7月17日、観光庁は「主要旅行業者の旅行取扱状況速報」2020年5月分のデータを発表しました。
この調査は国内の主要旅行会社の商品取扱額を集計したもので、それぞれの取扱額を「日本人の海外旅行」「外国人の国内旅行」「日本人の国内旅行」の3つのカテゴリーに分けて公表しています。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を受け、5月は国内外に向けた感染防止措置がより強化されたことで、3つの区分すべてで4月分からさらなる減少となりました。 中でも「外国人の国内旅行」の取扱額は99.8%減と、最も落ち込みました。
7月現在でも129か国が日本国内への入国拒否対象となっており、また全世界に対する不要不急の渡航自粛要請が続いていることからも、「日本人の海外旅行」「外国人の国内旅行」の取扱額は6月分以降も減少傾向をたどると考えられます。
一方で、6月1日に一部首都圏と北海道を除く地域で、6月19日には全国で都道府県をまたいでの移動が解禁されたことから、「日本人の国内旅行」は徐々に回復に向かうことが期待されます。
《注目ポイント》
- 5月の旅行商品取扱額は全体で前年同月比97.6%減
- 前年同月比ではインバウンド向け国内旅行商品が99.8%減で、3分類中最も落ち込んだ
- 日本人の国内旅行は今後徐々に回復、インバウンドは低水準続くと予想
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国内旅行会社取扱額ランキング:コロナ影響大きく前年同月比97.6%減
2020年5月の主要旅行業者の総取扱額は95.7億円で、前年同月比97.6%減となりました。2020年4月のデータ(169.4億円)と比較しても43.5%減少しています。
新型コロナウイルスの感染拡大による国内外を対象とした移動の自粛によって、4月に引き続き「日本人の海外旅行」「外国人の国内旅行」「日本人の国内旅行」の3つの区分すべてで総取扱額が前年同月より大幅に減少しました。
調査対象の47業者のうち44業者で取扱額が9割以上落ち込んでおり、感染拡大による影響は甚大なものとなっています。
国内の各旅行業者の取扱額ランキングでは、4月に引き続きJTBグループ10社がトップとなりました。
順位 | 旅行会社 | 取扱額 | 前年同月比 |
1位 |
JTBグループ10社 | 51.0億円 | -96.4% |
2位 |
日本旅行 | 8.0億円 | -98.2% |
3位 |
KNT-CTホールディングスグループ13社 | 6.6億円 | -98.7% |
4位 |
名鉄観光サービス | 4.4億円 | -94.5% |
5位 |
ANAセールス | 4.0億円 | -97.3% |
日本人向け海外旅行商品の取扱額:前年同月比99.0%減
2020年5月の日本人向け海外旅行商品の総取扱額は13.6億円で、前年同月比99.0%減と大幅に落ち込みました。
新型コロナウイルスの影響で日本でも緊急事態宣言が発令され、各国でも渡航制限の動きが本格化した4月の取扱額(22.5億円)と比較しても、39.6%減少した結果となっています。
海外の国々への入国制限や日本から海外への渡航自粛要請の措置が引き続き講じられていたため、5月の海外旅行はほぼ不可能であったことが今回の減少の要因といえるでしょう。
海外では台湾やベトナム、EUなどが6~7月から入国制限を一部緩和しましたが、日本から海外への出国に関しては、外務省が現在も危険情報として全世界に対して一律に不要不急の渡航を控えるよう求めるレベル2を発出しています。
しかし、政府は6月にはベトナムやタイ、オーストラリア、ニュージーランドとの相互の入国制限緩和に向けた協議を開始しており、今後さらに中国や韓国などアジア10か国との協議の開始を予定しています。
いずれの場合も当面の間対象はビジネス目的の入国者に限られると予想されるものの、協議が進んだ8月以降の取扱額の回復が期待できるでしょう。
順位 | 旅行会社 | 取扱額 | 前年同月比 |
1位 |
JTBグループ10社 | 6.7億円 | -98.5% |
2位 |
KNT-CTホールディングスグループ13社 | 1.2億円 | -99.2% |
3位 |
IACEトラベル | 0.7億円 | -96.3% |
4位 |
エムオーツーリスト | 0.6億円 | -98.1% |
5位 |
東武トップツアーズ | 0.6億円 | -97.7% |
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インバウンド向け国内旅行商品の取扱額:前年同月比99.8%減
2020年5月のインバウンド向け国内旅行商品の総取扱額は3,924万円(0.3億円)で、前年同月比99.8%減となりました。4月の取扱額(5.0億円)と比較しても、92.2%減と大幅に落ち込んでいます。
