地域で進める「観光DX」3つの事例:箱根町・富士吉田市・妙高市が実施した取り組みとは【じゃらん観光振興セミナー vol.2】

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じゃらんリサーチセンターは6月13日、「観光振興セミナー2024 オープン・ラボ Online」を開催しました。全国の先進事例やじゃらんリサーチセンター(JRC)独自の調査・研究を、研究員自らが解説するセミナーイベントです。

訪日ラボでは、各講演の中から特にインバウンド観光に関連する講演を取り上げ、解説していきます。第二弾として、じゃらんリサーチセンター研究員 木島 達也氏による「じゃらん流!観光DX 2年間の活動経過報告と将来計画」の内容をお届けします。

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観光DXとは

観光DXとは、デジタル技術を駆使してビジネスモデルや業務プロセスに変革を起こすことを指すDXデジタルトランスフォーメーション)を、観光業において応用することです。

旅行者数の増加や観光消費の拡大を目指す取り組みとして、さらには顕在化する人手不足の解決策としても注目されています。

関連記事:観光庁が推進する「観光DX」とは?国内外の優良事例紹介

「じゃらん流」観光DX

じゃらんリサーチセンターにおいては、リクルートが運営する宿泊予約サイト「じゃらんnet」の統計データや、業務・経営支援サービス「Airビジネスツールズ」を活用した観光DXを提案しています。

ただし、統計データの活用は誰もが簡単にできるものではなく、かつ増える観光客に対し現在進行形で起こっている売り上げ棄損への対応も必要といった課題があることから、まずはデジタル技術の導入を優先。ロールモデルを作り、それを他のDMOや行政、事業者に知ってもらう取り組みを進めているとしています。

ここでいうデジタル技術の導入とは、これまで人がしていたことをデジタル技術で代替するもので、例えば順番待ちや受付・予約の管理ができる「Airウェイト」や、セルフオーダーシステム「Airレジ オーダー」の導入などを指します。

さらにそうしたデジタル技術導入により、取れるデータが増えることも利点です。これまで個別店舗や施設が独自に・手作業でやっていたことを地域レベルで実施するとともに、データ利活用にもつなげることを目指しています。


3つの観光DX事例

今回のセミナーで木島氏が取り上げた、3つの観光DX事例を紹介します。

1. 箱根町の観光DX

神奈川県箱根町は、全国でも有数の温泉観光地であり、豊富な観光資源を持つ「観光立町」。一方で課題もあり、自然災害や新型コロナウイルス感染症による基幹産業(観光業)への打撃、繁忙期における観光客の集中化・混雑・渋滞問題を挙げています。また、現地の土産物店や飲食店の売上把握ができていないといった課題もあったそうです。

そこで箱根町では、需要予測およびオーバーツーリズム対策を実施。オンハンド情報*などから需要予測を抽出し、飲食店・土産物店・観光施設などに情報提供できないかと考えました。土産物店の仕入れ計画や飲食店の受け入れ対策などに活かすことで、箱根エリア全体の観光消費額向上を目指しました。

* オンハンド…その時点における予約数のこと。

じゃらんnet」のオンハンドデータと、箱根町が保有していた位置情報データを突合したところ、15日前でほぼ確定日と同じ数値であることが判明。人流予測ダッシュボードの作成に成功しました。


さらに「飲食店の混雑可視化プロジェクト」として、「Airウェイト」を設置することで作業効率を上げるとともに、順番待ち人数などのデータを取得、混雑情報をMAP化しました。これによりデジタル技術 ⇆ データの循環モデルが実現しています。

今後は「Airレジ オーダー」も活用し、外国人観光客の対応なども効率化することで、人手不足の解消や顧客満足度上昇も目指すということです。


2. 富士吉田市の観光DX

山梨県富士吉田市も新倉山浅間公園忠霊塔、富士急ハイランド、富士スバルライン五合目など、多くの観光スポットを有する観光地。首都圏からのアクセスも良く、国内外問わず多くの観光客が訪れます。しかし観光入込数と比べて、宿泊者の割合が少ない「通過型」観光地になってしまっているという課題があります。

そこで富士吉田市では、2023年10月から5年間の観光推進計画を策定。「イベント開催による宿泊人数や地域消費額の変動のモニタリング」「主要な観光施設や観光スポットの口コミ情報から満足状況をモニタリング」といった取り組みを通して、観光推進計画の効果検証にDXデータを活用していくとしています。


他にも箱根町と同様、市内のレストランにて地域の宿泊オンハンドデータによる需要予測を施設運営に活用。業務の効率化に成功し、新たな店舗の出店も実現したといいいます。

また、将来的な宿泊税の導入検討にあたり、じゃらんによる地域全体の宿泊実績(推計値)データを活用し、今後の検討材料にしていくということです。

3. 妙高市の観光DX

新潟県妙高市はスノーエリアとして人気が高く、ウインターシーズンには国内外から多くの観光客が訪れます。しかし繁忙期(スノーシーズン)と閑散期(グリーンシーズン)の差が激しい「繁閑差」観光地であるという課題を持っています。

そこで妙高市では、インバウンド再来に向けた受け入れ整備を実施。キャッシュレス化の推進や多言語案内板の設置、二次交通連携(オンデマンドタクシー実証化)の3つを主に進めました。さらにタクシー配車システムを構築。ホテルや飲食店に設置されたPOPやチラシのQRコードを読み込むことで、外国人旅行者も手軽にタクシー配車を利用できるようになったほか、アンケートも同時に回答できるようにし、インバウンドデータを収集する仕組みにもなっています。


さらに観光案内所など妙高市の指定管理施設に「Airレジ」「Airシフト」「Airペイ」「Airレジオーダー」「Airリザーブ」といったサービスをフル装備し、業務効率化や生産性向上を実現。DMOや行政管理の指定管理施設に横展開されるロールモデルになりました。

将来的にはスキー場を有するエリアに共通ゲートシステムを導入し、利便性向上とマーケティングデータの取得、運営効率化などを図っていくということです。


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以上、「じゃらん流!観光DX 2年間の活動経過報告と将来計画」セミナーの内容をまとめました。

観光業に限らず、DXは単にデジタル技術を導入するだけでは十分ではなく、業務プロセスやビジネスモデルに何らかの変革(トランスフォーメーション)を起こすことが重要です。今回紹介した事例では需要予測の仕組みの導入や、各々で実施していた管理を地域で共通化するといった変革が生まれており、他の地域でも参考にできる部分が多分にあると感じました。

また、今回研究対象となった3地域は、どこも人気観光地である点が印象的でした。観光客の誘致をしたいという地域での取り組みも重要ですが、「観光客は来ているが、混雑によるオーバーツーリズムが起きている」「観光客が来る時期と来ない時期で大きな差がある」といった悩みを抱えている地域での取り組みとして、先進的な内容だといえそうです。

一方で、こうした取り組みは持続可能なものになっているかが重要だといえます。今回報告された2年間の成果だけでなく、今後の成果についても追っていきたいところです。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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