旅行業法とは:基本と3つの改正ポイントをわかりやすく解説

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地域の魅力を発信するツアーの企画、旅行客の移動手段となる貸切バスの手配など、旅行に関連した業務を開始するときは「旅行業法」に基づく登録が必要となります。

この記事では、旅行業法について、登録が必要になる業務やその手続きについて解説します。

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旅行業法とは?

旅行業法について、観光庁の公式サイトでは以下のように説明されています。

旅行業法は、旅行業等を営む者について登録制度を実施し、あわせて旅行業等を営む者の業務の適正な運営を確保するとともに、旅行業協会の適正な活動を促進することにより、旅行業務に関する取引の公正の維持、旅行の安全の確保及び旅行者の利便の増進を図ることを目的としています。 

▲[旅行業法]:観光庁公式サイト

ここでは、その内容などについてわかりやすく解説していきます。

旅行業法の内容と目的

旅行業法の制定は1952年、旅行業の健全な発達と、外国人観光客を含む旅行者の接遇向上を目的として、「旅行あっ旋業法」という名称でスタートしました。

旅行業法においては登録制度を実施しており、顧客から報酬を得て旅行に関する業務を営む場合に登録申請が必要となります。

旅行商品を展開する旅行会社だけでなく、宿泊施設や移動手段を運営する会社、それらを仲介する業者など多岐にわたる組織が旅行業者に含まれます。

また旅行業法は、旅行業者の指導、研修を担い、旅行業に関する苦情解決にあたる旅行業協会の適正な活動促進も目的としています。

2018年1月に改正旅行業法が施行

旅行業法は2018年1月に改正されました。改正の重要なポイントは3点です。

  1. 着地型の旅行を促進するための規制緩和
  2. 旅行の安全性や取引の公正性を確保するための規制強化
  3. 旅行サービス手配業者(ランドオペレーター)の登録制度開始

ここでは、これら3点の改正について詳しく解説します。

1. 着地型の旅行を促進するための規制緩和

インバウンド市場のニーズの変化により、日本の観光市場では着地型の旅行を促進する必要が生まれました。

主に団体旅行の形で催行される出発地側企画が、これまでのインバウンドの利用する旅行プランでした。こうしたプランは画一的なパッケージ商品であることも少なくありません。こうしたプランから、個人の興味・関心に応じた着地型旅行へと、インバウンドの関心は移ってきています。

例えば、インバウンド市場で人数でも消費額でも多くの割合を占める中国市場ですが、中国人海外旅行者でもFIT(個人手配の海外旅行)は近年増加しています。

旅行業法においては、着地型旅行の企画を行う「地域限定旅行業」の登録要件が緩和されました。

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2. 旅行の安全性や取引の公正性を確保するための規制強化

「地域限定旅行業」の登録用件が緩和された一方で、規制が強化されたのが貸切バス事業者などの遵守事項、監査等の実効性です。

これは、2016年に起きた軽井沢スキーバス転落事故が背景にあり、法令違反の早期是正や不適格だった場合の排除、処分の厳格化が定められました。

3. 旅行サービス手配業者(ランドオペレーター)の登録制度開始

前述した軽井沢の事故では、ツアー催行者とバス事業社の間にバスの手配を行うランドオペレーターが入っていましたが、当時の旅行業法上、ランドオペレーターに対する処分はありませんでした。

ランドオペレーターが低価格でバス会社に依頼することで、バス運転者の労働環境が悪化し、結果として安全性に問題が生じていたと判断され、旅行業法の改正時にはランドオペレーター登録制度が設けられました。

また、ランドオペレーターの登録制度が必要とされるのには、「キックバック」の防止も背景にあります。

キックバックとは取引相手に支払われる不当な報酬のことです。ランドオペレーターが国外旅行会社から低価格での旅行手配を依頼され、旅行者を免税店等に斡旋する代わりに免税店等から高額なキックバックを受け取る事案がたびたび発生していました。

旅行業法の改正によりこうした事態を取り締まることが可能になり、旅行業者、旅行者の取引の公正性を確保することが期待されています。

旅行業登録が必要な事業は?

旅行業法に基づく登録は、「旅行業登録」「旅行サービス手配業登録」に分けられます。

ここでは、それぞれの登録に該当する事業を解説します。

旅行業登録が必要:旅行業及び旅行業者代理業

旅行業登録が必要になるのは、以下の4つの業種です。

  • 募集型企画旅行
  • 受注型企画旅行
  • 手配旅行
  • 他社が実施する募集型企画旅行契約の代理締結

企画旅行」とは、主催者側で旅程を計画し募集または受注をするプランです。フライトやホテル、観光スポットの入場券等を、主催者側で手配します。

手配旅行」とは、消費者の要望に基づいて旅行会社が代理でチケット等を確保するプランです。あくまでも消費者の代理で手配するものであり、企画旅行と違い旅程保証がされない点が特徴です。

また、契約の締結に至らずともこれにかかる旅行相談を受ける場合も、旅行業登録が必要になります。

旅行業登録はこれ以外にも1~3種・地域限定の4つのカテゴリが存在します。上記の4つの形態の企画、手配において、手掛けることのできる地域が異なります。例えば旅行業1種は国内海外を対象とすることができますが、地域限定旅行業は営業所の所在地およびその近隣のみを対象とすることが定められています。

旅行サービス手配業登録が必要な事業

旅行業法改正によって新設されたのが旅行業サービス手配業の登録です。旅行業者から委託されて、旅行にかかる下記の業務を手配する場合に、登録が必要となります。

  • ホテルや旅館などの宿泊場所の手配
  • 貸切バスや鉄道など運送の手配
  • 有償ガイドの手配
  • 免税店の手配

また、旅行業の登録がある者が、上記の業務を実施するために旅行サービス手配業の登録を行う必要はありません。

旅行業、旅行サービス手配業のどちらも、手配までが許された業務範囲であり、旅行業の登録をもってホテルや貸切バスを運営することはできません。

ホテルの場合は旅館業、貸切バスの場合は一般貸切旅客自動車運送事業など、それぞれに許可を得る必要があります。

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旅行業に該当しない業務は? 

