訪日客外国人は「日本らしい」習慣に興味を抱いている場合も少なくありません。日本の正月の風物詩に「福袋」がありますが、それについて外国人はどのようにとらえているのでしょうか。
今回は、訪日客の「福袋評」について、爆買いがブームとなった中国人観光客の反応を中心に解説していきます。
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2020年の日本「福袋」事情
日本では正月の風物詩の1つである福袋ですが、年々進化を遂げており、以前に比べるとハズレの福袋は少ない傾向にあります。とりわけ好みが分かれるファッション系の福袋は中身が見えるように、または選べるようにするなど、工夫を凝らしています。
店側がこのような対応を始めた理由としては、SNSでの発信力拡大により、福袋の口コミもブランドイメージにも大きな影響力を持つようになったことが考えられます。
また以前には購入金額に見合わないような詰め合わせに不満の声も見られましたが、現在ではこうした福袋の価格より中身の総額が下回るといった「ハズレ」の福袋は多くないようです。
販売方法について、人気ブランドやメーカーの場合は、11月頃からネットで予約を受け付けるケースも一般的です。年内に予約を入れて、当日は店頭に商品を取りに行くだけです。 開店と同時に売り場に客が殺到することで事故につながるリスクを低減させる狙いもあります。
訪日外国人に「福袋」の良さを知ってもらうための取り組みも進んでいます。百貨店では従業員が歌舞伎役者に扮した催しを行っています。また1日に約40万人が詰めかける池袋の西武百貨店では、福袋を「Lucky bag」と呼ぶ訪日外国人の姿も見られました。
ちょっと変わった福袋
2020年は、一風変わった系統の福袋も販売されました。千葉県内の百貨店では、2019年の出来事にちなんだ「体験型」福袋を販売しています。
「がんばろう千葉」をテーマにした福袋では、福袋を通じ県の特産品を味わったり県内各地に足を運んだり、台風被害からの復興につながるような内容が特徴的です。
大きな被害を受けた市原市では、2020年春に開催される芸術祭「いちはらアート×ミックス2020」に関連した福袋を企画、販売しています。小湊鉄道のトロッコ列車に乗り、道の駅での買い物やアート鑑賞ができるものとなっています。
また船橋市の東武百貨店船橋店では、日本各地で開催されたラグビーワールドカップに着想を得て、地元のラグビーチームの選手との競技体験や合同トレーニングができる権利を販売する福袋を、10人限定で2,020円で販売しました。近年は消費者のニーズに合わせて、福袋にも「体験型」商品が増えているのかもしれません。
外国人の福袋評、キャラクター強し!「日本で買いたい」「全然ラッキーじゃない」
Twitter上には「fukubukuro」や「luckybag」などのハッシュダグがあります。また、YouTubeで自身の福袋開封動画を配信しているコンテンツもあります。
2020年はポケモンセンターや、「ポケットモンスターソード・シールド」とコラボレーションしたミスタードーナツなど、ポケモンに関連した福袋が好評だったようです。
Youtubeの動画への海外の視聴者からのコメントは「アメリカにも福袋があったらいいのに!」「一度日本で買ってみたい!」など、関心を示している様子がうかがえました。
一方で、異文化で育った人にとっては衝撃もあるようです。中身を把握できないタイプの福袋を購入し「福袋を買ってみたけど全然ラッキーじゃない!」と漏らす人もSNSでは確認できました。値段のお得感だけでなく、中身の好みや質も期待していることから、中身が見えない福袋への評価は分かれるようです。
「日本の福袋転売」に励む中国人
派手な「爆買い」で有名な訪日中国人ですが、福袋も彼らの注目を集めているようです。中国で使わない人はいないのではないかと感じるほど普及しているECアプリ「タオバオ」ですが、この中で「日本の福袋」も出品されています。
主にファッション関連の福袋が多く「A BATHING APE」「サマンサタバサ」や、ロリータファッションなどが人気のようです。衣類だけでなく、基礎化粧品や鞄などの福袋も転売されている様子が確認できます。
中国人、実は日本の衣類を買うのが好き
観光庁の調査によると、訪日中国人の買い物代の購入者単価について、衣類は30,890円となっています。香港や台湾、韓国など他の東アジア市場では1〜2万円台前半なのに比べて、明らかに高いことがわかります。福袋にはそもそも衣類はじめファッション関連のアイテムが多くなっていますが、転売の多さからも中国人の日本の衣類に対する関心の高さが見えてきます。
日本でも「転売奨励」!?メルカリが渋谷で試み
フリマアプリを運営するメルカリは「SHIBUYA109」にて、梱包材が入った「売れる福袋」を発表しました。福袋を購入しサイズが合わない商品などがあってもその場で撮影・梱包・出品できるように、梱包材が無料でもらえるという商品です。
もし「ハズレ」の福袋に当たったとしても、アプリを通じて、その場で買い手を見つけられるかもしれません。「無駄なものを買わなくて済む」という安心感から、より気軽に福袋を購入できるようにする狙いがあります。
メルカリに出品される福袋関連商品は、3年前と比較すると約2倍に増加しているそうです。日本でも、福袋の転売はもはや珍しいことではなくなっているのかもしれません。
「日本独自×縁起の良さ」EC出品のラインナップから成功の法則を学ぶ
福袋は日本の縁起の良いならわしの一つです。こうした存在に特別な印象を抱き、体験してみたいと考える外国人もいるでしょう。福袋に含まれる商品の価値だけでなく、「日本の行事に参加する」という側面を強調すれば、「コト消費」としての福袋購入は今後新たなマーケットを開拓できるかもしれません。
特に、中国ではすでに日本の衣類への認知は広まっており、タオバオからは転売の需要も確認できています。こうした出品状況から、中国人の消費欲をそそる日本ブランドが何なのか、こうしたブランドはなぜ認知を獲得できたのか、また知名度を購入につなげるために何が必要なのかを研究すれば、訪日中国人向けの販売促進の成功に一歩近づけるのではないでしょうか。
<参照>
・WEZZY:福袋を買い続けて40年のベテランが教える2020年の福袋〜傾向と対策
・AERA dot.:2019年初売り 頼みの綱はやはり「外国人」
・テラ朝news:「Ohラッキーバッグ!」日本の福袋が外国人にも人気
・日本経済新聞:千葉県の百貨店が体験型福袋 災害復興やラグビー人気取り込む
・FNN PRIME:ハズレ商品はその場で転売 メルカリが仕掛ける「売れる福袋」戦略
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