中国は、日本にとって最大の貿易相手国。コロナ前には訪日中国人の「爆買い」が話題になるなど、日本のインバウンド市場において重要な存在と認識している方も多いでしょう。
2023年は福島第一原発の処理水放出に対して中国側が反発し、日本の水産物の輸入を停止させるなど、日中関係はインバウンド業界にもさまざまな影響をおよぼしています。
この記事では中国に関する基本情報や、押さえておきたい日中関係の動向などをご紹介します。
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1. 中国の基本情報
中国は非常に歴史の長い国家で、その広さと人口の多さから、多様な文化を有する国として知られます。陸地面積は世界4位で、経済においては世界2位の規模を誇る経済大国です。
ここからは中国の基本情報について説明します。
1-1. 基本情報
面積 |
約約960万km²(日本の約26倍) |
人口 |
約14億人(92%が漢民族、他55の少数民族) |
首都 |
北京 |
公用語 |
中国語 |
宗教 |
仏教・イスラム教・キリスト教など |
一人あたりの名目GDP |
約1万USドル |
中国からの出国者数 |
約1.7億人 |
中国への外国人訪問者数 |
約6,500万人 |
訪日外客数(2023年) |
約242.5万人 |
人口は世界2位の14億人で、そのうち92%以上を漢族が占めています。ほかにも、モンゴル族やウイグル族など55の少数民族が存在していることが知られています。
言語においては少数民族の言語を含めて分類すると、最大で130種類以上の言語が存在すると言われています。標準語である北京語をベースに、広東語や福建語などといった数多くの方言、そして少数民族の言語が併用されています。
日本にもその地域によって方言があることを考えると、ヨーロッパほどの広さを誇る中国に、多くの言語が混在しているのも当然といえます。
1-2. 日本との距離
東京と上海までの距離はおよそ1,700kmで、首都の北京まではおよそ2,000kmです。羽田空港から北京への直行便の場合、所要時間は約4時間で、北京発の場合は約3時間30分と少し短くなります。
日本と中国間の直行便は多くの都市で就航していて、東京(羽田、成田)、関空、中部国際空港(セントレア)、福岡、札幌のほか、旭川、新潟、静岡、小松、広島、鹿児島、沖縄などから便が出ています。
1-3. 中国市場のインバウンドデータ
2023年の訪日中国人客数は242万5,000人で、コロナ禍前の2019年と比べて25.3%程度です。コロナ前の水準までは回復しなかったものの、緩やかな増加傾向にありました。
2023年8月には団体旅行解禁の好影響もあって客足が増えたものの、福島第一原発の処理水放出問題などが影響し、9月と10月は低迷しました。その後2024年は少しずつ回復してきています。
訪日中国人の消費額は7,599億円で、国別では台湾に次いで2番目に位置します。訪日客数は韓国、台湾に次いで3番目ですが、消費額は1位の台湾とほぼ変わらず、中国市場の重要性がうかがえます。
2014〜15年ごろには「爆買い」で注目された訪日中国人ですが、その消費傾向は年々変化しています。特に最近では「モノ消費」から「コト消費」への転換が指摘されて久しく、実際に消費額の中で、「買い物代」以外の比率が上がっていることがわかっています。ただし全く買い物をしなくなったというわけではなく、今も日本の小売業において重要市場の一つとして認識されています。
2022年12月ごろまで続いた「ゼロコロナ」政策。その後も中国国内における新型コロナウイルス感染再拡大などの影響で、中国インバウンドの回復は、他に大きく遅れをとっていました。
現在でも、2024年夏ダイヤにおける中国旅客便の回復状況は、コロナ禍前となる2019年冬のダイヤ比で62%にとどまっています。その結果、航空便が取りづらい、航空チケット代が高止まりするなどの問題があり、訪日中国人数の回復が遅れる大きな要因となっています。
また先述の通り、福島第一原発の処理水放出問題も影響し、低迷する期間が長引きました。ただし2024年は順調に回復してきており、消費額も2024年1-3月期で中国が1位となっています。今後はさらに回復し、インバウンド市場における影響力を増していくことが予想されます。
関連記事:1〜3月の訪日消費額、国別では中国が1位
2. 中国と日本の関係をわかりやすく解説
中国と日本は2,000年以上も前から交流を続けてきました。中国と日本はこれまでどのような関係を築いてきたのでしょうか。両国の関係性も踏まえて説明します。
2-1. さまざまな結びつきを持つ日本と中国
中国は古代から文明・文化が栄えた国で、周辺国に大きな影響を与えました。日本にも米作りや漢字、仏教、儒学、貨幣など、さまざまな技術や文化が伝わってきたことが知られています。また、日本が遣隋使や遣唐使を派遣したのも、中国の文化を日本に持ち込むためだとされています。
近代には日清戦争や日中戦争など両国間の戦争も起こりましたが、1972年9月には「日中共同声明」によって国交を回復しました。その後、国交回復を記念して中国から日本へ「カンカン」と「ランラン」の2頭のパンダが贈られました。
