インバウンド対策とは?訪日客に選ばれるためのポイントも紹介

THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ- アーカイブ無料配信中
完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

訪日外国人観光客の増加が続く中、インバウンド対策は特定の業種に限らず、あらゆるビジネスにとって欠かせないテーマとなっています。

事業者には、多言語対応だけでなく、キャッシュレス決済Wi-Fiといったインフラの整備から、食や文化の配慮まで、総合的な受け入れ体制が求められています。

本記事では、インバウンド対策が注目される背景や、具体的な取り組み事例、効果的に進めるためのポイントについて、わかりやすく解説していきます。

関連記事:【初心者向け】インバウンドの基礎から最新の動向まで徹底解説!

訪日ラボのメールマガジン登録はこちら>(無料)

インバウンド対策とは

インバウンド対策とは、訪日外国人の集客や受け入れ体制整備を行うことで、需要を効果的に取り込み、訪日外国人の消費を促進することを指します。

もともと「インバウンド(Inbound)」は「外から内に入ってくる」という意味の英語で、日本では特に海外から訪れる旅行者や消費行動を指す言葉として使われています。

インバウンド対策は、訪日外国人に「言葉や文化の壁を感じさせない、快適でスムーズな体験」を提供し、結果として満足度の向上やポジティブな口コミの拡散、リピーターの獲得といったメリットも期待できます。

そのため、インバウンド対策の重要性は特定の業種にとどまらず、幅広いシーンでの取り組みが求められます。

インバウンド対策が求められる背景

訪日外国人の増加に伴い、インバウンド対策の重要性は年々高まっています。

十分な対応を怠れば、訪日外国人にとって「選ばれない理由」となり、機会損失や顧客流出につながりかねません。だからこそ、事業者にとってインバウンド対策は、競合との差別化を図り、ビジネスチャンスを最大化するうえでも欠かせないテーマとなっています。

インバウンド需要の増加

日本政府観光局JNTO)の調査によると、2024年の年間訪日外客数は3,687万人に達し、過去最高だった2019年(3,188万人)を約500万人上回りました。

コロナ禍からの回復を意味するだけでなく、これまで以上に多様な国・地域の観光客が日本に訪れていることを示しています。それに伴い、言語に限らず、食や宗教、ライフスタイルなど、文化的な側面でもさらなる多様化が進んでいます。

さらに、旅行スタイルや訪問エリアといった個人の消費嗜好も変化しており、従来の画一的な対策では十分に対応できない場面が増えています。

関連記事2024年の訪日外客数、過去最高の3,687万人 12月は初の340万人超え

▲訪日外国人客数の推移:JNTO訪日外客統計より訪日ラボ作成
▲訪日外国人客数の推移:JNTO訪日外客統計より訪日ラボ作成

インバウンド対策を成功させるためのコツ

インバウンド対策を形だけ整えても、訪日外国人の満足度向上やリピートにはつながりません。

本当に選ばれる施設・店舗になるためには、訪日外国人の視点に立ち、文化や価値観の違いに丁寧に向き合う姿勢が重要です。

ここでは、インバウンド対策を実施するうえで押さえておきたい基本的な考え方や工夫のポイントを紹介します。

訪日客と同じ視点に立つ

インバウンド対策の基本は、まず訪日外国人が「何に不安や不便を感じるか」を想像することです。

言語、交通手段、決済方法など、日常的に利用しているものが通用しない環境において、どのようなサポートがあれば訪日外国人が安心して行動できるかを考えることが出発点となります。同じ視点に立つことで、具体的な改善点や必要な工夫が明確になっていきます。

実際に外国人観光客が投稿したレビューやSNSをチェックすることも、リアルな声を知るうえで有効です。

外国文化の理解を意識する

インバウンド対策においては、言語面の配慮にとどまらず、宗教、食習慣、価値観といった文化的背景の違いを尊重する姿勢が不可欠です。

たとえばイスラム教では、豚肉・アルコールの摂取禁止や、1日5回礼拝を行うといった風習・習慣があります。

すべてのニーズに完璧に対応することは困難ですが、あらかじめ基本的な情報を把握し、柔軟な対応を心がけるだけでも、訪日外国人に安心感と信頼感を与えることができます。

関連記事ヴィーガン、ムスリム、LGBTQ…多様性への対応で、選ばれる観光地へ【セミナーレポート】

多言語での情報発信を行う

いくら魅力的なコンテンツやサービスを提供していても、訪日外国人に適切に伝わらなければ意味がありません。

そのため、店頭や施設内の掲示をはじめ、WebサイトGoogleマップSNSなど、情報発信においても多言語対応を進めることは、訪日外国人との接点を拡大するうえで極めて重要です。

