先日開催された台湾最大の国際旅行博「ITF(台北国際旅行博)」での取材内容をもとに、台湾市場の最新状況や、各社・自治体のプロモーションの動きなどをお届けする「台湾市場のインバウンドプロモーション最前線」。
第一弾の今回は、空港同士が連携し、台湾旅行者の地方誘客を行った事例をご紹介します。
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羽田空港、北海道の空港と連携しインバウンドを送客 地方観光を盛り上げる
今回のITFでは、複数の企業・自治体が連携してブースを出展する例が多くみられました。
その中の一つが、羽田空港旅客ターミナルを建設、管理・運営する日本空港ビルデングと、北海道内の複数の空港を運営する北海道エアポートの共同出展。空港同士が連携し、インバウンドを羽田空港から地方空港へ送客することを目指した画期的な事例です。
この2社がなぜ連携することになったのでしょうか。日本空港ビルデング 島田さん、北海道エアポート 手繰さんに取材しました。
また、両社のブースをはじめ、日本ブース全体の出展にかかわったジーリーメディアグループ(台湾の訪日メディア「ラーチーゴー」運営) 代表取締役社長 吉田さんにもお話を伺いました。
日本空港ビルデング株式会社 営業推進室 課長 島田亮一さん
(訪日ラボ編集部:空港会社の出展は珍しい。出展した理由は?)
今回、羽田空港から、地方空港へ送客する取り組みを始めたんです。「台湾→羽田空港、羽田空港→北海道」の流れで、台湾からの旅行者を北海道へ送客します。
コロナ禍が明ければ羽田空港にはすぐ旅行者が戻ると予想していて、実際そうなりましたが、羽田空港周辺だけが潤えばいいわけではないと考え、コロナ禍中に事前の準備を進めていました。空港として航空需要の下支えをしたいので、どんどん上手く利用してもらいたいと思っています。
さらに、例えば「行きは羽田空港→女満別空港、帰りは稚内空港→羽田空港」のように、入る空港と出る空港も違う場所にして、普段行かないところにも行っていただける工夫もしています。
(来場者の反応は?)
非常に良いですね。こうした形での空港のアライアンスは「今まで見たことがない」とびっくりされる方も多いです。羽田空港が一番国内路線を持っているので、空港同士で連携する新しい座組みを作っていきたいと考えています。
(今後の取り組みは?)
台湾、香港以外の国、例えばタイ、ベトナム、インドなど他の地域にも同じ取り組みをやることは可能か、との問い合わせも来ていますので、拡大を検討しています。
一方で今後の課題は、2次交通(バス)、Wi-Fi、ラゲージサービスなどが不足しており、地方へ送客したはいいものの、まだまだ不便な場所が多い点。こうした地方での旅行のお困りごとを、一気通貫でサポートする取り組みも進めたいですね。
とはいえ、今回はこうした地方観光の課題解決に向けて、「はじめの一歩」を踏み出せたと感じています。
北海道エアポート株式会社 営業開発本部 観光開発部 観光開発課 課長 手繰貴志さん
(出展したきっかけは?)
日本空港ビルデングさん、ラーチーゴーさんから一緒に出ないかとお声がけをいただきました。弊社としては、他の(北海道外の)空港さんと連携でのプロモーションは初めての試みです。弊社が運営している7つの空港全てに就航しているのが羽田空港で、羽田空港を経由すれば直行便がなくても来られるというのは、我々にとっても台湾の旅行者にとっても大きなメリットだと考えています。
(来場者の反応は?)
思った以上にたくさんの方々に来ていただいて、皆さんが北海道に対して興味を持ってくださっているのを改めて実感しました。
台湾現地のメディアの方ともお話ししたのですが、とてもいい取り組みだと言っていただきました。
(今後注力するエリア・ターゲットは?)
当社は北海道の7つの空港を運営しています。この7空港を活用いただくことが私たちの大きなミッションですので、今回のように、直行便利用だけでない様々なアプローチでの北海道への観光PRに取り組んでいきたいです。
また、北海道は、季節・場所によって様々な楽しみ方ができます。若い年代も含め、幅広い層に、北海道の多彩な魅力をお伝えしたいと思っています。
復便の状況や北海道の認知・関心度に合わせてインバウンド誘客に取り組んでいきますが、直行便の就航している東アジア・東南アジアの各国は北海道に訪れた経験のある方も多くいらっしゃいますので、リピーターとなる方には、よりローカルな情報もお届けして、地域の人や文化も感じていただける旅をご提案できたらと思います。
株式会社ジーリーメディアグループ(台湾の訪日メディア「ラーチーゴー」運営) 代表取締役社長 吉田皓一さん
(今回、どのような形でITFへ関わっている?)
日本ブースに出展している方をサポートしたり、会場に来ていない方向けにもオンラインライブでアピールしたり、地下鉄の改札前にも広告を出したりなど、日本ブース全体を盛り上げています。
特に日本空港ビルデングさんと北海道エアポートさんのブースは全体を設計しており、日本のキラーコンテンツである東京と北海道を、横串で連携してPRできるようにしました。
(会場の反応はどうか?)
去年はマスクもして、感染対策しながらでの旅行博でしたが、今年は4年振りでまさに「マグマが噴出」しているような感じですね。昨年は日本もここまでブースを出してなかったですが、今回は盛大で、日本側の熱量も非常に高いことがわかりますよね。
(台湾の訪日客の動向は?)
お金持ちになって、消費額が上がったように思います。昔は「コスパ」が重視されることが多かったのですが、聞かなくなりましたね。「いいものはお金を出さないと」という価値観が広がって、 ラグジュアリー路線に寄ってきました。円安なども影響して、相対的にも消費力は上がっています。
人気のコンテンツは、大きくは変わりないです。四季、グルメ、自然が引き続き人気です。ただ、「日本に長くいたい」と考える方が増えたのか、宿泊日数が1〜2泊増えているなど、細かいニーズの変化はありますね。
(日本の観光事業者向けに一言お願いします)
旅行博はあくまで「打ち上げ花火」のような一時的なものですので、他の手法と上手く組みあわせながら、ぜひとも息の長いプロモーションをやっていただきたいです。
プロモーションは1年2年ですぐ結果が出る施策ではないので、5年10年かけて中長期的に見ていけると良いんじゃないかと思います。
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