2020年6月現在、新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に越境を制限する動きが進んでおり、日本にも外国人の観光客はかなり少ない状態です。訪日外国人客数が増加する中でインバウンド集客に力を入れていた店舗にとっては厳しい状況が続いています。
しかし、感染症の収束後は反動として、コロナ禍で訪日できなかった多くの外国人が日本へ旅行に来ると予想されています。ファミレスをはじめとする飲食店では、その「ポストコロナ」の時期にインバウンド客を取り込めるかが集客のカギとなります。そのためには、訪日外国人のニーズの把握やニーズに対応したインバウンド対策が必要です。
この記事では、ファミレスチェーンの「ガスト」が外国人から人気の理由や、その他人気のファミレスチェーン、そしてファミレスチェーンのインバウンド対策を紹介します。
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ガストが外国人に注目される理由
ガストは外国人の間でも評判となっていますが、料理の味やスピードのほかにもメニューの豊富さや日本独自のサービス、ホスピタリティなど、その背景にはさまざまな要因があります。以下では、ガストが外国人から注目されている理由を紹介します。
多彩なメニュー体系
ガストが訪日外国人から注目されている理由は、料理のおいしさだけではありません。彼らがガストを訪れて驚く点はメニューの豊富さです。
日本らしさを感じる和食はもちろん、パスタやハンバーグなどの洋食、牛肉チゲやタンメンなど、さまざまな料理を提供しています。そのため、何を食べるか悩んだときや、食べたいものが異なる複数人で飲食店を利用するときには最善の選択肢となります。
また、これだけ豊富なメニューを用意しているだけでなく、どの店舗でも同じ味、同じクオリティを維持している点も高く評価されているようです。
日本ならではの食べ方
ガストの豊富なメニューの中で、日本人、外国人を問わず、メインディッシュとして人気となっているのがハンバーグです。
最もベーシックなデミグラスソースの「ハンバーグステーキ」のほかに、「チーズINハンバーグ」や「てりたまハンバーグ」などがありますが、外国人はライスやパン、サラダと別皿でハンバーグを食べる文化に新鮮さを感じるようです。
海外にもハンバーグを提供する店舗はありますが、もっぱらハンバーガーとしてバンズや野菜とともに出てくることがほとんどです。そのため、日本のようにハンバーグ単体をメインディッシュとして食べる方法はあまり浸透しておらず、日本独自の文化に驚く外国人も多くいます。
母国語でのコミュニケーション
ガストでは、外国人の顧客に対してよりよいサービスを提供するために、外国人の採用に力を入れています。特に、外国人の顧客の中でも多くの割合を占めるアジア圏出身のパートタイマーを採用することで、訪日外国人と母国語でコミュニケーションがとれるスタッフの配置を進めています。
外国人の採用を進める際に課題となった研修体制は、ネットマニュアルの導入により解決しています。
従来の紙媒体では「こんがり焼く」や「さっと炙る」など、日本語のニュアンスが伝わりづらい部分がありましたが、画像や動画を埋め込んだネットマニュアルを導入することで、外国人スタッフも調理の工程やポイントを視覚的に理解できるような工夫をしています。
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今年2019年はいよいよラグビーW杯が開催され、また来年の2020東京オリンピック・パラリンピックに向けてインバウンドが急加速する年になります。そのため、日本各地で急ピッチで多言語化が進んでいます。その理由は、訪日外国人の障壁となりうる問題だからです。実際に、平成28年度に観光庁が実施した訪日外国人観光客に対するアンケート調査を見てみると、日本に来る外国人観光客が旅行中に困っていることの上位にいつも挙げられるのは、コミュニケーションの問題(第1位:32.9%)と多言語表示の問題(第3位:2...
ガスト以外のファミレス:訪日外国人に人気のチェーンは?