上記の業務以外は、旅行業の登録が必要ありません。

例えば、レストランの手配や観光施設の入場チケット販売など、旅行に付随する業務のみを行う場合には、旅行業の登録は求められません。

また、旅行業者の依頼に基づいて同行する添乗員を派遣する業務も、旅行者との直接取引がないので旅行業登録は不要です。

運送の手配は旅行業登録が必要ですが、運送機関の代理業務は登録が不要です。例えば、観光バス乗り場付近のお土産屋で、観光バス乗車券の販売のみを行うのは運送機関の代理業務に該当し、例外として旅行業登録が不要になります。

さらに、前述した「旅館業」「一般貸切旅客自動車運送事業」の許可を取得していれば、プラン販売について旅行業登録の必要はありません。具体的には、ホテルが行う近隣施設入場券を付帯した宿泊プランの販売、観光バス事業者が行う自社バス日帰りツアーの企画販売などです。

旅行業登録の内容と手続き

自社が行う業務が、旅行業もしくは旅行サービス手配業に該当する場合は必ず登録が必要です。

ここからは登録の際満たさなければならない要件と、登録申請に必要となる書類等を解説します。

1. 旅行業者としての登録に必要な条件

旅行業者として登録するためには、以下の条件を満たしている必要があります。

  • 各旅行業務取扱管理者の設置
  • 基準資産のクリア
  • 保証金の納付

旅行業は1~3種、地域限定旅行業、さらに旅行サービス手配業の5種類があり、それぞれに管理者が必要です。

海外旅行も取り扱う事業所であれば「総合旅行業務取扱管理者」、国内旅行のみ取り扱う事業所は「国内旅行業務取扱管理者」、地域限定旅行業の事業所は「地域限定旅行業務取扱管理者」、旅行サービス手配業の事業所は新設された「旅行サービス手配業務取扱管理者」を1名選任しなくてはいけません。

基準資産は、旅行業者の経営健全性を担保する重要な指標です。総資産から負債や保証金などを差し引いて算出します。

基準資産額は以下の通りです。

旅行業の種別 基準資産額

第1種旅行業

3,000万円

第2種旅行業

700万円

第3種旅行業

300万円

地域限定旅行業

100万円

保証金は、管轄地域の法務局へ納める「営業保証金」(協会非加入の場合に納付)と、日本旅行業協会もしくは全国旅行業協会に納める「弁済業務保証金分担金」があります。いわゆる供託金で、旅行業者が倒産するなどの非常時に旅行者を保護するためのものです。

2. 旅行業登録の申請

以下は、日本旅行業協会の公式サイトで公開されている旅行業新規登録申請にかかる書類一覧です。

登録申請書類一覧
・新規登録申請書第一号様式(1)
・新規登録申請書第一号様式(2)
 ※営業所が2箇所以上の場合のみ必要となります。

添付書類
1.定款又は寄附行為(個人の場合は不要)
2.会社の登記事項証明書(履歴事項全部証明書)(個人の場合は「住民票」)
3.役員の欠格事由に該当しない旨の宣誓書(個人の場合は本人分)
4.旅行業務に係る事業の計画
5.旅行業務に係る組織の概要
6.最近の事業年度における貸借対照表・損益計算書 (個人の場合は「財産に関する調書」)
7.公認会計士または監査法人による財務監査を受けている場合は当該監査証明。それ以外は納税申告書の写し等。
8.旅行業協会が発行する「入会確認書」の写し
 ※旅行業協会に加入し、登録後直ちに協会保証社員になる場合。旅行業新規登録申請を行う以前に旅行業協会に申請し、発行を受けておく必要があります。
9.旅行業務取扱管理者選任
 イ.旅行業務取扱管理者選任一覧表
 ロ.選任した旅行業務取扱管理者の合格証(認定証)の写し
 ハ.選任した旅行業務取扱管理者の履歴書
 ニ.欠格事由に該当しない旨の宣誓書
10.事故処理体制についての書類
11.旅行業約款

▲[旅行業新規登録申請/申請書類一覧【G】]:日本旅行業協会公式サイト

法人・個人のいわゆる本人確認に加え、旅行業務の運営計画、そして経営に関する書類を提出するものです。

旅行業は登録後、5年毎に更新が必要です。基準資産額も更新の都度要件を満たしている必要があります。

特に6の「最近の事業年度における貸借対照表・損益計算書 」について、いつ求められてもすぐに提出できるよう管理する必要があるでしょう。

旅行に関連した該当事業の旅行業登録を忘れずに

旅行にかかる業務は多岐にわたり、旅行業登録の要不要が瞬時に判断できないこともあります。

しかし、旅行業法は旅行者の安全を確保するため、また旅行業の適正な運営を実現するために制定されていることを理解すれば、登録の要不要についてはしっかりと確認するべきだということがわかります。

例えば、現在は観光施設の入場チケットを販売するだけという業態でも、今後旅行者の要望が増えツアーを組む場合もあるかもしれません。事業内容に変化があり、それが観光客と関連するような場合には、逐一旅行業登録が必要か確認するべきでしょう。


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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

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