オリンピックで本当に儲かるのは誰なのか。開催国潤わない仕組み「ゼロドルツーリズム」の影

公開日:2020年03月24日

2021年に延期が決定した東京オリンピック・パラリンピック大会ですが、以前より開催により大きな経済効果が見込めると言われていました。

オリンピックは大会開催中だけでなく、開催前の準備期間や開催後のレガシー効果など、数年に渡り開催国に影響を与えます。

この記事ではオリンピックで儲かるのはどんな業界なのか、今からでもオリンピック需要に乗ることはできるのかなど、オリンピックの経済効果について考えます。

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東京オリンピックで儲かるのは誰なのか

2014年10月12日、みずほ総合研究所は「2020東京オリンピック開催の経済効果は30兆円規模に」と題された「みずほリポート」を発表しました。

リポートでは経済効果を東京オリンピックの「開催前」「開催中」「開催後」の3つの局面と、「直接効果」「付随効果」の2つの種類に分けています。

ここでは、開催前と開催中に儲かると予想される業界について紹介します。

開催前に儲かる業界とは

オリンピック開催前には、まず直接効果として競技場や選手村の建設・整備など、直接的に関わる建築物への投資、五輪関連のグッズ購入などの消費支出が増加します。

付随効果としては、オリンピック開催国という注目度の高まりから訪日外国人観光客が増加する「観光振興効果」や、都心を中心としたインフラ整備が加速することによる「投資活性化効果」が期待されます。

以上から、大会開催前は宿泊業、運輸業、小売業、建設業などが恩恵を受けるといえます。

開催中に儲かる業界とは

大会開催中の直接効果では、競技場の整備や警備、輸送などの大会運営費、観戦客や観光客による消費支出、企業によるマーケティング投資などが経済効果として考えられます。

付随効果としては、大会観戦のために訪日した観光客が地方へ観光することによる宿泊費や交通費、その他の支出と、五輪で盛り上がったスポーツ熱によるスポーツ関連の消費支出などが挙げられます。

観光業、飲食業に加えて、経済効果を見込んだ融資や訪日外国人観光客による両替などにより、金融業も活発化すると予想されます。

民泊・観光業でオリンピック需要を取りこめる?

今からでも東京オリンピック需要を取り込める可能性がある業界は、民泊、観光業などが考えられます。

特に、訪日外国人観光客が増加している現在では、空き部屋や空き家を所有していればAirbnbなどを利用して民泊を始めることができます。

また、語学が得意であれば観光ガイドをすることも選択肢の一つです。2018年に法改定があり、通訳ガイドの資格がなくても訪日外国人観光客向けの観光ガイドができるようになりました。

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株式市場:オリンピックを機に成長が見込める業界は?

オリンピック関連の業界は大会前後で業績が伸びることが期待できますので、株価も上昇する可能性があります。

もちろん、株式投資に「絶対」はありませんので慎重に投資先を考える必要がありますが、オリンピックを機に成長すると考えられる業界や銘柄を紹介します。

現在は新型コロナウイルスの影響によりどの業界も株価が下がっているため、投資タイミングは慎重に考える必要があります。

新型コロナウイルスが収束し、うまくオリンピックへの需要を高めていくことができれば、回復していく可能性があると言えるでしょう。

観光業

オリンピック開催国ということで世界からの関心が高まると、増加するのが訪日外国人観光客です。

現在宿泊施設等は新型コロナウイルスの感染拡大の影響でキャンセルが相次ぎ、さらに東京オリンピック・パラリンピックが延期となったため現在のダメージは大きいようです。

コロナウイルスが収束し観光客が訪れるようになればインバウンドの需要が高まることに比例して、観光業界は全体的に株価が上がることが予想されます。

旅行会社の格安航空券やホテル予約などの東京オリンピックツアーでの増益や、現在は閉演中のアミューズメントパークで有名なオリエンタルランドも、営業が再開されれば多くの入場者数やパーク内での消費活動の増加により、増益が見込めるでしょう。

建設業

都市のインフラ整備や、大会で使用する競技場の新設・整備、選手村の建築など、オリンピック開催に必要不可欠なのが建設業です。

そのため、オリンピック誘致が決定してから真っ先に注目されたのが建設業界の株です。

橋梁、ビルなどコンクリート関連事業を行うショーボンドホールディングス、高層ビルの鉄骨に強みがあり、橋梁業界ではナンバーワンの横河ブリッジも注目株です。

社会と建造物の持続可能性を追求し、スマートソリューション・カンパニーを目指す業界大手の清水建設も期待が集まっています。

スポーツ関連

オリンピックはスポーツの祭典です。

スポーツ関連の企業は、オリンピックの公式スポンサーやパートナーになることも多く、そういった会社は大会の開催に伴って露出も増え、知名度が上がります。

日本中でスポーツの機運が高まるので、スポーツ関連企業の業績は上向きになると言えるでしょう。

ザ・ノース・フェイスで有名なゴールドウインは、スポーツウェアや各種スポーツ用品の製造・販売を行っています。

近年、世界で初めて人工合成クモ糸繊維を開発したSpiber(スパイバー)と業務提携を行い、非常に強く環境にやさしい素材の製品を発売しました。

東京オリンピックゴールドパートナー企業のアシックスは、オリンピックのロゴマークや名称、アスリートの肖像を広告に使用することができるため、買い材料となっています。

2016年のリオオリンピックで金メダルを獲得した体操選手が多く所属するコナミHDも期待されています。

本当に東京オリンピックで日本が儲かるのか

ここまでオリンピックのもたらす経済効果について紹介してきましたが、一方で「オリンピック開催国が経済的利益を得ることはほとんどない」と指摘する経済学者も多くいます。

実際にオリンピックで日本が儲けることができるのか、考察していきます。

開催国が利益を得ることはほとんどない?

