2020年「多言語対応優先度ランキング」、オリンピック・パラリンピック大会に向けた対策

公開日:2020年02月05日

日本政府は、2016年3月末に発表した「明日の日本を支える観光ビジョン」の中で、2020年に4,000万人、2030年に6,000万人の訪日外国人を誘致するという目標を設定し、その目標を実現させるためにさまざまな施策を打ってきました。

今回のコラムでは、国別の外国人観光客数と増加の推移、伸び率、外国人誘致を目的とした政府の具体的な施策を振り返りながら、多言語対応の優先度をランキング形式で予測してみたいと思います。

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2020年「多言語対応優先度ランキング」1位~5位

オリンピック・パラリンピック大会にむけ、どの言語での多言語化を優先的に進めたらよいのかランキング形式で解説します。

第1位:英語

第1位は英語です。言わずとしれた世界の共通語です。

実際、訪日客数のトップ20の中で、英語を母国語または公用語とする国は8ヶ国にのぼり、2019年の合計訪日数は700万人を超えます。

多言語展開を進める際の「一丁目一番地」は、何と言っても英語でしょう。

第2位:中国語(簡体字)

第2位は中国語です。

以前のコラムでもご紹介したとおり、中国語には、中国大陸で使われている簡体字中国語、香港で使われている香港繁体字中国語、台湾で使われている台湾繁体字中国語と、大きく分けて3種類ありますが、ここで言う中国語は、大陸で使われている簡体字中国語です。

昨年の訪日中国人は約960万人でした。Webサイトやメニューなどを英語と簡体字中国語に翻訳しておけば、訪日客の実に半分以上をカバーできるわけです。

第3位:韓国語

第3位は韓国語です。昨年、訪日韓国人は大幅に減少し、伸び率で唯一マイナスを記録しましたが、それでも約560万人の韓国人が来日しました。

これまでの最高数は2018年の約700万人です。韓国との関係が改善すれば、以前のようにさらに多くの韓国人が来てくれることでしょう。

それに、戦後最悪の日韓関係と言われるいまこそ、韓国語でのおもてなしを心がければ、政治と観光交流は別物だということを示すこともできますね!

第4位:中国語(繁体字)

第4位は繁体字中国語です。同じ繁体字でも台湾と香港では表現や表記がかなり異なりますので、理想は両方の繁体字で準備してあげることでしょう。

ですが、香港人はかなり英語が達者ですので、どちらかを選ぶとしたら台湾繁体字を優先させるとよいでしょう。

第5位:タイ語

第5位はタイ語です。10年前は、年間の訪日タイ人はわずか10万人程度でしたが、昨年は130万人を超えるなど劇的に増加しました。

背景には、日本政府によるビザ緩和策や、民間による地道な訪日プロモーションの成果があり、今後もまだまだ伸びていくと思われます。

番外編:ベトナム語やロシア語

ランキング5位以内には入りませんでしたが、できれば多言語化を検討したい言語として2つ挙げてみました。

それは、ベトナム語とロシア語です。どちらも、戦略的なビザ緩和策の対象5ヶ国に含まれており、その施策が実って順調に訪日客数を伸ばしています。

特にベトナムは、東南アジア屈指の親日国で、2019年の伸び率ナンバーワンでした。

また、観光客以外にも、技能研修生や留学生として来日するベトナム人も増えており、今後もっとも期待できる国のひとつだと思います。

オリンピック・パラリンピックに向け多言語対応の強化が必要な理由

官民挙げての努力の結果、当初は順調に訪日客数が伸びていましたが、韓国人観光客の激減、円高・人民元安の影響や香港の政情不安による中国や香港からの観光客伸び率の鈍化、そして直近では新型コロナウイルスの感染拡大による訪日客の大幅減少などが影響して、4,000万人という目標達成には残念ながら黄信号が点灯してしまいました。

とはいえ、明るい材料もあります。それは何と言っても、夏に予定されている東京オリンピックの開催です。

過去のデータを調べてみると、オリンピックの開催国は開催後も、外国からの観光客数が伸びる傾向にあることが分かります。

例えば、1996年に米国のアトランタで開かれたオリンピックの前年、訪米外客数は約4,200万人でしたが、2018年には約8,000万人にまで増加しました。

いまや米国は、フランスやスペインに次ぐ世界3位のインバウンド大国です。

アジアはどうでしょうか。2008年に北京オリンピックが開催されましたが、2003年当時の訪中外客数は約3,000万人でした。

しかしオリンピック後に大幅な増加を見せ、2011年には6,000万人を突破し、2018年には約6,300万人となりました。外国人観光客数としては、世界第4位の数字です。