ガスト以外にも外国人のニーズを汲み取り、人気を博しているファミレスは数多くあります。イタリアンレストランの「サイゼリヤ」、カレー専門店の「CoCo壱番屋」、ラーメンチェーン「一蘭」などが例としてあげられます。
以下では、これらの3つのチェーンに対する外国人からの評価を紹介します。
1. サイゼリヤ:「本場の味に近い」と高評価
リーズナブルな価格でイタリアンを提供する「サイゼリヤ」は外国人からも人気があり、在日外国人向けメディアを運営するYOLO JAPANの調査によると「在留外国人が訪日外国人におすすめしたいレストラン」ランキングでサイゼリヤが1位になりました。
また、数あるメニューの中でも、「プロシュート」はイタリアの高級ハムに近い味わいであると高い評価を得ています。
サイゼリヤは、多言語対応メニューの導入などインバウンド対策にも積極的に取り組んでいる点や、店舗あたりの収容人数が比較的多く気軽に入店しやすい点が外国人から人気となっています。
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政府観光局による2014年から2018年の調査によると、2014年時点で80,531人だったイタリア人訪日客の数は、2018年には150,060人と大幅に増加しました。2018年のイタリア人訪日客のうち65%以上が初訪日であり、今後の日本の課題はリピーターを増やすことと言えるでしょう。イタリア人は日常生活だけではなく、旅先での食事もとても大切にしていると考えられます。日本での旅行支出の割合を見ても、2番目に比率が高いのは飲食費です。そんなイタリア人は、日本で振る舞われている「イタ飯(イタリ...
2. CoCo壱番屋:カレーの「カスタマイズ」が人気の理由
「ココイチ」として親しまれているカレー専門チェーンの「CoCo壱番屋」は、カレーの辛さやルーの種類を選べるシステムが評判です。特に、インバウンド対策では、外国人のニーズを把握したうえで、彼らが好むトッピングやカスタマイズシステムを導入することがポイントです。
たとえば、CoCo壱番屋では宗教や信条上の理由で特定の食材が禁じられている外国人向けのメニューを充実させており、菜食主義者でも食べられるベジタリアンメニューや、イスラム教徒でも食べられるハラールメニューを提供しています。
また、CoCo壱番屋の多言語対応メニューは、英語や中国語、韓国語、ロシア語、アラビア語、ポルトガル語と幅広い言語に対応している点が特徴です。
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「ココイチ」の愛称で親しまれるカレーチェーン最大手の「CoCo壱番屋」は、2019年2月時点で国内1,267店舗、海外172店展開しており、国内だけでなく海外でも人気を博しています。国内同様、典型的な「日本のカレーライス」を提供しており、日本のカレーに馴染みのない外国人にも受け入れられているそうです。CoCo壱番屋のカレーが文化的背景の違いにかかわらず広く受け入れられるおいしさを提供できていること、CoCo壱番屋の店舗環境などが支持されていることなどがあるようです。CoCo壱番屋が海外進出...
3. 一蘭:アジア圏の訪日外国人から好評
和食とともに訪日外国人から人気となっているのがラーメンです。中でも、とんこつラーメン専門店の「一蘭」はアジア地域のインバウンド客から高い評価を得ています。
一蘭の最大の特徴は「味集中カウンター」と呼ばれる仕切り板です。すべての席の左右と前方に周りが見えないパーテーションが設置されており、一杯のラーメンと向き合うためのシステムが導入されています。
もともとは周りを気にせずラーメンの味だけに集中してほしいという吉冨代表の信念から生まれたものでしたが、周りの人の視線が気にならないため、「一人でも入店しやすい」と人気を獲得する要因の一つになっています。
なぜ「ラーメン一蘭」には訪日外国人の行列ができるのか?…インバウンド対策で意識したい「旅行コンテンツとしての飲食店づくり」
H29年度の訪日外国人消費動向調査によると、訪日外国人のNo.1人気アクティビティは「日本食を食べること」です。アンケートによると96%の訪日外国人が「今回の旅行で日本食を食べた」と答えています。こうしたなか訪日外国人に人気の外食チェーンも現れ始めました。今回は訪日外国人の圧倒的口コミ人気のを誇る「一蘭」について、外国人がどこを高く評価しているかまとめました。顧客満足度を上げる!飲食店にオススメのインバウンド対策を資料で詳しくみてみる「飲食店予約サイト」を資料で詳しくみてみる「飲食店予約管...