まず、大きな経済効果として取り上げられるのは競技場や選手村の建設です。

これらには巨額の資金が投入されますが、こういった施設はオリンピック開催後に利用されなくなり、将来的には役に立たなくなる「負のレガシー」となる可能性があります。

東京のインフラ整備も五輪開催によって前倒しになれば、大会後の建設投資が冷え込むことも考えられます。

さらに、東京ではホテルや商業施設を含めた「新しい街」の建設も相次いでいますが、大会後に観光客が減ったり、街としての魅力が足りなれば、そこでの消費行動は減り、賃金の低下にもつながりかねません。

そのため、オリンピックで投資した施設などを、大会後にどう活かせるかが重要になってきます。

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東京以外は儲からない?

開催地の東京はオリンピック特需で観光客が増え、ホテルが満室になったり街が賑わったりもしますが、それ以外の地方都市に観光客を呼び込むのは簡単ではありません。

大会開催に付随するインバウンド増加を見込んでマーケティングや施設整備に投資をしても、回収が困難になる地域も出てくるでしょう。

東京の建設投資に人手を取られるため、地方でのインフラ整備などは後回しになってしまう恐れもあります。

また、開催が1年延期されたことにより、競技場などの施設の維持管理費用や、競技団体の準備費用などが追加でかかってしまい、日本の経済的損失は、数千億円にものぼるとも試算されています。

日本にお金が落ちない仕組みを作る在日外国人

訪日外国人観光客で最も多いのは中国人観光客ですが、日本に訪れる彼らを実際に受け入れるのは、その多くが在日中国人といわれています。

在日中国人は日本の旅行代理店が到底真似できないような格安のツアーを中国人観光客に提供し、ツアー代金の足りない分は免税店で買い物をさせ、店から手数料をもらうことで補います。

そのため、中国人観光客の団体は特定の免税店でしか買い物をせず、地域の経済は潤いません

こういった格安ツアーは「ゼロドルツーリズム」と呼ばれ、日本だけでなく中国人観光客が多く訪れる国でも問題となっています。

さらに、在日中国人の違法民泊や、配車アプリで決済まで行われる営業許可のない「白タク」など、日本にお金が落ちない仕組みが出来上がっていることが問題になっています。

違法「白タク」なぜ必要?『外国人観光客を乗せて案内したい…が実は違法』と苦悩する通訳案内士たちの地方からの叫びと地方インバウンドの実情

白タク(白タクシー)とは国から認可を受けていないドライバーが自家用車で客を運ぶ行為です。白タクについては「違法な白タクが訪日外国人向けに商売をして、正規タクシー需要を奪っている」という側面が強調されがちです。しかし地方では公共交通機関が利用しづらい地域や、タクシーが手配しづらい地域があるのも事実です。「足がない」という理由でたくさんのインバウンドの機会が失われている現状があります。むしろ「秘境・隠れ人気スポット」と呼ばれる観光スポットを訪ねるためには白タクは必要では?という意見もあります。...

ドラッグストアまみれの街と、たった40分しかいない観光客…インバウンド急増の裏「オーバーツーリズム」と「ゼロドルツーリズム」の落とし穴

2018年の訪日外国人観光客数は3,000万人を突破し、政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には4,000万人を目標としています。順調にインバウンド誘客が進む一方で、一部の人気観光地ではオーバーツーリズムによる観光公害が発生しているほか、「ゼロドルツーリズム」問題など、課題も山積している状況です。世界と日本のオーバーツーリズムの現状と「ゼロドルツーリズム」問題をふまえ、今後のインバウンド誘致の課題について考えてみます。関連記事政府が本腰入れる「マナー啓発動画」と新評...

オリンピックを機に、恒久的に潤う仕組みづくりを

東京オリンピック・パラリンピックがもたらす経済効果は、建設投資やグッズなどの消費支出の増加、訪日外国人観光客の増加など、大きな力があることは事実です。

東京オリンピック・パラリンピックを機に東京を中心にインフラが整備され、環境と人にやさしい新しい街づくりも行われています。

しかし一方で、この経済効果を大会終了後にどのように維持するのかという課題が残ります。

地方の観光地により多くの訪日外国人観光客を呼び込む方法や、新たに建設した施設の有効な利用方法を考えて、オリンピック後にも継続してその恩恵にあずかれるような仕組みを作っていくことが重要です。

また、コロナウイルス収束後、いかに世界全体のオリンピック気運を高めていけるかが今後の景気回復へのカギとなるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客のインバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!