ウィズコロナ時代のインバウンド業界のこれから:2019年まで訪日外国人が増えていた理由・今後の展望について紹介

公開日:2020年07月06日

近年、国内の主要な観光地には、多くの外国人観光客が訪れています。インバウンド需要の拡大はめざましく、昨年2019年の訪日外国人客数は3,188万人と、過去最高値を記録しました。

しかし、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受けて日本政府が入国制限の措置を講じた影響で、2020年4月の訪日外国人客数は2,900人にまで落ち込んでいます。

この記事では、インバウンドの概要や需要拡大の背景、コロナウイルス収束後の展望について解説します。

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近年注目されているインバウンド業界とは

インバウンドは、日本の観光業界に大きな影響を与えています。近年は、東京五輪の開催が決定したこともあり、インバウンド需要が更なる盛り上がりを見せていました。

インバウンドが注目されるようになったのは2000年代に突入してからのことで、比較的新しいビジネスモデルであるといえます。

以下では、インバウンドの語源や日本政府の取り組み、近年の動向について解説します。

インバウンドとは

インバウンドは、英語の形容詞「inbound」が由来であり、「内向きの、入ってくる」という意味があります。

近年、日本に多くの外国人観光客が訪れており、外国人向けのビジネスが注目を集めるようになりました。こうした背景からインバウンドは、日本から見た時に「外から内に入ってくる旅行」=「訪日外国人の旅行」という意味として普及しました。

関連して、ブログや動画、SNSなどインターネットを通じて海外に情報発信し、外国人に自社の商品やサービスに興味を持ってもらうマーケティング手法の「インバウンドマーケティング」という用語もあります。

2002年に政府はグローバル観光戦略を開始

インバウンドに関する戦略は、約20年前から国家主導で取り組まれています。

2002年に「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」が閣議決定され、国土交通省も同年「グローバル観光戦略」を策定しました。

この「グローバル観光戦略」は、外国人旅行者訪日促進戦略(より多くの外国人の日本への来訪を促す戦略)、外国人旅行者受入れ戦略(訪日外国人観光客すべてに満足感を与える戦略)、観光産業高度化戦略(本戦略の目標達成に向けて観光産業を高度化していく戦略)、推進戦略(本戦略を多様な主体が連携しつつ効果的かつ着実に推進する戦略)の4項目から成り立っています。

外国人旅行者数の増加や満足度向上のほか、観光産業全体の推進などが盛り込まれており、インバウンドの活性化に寄与する戦略だといえます。

訪日外国人は年々増加・2019年には過去最高に

近年、訪日外国人は増加し続けています。日本政府観光局によると、2019年の訪日外国人数は3,188万人で、過去最多となりました。前年18年に3,000万人の大台を突破してからも増加し続けています。

また、訪日外国人による旅行消費額も増加傾向にあります。2019年度は、前年比6.5%増の4兆8,135億円で、過去最高となりました。消費額が前年よりも増加するのは8年連続であり、まさに右肩上がりであるといえます。

国や地域ごとに消費額を分析すると、トップは中国の1兆7,704億円(前年比14.6%増)で、全体の36.8%を占めました。

また、2019年は日本でラグビーワールドカップが開催されたことから、出場国の消費額も増加しました。具体的な消費額は、オーストラリアが1,519億円(同15.5%増)、イギリスが999億円(同38.7%増)、フランスが798億円(同21.6%増)でした。

近年の訪日外国人増加の要因

近年、日本を訪れる外国人観光客が増加しています。日本文化の人気も要因として考えられるものの、政府主導の施策や格安航空会社の発展も外国人観光客の増加に大きく寄与しています。

以下では、政府の掲げた「ビジット・ジャパン・キャンペーン」やLCCの就航開始、観光ビザの緩和など、訪日外国人増加の要因について解説します。

ビジット・ジャパン・キャンペーンの発動

2000年代前半頃から、アニメやマンガをはじめとする日本文化は世界的なブームとなりました。これを受けて政府は「観光立国」を掲げ、訪日外国人観光客1,000万人を目標とする「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を策定しました。

これは2002年に策定した「グローバル観光戦略」を受け継ぐ形となり、2003年4月1日に関係省庁および民間企業などが参加する「ビジット・ジャパン・キャンペーン実施本部」が発足しました。

これにより、海外での訪日旅行のPR活動、国内でのインバウンド向けインフラ整備、外国人向け観光ビザの要件緩和などが実施され、訪日外国人観光客の増加が図られました。

2003年当時の訪日外国人観光客は年間500万人余だったことを考えると、この施策の開始からインバウンド客増加の機運が広がり始めたことで、近年のインバウンド客数の増加に繋がったといえます。

LCCにより安価な海外旅行が可能に

訪日外国人観光客の増加は、LCCにより日本と海外を安価で気軽に行き来できるようになったことも理由のひとつだと考えられます。

現在、アジアを中心に20以上の国が羽田空港とLCCで結ばれていますが、首都圏以外にも、さまざまな自治体が訪日外国人観光客獲得のためにLCC誘致の取り組みを進めています。

