インバウンドに力を入れている地方自治体は数多く存在しますが、30年以上も前からインバウンド対策に取り組んでいる所は多くないでしょう。
飛騨高山地域が本格的にインバウンドに取り組み始めたのが1985年(34年前)と聞くと、驚く方も多いのではないでしょうか。
今回は、インバウンドに人気の観光地として昨今注目の高山市について紹介します。
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2018年に高山市へ宿泊した外国人観光客の数は55万人越え!
飛騨高山地域の中でも最も宿泊施設が多く、外国人観光客の多くが宿泊場所として選ぶ高山市には「高山市商工観光部 観光課」が存在しています。
こちらの組織では、10年以上もの長期に渡り、高山市へ訪れる外国人観光客についての調査を行っています。
2018年度の調査では、高山市へ宿泊した外国人観光客の数は55万2,301人(昨対比107.56%)と年々増加しています。
高山市は人口8万847万人(2019年10月時点)ですので、人口の6倍の外国人観光客がが高山市へ訪れているという計算になります。
その内訳をみると、アジアからの来訪者が54.33%を占めている一方、ヨーロッパ、北米、オセアニアからの来訪者が28.49%を占めています。
地域別:宿泊者の多い国
アジア、欧米、北米、オセアニアに分けて、宿泊者の最も多い国・地域をピックアップしたところ、下記のようになりました。
アジア:宿泊者数1位は「台湾」96,250人(全体に占める割合は17.43%)
欧米:宿泊者数1位は「イギリス」17,442人(全体に占める割合は3.16%)
北米:宿泊者数1位は「アメリカ」24,779人(全体に占める割合は4.49%)
オセアニア:宿泊者数1位は「オーストラリア」26,057人(全体に占める割合は4.72%)
なお、全国と地域における宿泊者数1位の国は台湾で、次いで香港、中国、タイと続いています。
高山市におけるインバウンドの取り組み
高山市が出している「高山市におけるインバウンドの取り組み」という資料があります。
これまで高山市が長年取り組んできたインバウンド関連の取り組みについてまとめられており、中にはこれからインバウンド対策に取り組もうと考えている地方自治体の担当者にとって大いに参考になる情報が収められています。
この資料によると、高山市は平成23年(2011年)に海外戦略室(現:海外戦略部)を設置し「インバウンドの促進」「海外販路の開拓」「多様な国際交流の推進」の3つを主軸に活動してきました。
具体的には下記のような内容となっています。
- 海外へ職員を派遣(中国、フランス、香港、アメリカ)
- 多種多様なプレイヤーの連携促進
- 交通事業者等による魅力的で、実効性のある広域周遊ルート(旅行商品)の造成、二次交通事業者の連携による分かりやすく便利な移動手段の提供。
- 海外の都市交流(姉妹都市提携)
- JNTO認定の外国人案内所設置
- 免税一括手続きカウンターの設置
- 飛騨地域での特例通訳案内士養成
- おもてなし拠点施設の設置
- 緊急対応コミュニケーションサポーター制度の整備
- 災害・事件・事故・医療等の緊急時に通訳・翻訳者等を確保・育成する目的の制度
- ムスリム旅行者向けのマップ作成
海外の都市交流戦略として行われている姉妹都市の提携は、デンバー市(アメリカ)、麗江市(中国)、シビウ市(ルーマニア)、ウルバンバ郡(ペルー)、コルマール市(フランス)など、様々な国と行っています。
アメリカのコロラド州にあるデンバー市は、他の地域と鉄道によってつながったことをきっかけに地元住民の力で栄えてきた歴史ある都市です。高山市はこうした地域にならう意識を持ち、戦略を立案のうえ各地との姉妹都市提携を推進していることがうかがえます。
また、高山市では、特例通訳案内士の制度を設けて独自で養成活動を行っており、日本全体の取り組みとして追いついていない部分があれば、独自で生み出すという積極的な姿勢も伺うことができます。
宗教的なリスクがあることなどから、全国ではまだ浸透していないムスリムへの対応も先駆けて行っています。また、高山へ訪れた外国人の方々へ直接インタビューをし、生の声を集める取り組みもされているそうです。
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実際に訪れた高山市で見えたもの
高山駅の近くには、多くの観光名所が集まっています。その中でも知名度の高い「古い町並み」では、特に多くの外国人観光客を見かけました。
日本酒の試飲コーナーではヨーロッパの国々からやってきたと見られる方が長蛇の列をなし、木製の小皿や抹茶のお菓子を買い求める方々も頻繁に目にしました。
高山駅周辺では、このような成果につながったとみられる取り組みが、随所に見て取れます。
高山駅周辺に見られるインバウンド対策、日常的に意識向上
改札から出て、中心街に向かう途中にはある観光案内所には、10か国の言語で作られた案内マップが並び、受付の女性は流暢な英語で海外の方々の質問に答えていました。
また、駅の近くには佐川急便やクロネコヤマトの提供する「手ぶら観光サービス」の案内所が設置されていたり、日本人観光客でにぎわう飲食店でも、ムスリム用のメニューを別途用意しているお店がありました。
タクシーに乗れば地元住民の方向けのラジオ番組で外国人観光客向けの一言英会話講座が流れていたりと、日常生活の中にインバウンド対策が自然に溶け込んでいます。
地元の方向け施設では通訳関係の養成講座を開催、多くの方が参加されていたりと、現場対応を担う地元住民の方々も積極的に外国人観光客に関わろうとされている事が伺えます。
まとめ:現状に満足せず、危機感を持つことでインバウンド市場勝ち組となった飛騨高山
高山市では、自治体と地元住民、そして民間企業が一体となった取り組みを地道に続けてきた積み重ねの結果により、このような高い成果を上げていると言えるでしょう。
それだけではなく、毎年状況を細やかに分析し、それを元に取り組みをブラッシュアップしたり、新たなチャレンジを続けたりしています。言い換えれば、インバウンド集客の分野で攻守のバランスが良い取り組みが実現されていると言えるでしょう。
これは、高山市が現状に満足せず、危機感を持ちインバウンド対策を行っている事の表れとも言えるでしょう。
その背景として、飛騨高山地域も他の地方都市と同じ「定住人口の減少」という問題に直面していることが考えられます。定住人口1名が減ると年間約120万円の損失が出ると言われており、これを補うためには外国人観光客による「交流人口」を増やすことが最も有効な策と言われています。
ただし、定住人口1名の減少分を補うのに、外国人観光客8人に来てもらう必要があると言われており、今後定住人口の減少が急速に進む地方都市では非常に大きな課題と言えます。
飛騨高山地域は、全国の地方自治体の先駆者であり、希望と言える存在でしょう。
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