なぜ4,000万人は達成されても8兆円に届かないのか?2020年の訪日観光業界を予測

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2018年は訪日外国人客数が初めて3,000万人を突破し、訪日外国人によるインバウンド消費額も過去最高の4.5兆円となりました。

近年の訪日外国人客数の増加、そしてインバウンド消費の拡大は、日本の経済成長に欠かせないものとして政府も重視しており、訪日観光に関する目標設定や目標達成のための施策を様々に講じています。

この記事では、観光大国を目指す日本政府の目標やこれまでの実績についてまとめます。

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2016年3月に政府の目標が決定

2016年3月30日に催された明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」にて、2020年、2030年までの観光に関する目標が決定されました。同会議は、内閣総理大臣の安倍晋三氏を議長として開催されました。会議は、訪日外国人観光客の拡大に向けた具体策の検討や、今後のインバウンド市場に関する目標を決定することを目的に据えたものでした。

政府は、観光事業拡大にともなうGDP増加、地方の観光地を訪れる外国人客の増加にともなう地方創生を目指して、2020年には4,000万人、2030年には6,000万人訪日外国人観光客を誘致することを目標としました。インフラ整備、航空や鉄道、サービスなどを同時に成長させる観光事業は、日本の経済成長の起爆剤となると考えられています。政府はこうした考えに基づき、インバウンド誘致のための施策に積極的に取り組んでいます。

日本政府観光局(JNTO)とは?活動・観光庁との違い・データの見方

日本政府観光局(JNTO)は「Japan National Tourism Organization」の略で、正式名称は「独立行政法人 国際観光振興機構」です。日本政府観光局(JNTO)とよく混同されるのが「観光庁」です。この2つの機関はどちらも、日本のインバウンドを促進するにあたって中心的な役割を果たしています。その例として、日本政府観光局(JNTO)と観光庁は、観光やインバウンドに関するデータを発表しています。この記事では、日本政府観光局(JNTO)と観光庁の違いや日本政府観光局(JN...

観光庁の5つの役割

観光庁は国土交通省の外局の一つで、日本の観光立国実現のために、魅力ある観光地の形成や国際観光の振興、その他の観光に関する施策を行っています。管轄範囲は幅広く、例えば外国人観光客が免税で商品を購入できる免税店の全国の店舗数の調査もその業務のうちの一つです。今月観光庁が発表した情報によると、今年4月1日の時点で全国で免税店は5万を突破し、その中でももっとも増えたのは岩手県とわかりました。同機関は免税制度の積極的な活用を地方地自体に呼び掛けており、こうした政府の姿勢からは今後もショッピングが日本...

観光庁の訪日外国人統計をわかりやすく解説!どんなデータがある?読み方は?

観光庁では、訪日外国人の消費動向などをまとめた統計・データを数多く発表しています。それらのデータを適切に読み取ることは、インバウンド集客を考える上で非常に重要です。 この記事では、観光庁発表の統計・データ一覧、またそれらの中でインバウンド対策に役立つ資料の読み方、要点についてまとめています。 目次観光庁が発表している調査・統計にはどんなものがある?訪日外国人消費動向調査月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)各種データの読み方を解説観光庁の訪日外国人消費動向調査を読むJNTOの月別・...

訪日外国人旅行者数:2018年までの推移

▲[2018年までの訪日外国人客数の推移]:観光庁HPより訪日ラボ作成
▲[2018年までの訪日外国人客数の推移]:観光庁HPより訪日ラボ作成

上記は年別の訪日外国人観光客数についてまとめたものです。表からは2011年以降日本を訪れる外国人の数が右肩上がりに増加していることがわかります。

この増加傾向が継続しつつ東京オリンピックを迎えることができれば、2020年の目標として設定されている訪日外国人客数4,000万人十分達成可能であると考えられています。

一方で2030年の目標である6,000万人に向けて増加傾向を継続させるためには、新たな施策が必要であるというのが政府や観光業界の共通見解です。今後の関連組織の動きに注目が集まっています。

【国別】2019年訪日外国人観光客数の予測|効果的なインバウンド対応のポイントとは?

日本政府観光局(


訪日外国人の旅行消費額:2018年までの推移

▲[2018年までの訪日外国人消費額の推移]:観光庁HPより訪日ラボ作成
▲[2018年までの訪日外国人消費額の推移]:観光庁HPより訪日ラボ作成

上記は訪日外国人消費額の推移をまとめたものです。

政府は2020年に8兆円、2030年に15兆円を目標として設定していますが、訪日外国人客数に比べ伸び悩んでおり、この状況を打開する策が求められています。

現在では訪日外国人客1人あたりの消費額は15万円ほどですが、2020年に8兆円を達成するためには1人あたり20万円まで増加させる必要があり、現時点では決して簡単に達成できる目標とはいえません。

目標達成のためにはさらなる訪日外国人客数の増加と1人あたり消費額の増加の双方が必要です。

インバウンド消費が過去最高記録!観光庁「訪日外国人消費動向調査」からわかるトレンドについて解説

2018年のインバウンド消費額は、過去最高を記録しました。しかしながら、以前に比べ消費額には伸び悩みが見られました。今回は、観光庁より発表された国・地域別総消費額や一人当たり消費額のデータから、訪日外国人の消費傾向を分析します。その上で、今までのアジア圏を主なターゲットとした誘致に対し、さらなるインバウンド消費増大を目指すための新たな指針を紐解いていきます。また、この記事では「モノ消費」から「コト消費」という訪日外国人の消費トレンドの変化について近年のデータを参考に検証し、今後の消費傾向を...