例えば愛知県の中部国際空港では、2019年9月、LCC向けに第2ターミナルを新たに開業しました。この空港は年間450万人もの旅客を受け入れ可能であり、LCCの新規路線就航獲得に寄与すると考えられます。

ビザ緩和の開始

訪日外国人はアジアからの観光客が多い傾向にありますが、アジアのなかでも特に中国人が全体の約4分の3を占めています。

中国では急速な経済成長を遂げていることから、日本政府は2009年に中国の富裕層に向けて個人旅行のビザ発給を開始しました。この取り組みには、富裕層を日本国内へ誘致し、国内でのインバウンド消費を拡大させる狙いがあります。

さらに2015年にはビザの条件を緩和し、2017年には中国の富裕層に向けて何度でも出入国を許可する「数次ビザ」を発行しました。これにより、経済力のある中国人観光客が日本を訪れる環境が整いました。

インバウンド業界のこれから

新型コロナウイルスの影響により、外国人観光客は激減しました。6月5日現在、インドやギリシャなどでは入国制限緩和を検討し始めているものの、日本における入国制限は依然として続いています。

以下では、新型コロナウイルスの影響や収束後の見通しなど、インバウンド業界のこれからについて解説します。

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新型コロナウイルス拡大による深刻な影響

新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、外務省は入国制限措置や入国後の行動制限措置を講じています。その結果、2020年4月の訪日外国人客数は2,900人と、前年同月の293万人から99.9%減少する結果となりました。単月の訪日外客数としては、JNTOが統計を取り始めた1964年以来、過去最少です。

また、京都市観光協会も2020年4月のデータ月報を発表しています。市内の約4割をカバーする56ホテル計1万1,830室を対象とした調査では、外国人延べ宿泊客数は約1,000人と、前年4月(約35万人)より99.7%減少する結果となりました。

これらの結果からも、新型コロナウイルスが及ぼす観光業界への影響は大変深刻であると分かります。

収束後の日本旅行は前向きに検討されている

Airporterは2020年4月、自社サービスを利用する訪日外国人を対象に、新型コロナウイルスが今後の旅行に与える影響を調査しました。125名の回答者のうち、台湾が46%、香港16%などアジア圏からの回答者が大多数であるものの、アメリカやロシア、カナダ、トルコなどの回答者もおり、国籍は多岐にわたりました。

新型コロナウイルスの収束後、どこに旅行したいかの質問に対し、全国籍の回答者の86%が日本を選択し、1位となりました。日本を訪れたいと考える外国人はとても多いことがわかります。

また、Fun Japan Communicationsも同月、日本が好きな外国人を対象に新型コロナウイルスによる訪日旅行への影響を調査しました。回答者はアジア9カ国の10〜60代の男女2,425名です。

訪日旅行が安全だと判断できたら日本に行きたいかの質問に対し、韓国と中国以外は「はい」と答えた人が90%以上を占めました。この結果から、新型コロナウイルス収束後は、アジアからの訪日旅行客数が回復しそうだと考えられます。

東京オリンピック2020で需要回復の可能性

新型コロナウイルスの影響は深刻であるものの、来年開催予定の東京五輪によりインバウンド需要の回復が期待されます。

五輪の開催が決定した先進国において、決定後10年以上の長いスパンで見ると、開催決定前よりもインバウンド需要の伸び率が上昇しているといったデータもあります。

要因としては、五輪開催地となったことに伴う「旅マエ」「プレ旅マエに向けた情報発信の効果であると考えられます。五輪開催が迫るにつれ、海外メディアが開催地の特徴や魅力を発信し始めるためです。

また、五輪開催期間中には世界中からさらに多くのメディアが集まり、日本の情報が世界各地へと拡散されます。メディア以外にも、五輪に出場する選手が「インフルエンサー」としての効果を発揮し、開催国の魅力をプロモーションしてくれると期待できます。

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インバウンドは今後さらに注目が集まるビジネス

インバウンドは、2000年代に突入してから注目を集め始めた比較的新しいビジネスモデルだといえます。2002年に政府が策定した「グローバル観光戦略」をはじめとした様々な取り組みにより、2019年までの訪日外国人観光客数は順調に増加していました。

しかし2020年現在、新型コロナウイルスの影響によりインバウンド消費は大きな打撃を受けています。回復するにはまだまだ時間がかかると予想されますが、アンケート結果からも分かるように「収束後に日本を訪れたいと考えている外国人は多数存在します。

観光業者は、収束後に訪れた外国人観光客へ満足感を与えるおもてなしをするために、インバウンドマーケティングの施策を今から考えておくことが必要といえます。それだけでなく、アフターコロナにおける旅行の条件ともなる「安心・安全を示す衛生管理の徹底や感染対策も求められるでしょう。

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

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