もちろん単純比較はできないものの、外国人観光客誘致のために官民が有効な施策を打てば、オリンピックが大きな起爆剤になり得ることを示しています。

これまでのコラムで取り上げたとおり、今後は外国人の訪日体験の質を向上させる努力がさらに求められますが、その筆頭が多言語対応の強化」です。

とはいえ、多言語化の予算が無尽蔵にあるわけではありませんし、優先度の低い言語で対応しても宝の持ち腐れとなってしまいます。

どの言語での多言語対策に優先的に取り組めばよいのでしょうか。

訪日外国人数の国別の推移と今後の見通し

多言語対応を考える上で特にチェックしたい数字は、①直近のニーズがもっとも高い国や言語②伸び率がもっとも高い国や言語、の2点でしょう。

最初に、直近のニーズがもっとも高い国や言語について、以下のグラフで確認してみましょう。

▲[国別訪日観光客数の推移TOP10]:JNTO提供「日本の観光統計データ」数字を加工し作成
▲[国別訪日観光客数の推移TOP10]:JNTO提供「日本の観光統計データ」数字を加工し作成


上記は、JNTOが提供するデータを整理し、訪日外国人数のトップ10位までをグラフで表したものです。

2019年の最新の数字を見ると、中国がダントツでトップを誇り、第2位は韓国、第3位は台湾、第4位は香港、第5位は米国、そして、タイ、豪州、フィリピン、マレーシア、シンガポールの順番で続きます。

実はJNTOは、上位20位までのデータを公開しています。2019年の11位以下のランキング・訪日外客数(年間)は以下の通りです。

  • 11位:ベトナム(495,100人)
  • 12位:英国(424,200人)
  • 13位:インドネシア(412,800人)
  • 14位:カナダ(375,200人)
  • 15位:フランス(336,400人)
  • 16位:ドイツ(236,500人)
  • 17位:インド(175,900人)
  • 18位:イタリア(162,800人)
  • 19位:スペイン(130,200人)
  • 20位:ロシア(120,000人)

もっとも上記の数字は、日本全国をマクロ的にとらえた統計です。

実際のインバウンド対応の現場では、「地方ごと」または「都道府県ごと」の数字と、そこから見えてくる今後の可能性を見極める必要があるでしょう。

そうした数字も、以下のような方法でJNTOのサイトから取得できます。

  1. 「JNTO日本の観光統計データ」サイトにアクセスする。
  2. 関東地方や近畿地方のように、地方別に訪日外国人数を国別に取得したい場合は、左側のメニューで「地方ブロック別外国人延べ宿泊者数」をクリックし、表示されたページの一番右側にある「国・地域」ドロップダウンリストから国名を選択する。
  3. 1度に表示できるのはひとつの国のデータだけだが、Top20の国ごとに上記の操作をすることで、その地方ブロックを訪れた訪日外客数(宿泊者数)のランキングを自分で作成できる。
  4. 都道府県別に取得したい場合は、左側のメニューで「都道府県別外国人延べ宿泊者数」をクリックし、表示されたページの一番右側にある「都道府県」ドロップダウンリストから都道府県名を選択する。

こうすると、その都道府県を訪れた訪日外国人数(宿泊者数)のランキングを一度の操作で作成できます。

現時点では、2018年の数字が最新です。少し手間がかかりますが、ご自分がお住まいの地方または都道府県の傾向を確認してみてください。

次に、多言語化ニーズの増加率を見てみましょう。以下は、「訪日観光客数の前年からの伸び率」を国別に示したグラフです。

▲[訪日観光客TOP20前年からの伸率]:JNTO提供の「日本の観光統計データ」の数字を加工し作成
▲[訪日観光客TOP20前年からの伸率]:JNTO提供の「日本の観光統計データ」の数字を加工し作成


ご覧の通り、韓国以外の19の国で前年からの伸び率がプラスになりました。

伸び率トップ10の国からの訪日外客数を2010年の数字と比較すると、以下のようになります。

  • 1位:ベトナム(13,224人⇒495,100人)
  • 2位:英国(110,995人⇒424,200人)
  • 3位:ロシア(32,024人⇒120,000人)
  • 4位:フィリピン(43,298人⇒613,100人)
  • 5位:タイ(165,901人⇒1,319,000人)
  • 6位:中国(831,652人⇒9,594,300人)
  • 7位:インド(20,929人⇒175,900人)
  • 8位:カナダ(121,900人⇒375,200人)
  • 9位:米国(457,247人⇒1,723,900人)
  • 10位:シンガポール(151,580人⇒492,300人)
  • 10位:豪州(182,420人⇒621,800人)

