新型コロナウイルスの流行を受け、2020年3月より海外からの渡航が大幅に制限されています。7月以降はビジネス目的に限り、4か国からの入国を受け入れ再開し、さらに9月にはその対象国を拡大するといった動きがとられてきました。
また10月初めには、全世界からの入国を一部再開する方針で調整していることが9月23日報じられました。
ただしこうした緩和の対象には、今のところ観光客は含まれていません。
外国人に人気の観光スポットである渋谷にも、この数か月は訪日外国人観光客の姿が消えてしまいました。
訪日外国人観光客がいつ頃日本へ戻ってくるのかについて、渋谷の観光案内所を運営するShibuya-sanが2020年4月4日~15日に行った調査結果をもとに考察します。
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世界から見た日本の新型コロナの状況
新型コロナウイルスの感染拡大をめぐり、日本にする海外からのイメージはどのようになっているのでしょうか。
自国の状況、終息までかかる時間、終息後に旅行へ行きたいかといった点も含めて行われた意識調査の内容をご紹介します。
韓国
韓国では、日本の新型コロナウイルス対策に対して「とても心配」と感じている人がほとんどです。新型コロナウイルスの終息には半年程度かかるだろうと考える人が多く、半年から1年後には旅行に行きたいと考えている人も多いようです。2020年末~2021年の春ごろには訪日韓国人が増えることも予想されます。
韓国人の不安を払拭できるよう、日本の安全対策が万全であることを正しく伝える必要があるでしょう。また新型コロナウイルスの状況を見ながら、訪日韓国人が戻ってくる時期に備えて集客などのイベント準備を検討しておくのが良いでしょう。
中国
中国でも日本の新型コロナウイルス対策に対して、あまり良い印象ではないことがうかがえます。
「コロナウイルスが落ち着いてどのぐらい待ってから旅行に行きますか?」という質問に対しては、3か月から1年後がもっとも多く、訪日中国人市場は比較的早い段階で回復する可能性があります。
その他、東アジア
- 台湾
台湾では自国の状況について、台湾独自の施策が奏功したこともあり、「安全」と考え終息に近いと捉えている人が大多数を占めています。一方で日本に対しては、新型コロナウイルス対策への意識が低く「終息までに時間がかかりそう」というイメージを持っている人が多いようです。
終息後の旅行への意欲は、半年後~1年後に旅行を考えている人が多くなっています。2020年末~2021年に入ってから訪日台湾人旅行者が増える可能性があります。日本にとって重要な訪日外国人観光客である台湾人が安心して日本を訪れることができるよう、日本へのネガティブイメージを払拭するために、積極的な情報発信が欠かせないでしょう。
- 香港
香港では、香港の感染状況についてはいまだ不安が強い一方、SARSの経験から国民の危機意識は高いと捉えている人が多いようです。日本に対しては「行政の対応が悪い」、「香港よりも国民の意識が低い」といったネガティブイメージが強まっています。
2021年以降、香港からの訪日外国人観光客が増えることが予想され、日本の安全性と信頼性の高い情報を積極的に発信していく必要性が高い国でしょう。
東南アジア
- マレーシア
他国に比べると終息後の旅行への意欲は低めで、終息後に旅行に行くとしても1年後を考えている人が多くなっています。2021年夏ごろまでは訪日マレーシア人観光客は戻ってこない可能性も考えられます。
- インドネシア
インドネシアでは、自国の状況について政府の対策への信頼性が低く、医療体制への不安も強くなっています。日本に対しては「対策が遅く不明確」、「若者を中心に自粛が十分でない」というネガティブなイメージがある一方、医療体制についてはポジティブなイメージを持っているようです。
終息後の旅行への意欲は高く、2021年頃からはインドネシアからの訪日旅行客が増加する可能性があります。
- ベトナム
ベトナムでは、感染者が比較的少ないこともあり自国の状況について安全と考える人が多い一方、日本に対しては対応が遅いためにさらなる感染拡大を懸念する声が多くなっています。しかし旅行への意欲は高いため、早ければ2020年夏ごろから観光旅行の動きが始まる可能性もあるでしょう。
ベトナムからは日本への留学生も多いため、留学生を通じた情報発信も有効な手段となるでしょう。
- タイ
タイでは自国の状況については政策に対する不安などを中心に、収束に時間がかかるとの見方が大勢となっています。一方で日本の対策に対してはポジティブなイメージが強く、「日本は安全だ」と感じている人が多いようです。
観光を始めるには1年程度時間がかかるだろうとの見方が強く、2021年オリンピック頃からタイからの訪日外国人観光客が増えることが考えられます。日本へ好印象が強い国であるため、タイ国内の状況を注視しつつ、積極的なアピールが奏功する可能性があるでしょう。
