「ヒロアカ」人物名前が中韓で炎上/文化的配慮の限界?国際化社会の炎上リスクと、表現者に求められるもの

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日本のアニメや漫画といった文化は、海外でも高い人気と評価を得ています。アニメツーリズムも活発となっており、作品にゆかりのある地を巡る「聖地巡礼」が各地域で行われ、ツアーが組まれるなど観光の目玉になることもあります。

しかし、人気が上がれば上がるほど、登場人物名など作中の様々な要素を巡って炎上する事例もみられます。

この記事では「僕のヒーローアカデミア」の炎上事例を取り上げるとともに、炎上の防止策や、起きてしまってからどう対応すべきなのかについて解説していきます。

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中国と韓国で「僕のヒーローアカデミア」炎上

「週刊少年ジャンプ」で連載されている「僕のヒーローアカデミア」が中国・韓国を中心に批判を浴び、炎上しています。

問題とされているのは、2020年3月3日発売の10号に掲載された「僕のヒーローアカデミア」第259話の登場人物「志賀丸太(しがまるた)」という名前です。この「志賀丸太」が「旧日本軍731部隊を思わせる」と海外からの批判が集中し、Twitter上をはじめ炎上騒動に発展しました。

「僕のヒーローアカデミア」の作者である堀越耕平氏のSNSには、批判のリプライが押し寄せる事態となりました。

炎上の要因は「丸太」の名前

この騒動で特に問題となっているのが「丸太」という名前です。「マルタ」は第二次世界大戦中に行われた、人体実験の被験者の呼称と言われています。

そのためこのキャラクターは「旧日本軍731部隊の人体実験を想起させる」と批判の対象となりました。

キャラクターの設定が「改造人間の製造をしている悪の組織の医者」であることも意味合いを強めてしまっており、批判は強くなっています。

炎上の発端は韓国人の抗議ツイートで、そのツイートはまず韓国において炎上し、そして世界中に拡散される事態にまで発展しました。日本では「発売前に違法アップロードを読んだ韓国人が怒っている」との指摘がTwitter上では1万2000RTされ、日韓それぞれの認識に基づく対立が深まりました。

旧日本軍731部隊の人体実験では多くの人が犠牲になったと言われ、海外では特に根深く残る日本への批判の一つです。今回の騒動における海外からの批判は強く、特に犠牲が多いとされる中国では強い批判が見られました。

「僕のヒーローアカデミア」は中国の「ビリビリ動画」「テンセント漫画」等の配信サービスから削除され、検索不可能にまでなっています。中国国内の大きな反発を受け、「週刊少年ジャンプ」発刊元の株式会社集英社も即時対応を取りました。

「週刊少年ジャンプ」経緯を説明、謝罪する

「僕のヒーローアカデミア」を連載している集英社は、掲載号発売から4日後の2月7日に以下内容の謝罪文を掲載しました。

  • キャラクター名と設定により過去の歴史と重ね合わせる意図はなかった
  • 海外の読者の皆様に不快な思いをさせてしまった
  • 事前に編集部で表現について検討をするべきだった

謝罪文には、作者の堀越耕平氏のコメントも掲載しています。コメントにはキャラクター名の設定理由等が記載され、今回の騒動は偶然であったと釈明しています。

この謝罪文と共にキャラクター名を「殻木球大」に変更する対応を取りました。

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炎上を防ぐ文化的配慮、どこまで必要?