一方、このタイミングで日本は台湾との断交を決め、それ以来複雑な三国間関係が続いています。
関連記事:台湾と日本の関係をわかりやすく解説
2-2. 中国は主要な貿易相手国のひとつ
日中関係は複雑で、たびたび緊張が走ることもありますが、日本にとって中国は輸入で第1位、輸出で第2位に位置するなど主要な貿易相手国のひとつです。中国にとっても日本は主要な貿易相手国で、輸入で第2位、輸出で第3位は日本となっています。
日本から中国へは半導体をはじめとした電子部品や、自動車、プラスチックなどを輸出しています。一方、日本は中国からスマートフォンや衣類、パソコン、テレビなどを主に輸入しています。両国間の貿易は、両国の経済発展にとって重要な役割を果たしているといわれています。
2-3. 中国経済が日本に与える影響
中国経済は、日本にどういった影響を与えるのでしょうか。ゼロコロナ対策の終了後、中国経済は急速に回復するかと思われましたが、その動きは鈍い模様。個人消費や消費者物価指数の低下、失業率の上昇などがみられている状況です。
その背景にあるのが、不動産市場の低迷です。2023年には中国不動産大手である恒大グループが米国で破産法の適用を申請し、日本でも大きな話題となりました。中国当局は中央銀行の金融緩和策や消費促進策などを打ち出していますが、不透明な情勢が続くことが予想されるでしょう。
ただしそれでも、訪日旅行需要は堅調に回復しています。これは人口の多い中国において、現在の状況でも海外へ旅行できる層が一定数いるためと考えられます。中国経済の低迷がインバウンド市場に与える影響は今のところ大きくはなさそうですが、今後の動向を注視していくべきでしょう。
関連記事:中国恒大集団の破産法適用申請、インバウンドへの影響は?
3. 中国人が抱く日本の印象について
歴史的な対立や政治的な摩擦から、中国と日本の関係は時に緊張を伴うこともあります。領土問題や歴史認識の違いがその一例でしょう。
その一方で、中国人は日本人の礼儀正しさや伝統文化、技術力、ポップカルチャー、アニメなどに対して、興味や関心が高いとされています。中国人が抱く日本の印象について詳しく説明します。
3-1. 日本の印象「良くない」が6割超
言論NPOが日本と中国の両国民を対象に実施した意識調査によると、日中両国民の相手国に対する印象について、中国側は「良くない」「どちらかといえば良くない」が62.9%でした。
中国が日本に対して良くない印象を持つ理由としては、「魚釣島周辺の国有化で対立を引き起こした(46.4%)」や「日本は侵略した歴史をきちんと謝罪し反省していないから(31.8%)」「日本が中国の原則に消極的態度を示しているから(37.3%)」「外交において米国に追随する行動が理解できないから(27.6%)」などが挙げられており、日本に対し複雑な思いを抱く中国人が多いことを示しています。
3-2. 日本人は「礼儀正しい」「先進的、技術が高い」
一方、同じく言論NPOの調査によると、中国人が日本に対して好意的な印象を持つ理由として、日本人の礼儀正しさや先進的な技術が挙げられています。とくに、「日本人は礼儀があり、マナーを重んじ、民度が高い」という点が、半数以上の支持を集めています。
2022年までは、中国人にとって好意的な印象を持つ要因は「日本の高品質な製品」や「経済発展による生活水準の高さ」が主でした。しかし2023年の調査では、「さまざまな民間の交流により、日本人の存在が身近に感じられるようになった」という理由が、8.9%から33.9%に上がっています。
中国人が日本に対して肯定的なイメージを持つ要因が、時代とともに移り変わっていることがうかがえます。
3-3. 中国人と上手に付き合う方法
中国人と上手に付き合うためには、中国人の特徴を理解して接することが重要です。中国人の特徴として、たとえば「家族・友人を大切にする」「自分の意見をはっきりと主張する」「メンツを重んじる」などが挙げられます。
中国人は親、兄弟はもちろん、友人にも情に厚い人が多く、身の回りの人を大切にする文化が根付いています。一方で自らと関係のない人にはドライな面があります。コミュニケーションは、明確に表現することを好みます。考えをストレートに口に出す人が多く、婉曲表現を好む日本人と異なります。
間違いを認めて謝ると威厳が保てないと考える人が多いようです。日本とは反対の考え方ですが、謝ることの是非が国により変わることを認識すると、中国人への理解が深まります。
関連記事:中国人とうまく付き合う4つのポイント
4. まとめ
中国経済の減速が日本に及ぼす影響や、両国の貿易関係、さらには中国人が抱く日本・日本人への印象についても解説しました。
日中関係は両国にとっても重要であることから、いかに相互理解や協力関係を築けるかが今後の経済活動にも影響します。特にインバウンド業界に関わる人にとっては、その動向をしっかりと追っておく必要があると言えるでしょう。
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<参照>
外務省:中国人民共和国基礎データ
⽇本政府観光局(JNTO):JNTO⽇本の観光統計データ
⽇本政府観光局(JNTO):訪日外客数(2023 年 12 月および年間推計値)
特定非営利活動法人 言論NPO:第19回日中共同世論調査結果