なぜ3,000万人超は実現できたのか?インバウンドを総まとめ「観光白書」2019年版を解説

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2019年6月21日に2019年度(令和元年度)版の観光白書が発表されました。観光白書は日本の観光分野の施策について、国がまとめた報告書です。

第I部:平成30年観光の動向、第II部:すそ野が拡がる観光の経済効果、第III部:平成30年度に講じた施策、第IV部:令和元年度に講じようとする施策から構成されており、インターネット上でPDFの形で公開されています。

この記事では観光白書の内容を踏まえて、統計から見える最新のインバウンド動向を紹介していきます。


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観光白書とは?2019年度版からわかる2018年の観光動向

観光白書とは、その年の観光動向や講じた施策、次年度に講じる施策などをとりまとめたものです。観光白書の内容を理解することで最新の観光業界の動向を理解することができます。

まずは観光白書から2018年の観光動向を読み取るべく、日本の観光市場を他国と比較した国際外国人旅行者受入数ランキング、国際観光収入ランキング、そして訪日市場の3点について詳しく解説します。

1. 国際外国人旅行者受入数ランキング

▲[図表Ⅰ- 6 外国人旅行者受入数ランキング(2017年)]:2019年度版観光白書より引用
▲[図表Ⅰ- 6 外国人旅行者受入数ランキング(2017年)]:2019年度版観光白書より引用

1位 フランス:8.692万人
2位 スペイン:8,187万人
3位 アメリカ:7,694万人
4位 中国:6,074万人
5位 イタリア:5,825万人

12位 日本:2,869万人 

世界ランキングは2017年のデータが最新となっており、国・地域ごとに異なる統計基準により算出されているため、比較する際には注意が必要です。

外国人旅行者受入数はフランスが前年に引き続き1位となりました。 

日本は2016年の2,404万人(16位/アジアで5位)から2,869 万人(12位/アジアで3位)となり、世界的に見ても外国人旅行者受入数は着実に増えていると言えるでしょう。

2. 国際観光収入ランキング

▲[図表Ⅰ- 8 国際観光収入ランキング(2017年)]:2019年度版観光白書より引用
▲[図表Ⅰ- 8 国際観光収入ランキング(2017年)]:2019年度版観光白書より引用

1位 アメリカ:2,107億ドル
2位 スペイン:681億ドル
3位 フランス:607億ドル
4位 タイ:569億ドル
5位 イギリス:490億ドル

8位 日本:411億ドル

こちらも2017年のデータが最新となっています。

国際観光収入ランキングはアメリカが2,107億ドル(約23兆1800億円※記事執筆時点のレートで換算)で1位でした。

日本は341億ドル(3兆7500億円※記事執筆時点のレートで換算)(11位/アジアで4位)と、2016 年の307億ドル(3兆3800億円※記事執筆時点のレートで換算)(11位/アジアで4位)に比べて金額は増えましたが同順位です。 

アジアだけで比較した場合、タイが569億ドル(6兆2600億円※記事執筆時点のレートで換算)で1位となりました。

 国際観光収入ランキングは為替レートの影響を受けるため、数値が変動するということは念頭に置いておきましょう。

3. 訪日市場

▲[図表Ⅰ- 10 訪日外国人旅行者数の推移]:2019年度版観光白書より引用
▲[図表Ⅰ- 10 訪日外国人旅行者数の推移]:2019年度版観光白書より引用

続いて訪日外国人旅行者数の推移ですが、国・地域別にみると、主要20市場のうち香港を除く19市場において年間での過去最高を記録しました。 

アジアからの訪日外国人旅行者数は2,637万人で前年比108.3%です。また、訪日外国人旅行者数全体に占める割合は84.5%となり、日本のインバウンド市場はアジア圏に支えられているといっても過言ではないでしょう。

アジアからの訪日外国人旅行者数が増加した理由としてはLCCの参入もあり、年間を通じて、韓国やタイ等の航空便数の増加が訪日需要を促したと考えられます。

その中でも特に中国は13.9%と2桁を超える伸び率を記録し、今年も訪日中国人数が一番多いという結果になりました。

東南アジアは、ASEANの主要6か国(タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ベトナム)の訪日外国人旅行者数の合計が333万人となり、計測史上初めて300万人を超えました。また、タイだけで見ても初めて100万人を突破しました。 

ヨーロッパからの訪日外国人旅行者数は172万人となり、このうち主要5か国(英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン)では112万人となっています。  

2018年に実施した施策

2018年は訪日外国人旅行者数が初の3,000万人を突破しましたが、実際にどのような施策を行っていたのでしょうか。

ここからは2018年に実施された施策について紹介します。

1. 観光資源の活用:赤坂迎賓館開放・国立公園整備など

赤坂迎賓館の見学受け入れ

2018年度も前年に引き続き通年で一般公開実施しました。

その際施策として、夜間の公開を15日間だけ限定で季節に応じた特別企画やイベントとともに行いました。

また、旅行業者による一般公開で非公開の部屋の一部を公開する特別ガイドツアーも実施し、同時にフォトガイドブックの配布も行いました。

また、赤坂迎賓館前の公園に、カフェや休憩できる施設を整備するため、建設工事に着手し、カフェ事業者の公募を開始しました。

利用者が快適に、また多くの人々に利用してもらえるような施設づくりを行っていることがわかります。

国立公園の整備 

国立公園のウェブサイトやSNSで、動画も活用して情報の発信を行いました。

国立公園の情報ページを日本政府観光局のグローバルサイト内に立ち上げ、様々なコンテンツやモデルコース等をサイト内で配信しました。

また、国立公園のウェブサイト内において、施設のユニバーサル対応状況についても引き続き掲載しました。

誰にでも使いやすい国立公園となるような工夫が随所に見て取れます。

2. 観光産業の推進:欧米豪へのプロモーション・ラグビーW杯を契機としたプロモーションなど

・欧米豪へのプロモーション

日本政府観光局は欧米豪市場において、現地コンサル会社を活用した各市場の動向調査等を実施、現地PR会社を活用した現地メディアとのネットワーク強化を行い、訪日観光関連情報の提供料を増やし、現地目線での情報発信を行いました

