都。
▲「伝統」と「革新」の両方の顔を持つ都市としてブランディングを行う東京都。

■群馬県:群馬県観光魅力創出課

高崎までは東京から新幹線で約50分。草津・伊香保・四万・水上などを有する温泉大国であるほか、奥四万湖、尾瀬国立公園などの豊かな自然を誇る。県では独自の施設登録制度「GunmaExcellence施設」を運営しており、一定の要件(Wi-Fi環境整備、英語での接客、クレカなどのキャッシュレス決済、英語での情報発信 等)を満たす施設を当該制度の登録施設として認定している。

■新潟県:新潟県国際観光推進課

「ガストロノミー」「スノーリゾート」を2大キーワードとし、日本海に面した土地や豪雪が生み出した食や生活、伝統文化、アクティビティなどが体験できるツアーやプランが多数。様々な地域と隣接する県として、いろいろな周遊スタイルに合わせた楽しみ方が提案できる。

■長野県:(一社)長野県観光機構

アルパイン環境でのハイキング、スノーアクティビティ、果物の収穫体験、中山道ウォーキングなどが人気。欧米豪へのプロモーション、国際的な認証取得を目指す地域の支援、公式サイトの英語・タイ語・中国語対応など、インバウンドを意識した取り組みを積極的に行う。

■富山県:富山県国際観光課

標高3,000mを超える立山連峰から水深1,000mに至る富山湾まで、ダイナミックで変化に富んだ地形を持つ。雪の大谷、黒部峡谷など海外からも注目度の高いスポットのほか、アート鑑賞、散居村ウォーク、越中いさみ太鼓見学、職人の弟子入りなど、体験型の宿も多い。

▲富山県の海外向け観光プロモーション資料。県が世界に誇る観光資産を発表した。
▲富山県の海外向け観光プロモーション資料。県が世界に誇る観光資産を発表した。

■岐阜県:岐阜県観光誘客推進課

元来、白川村や長良川流域など人気の観光スポットを持つ岐阜県は、持続可能な観光を推進するオランダのNPO“Green Destinations”が選ぶ「サステイナブルな旅行先トップ100」に3年連続で県内の観光地がランクイン。ほか、アメリカ大手旅行誌で高山「まつりの森」や養老天命反転地が紹介されるなど、世界からの注目度がますます高まっている。

■石川県:石川県国際観光課

石川県の特徴は、「海山の自然に恵まれ、自然と調和したサステナブルな人々の暮らしがあること」「加賀藩で栄えた文化が継承され続けていること」「これらを礎に質の高い食文化が育まれていること」。これらの魅力を知ってもらうため、九谷焼や輪島塗などの伝統工芸体験や自然の中での農家民宿体験、加賀藩に伝わる大名饗応料理など、数多くの体験メニューを取り揃えている。

■福井県:福井県観光誘客課国際観光室

2024年3月の北陸新幹線延伸により東京からのアクセスが良くなり、さらなる観光地化が期待される。越前蟹、東尋坊、芦原温泉、福井県立恐竜博物館、三方五湖などの観光スポットのほか、越前和紙、越前漆器、越前打刃物、鯖江眼鏡などの名産品も豊富。

▲2024年3月に新幹線が開通する福井県では、食・観光地・名産品など多様な魅力をアピール。
▲2024年3月に新幹線が開通する福井県では、食・観光地・名産品など多様な魅力をアピール。

■滋賀県:滋賀県観光振興局・(公社)びわこビジターズビューロー

京都駅から大津駅までは電車で10分という好アクセスであり、琵琶湖や彦根城などの有名観光地もありながら、混雑によるストレスが少ない観光地。桜や紅葉なども見もので、日本の四季の美しさが堪能できる。ランドオペレーター向けに宿泊助成事業を実施するなど、観光促進に取り組む。

■京都府:(公社)京都府観光連盟

「もう一つの京都」として、京都中心地以外の4つのエリアの観光を推進。天橋立や伊根などを誇る京都北部を「海の京都」、美山かやぶきの里や保津川など森や里山が美しい京都府中部を「森の京都」、平等院鳳凰堂や茶畑が有名な山城地域を「お茶の京都」、清らかな竹林の広がる乙訓地域を「竹の里・乙訓」とし、新たな京都の魅力を海外へ発信している。

■JR東日本・西日本

外国人観光客向け商品として、『北陸アーチパス』『関西-北陸レールパス』などのエリア周遊パスを販売。周遊パスの利用範囲で『花嫁のれん』『ベル・モンターニュ・エ・メール』などの観光列車も楽しむことができる。また、貸切プランや団体割引も用意し、様々な需要に応える。

▲JR東日本・JR西日本は事業エリアを越えて協業しながら本プロジェクトに参加。
▲JR東日本・JR西日本は事業エリアを越えて協業しながら本プロジェクトに参加。

レインボールートの確立によるインバウンド効果

グランドサークルプロジェクトでは10年以上にわたり、北陸新幹線延伸に伴う海外向けプロモーションに取り組んでいます。その効果や影響について、グランドサークルプロジェクト セミナー事務局/石川県国際観光課長の北口義一氏に伺いました。

▲北陸新幹線延伸やレインボールート確立のインバウンド効果について話す北口氏
▲北陸新幹線延伸やレインボールート確立のインバウンド効果について話す北口氏

北口氏によると、この10年で北陸エリアに訪れる訪日観光客は着実に増えています。特に訪日専用商品としてJRと共に開発した『北陸アーチパス』『関西・北陸エリアパス』などの周遊パスの影響は大きく、東京から軽井沢で折り返すのではなく、その先の北陸エリアまで足を延ばすケースが多く見られるようになりました。

中でも欧米豪からの注目度が急激に高まっていると北口氏は言います。実際、観光庁の宿泊旅行統計調査によると、2015年の金沢までの北陸新幹線開業により、沿線エリアにおける欧米豪からの宿泊者数は2018年までに約2倍に伸びています(大都市である大阪・京都・東京を除く)。以前までは日本に気軽に訪れることができるアジア人観光客がほとんどだったのに対し、遠く離れた国からでも行きたい観光地として想起されるようになってきているのだと言えそうです。

今後グランドサークルプロジェクトでは、海外旅行会社やランドオペレーター向けのプロモーションを一層強化していくとのことです。外国人観光客のニーズに合うツアーの企画支援や、レインボールートの魅力を自らの体験をもとに伝えてもらうための招聘事業などにより、レインボールートを外国人観光客にとって身近な選択肢の一つにしていく考えです。

北陸新幹線延伸やレインボールート確立の効果は、単にルート上の観光客増加だけに留まりません。外国人観光客にとって選択肢が増えることにより、オーバーツーリズムの改善、外国人観光客の旅行期間や旅費の拡大などにも繋がりそうです。また、海外から注目を集めることによって、国内においても日本の魅力を再発見する機会となるでしょう。インバウンドだけでなく国内旅行の需要も共に高めるであろう「レインボールート」から今後も目が離せません。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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