しかし、出版元が謝罪したにもかかわらず、騒動は収まるどころか他のキャラクターにも批判が及びました。

「僕のヒーローアカデミア」のメインキャラクターの一人、爆豪勝己の誕生日である4月20日がアドルフ・ヒトラーの誕生日という指摘や、敵キャラクターの死柄木弔の誕生日4月4日が、山本五十六の誕生日との指摘までも噴出しました。

しかしこれらに関しては「流石にこじつけではないか?」と苦言の声も上がっています。文化的配慮をすべきなのはもちろんですが、全てに配慮することは難しいでしょう。

炎上に対するリスクマネジメント

今回の「僕のヒーローアカデミア」炎上における「週刊少年ジャンプ」の謝罪対応は迅速なものでした。しかし、謝罪後も炎上騒動は収まらずそのまま続いています。

インターネット上で炎上が起きてしまった場合の経済的損失は多大なものです。また収拾がつかない場合、下がってしまった企業イメージやブランドイメージの向上には時間と労力がかかります。特に、今回のように複数の海外で炎上が起こってしまった場合は、事態の収束に時間を要することでしょう。

入念にリスク回避策を準備したり、対応について事前に検討したりシミュレーションしたりすることでその影響を最小限にとどめることができると考えられます。

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炎上リスクを避け、被害を最少にとどめるために

日本の漫画やアニメは海外でも人気が高く、翻訳され発売/放送されることもあります。そうなると、今回のように作者の意図とは関係なく海外での炎上騒動が起きてしまうことも考えられるでしょう。

そのために取れる対策としてはどのようなものがあるのか、解説していきます。

炎上の予防策

昨今のインターネット社会において、特に炎上しやすいと言われているのは「民族」「政治思想」「宗教」「ジェンダー」などセンシティブなテーマです。当事者にとってはアイデンティティに関わる重要な内容ですが、その外にいる者には理解しづらいものでもあるため、表現に問題がないかどうかは丁寧に確認をとる必要があります。

こういったテーマを事前に省くことも一つの手といえますが、作者の「表現の自由」の侵害になっているのではないかという面で議論の余地が残るところです。「倫理観が欠如している」と捉えられないか、その都度確認していくのがベターでしょう。

炎上が起きた場合の対策はどうすべきか

炎上が起きてから対応するまでの時間を早める手立ての一つとして、SNS上で異変があった場合にすぐ察知できるようなモニタリングをするというものが挙げられます。

モニタリングには「リスクワード」を自動で検知してくれるツールの導入が効率的です。迅速な対応が必要となる「初動時」「炎上中」「炎上後」がわかり、それによって対応を変えられ事態の収束がスムーズになることが期待できます。

その他、メディアトレーニングの実践や、セミナー等でネット炎上に対する知識を深めることも有効です。企業ではネットリスクのマニュアルを作成することで炎上時になにをすべきか、あらかじめ対応を確立しておくと、炎上初動時にもスムーズでしょう。

またこうした炎上による経済的損失を補完する「ネット炎上保険」も登場しています。こういった保険について調査検討し、積極的に導入することも有用だといえます。

「ヒロアカ」だけじゃない炎上リスク、国際化社会で表現者のとるべき態度とは

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SNSの普及もあって、漫画やアニメ作品が国内に留まらず世界的に拡散される可能性が高まっています。表現者にとっては、新しいファンとの出会いや、ビジネス拡大の可能性も広げてくれます。

同時に、その分作品の表現が意図せずして特定の文化圏のセンシティブな部分に触れてしまい、炎上してしまう可能性も高まっているという面もあります。

事前にリスクを考えて、炎上をはじめとするトラブルは避けたいところですが、全てに配慮することは難しいのも事実です。モニタリングや保険への加入など、炎上が起きてしまった際の対策を事前に準備しておくことが、作者や出版社の経済的利益を守ることにつながります。

一方で、作品の魅力という観点からいえば、リスクの低減は必ずしもメリットだけとはいえません。

批判を恐れて表現を委縮させてしまうようなことがあれば、作品の魅力そのものが減ってしまったり、ファンが離れていったりしてしまう可能性もあります。

日本と世界の歴史的関係を踏まえそれに配慮したうえで、それでもなお自身の良しとする表現を選ぶという、作者自身の「熟慮と決断」が、国際化する社会の中で表現者に求められる姿勢なのかもしれません。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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