近年では、無料で利用可能な翻訳ツールや、多言語対応が可能なCMS(コンテンツ管理システム)も増えており、初期コストを抑えながら効率的に多言語対応を実現する環境が整いつつあります。

インバウンド対策10選

インバウンド対策として有効な具体策を10個ご紹介します。取り組みやすいものから実施していくことで、訪日外国人の満足度向上や集客力の強化につながるでしょう。

1. Webサイトや予約フォームの多言語表記

訪日外国人の多くは、旅行前にインターネットを通じて情報収集を行います。自社のWebサイトや予約フォームを多言語対応させておくことは、集客の初期段階において重要な施策といえます。

英語中国語・韓国語など、主要言語への翻訳対応はもちろんのこと、ページの構成や予約手順についても、直感的に操作できる設計とすることで、離脱の防止につながります。

2. Wi-Fiの整備

慣れない土地で地図や翻訳アプリSNSなどを利用するために、インターネット環境は重要なインフラの一つです。

そのため、無料Wi-Fiの有無は施設・店舗選びの判断基準になる場合が多くなっています。特に飲食店や小規模な宿泊施設観光案内所などにおいては、Wi-Fi環境が整っていないことが理由で利用を断念されるケースもあります。

また、パスワード不要で簡単に接続できる設計にすることで、訪日外国人の利便性向上に寄与します。

3. キャッシュレス決済の導入

日本国内では依然として現金主義が残っていますが、海外ではキャッシュレス決済が一般的である国も多く、現金のみの対応では購入や利用を断念される場合があります。特に小売店飲食店では、少額でもスムーズに決済できる環境が、顧客満足度の向上につながります。

クレジットカードのみならず、AlipayWeChat Payなど、各国で主流となっている決済手段に対応することで、機会損失を防止することが可能です。

関連記事:インバウンド対策に必要なクレジット・QRコード決済への対応とは

4. メニューや案内の工夫

店内メニューや館内案内、施設利用ルールなどが日本語のみで表記されている場合、訪日外国人は内容を十分に理解できず、利用をためらう可能性があります。

多言語表記に限らず、写真やピクトグラムなど視覚的にわかりやすい工夫を取り入れることで、円滑なコミュニケーションが可能になります。

特に飲食店においては、料理の写真やアレルゲン情報、ハラールヴィーガン対応などの表示を加えることで、利用者に安心感を与え、利用のハードルを低減する効果が期待されます。

関連記事:今すぐできる飲食店の多言語対応とは?おすすめの方法や対応すべき言語も紹介

5. 多言語人材の確保・スタッフの外国語研修・翻訳機の導入

対面でのやり取りが発生する場面では、言葉が通じることが訪日外国人にとって大きな安心感となります。

多言語対応できる人材がいない場合でも、現場でよく使うフレーズをあらかじめスタッフに共有することで、対応力の向上が期待できます。翻訳機や翻訳アプリを活用することも、限られた人員で対応するうえでは有効な打ち手と言えるでしょう。

もし言葉がなかなか伝わらなくても、スタッフの「コミュニケーションを取る姿勢」が訪日外国人に好印象を与えることもあります。

関連記事:壁を扉に変える言葉 ~カタカナ英語でひらくインバウンド接客~

6. 食の多様性への対応

幅広い国・地域からの訪日や、ライフスタイルの広がりにより、訪日外国人旅行者の食に関するニーズは多様化しています。

そのため飲食店にとっては、ハラールベジタリアンヴィーガンといった食習慣に対応することが、制限を持つ訪日外国人から「選ばれる理由」となります。

すべてに対応する必要はありませんが、可能な範囲で選択肢を用意して食材の表示を明確にすることで、訪日外国人が安心して利用できる店舗づくりにつながります。

関連記事:宗教別の食べてはいけないものを一覧で紹介!押さえておきたいタブーと飲食店での対策とは

7. 外国向けのSNS発信

近年、SNSを通じて情報を収集する旅行者も増えており、多言語でのSNS発信は、集客やブランディングにおいて効果的な手段となります。

料理や商品、施設の雰囲気を写真や動画で伝えることで、言葉の壁を越えて魅力が伝わりやすいのもSNSの利点です。

ただし、国・地域ごとに利用されているSNSは違うため、ターゲットごとにどの媒体が使われているのかを把握しておく必要があります。

関連記事:中国最大のSNS「Weibo」をインバウンド集客に活用するには?特徴・プロモーション事例3選・活用のポイント

8. Googleマップの整備

Googleマップは世界中での利用者が圧倒的に多く、訪日旅行においても頻繁に使用されています。

多言語で施設名を登録し、最新の写真を追加することで、訪日外国人に見つけてもらいやすくなります。所在地や営業時間、定休日、メニュー、写真などの情報が不十分だったり、誤っていたりすると、そもそも選択肢に入らない可能性もあります。