また、VR動画等を活用し、旅行博の出展や航空会社との共同広告等を実施、さらに動画を使ったオンライン広告を実施することにより、日本を旅行目的地として認知してもらう取り組みを行いました。

・ラグビーW杯を契機としたプロモーション

ラグビーワールドカップ2019日本大会の開催地、釜石市や周辺観光地の魅力を伝えるため、2018年8月に開催された釜石鵜住居復興スタジアムオープニングイベントにあわせて在京の海外メディアを招待しました。

さらに釜石市以外の開催地についても、同年10月に、ラグビー強豪国のメディアを招請しました。

また、日本政府観光局の同大会特設ウェブサイトに12の開催地を中心とした観光情報の発信を行うなど、ラグビーW杯を契機とした地域活性化に向けた様々な取り組みを行いました。

ラグビーワールドカップ日本の経済波及効果

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3. ストレスフリーな訪日旅行環境の整備:空港・キャッシュレスなど

・空港の整備

最先端技術を活用した革新的な出入国審査等の実現を行うために、日本人の出帰国手続で使用している顔認証ゲートを観光などの目的で入国した外国人の出国手続にも使用することを決定しました。

また、空港での手続にかかる時間をウェブサイトで公開するなど様々な施策を行い、空港の入国審査待ち時間が20分以内という目標の達成率が2018年の全国平均で77%(対前年同期3ポイント上昇)を記録するなどの成果をあげています。


キャッシュレスの整備

キャッシュレス化に向けて、全国の4地域で得られた訪日外国人旅行者の情報を「おもてなしプラットフォーム」に共有・連携し共通ルールの整備を行ったうえで、情報分析をしました。

また、クレジットカード決済端末の普及支援とセキュリティ対策も整備を進めています。

しない理由を見つける方が難しい!キャッシュレス転換最大のチャンス到来

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2019年に実施予定の施策は?

2018年に実施された施策は以上の通りですが、今年実施される予定の施策にはどのようなものがあるのか解説していきます。

▲[令和元年度に講じようとする施策]:観光庁HPより引用
▲[令和元年度に講じようとする施策]:観光庁HPより引用

今年度に計画されている施策として、外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備、地域の新しい観光コンテンツの開発、日本政府観光局と地域の適切な役割分担と連携強化、地方誘客・消費拡大に資するその他主要施策の4つが挙げられています。

外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備

1つ目の外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備は、主要観光地の多言語対応(英語、中国語、韓国語等)や無料Wi-Fiの整備、キャッシュレス対応等の整備を主要なものとして挙げています。

その他にも公衆トイレの洋式化やムスリム対応の強化、観光案内拠点の充実など誰もが過ごしやすい環境になるような取り組みを行っています。

地域の新しい観光コンテンツの開発

2つ目の地域の新しい観光コンテンツの開発では、「日本博」の開催を手掛かりにした観光コンテンツの創出、「Living History」という、文化財の歴史的な出来事や当時の生活を再現するコンテンツの開発への支援、VRなどの先端技術を駆使した日本文化のアピールにより、訪日外国人旅行者が日本文化を楽しみ、地域の消費を拡大できるような取組を行っています。

また、施設やインフラの整備、古民家等の活用、体験型宿泊コンテンツの推進を図っています。

日本政府観光局と地域の適切な役割分担と連携強化

3つ目に挙げられているのは日本政府観光局と地域の適切な役割分担と連携強化です。

「世界水準のDMO」の形成に向けた取組としてビッグデータの収集・分析や人材を育成や、訪日外国人旅行者が様々な地域を訪れるように広域周遊観光の促進に取り組んでいます。

また、ラグビーワールドカップ2019日本大会や、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて訪日プロモーションの戦略的高度化も図っています

地方誘客・消費拡大に資するその他主要施策

4つ目に、地方誘客・消費拡大に資するその他主要施策として出入国の円滑化のための顔認証ゲートやに税関検査場電子申告ゲートの導入や、ビザの戦略的緩和、飛行経路の見直し等の取組を進め、年間約4万回の発着容量拡大を目指しています

また、持続可能な観光地域づくりとして、観光スポットの混雑状況をスマートフォンで閲覧できるシステムの導入や、早朝時間帯の活用等による混雑対策を通じて地域の人々に配慮した政策を行っています。

さらに若者や学生に対する観光に関する教育にも力を入れ、人材育成を図っています。

基本データをおさえてインバウンド集客を

観光白書は基本的な観光動向や国の取り組みを理解できる資料になっています。また国の報告書ですので、信頼できるデータと言えます。

こうした情報に基づく判断により、インバウンドをターゲットにした施策の精度をより高めることができるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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