取扱額が4月に比べ大幅に落ち込んだ要因としては、訪日外客数の減少が挙げられます。
日本は4月3日には中国、韓国、アメリカなど73か国・地域を入国制限の対象として指定し、4月29日にはロシアやサウジアラビアなど14か国を追加しました。また5月16日にはメキシコなど13か国が、5月27日にはインドやアルゼンチンなど11か国が対象として新たに追加されました。
これらの水際対策の強化によって、5月の訪日外客数は前年同月比99.9%減の1,700人となり、訪日外国人観光客がほとんどいない状況に陥りました。
現在も日本は129か国・地域からの入国を制限しており、6月分の取扱額は同程度もしくはさらなる減少をたどることが予想されます。
順位 | 旅行会社 | 取扱額 | 前年同月比 |
1位 |
JTBグループ10社 | 3311万円(0.331億円) |
-99.6% |
2位 |
阪急交通社グループ3社 | 271万円(0.027億円) |
-99.4% |
3位 |
WILLER | 219万円(0.022億円) |
-96.8% |
4位 |
旅工房 | 53万円(0.005億円) |
-98.9% |
5位 |
農協観光 | 21万円(0.002億円) |
-99.9% |
日本人向け国内旅行商品の取扱額:前年同月比96.6%減
2020年5月の日本人向け国内旅行商品の取扱額は81.7億円で、前年同月比96.6%減となりました。
前年同月比36.3%であった4月の取扱額(142.0億円)と比較すると42.4%の減少となり、4月から5月にかけて取扱額がさらに落ち込んだことがうかがえます。
5月14日に39県で、5月25日にはようやく全国で緊急事態宣言が解除されたものの、4月の取扱額からさらに減少する結果となりました。
都道府県をまたいでの移動が解禁されたのは6月に入ってからで、5月中は不要不急の都道府県をまたいでの移動を避けるように求められていたことが要因として挙げられるでしょう。
6月1日に一部首都圏と北海道を除く地域で、6月19日には全国で都道府県をまたいでの移動が解禁されました。さらに観光については、6月1日からは各都道府県内で、6月19日からは都道府県をまたぐものも含めて観光振興の段階的な再開が許可されました。
これらのことから、6月分以降の取扱額は若干の回復がみられると期待できます。
順位 | 旅行会社 | 取扱額 | 前年同月比 |
1位 |
JTBグループ10社 | 44.0億円 | -95.0% |
2位 |
日本旅行 | 8.0億円 | -97.2% |
3位 |
KNT-CTホールディングスグループ13社 | 5.4億円 | -98.4% |
4位 |
名鉄観光サービス | 4.3億円 | -93.5% |
5位 |
ANAセールス | 3.5億円 | -97.2% |
今後の見通し:Go To Travel キャンペーン、国内旅行の起爆剤となるか
6月に協議が始まったベトナム、タイ、オーストラリア、ニュージーランドからの入国者受け入れ再開が間もなく実現し、今後は中国や韓国を含むアジア圏の10か国・地域についても入国制限緩和の検討や協議が開始される予定です。
しかし、しばらくは渡航者をビジネス目的の客に限り、1日最大250人程度に入国者数を制限する方針を定めていることから、インバウンド向け国内旅行商品の取扱額の回復はまだ先になると考えられます。
国内旅行については、7月22日にいよいよGo To Travel キャンペーンが開始されることから、国内の観光・旅行需要の回復が期待されています。トラベルズー・ジャパンが実施した調査でも、キャンペーンの利用意向が87.5%と高いことから、早ければ7、8月分から取扱額の上昇がみられるでしょう。
一方で、首都圏や大都市圏での感染者数の増加を懸念する声が上がり、東京発着の旅行が対象から除外されました。各都道府県の知事からは、近隣の県とのみキャンペーンの実施を図る意向や特定の県からの旅行者を断る意向も聞かれます。
しかし、ウィズコロナ・アフターコロナにおけるインバウンド需要の回復には、まず新型コロナウイルス感染の収束、次に国内旅行の実施による「日本は"安全・安心"」であることを海外に示すPRが必要です。その意味でも、Go To Travel キャンペーンによる国内旅行の需要喚起は重要なものになってきます。
今後も国内全体での感染防止を図る政府や自治体、観光地の取り組み、そして一人ひとりの意識改革や感染拡大への危機感の維持が必要といえるでしょう。
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<参照>
観光庁:旅行業者取扱額
トラベルズー・ジャパン:「Go To Travelキャンペーン」に関する意識調査
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