SNSのように頻繁な発信が求められないため、限られたリソースでも取り組みやすい点も大きなメリットです。

関連記事:インバウンド集客に必須のGoogleマップ、今すぐやるべき3つの対策

9. 戦略の設計(ターゲットとする国の特定・把握など)

戦略的にインバウンド対策を進めるのであれば、どの国・地域からの訪日外国人をターゲットにするか明確にしたうえで対策を講じることが重要です。

同じアジア圏でも訪日外国人の特性や訪日タイミングなどに差が出るほか、欧米などでは消費スタイルも大きく異なってきます。

まずは、自分たちの施設や地域にどの国からの訪問が多いのかを把握し、それに応じた言語対応や情報発信、サービス内容を検討することで、より効果的な施策につながります。

関連記事:2025年版「インバウンドカレンダー」訪日プロモーションのタイミングを徹底解説

10. 施策の効果測定

インバウンド対策は「やりっぱなし」では効果が見えにくく、実施後に振り返りと見直しを行うことが欠かせません。

Webサイトのアクセス数や予約数、SNSの反応、Googleマップ口コミ、外国人客からの問い合わせ内容などをもとに、どの施策が成果につながっているかを定期的に確認しましょう。

データをもとに改善を重ねることで、限られたリソースでもより効率的な取り組みが可能になります。

特に、業務負担を抑えて効率的に成果を出したい場合は、「どの施策が効いているか」を把握しておくことが、次に取るべき行動を判断するヒントになります。

関連記事:これ一つで丸分かり!口コミ対策ガイド【2025年最新版】

インバウンド対策事例

インバウンド対策に取り組んでいる企業・施設の事例を紹介します。施策の参考として、ぜひチェックしてみてください。

【イオンモール成田】翻訳アプリ・翻訳機の活用

成田空港から車で15分ほどの場所に位置するイオンモール成田は、2019年に大規模リニューアルを行い、多言語対応を行いました。館内では、最大で5言語(日本語、英語韓国語繁体字タイ語)表記を行っています。

また、各専門店に貸し出しているタブレットの中に翻訳アプリを入れているほか、警備や清掃を担当されている方にも「ポケトーク」などの翻訳機を活用してもらっているといいます。そうすることで、外国語が話せないスタッフも訪日外国人への対応が可能になっています。

関連記事スイスのスニーカーが爆売れ?「成田空港に一番近いイオンモール」売り場作りの秘密

【食品サンプル製作体験カフェ】訪日客が訪れたくなるWebサイトづくり

浅草にある「食品サンプル製作体験カフェ」は、事前にインターネットで情報収集をする訪日外国人に向けて、英語版の公式サイトを公開し、実際の製作風景を映した動画を載せています。

お店で作れる食品サンプルと、サンプルを作る手順をきちんと載せることで、あらかじめ体験内容をイメージしてもらい、訪日外国人に興味を持ってもらえるような工夫が施されています。

関連記事日本初の「食品サンプルが作れるカフェ」口コミ高評価の理由は?

【富士河口湖リゾートホテル】売店にセルフレジ導入で売上UP

富士河口湖リゾートホテルでは、セルフオーダーシステム「StarPay-Order」をホテル内の売店に導入しました。

「StarPay-Order」は言語切り替えが可能になっており、さまざまな国の旅行者が不便なく使えるほか、各国で利用されている決済手段が使えるため、宿泊客の利便性向上にもつながっています。

システムの導入により、人手不足の解消や売上の向上、さらにはホテル全体のマーケティング戦略にも効果が出たといいます。

関連記事ホテルの売店にセルフレジ導入、「無人売店化」で売上UP!インバウンド人気高まる「富士河口湖」のホテルが実践するマーケティング戦略

インバウンド対策で、訪日客に選ばれるための第一歩を

インバウンド対策は、訪日外国人の快適な体験につながるだけでなく、事業者にとっては「選ばれる理由」を築くことにもなります。

言語対応や文化への配慮、設備の整備を通じて訪日外国人に安心感と信頼を与えることができれば、良い口コミリピーター獲得といった成果にもつながります。

まずは無理のない範囲から、自社でできるインバウンド対策を検討してみてはいかがでしょうか。

関連記事:業種別に見るインバウンド対策事例集

インバウンド対策にお困りですか?
「訪日ラボ」のインバウンドに精通したコンサルタントが、インバウンドの集客や受け入れ整備のご相談に対応します!