最初に示した図と2つ目の図を合わせて検討すると、各国の増加/減少が一時的なものなのか、それとも継続的なものなのかということや、今後の可能性を見極める上で助けになることでしょう。

政府の政策と今後の見通し分析

もうひとつ念頭に置くべき重要な要素は、日本政府による諸政策です。国ごとの訪日客数の増減は、民間の自助努力だけでなく、政府が打ち出す具体的な政策や施策に依るところがかなり大きいからです。

冒頭で触れた「明日の日本を支える観光ビジョン」には、訪日外国人の誘致目標を設定しただけでなく、それを実現するための具体的な施策が盛り込まれています。

そして、その後の政府の取り組みや発表を丹念に追っていくと、こうした施策の成果として訪日観光客数が増加していることに気づきます。

ここでは、2つのキーワードに注目してみましょう。

欧米豪をターゲットとしたプロモーションの推進

読者の皆様は十分にご承知の通り、訪日外客数の比率を見ると、アジアからの観光客が圧倒的多数を占めていることが分かります。

そこで政府は、新たな市場を開拓するべく「欧米豪」というキーワードでプロモーションに力を入れました。

ヨーロッパやアメリカ、オーストラリアからの観光客誘致がうまくいけば、訪日客の長期滞在と消費拡大を同時に実現できます。

具体的にどのような施策を打ったのでしょうか。

例えば、JNTOが2017年から3年連続で東京で開催している、欧米豪富裕層旅行市場向け商談会「Japan Luxury Showcase」はそのひとつです。

2019年6月28日に開かれた第3回目の商談会には、海外バイヤーとして米国、カナダ、豪州を含めた10ヶ国から富裕層を顧客に持つ旅行会社53社を招聘し、商談会が開かれました。

他にも、2019年12月2日~5日の4日間にわたり、欧米豪を対象とした富裕旅行商談会「ILTM Cannes 2019」をフランスのカンヌで開催するなど、欧米豪をターゲットとしたプロモーションに取り組んできました。

すでにご紹介したとおり、米国や豪州、またヨーロッパ各国からの訪日客の伸び率は軒並み二桁に達していますが、政府の施策の成果がこうした成果に表れていると考えられます。

これからも、欧米豪をターゲットとしたプロモーションがさまざまな形で続けられ、訪日外客数は着実に伸びていくでしょう。

戦略的なビザ緩和策の推進

もうひとつのキーワードは、「戦略的なビザの緩和」です。前述の「明日の日本を支える観光ビジョン」には、中国、フィリピン、ベトナム、インド、ロシアの5ヶ国を対象に、ビザ発給要件の緩和や申請手続きの簡素化などを段階的に実施することが盛り込まれています。

この施策を政府は着実に実施してきました。具体的には、2019年9月に外務省が発表した「最近のビザ緩和」というリストでご確認いただけます。

そしてビザを緩和した国では、その後に必ず訪日観光のプロモーションを実施しました。結果はどうでしょうか。

上記の対象国5ヶ国だけを見ても、前年比14.2%~27.3%という非常に高い伸び率が見られ、伸び率の上位を独占するに至りました。

これも明らかに、政府による施策の成果ととらえることができるでしょう。

オリンピック・パラリンピック大会に向け多言語対応強化を

今回は、インバウンド対策の最優先事項である「多言語対応の強化」という課題について、優先度が高い言語は何かという観点から考察しました。

旅マエ」の情報源としてのWebサイト、「旅ナカ」の情報源としてのパンフレットやメニュー、観光ガイドなどの多言語化に取り組み、他言語音声翻訳アプリを活用して、さまざまな言語で最低限のコミュニケーションができるように備えておくだけで、外国人の訪日体験の質は大きく向上するはずです。

翻訳については、インバウンドに慣れた翻訳会社に相談してみてください。きっと、親身になって対応してくれることでしょう。

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<参照>

JNTO:日本の観光統計データ

外務省:最近のビザ緩和(一般旅券所持者)

欧米豪富裕層旅行市場向け商談会「Japan Luxury Showcase」

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この記事の筆者

株式会社アットグローバル

株式会社アットグローバル

株式会社アットグローバル 代表取締役 小田島耕治。1994年から約7年間、IBM系の会社で翻訳業務を担当した後、独立してアットグローバルを設立。25年間の翻訳業界での経験と、10万件以上の多言語翻訳の実績を活かし、世界の40以上の言語での翻訳サービスと、多言語化のコンサルサービスを提供中。インバウンドの多言語対応に役立つ情報を発信いたします。