2018年は、日本を訪れる外国人観光客が初めて3000万人を超えました。そのうちの約3割が中国からの観光客です。中国の訪日ビザの緩和により、2019年もさらに多くの中国人観光客が訪れることが期待されています。そんな中国人にとって一年のうちで一番大切な行事が「春節」です。
このページでは、日本人になじみのない春節について、中国人にとってどのような意味を持つのか、またインバウンド対策として何ができるのかを解説します。「春節」という言葉しか知らないという方に向けて、1から丁寧に分かりやすく説明します。
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中国人観光客が増加する「春節」とは?
春節とは、中華圏における旧正月(陰暦)を指します。日本人にとっての正月は太陽歴の正月となります。中国の春節の休みの期間は、元旦に当たる「春節当日」の前日から平均して7日間です。2019年は2/4~2/10でしたが、日にちは毎年異なります。
春節の連休を利用し訪日する中国人観光客
春節は家族や親戚で集まって7日間、豪華な料理で新年を祝います。また春節を利用して海外に行く中国人も多くいます。春節に合わせて約1週間の連休を取り、海外に旅行に行きます。
かつて日本のデパートや家電量販店でニュースとなった「爆買い」も、この春節の時期の出来事です。
春節に訪日する理由は?
春節に日本を訪れる中国人が増加したことには、幾つかの理由があります。
まず、LCC(格安航空)が発達したことが挙げられます。LCCにより、中国人にとって日本に来るハードルが下がったと言えます。また中国ー日本の便数も増えました。これは成田空港や羽田空港などの主要空港以外にも、地方空港が中国との定期便を就航させることに成功したためです。
その他、中国人にとっての日本は安全というイメージや、日本製品の根強い人気も、中国人が日本を訪れる理由の一つです。
2019年の春節
この章では、2019年の春節期間における中国人の動向をみていきます。
国内外の航空券、ホテル、レンタカーの比較検索サービスを提供しているスカイスキャナージャパン株式会社は、2019年2月に「2019年春節 訪日旅行で人気急上昇の旅行先トップ5」を発表しました。春節期間中の、アジア8つのエリア発、日本行きの往復航空券の予約状況をもとに調査したものです。以下の表をご覧ください。
2019年春節 訪日旅行(インバウンド)で人気急上昇の旅行先トップ5
順位 | 都道府県 | 伸び率 |
1 | 熊本県 | +97.4% |
2 | 愛媛県 | +64.7% |
3 | 香川県 |
+23.1% |
4 | 宮城県 |
+22.3% |
5 | 宮崎県 |
+18.1% |
(出典:スカイスキャナージャパン株式会社 https://www.skyscanner.jp/)
1位は、+97.4%と前年と比べ約2倍の伸びを見せた熊本でした。旅行者の国別では、香港からの予約がもっとも伸びていました。これは香港のLCC、香港エクスプレスが熊本-香港線を定期便にしたことが功を奏した形となりました。また韓国のLCCであるT'Way航空も2018年11月に熊本-大邱線で定期便を就航させており、韓国からの訪日客も増加しました。
2位の愛媛県は、日本最古の温泉といわれる「道後温泉」、そしてサイクリングコースとして知られるしまなみ海道に訪日客が集中しました。愛媛県の玄関口である松山空港は、上海線、そしてソウル線の2つの国際便が就航しており、2018年10月にも増便に成功しました。2019年にはエバー航空が松山-台北線を開設し、話題となりました。四国や瀬戸内地方を周遊する玄関口として、今後も利用者増加が期待されています。
春節期間の訪日外国人観光客は日本全体で好調の傾向
観光庁長官の田端浩氏によると、春節期間に日本を訪れた訪日外国人は2018年に比べて2割ほど増加したという分析結果がでているそうです。東京都内、大阪京都などにいると、至る所で中国語や韓国語を耳にすることが普通となりました。近年は都会以外でも、熊本や愛媛などの地方を中心に、外国人を多く見かけたのではないでしょうか?
春節の「爆買い」は減少?
春節に限らず、訪日外国人による「爆買い」は減少傾向にあることがわかっています。化粧品や電化製品など日用品に限らず、ブランドものなどの高額商品の購入も減っています。
長年中国人の爆買いを支えてきた銀座の高級デパートも、今では閑古鳥が鳴いています。爆買いというバブルは、一時代を終えたと言えるでしょう。現在春節をはじめ、中国からの訪日外国人客数は増加しているものの、1人あたりの消費額が下がっている可能性があります。
中国の景気低迷と取り締まりが要因?
