地域住民主導の「コミュニティツーリズム」とは:インバウンド対策として注目される理由/国内事例も紹介

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コミュニティツーリズムとは、地域コミュニティが主体となり、地域の歴史や文化、産業、暮らしなどを守りながら観光コンテンツとしてもアピールし、地域の活性化を目指すツーリズム形態です。

コミュニティツーリズムを推進することにより、地域の資源や文化の保持と、雇用の創出や交流人口の増加を両立できるといったメリットがあります。

また、地域ならではの体験を求める訪日外国人観光客も増加しているため、コミュニティツーリズムに取り組むことは、インバウンド対策にもつながることが期待されます。

今回の記事では、コミュニティツーリズムの定義やメリット、実際にコミュニティツーリズムに取り組んでいる国内の事例について整理します。

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コミュニティツーリズムとは

コミュニティツーリズムとは、地域コミュニティが主体となり、地域のために行う観光の形態です。コミュニティベースドツーリズム(CBT)と呼ばれることもあります。

地域が一体となって、地域の歴史や文化、産業、暮らしなどを保全しながら、これらの地域資源を観光コンテンツに造成します。また、対外の情報発信や観光に必要なインフラの整備も行います。

こうした取り組みによって、地域社会の保護と経済の発展を両立し、地方の過疎化や限界集落などの問題の解決策として期待されています。

現在では世界各地で300例以上のコミュニティツーリズムが行われており、日本でも沖縄県や長崎県などをはじめとした地域がコミュニティツーリズムに注力しています。

コミュニティツーリズムの原則

2003年に、コミュニティツーリズムの実現を支援するタイのNPO「Responsible Ecological Social Tours(REST)」により発表された「Community Based Tourism Handbook」では、コミュニティツーリズムを行ううえでの原則を以下のように定めています。

  • コミュニティのためのツーリズムであることを認識し、促進する
  • ツーリズムの全ての局面でコミュニティのメンバーを巻き込む
  • コミュニティの誇りをうながす
  • 地域の生活の質を高める
  • 環境の持続可能性を確保する
  • 地域独特の文化や特徴を保持する
  • 文化交流を促進する
  • 文化的違いや人間的な尊厳を尊重する
  • コミュニティメンバーに利益を平等に分配する
  • コミュニティの事業に収入の一部を還元する

コミュニティツーリズムに取り組む際には、このような原則に基づいている必要があるとされています。

インバウンド対策としても注目されるコミュニティツーリズム

コミュニティツーリズムに取り組むことは、インバウンドの集客にも効果的であると考えられます。

観光庁が2018年に行った「訪日外国人消費動向調査【トピックス分析】」では、訪日外国人リピーター率が高まっており、さらにリピート回数が増えるにつれて、地方への観光意欲が高まることが分かっています。

同調査では、2018年の訪日外国人のうち61.4%の1,761万人が、訪日回数2回目以上のリピーターであることが分かっています。

2011年の時点でのリピーターは401万人であったことから、7年間でリピーター訪日外国人は約4.4倍となっています。

また、訪日回数が増えるにつれて、東京・大阪などの主要な観光地から、九州や東北などの地方を訪れる割合が高くなることもわかっています。

このような訪日外国人を取り込むために、地域の魅力を発信するコミュニティツーリズムは有効であると考えられます。

またインバウンドのトレンドは、商品を購入する「モノ消費」から体験型の「コト消費に変化しています。

その地域でしか体験できないコンテンツを求める訪日外国人が増えているため、地域の文化や歴史を観光資源とするコミュニティツーリズムは、このような「コト消費」のインバウンドトレンドにも合致しているといえます。