欧米・オセアニア
- アメリカ・カナダ
アメリカやカナダでは、自国の状況について、個々人の意識の低さやイベント自粛の不徹底などを背景に、終息まで時間がかかることを懸念する声が聞かれました。日本に対しても、新型コロナウイルスの対応への評価は低く、「NYやイタリアなどのように感染が拡大するのではないか」との懸念を持っている人もいるようです。
終息後の旅行への意欲は高く、終息後すぐに旅行をしたいという人も多いので、アジア圏よりも早く旅行客が戻ってくる可能性もあります。クリスマス休暇などの大型連休に観光客が増える可能性も期待でき、観光への国際的な機運を注視しつつ、タイミングを逃さないよう、事前に集客や受け入れなどの体制を整えておく必要があるでしょう。
- フランス
フランスでは、日本よりもマスクをする習慣がなく、ロックダウンを徹底することで安全が高まっていると感じている人が多いようです。一方で日本に対しては「マスクをする程度の対策しかできていないのではないか」と感じる人もおり、ロックダウンなどより厳重な対策が必要との見方も強くなっています。
終息には半年程度はかかると考えられており、旅行への意欲は高いものの、実際にフランスからの訪日客が戻ってくるのは2021年以降と予想されます。日本に対する信頼感を高められるよう、日本の安全性について正しい情報を発信していくことが欠かせないでしょう。
中米・南米・アフリカ
- 中米・南米
中米・南米では、自国の状況について安全ではないと考える人が多く、日本については遠い国であるため情報が少ないものの、「対応は良くなさそう」という漠然なイメージを持っているようです。しかし日本に対して安全性が高いというイメージが強く、「いずれ改善するのではないか」と考える人も多いようです。
終息には半年程度かかるとの見方が強く、終息後の積極的な旅行機運も高くなさそうです。まずは英語での情報発信の体制を整えるなど、旅行需要が高まるまでは地道な対策を続けていくことが大切になるでしょう。
- ウガンダ(東アフリカ)
東アフリカのウガンダでは、感染拡大前からロックダウンを実施していることから自国の状況に対して、安全ではないものの、さらなる拡大の可能性は低いと考える人が多いようです。日本に対しては検査不足や情報の不透明さを背景に、不安を感じる人が多くなっています。
終息までは半年程度かかるとの見方が強く、旅行への意欲は高くないようです。英語での情報発信など、地道な対策が求められるでしょう。
外国人観光客の日本に対するイメージはネガティブに寄っている可能性あり
世界各国の感染状況や、日本へのイメージは、国やエリアによって異なります。4月時点では自国の状況、日本へのイメージともに厳しい状況が続いており、すぐに訪日外国人観光客が戻ってくるというわけにはいかないでしょう。
タイやアメリカなどの一部地域からはポジティブなイメージが見受けられたものの、特に訪日外国人観光客が多いアジアや東南アジアからは、対策の遅れや自粛への意識の低さなどを背景に、日本へのイメージが悪化しています。
特に自国の施策が成功した台湾では、自国の対策と比較して日本に対するネガティブイメージが強いようです。
一方で、新型コロナウイルス対策で一時的に日本への信頼性が下がっているものの、もともと高い衛生管理への意識や医療体制などから日本に対して良いイメージを持っている外国人は少なくありません。
今後の感染状況や対策にもよりますが、訪日外国人観光客が戻ってくるのは早くて半年後、実際には1年後ごろではないかと考えられます。
外国人観光客の入国再開を待ついますべきこと:安心・安全の情報発信
再び訪日外国人観光客を招くためには、外国人旅行者が安心して日本を訪れることができるよう、安全面に対する正しい情報発信を積極的に行うことが重要です。店内の消毒、アルコール消毒液の設置、マスク着用などの対策を確実に行い、対策を行っていることを自社サイトなどで分かりやすく伝える必要があります。
またメディアの情報よりも日本に住む同じ国の人からの情報を信頼する外国人も多く、日本在住の外国人を通した情報発信も有効に活用していくと良いでしょう。
中南米やアフリカなど旅行への意欲が高くない地域に対しては、英語での情報発信を地道に続け、旅行需要の高まりを待つことになるでしょう。まだ英語での情報発信や受け入れ態勢が整っていない場合は、今のうちに準備しておくとよいでしょう。
まだ予断を許さない状況ですが、新型コロナウイルスの終息後に旅行に行きたいと考える人は多く、旅行需要の高まりを逃さないよう、今のうちからできる施策を着実に行っていく必要があるでしょう。
新型コロナウイルス流行以前とは状況が違うということを理解したうえで、情報発信や受け入れ態勢について改めて考えていく必要があります。
<参照>
shibuya-san:世界各国のコロナウイルスの状況とは
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