地方部での宿泊者数

政府は政策の方針として地方創生を重点的に打ち出しています。設定した目標に中で地方創生に深く関係しているのが、地方部での訪日外国人宿泊者数です。

ここでは東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪、京都、兵庫の1都2府5県を除く地域を地方部と定め、政府では該当地域におけるインバウンド対策に注力しています。

政府が設定した地方における訪日外国人宿泊者数の目標値は2020年に7,000万人、2030年に1億3,000万人です。しかし2018年の数字は3,636万人で、直近の伸び率が20%にも満たないことから、これについては目標達成はなかなか難しいとの見方が強まっています。

リピーター数

インバウンド市場拡大を目指す上ではリピーターの獲得も重要で、これについても政府は重点的に対策を講じています。

政府目標は2020年に2,400万人、2030年に3,600万人で、直近におけるリピーターの推移はというと、2016年に1,426万人、2017年に1,761万人、2018年には1,937万人と順調に増加しています。現時点では、2020年の目標である2,400万人も達成できると予想されています。

「明日の日本を支える観光ビジョン」の3つの視点とは?

明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」では明日の日本を支える観光ビジョンの策定も行われました。このビジョンではインバウンド市場を拡大させるための3つの視点を掲げています。

以下では、それぞれのビジョンについて解説します。

1. 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に

政府は、地方に存在する観光資源を国民や観光客に向け広く開放することで、地方創生の礎とすることを目指しています。

そのための試みとして、赤坂や京都の迎賓館をはじめとした公的施設の公開、開放を進めること、文化財を保存優先から活用優先へとシフトすることなどを挙げています。

2. 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に

政府は観光産業におけるイノベーションの必要性も認識しており、観光先進国を目指すべく戦略的なビザ緩和の実施、民泊ルールの整備、世界水準DMOの形成促進などを進めることを発表しています。

これらの施策は、観光大国として世界にアピールすることによりさらなるインバウンド市場の拡大をねらいとしています。

3. 「すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に

政府は、出入国審査の簡素化、通信環境の整備、交通網の充実などを通してすべての旅行者にストレスフリーな旅を提供できる国を目指すことをビジョンの1つとして盛り込んでいます。

訪日外国人のみならず高齢者や障がい者にも旅の喜びを感じてもらえるような環境の整備を、都市、地方において進めていくと示しています。

観光庁:6月14日に「観光ビジョン実現プログラム2019」を策定

政府は2020年という節目のタイミングで観光に関する目標達成を実現するために、2018年8月より有識者を交えた「観光戦略実行推進会議」を重ねています。6月14日には「観光ビジョン実現プログラム2019」を策定しました。

以下では、プログラムで定める4つの施策について解説します。

1. 外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備

政府は、訪日外国人の訪日旅行における不便や悩みを解決することで真の意味で楽しめる環境を目指すと発表しています。具体的には観光地における多言語対応の推進やWi-Fi設備の充実などを挙げています。

音声翻訳機の中にはWi-Fi環境下で使用するものもあるため、通信設備を整えることが言葉の壁を解消することに直結するケースもあります。

2. 地域の新しい観光コンテンツの開発

政府は、実際の城に宿泊できる城泊や観光地におけるVRを利用したコンテンツなど、斬新なアイデアを基にした新たな観光コンテンツ導入にも重点を置いています。

新たな観光コンテンツを継続的に生み出すことによって注目を集めることができれば、新規の訪日外国人観光客の獲得はもちろん、リピーターの獲得にもつながるでしょう。

3. 日本政府観光局と地域(自治体・観光地域づくり法人)の適切な役割分担と連携強化

政府は自治体や地域創生を目指す法人との連携を強化することによって、地方レベルだけでなく国家レベルでの訪日外国人誘致を目指すと発表しています。

観光庁ではグローバルキャンペーンなどの大規模なプロモーションを行い、自治体では地域レベルでの訪日外国人に対する歓迎やサポートを行うことで、適切に役割分担を行う方針を固めています。

4. 出入国の円滑化等

出入国といえば時間がかかるものというイメージがありますが、政府は観光ビジョン実現プログラムの一環として海外からの旅客の空港における出入国の迅速化、簡素化を進めるとの方針を打ち出しています。

法務省によれば今年7月24日の羽田空港を皮切りに、今後成田空港、関西空港、福岡空港、中部空港、新千歳空港及び那覇空港において顔認証ゲートの外国人出国手続における運用が開始されます。2020年までにこれら空港への導入が完了する計画となっています。

政府の目標もインバウンド経済を左右

近年の訪日外国人観光客数の増加やインバウンド市場拡大には政府も注目しており、インバウンド対策によって日本の経済をより活性化すべくさまざまな施策を行うと発表しています。

特に訪日外国人観光客数、訪日外国人旅行消費額、地方における訪日外国人宿泊者数の3項目には重点を置いており、2020年、2030年と10年単位での目標設定を行っています。またそれに伴い、目標を達成するためのビジョンや施策を打ち出しています。

政府の目標や施策が、今後のインバウンド経済の行方を左右する部分も小さくなく、今後も関連組織は政府動向にキャッチアップしてくべきでしょう。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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