コミュニティツーリズムのメリット

コミュニティツーリズムは、地域経済の活性化や持続可能な社会経済システムの構築をめざすツーリズムですが、それに付ずいしてさまざまなメリットが存在します。

ここでは、コミュニティツーリズムに取り組むことで得られるメリットについて紹介します。

マスツーリズムがもたらした観光問題を解消

マスツーリズムとは、第2次世界大戦後の経済発展を機に、一般市民に旅行が急速に普及した現象です。

これにより、観光地は大きな経済的な恩恵を受けた反面、環境汚染や自然破壊という課題を抱えることとなり、昨年までも、国内外の主要な観光都市において観光客の増加による地域環境への影響が問題視されていました。

一方で地域のコミュニティが主導する、コミュニティツーリズムは、観光客を増やすことよりも地域コミュニティのニーズや意向を優先する特徴があります。

観光客が増えすぎることによる住民や自然環境への悪影響を抑えて、地域の活性化がのぞめることがコミュニティツーリズムに取り組むメリットの一つです。

地域全体の活性化・文化の再認識につながる

コミュニティツーリズムで目指されている「活性化」や「発展」は、単なる経済の規模拡大を指しているわけではありません。

地域住民が主導となりコミュニティツーリズムに取り組み、地域独自の生活や歴史を観光コンテンツとして確立していくことは、地域住民にとっても、自身の地域の文化やアイデンティティを再確認する機会にもなります。

コミュニティツーリズムは、観光客の訪問による交流人口の増加や地域経済の活性化だけでなく、住民の間での一体感や交流の創出にもつながると考えられています。

コミュニティツーリズムの事例

コミュニティツーリズムは、多くの地方自治体で取り組まれています。

ここでは、コミュニティツーリズムに取り組み、観光客の増加と地域の活性化の両立に成功した事例について紹介します。

沖縄県東村:地域主導の取り組みで住民所得は17年間で1.8倍に

東村ではコミュニティツーリズムへの取り組みとして、官民の間での緊密な連携や国内外での取り組みについて丁寧な情報収集、自身の地域の資源を活かしたマングローブのエコツアー農家民泊の造成などがあげられます。

その結果、人口が2,000人の東村に2002年以降は毎年25万人以上の観光客が訪れるようになりました。

住民一人当たりの年間所得も、1996年から2013年の17年間で150万円から275万円に、1.8倍増加しました。

また、東村ではインバウンド誘致の手段としてコミュニティツーリズムを活用しています。

たとえば、やんばる国立公園の応対スタッフの中国語対応や、YouTubeでの情報配信などを行っています。


長崎県:まち歩き博覧会「長崎さるく博」を開催

長崎県長崎市では、2006年にまちを「あるく」ことをコンセプトにし、地域の魅力を伝える「長崎さるく博」を開催しました。

「長崎さるく博」は、市民が主導となって博覧会を企画・運営し、会場イベントを行ったり、ガイドツアーを行ったりしたことで、開催時期の長崎市への観光客数は前年同期比6.7%増加するほど、観光客の集客に成功しました。

「長崎さるく博」終了後も、地元ガイドと一緒にまち歩きを楽しむ「通さるく」と長崎の文化や歴史について専門家の講義も含まれる「学さるく」の2種類を開催しています。

また訪日外国人に向けて、英語の公式サイトでのまち歩きモデルコースの紹介やSNSでの情報発信を行っています。

コロナ禍においてもオンラインツアーを開催しており、長崎の文化、歴史、グルメなどの魅力を地元ガイドによる解説で海外にアピールするものとなっています。

Facebook投稿
▲Facebook投稿:編集部スクリーンショット

Facebook:Nagasaki Walksの投稿(https://www.facebook.com/NagasakiWalks/posts/239515010922357)

京都府:「里山コミュニティ・ツーリズム事業」を開始

京都府京都市では、京都市街周辺の地域への観光客の誘致をめざす「とっておきの京都~定番のその先へ~」プロジェクトの一環として、2020年3月からインバウンド向けの「里山コミュニティ・ツーリズム事業」を開始しています。