訪日ラボに相談してみる

<参照>

日本政府観光局(JNTO):訪日外客統計

【9/30開催】小売業界でいま注目の「ローカルインベントリマーケティング」大手小売企業の事例で解説!


「ローカルインベントリマーケティング(LIM)」とは、ユーザーが商品を検索した際に、その商品を扱う近隣店舗の在庫情報や店舗情報、さらにはECサイトでの購入導線をGoogleなどの検索プラットフォームに表示させます。これにより、実店舗への来店を促進するとともに、自社ECサイトへの購入導線も確立することで、オンラインとオフラインの双方でユーザーにスムーズな購買体験を提供します。

本セミナーでは、「ローカルインベントリマーケティング(LIM)」の基本をご紹介。大手某小売企業の実践事例をもとに、店舗とEC双方の送客を最大化する取り組みを深掘りします。

<セミナーのポイント>

  • 小売業のOMO戦略の基本概念が学べる!
  • 「ローカルインベントリマーケティング(LIM)」の基本が学べる!
  • 大手小売企業の取り組み事例から実践法が学べる!

詳しくはこちらをご覧ください。

【9/30開催】小売業界でいま注目の「ローカルインベントリマーケティング」大手小売企業の事例で解説!

訪日ラボ主催「THE INBOUND DAY 2025」アーカイブ配信中!

訪日ラボを運営する株式会社movが8月5日に開催した、日本最大級のインバウンドカンファレンス「THE INBOUND DAY 2025 -まだ見ぬポテンシャルへ-」のアーカイブ動画が公開中です。

アーカイブ配信では、元大阪府知事の橋下 徹氏と大阪観光局理事長の溝畑 宏氏による基調講演のほか、脳科学者の茂木 健一郎氏、日本文学研究者のロバート・キャンベル氏、アパグループ 社長兼CEOの元谷 一志氏などの貴重な講演の様子を一挙公開(一部を除く)。

参加できなかった方はもちろん、もう一度議論を見直したい方も、ぜひご覧ください。

視聴はこちら(無料)

【インバウンド情報まとめ 2025年9月前編】PayPayが中国「WeChat Pay」と連携 / 観光庁予算要求814億円、人手不足対策などの予算増 ほか


訪日ラボを運営する株式会社movでは、観光業界やインバウンドの動向をまとめたレポート【インバウンド情報まとめ】を毎月2回発行しています。

この記事では、主に9月前半のインバウンド最新ニュースを厳選してお届けします。最新情報の把握やマーケティングのヒントに、本レポートをぜひご活用ください。

※本レポートの内容は、原則当時の情報です。最新情報とは異なる場合もございますので、ご了承ください。

口コミアカデミーにご登録いただくと、レポートの全容を無料にてご覧いただけます。

詳しくはこちらをご覧ください。

PayPayが中国「WeChat Pay」と連携 / 観光庁予算要求814億円、人手不足対策などの予算増 ほか:インバウンド情報まとめ 【2025年9月前編】

今こそインバウンドを基礎から学び直す!ここでしか読めない「インバウンドの教科書」

スマホ最適化で、通勤途中や仕込みの合間など、いつでもどこでも完全無料で学べるオンラインスクール「口コミアカデミー」では、訪日ラボがまとめた「インバウンドの教科書」を公開しています。

「インバウンドの教科書」では、国別・都道府県別のデータや、インバウンドの基礎を学びなおせる充実のカリキュラムを用意しています!その他、インバウンド対策で欠かせない中国最大の口コミサイト「大衆点評」の徹底解説や、近年注目をあつめる「Google Map」を活用した集客方法など専門家の監修つきの信頼性の高い役立つコンテンツが盛りだくさん!

→ 【無料】「インバウンドの教科書」を見てみる


完全無料 口コミアカデミー 「インバウンドの教科書」出ました! 国別・都道府県別データ・トレンドをカバー 見てみる

関連インバウンド記事

 

役にたったら
いいね!してください

この記事の筆者

訪日ラボ編集部

訪日ラボ編集部

訪日外国人観光客インバウンド需要情報を配信するインバウンド総合ニュースサイト「訪日ラボ」。インバウンド担当者・訪日マーケティング担当者向けに政府や観光庁が発表する統計のわかりやすいまとめやインバウンド事業に取り組む企業の事例、外国人旅行客がよく行く観光地などを配信しています!

プロモーションのご相談や店舗の集客力アップに