中国人による日本での爆買いが冷え込んだ一つの要因として、中国経済の景気低迷が挙げられます。長年高い成長率を維持してきた中国経済の雲行きが怪しくなった結果、富裕層が財布の紐を締めたということが考えられます。
そしてもう一つの理由が、中国において「電子商務法(通称:電商法)」が2019年に施行されたことと関連しています。改正により、代替購入に関しては営業許可証を新たに取得しなければならず、許可されていない商品がECプラットフォーム上で取引された場合は、販売者だけでなく、プラットフォーム業者も罰則が科されるようになりました。
最大3400万円の罰金 中国「ソーシャルバイヤー」規制で『爆買い』さらに沈静化へ?/2019年1月施行の「電子商務法」とは
中国の10月初旬の大型連休「国慶節」では、海外旅行先人気ナンバーワンとなった日本。実は日本に旅行に来ていなくても、中国国内で日本製品のファンとなっている人たちがいます。こういった中国人は、「越境EC」や「ソーシャルバイヤー」を通じて日本製品を購入しています。本編ではソーシャルバイヤーの実態と、来年2019年に開始される規制とその影響について解説します。インバウンド最大の中国市場は「旅マエ」にアプローチするのが重要!おすすめのインバウンド対策を資料で詳しくみてみる「中国インフルエンサープロモ...
これにより、中国の空港では、税関検査が厳しくなり、罰金を払わされる個人業者も出てきました。今まで爆買いをしていた個人が、多くの商品を中国に持ち込むことができなくなりました。
正規のECルートは拡大へ
電子商取引法の改正により、中国政府は税収を確保するとともに、大手の越境EC運営業者を囲い込む狙いがあります。2019年の新法施行に際して、中国政府は越境ECで購入できる制限額の上限を増やしています。
ECでは買えない「コト」商品・サービスの強化が必要?
中国の富裕層にそっぽを向かれてしまった今、私たち日本人は中国人観光客とどう向き合っていくべきなのでしょうか。それは電化製品やブランド物と言った「モノ」ではなく、体験やアトラクションなど、そこにいなければ体験できないような「コト」消費へとシフトすることです。
ネット通販がここまで普及した今、モノを買いに海外に行くという目的は薄れています。家にいながらにして、ボタンひとつで世界中の商品を購入できる時代です。しかしイベントや文化を体験することは、その国でしかできないことです。
コト消費の代表例としては、着物体験や酒造見学、料理体験などがあります。その道に携わるローカルな人が、外国人に体験を提供することで、訪れた人の記憶に深く突き刺さります。日本の生き残りをかけて、「日本に来たから体験できた!」と観光客に思わせるコンテンツを増やしていくことが求められます。
まとめ:春節を利用して効果的なマーケティングを
このページでは春節という単語をキーワードとして、近年の中華圏からの訪日観光客の動向をまとめました。日本企業にとっては天の恵みであった「爆買い」が姿を消した今、体験やサービスから得られる「コト消費」が注目されています。
一人当たりの消費額は落ち込んでいるものの、訪日観光客数は伸びており、春節という一年で一番大切なイベントを日本で過ごしたいと考える中国人も数多くいるでしょう。2020年の春節に向けた効果的なマーケティングを実践することができればインバウンド事業はさらに発展していくことでしょう。
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<参照>
- 訪日ラボ:中国春節(旧正月)とインバウンド消費の深い関係 | 春節期間は訪日中国人が10万人増える!?
- 訪日ラボ:2019年中国旧正月「春節」はいつ?人気ランキングは?→2月4日〜7連休・日本、タイ、香港が旅行先TOP3に
- スカイスキャナー:スカイスキャナー、「2019年春節 訪日旅行(インバウンド)で人気急上昇の旅行先トップ5」を発表
- 訪日ラボ:モノ消費から「コト消費」に変化するインバウンド/理由と対策は?
【7/9開催】消費額1.7兆円超!最新中国インバウンド市場の攻略ポイント
2024年、訪日外国人による旅行消費額は過去最高の約8兆1,257億円を記録。 そのうち中国は1.7兆円超(全体の約21%)と圧倒的な1位を占めており、宿泊日数や訪問者数でもトップクラスの存在感を示しています。
これだけ市場が大きく、経済インパクトのある中国インバウンド。 いま多くの企業が「中国向けに本格的な戦略を立てるべきではないか?」と検討を始めています。
しかし中国では、Googleをはじめとする多くのサービスに規制があり、中国現地のSNSや地図サービスを活用するなど、独自のカスタマイズされた対策が必要です。
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【8/5開催】「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」
2025年、日本のインバウンド市場は訪日外客数が過去最高の4,020万人に達するとの予測や大阪・関西万博、IR誘致などによる世界からの注目度の高まりから、新たな変革期を迎えています。一方で、コロナ禍を経た現在、市場環境や事業者ごとの課題感、戦略の立て方は大きく様変わりしました。
「THE INBOUND DAY 2025」は、この歴史的な転換点において、インバウンド事業に携わるすべての企業・団体・自治体・個人が一堂に会し、日本が持つ「まだ見ぬポテンシャル」を最大限に引き出すための新たな視点や戦略的アプローチを探求、議論する場です。
初開催となる今回のテーマは「インバウンドとは」。
参加者一人ひとりが、「自分にとって、企業にとって、地域にとってのインバウンドとは何か」「いま、どう向き合うべきか」「どうすれば日本の可能性を最大化できるのか」という問いを持ち帰り、主体的なアクションへとつなげていただきたいと考えています。
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※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。
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