この事業では、京北エリアでの農家民宿の滞在者を対象に、電動クロスバイクによるサイクリングやトレッキングなどの体験ツアーや、木こりや木工といった農家体験プログラムを提供します。

京都市では、長年観光客の急速な増加による環境問題が課題となっていました。

こうした周辺の地域への観光客の誘客に取り組むことは、市街地の観光問題の解消と、周辺地域の活性化の両方を備えた「持続可能な観光」につながると考えられます。

ウィズコロナの京都、オーバーツーリズム対策など観光戦略に変化?外国人宿泊が9割減(2020年3月 京都市観光協会データ月報)

京都市観光協会は、2020年3月分の市内宿泊施設のデータを発表しました。近年京都市では、訪日外国人を含む観光客の集中による混雑などのオーバーツーリズムが問題となっていました。これまでも観光客へのマナー周知・啓発事業等、積極的な対策を打っています。現在では、日本全国で新型コロナウイルスの影響で観光客が大きく減少し、様々な業界が打撃を受けています。宿泊施設の宿泊客数や客室稼働率にも顕著に表れています。データと、2020年5月の京都府の宿泊施設をとりまく状況について整理します。《注目ポイント》外...


地域主体で取り組むコミュニティツーリズム

コミュニティツーリズムは、地域経済の活性化と環境の保全を両立できるツーリズムとして、世界的にも広がりをみせており、日本でもさまざまな地域で取り組みがなされています。

また、地方を訪れるリピーターの訪日客が増加していることや「コト消費」がインバウンドのキーワードとなっている今、コミュニティツーリズムインバウンド集客の手段のひとつとしても期待が高まっています。

「グリーンツーリズム」とは

地方に滞在し、現地の方々と交流しながら農業体験などを行う「グリーンツーリズム」が、ここ数年盛り上がりを見せています。また、新型コロナウイルスの流行は、これまでのように人の集まる繁華街が見どころとなる都市型の観光だけでなく、自然の豊かな地方や、オープンエアーな観光コンテンツへの関心を高めることにつながっています。先進国を中心に見られているコト消費ブームや、持続可能な社会を目指す意識も、グリーンツーリズムの商業的、社会的価値を高めているといえるでしょう。グリーンツーリズムは、地方の資源を活かし...

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訪日ラボセミナーレポートのご紹介&最新版インバウンド情報まとめ

訪日ラボでは、インバウンド対策に課題を抱えるご担当者様向けに、お悩み・課題解決を支援すべく、最新レポートの公開や無料のオンラインセミナーを実施しています。

【セミナーレポート】「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント


2023年は2,500万人の外国人旅行者が訪れた日本のインバウンド市場。コロナ前の2019年に迫る勢いの回復をみせており、2024年の訪日外国人数は3,000万人を上回るとの予想もあります。

日本を訪れる外国人旅行者の間で、特に人気が高いアクティビティが「桜の鑑賞」です。桜の開花時期に合わせて日本を訪れる外国人も多く、日本の重要な観光資源の一つとなっています。

そこで訪日ラボでは、「『桜シーズン』に向けたインバウンド施策のポイント」と題したセミナーを開催しました。
登壇者としては、インバウンドの動向に詳しい訪日ラボ インバウンド事業部長 川西哲平に加え、台湾に本社を置くビッグデータカンパニーVpon JAPAN株式会社営業本部 会田健介氏をお呼びし、「桜」に関するインバウンドデータをもとに、訪日外国人旅行者の最新動向と、「桜のシーズン」に集客を向上させるためのポイントを解説しました。

本セミナーは大好評につきアーカイブ配信を行っておりますので、ぜひご覧ください。

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「桜シーズン」に向けたインバウンド施策のポイント【セミナーレポート】


【インバウンド情報まとめ 2024年3月】2023年年間宿泊者数 1位は韓国 他

訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月発行しています。

この記事では、2024年3月版レポートから、2月〜3月のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。

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インバウンド情報まとめ 2024年3月

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この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

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