ファミレスチェーン店から学ぶ、外国人のための環境整備と価格設定
ファミレスチェーンで取り組むべきインバウンド対策には、メニューや案内の多言語化、キャッシュレス決済対応、コストパフォーマンスの向上などがあります。これらは外国人顧客を取り込むうえで非常に重要なポイントとなります。
以下では、それぞれの理由と注意点を紹介します。
多言語対応で認知度の上昇を狙う
東京都では、外国人観光客に対してより手厚いおもてなしを提供するために、飲食店検索サイトの開設や、観光情報を調べられるデジタルサイネージの設置を進めています。
また、飲食店の多言語対応を促進するために、東京都は12の言語に対応した外国語対応メニューを作成できるサービス「EAT TOKYO」をリリースしています。多言語対応メニューを準備している飲食店は、Webサイトやデジタルサイネージに店舗情報を掲載してもらうことができ、店舗の集客対策としても有効です。
メニューの多言語対応のほかに、コミュニケーションシートを使用して双方向の意思疎通を図ったり、ピクトグラムと呼ばれる絵文字を使用したりすることも効果的です。
訪日外国人が「いない」今だからこそ準備のチャンス!飲食店×多言語の3つのポイントを整備するには
2019年の訪日外国人数は3,188万人を突破し、統計以降過去最高値を記録しました。観光地は当然ながら日本各地の飲食店でも、訪日外国人が利用しやすい店舗作りが求められています。店舗の場合、日頃の経営や営業で時間を確保できず、対応が追い付かない場合も多いそうです。そこで、ピンポイントで課題を解決できる効果的な対策への需要が高まっています。現在は新型コロナウイルスの関係で、日本全体で店舗利用の自粛が進められています。これまで着手できなかった課題の解決策を考える良いタイミングといえるでしょう。本...
「現金のみ」はNG
海外では、日本よりもキャッシュレス決済が普及しており、訪日旅行の際にも慣れない現金でやりとりするよりクレジットカードやモバイル決済を利用した方が便利だと考える人が多いようです。しかし日本では、キャッシュレス決済に対応している店舗の数が少なく、対応していても利用できるカードの種類や決済方法がわかりにくいこともあります。
そのため、できればPaypalなどの決済手段の選択肢を広げ、外国人の顧客の利便性を高めることが重要です。
また、キャッシュレス決済に対応できる設備を整えるだけでなく、決済方法が外国人にも伝わりやすいように掲示を工夫する必要があります。
見習うしかない「いいことづくし」キャッシュレス決済への対応、観光地代表格・京都では導入率83.8%!(京都市観光協会調査)
インバウンド対策として注目されているキャッシュレス決済への対応。クレジットカードをはじめ、モバイル決済やQRコード決済など、キャッシュレスの手段も多様化しています。この記事では京都市観光協会のキャッシュレス決済実態調査の結果をふまえ、導入促進を目指す背景やメリット、具体的な効果についてご紹介します。目次キャッシュレス対応とインバウンドの関係をおさらい京都市観光協会会員、キャッシュレス導入率8割超え約3割の店舗がキャッシュレス決済導入後、売上・収入が増加まとめ:インバウンドのキャッシュレス対...
コストパフォーマンスが決め手
ガストやサイゼリヤをはじめとする人気チェーン店に共通しているのは、コストパフォーマンスの高さです。これらの人気チェーン店は、1人あたりの平均単価が1,000円以下という価格帯から、安くて美味しいというポイントが外国人から高評価を得ています。
提供するメニューが1,000円を超える場合は、セット割などお得に利用できるシステムを導入することでコストパフォーマンスの高さをアピールできます。
チェーン店の対応から学ぶ外国人にも優しい店舗を目指して
訪日外国人客数の増加に伴い、ガストやサイゼリヤ、CoCo壱番屋などのファミレスチェーンも続々とインバウンド対策に取り組んでいます。
2020年5月現在、新型コロナウイルスの影響で一時的に外国人観光客が減少しているものの、収束後は反動でこれまで以上にインバウンド客が押し寄せる可能性もあります。飲食店では、従来よりも高いレベルで、外国人客のニーズに応えていく必要性が生まれるでしょう。
主な施策としては、メニューの多言語対応、バイリンガルスタッフの配置、キャッシュレス決済対応などがあります。インバウンド対策に取り組む際は、外国人の顧客のニーズを把握することが必要不可欠です。外国人から高い評価を受けているチェーン店を分析して、外国人が好む店舗の特徴を取り入れていくことが重要です。
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短時間でインバウンドが学べる「訪日ラボ トレンドLIVE!」シリーズの第6弾を今月も開催します!訪日ラボとして取材や情報収集を行う中で、「これだけは把握しておきたい」という情報をまとめてお伝えするセミナーとなっています。
今年も残りわずかとなりましたが、インバウンド需要はまだまだ好調をキープしている状況です。来年の春節や桜シーズンなど、訪日客が集まる時期に向けて対策を練っていきたいという方も多いでしょう。
今回もインバウンド業界最大級メディア「訪日ラボ」副編集長が、10〜11月のインバウンドトレンド情報についてお話ししていきますので、ご興味のある方はぜひご覧ください。
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